第16話 齋藤絵画教室
いつも読んでいただきありがとうございます。
「だからなんでこの人が、また家にいるのよ…」
「今日は大学行ったんでしょ、
家に帰ったんじゃ無いの?」
「帰ったよ…」
「一回帰って、着替えだけ持ってきた…」
「まあまあ、いいじゃない、
ひろえさんも美織を心配して来てくれてるわけだし…」と、
美織の母が宥めていた。
「どういう神経してるのよ、ひろえさん
パラサイトじゃん」
「わかったよ…帰るよ…
そんなに言わなくても…」
ひろえが帰ろうとすると愛が、
「ずる〜い!何か…
可哀想になっちゃうじゃん」
と、ひろえに抱きついた。
美織のお母さんが、
「もう…何やってるのよ…ご飯食べるよ」
「すみません、連日ご馳走になってしまって…」
「自分から来ておいて、よく言うよね…」
と、愛がチャチャを入れる。
「私ひろえちゃん好きよ。」と、
母が言うと
ひろえは嬉しそうに笑っていた。
美織が切り出した。
「で、どうだった?池田先生と話できた?」
「うん、話したよ…
決定的な情報は無いんだけど…」
「けど、何よ…」
「めっちゃいい先生だった〜」
「何も無いんかい!」と、笑っていた。
「でもね、いくつか話した内容を、
そのまま伝えるね…」
愛は池田と話した内容を、
出来るだけそのまま伝えた…
「へー…いい先生じゃない。」
美織の母が、真っ先に反応していた。
美織は少し涙ぐんでいるように見えたが、
顔は笑顔だった。
ひろえは、一人
「その、出会ったその日に告白するって…
私のことでしょ、話を盛ってない?」
「ひろえちゃんは、出会ったその日に掴みかかってたもんね…
押し倒すんじゃない…」
お母さんは、冗談だと思って笑ってたが、
「えっ!!冗談じゃないの…」
と、唖然としていた…
美織が、愛にお礼を言って
「確かに池田先生の言う通りだよね…」
「どうするの…?」
「齋藤さんと土曜日約束してしまったんでしょ?
お母さんの事、聞きに行く?」
「それとも寸くんに会いに行ってみる?」
ひろえが
「美織ちゃんのペースで行けばいいよ。」
そう言ってご飯を頬張った。
「まだ谷本くんに会いに行く勇気は無くて…
いいかな?」
「もちろんだよ、お姉ちゃんのペースで行こうよ、
多分ひろえさんがずーっと付き合ってくれるから。」
ひろえは、口がいっぱいだから
手でグッドサインを見せた。
「あっ…あと、
私はスルーして良いと思ったけど、
木村麻乃さん
川上未来さん
は、聞かなくて良い?」
美織が少し考えて、
「未来ちゃんは、
こないだ会ったばかりだし、多分、
藤田くん絡みで仲よかったのは知ってるから、
スルーして良いかな。」
「麻乃ちゃんは、確かに絵の上手い子で、
何か接点があるかもね…一応保留かな…」
「まずは、齋藤さんの話を聞いてみよう。」
〜 土曜日の午後 齋藤絵画教室 〜
美織とひろえ2人で、
齋藤絵画教室の前に来ていた、
子供達の声が、教室から聞こえる。
チャイムを鳴らすと、
齋藤あかりが、出てきた。
「いらっしゃい。今日はこちらにどうぞ。」
先日入った教室ではない、
部屋に通された、リビングに入ると
沢山の絵が飾ってあった。
子供の描いた絵かな…
「すみません、何度も押し掛けてしまって」
「いいよ、別に…今日は暇だったから」
齋藤あかりが恥ずかしそうに
「私、高校卒業して、陶器会社に就職して、
お皿に絵を描いたりデザインしたりする
仕事をしてるの…だから土日は休み」
「で、今日は何?また谷本くん絡み?」
「実は、谷本くんの記憶喪失について、
気になる事があって…」
美織は、同級生の記憶が無い事
伊東美織、東堂美津子、藤田鮎子の
3人の記憶について…
先生やご家族など大人の記憶は残っている事、
大人でも齋藤さんのお母さんと、
中学教師の池田先生の記憶は消えている事、
を説明した。
齋藤あかりは、
真剣な表情で聞いていた。
「なんか、谷本の事情をはじめて聞いたわ」
と、立ち上がって、
1枚の写真を持ってきた。
「母よ…私が中学の時一緒に撮ったの。」
綺麗なお母さん…
「齋藤さんはお母さん似なんだね…」
「よく言われたわ、お母さんに似てるって…
昔は嬉しかった…でも、
いつの日か…
母の存在がプレッシャーになってしまって…」
「それから…話さなくなった…」
「谷本ばかり褒めているような気がして、
腹を立ててしまっていたんだと思う。」
「何故…谷本の記憶からお母さんは、
消えたんだろう…
確かに谷本は忘れていた…」
「私は、大人は覚えているって情報すら
知らなかった…」
「その情報は谷本から聞いたの?」
美織が頷き、
「谷本くんや、永野くん、
池田先生から聞いた話をまとめてみたの…」
「永野って、バレーボール部の?」
「そうそう、私の彼氏…」と、
ひろえが嬉しそうに付けたした。
「ひろえちゃん余計な情報いらないから…」
「…」
一瞬、齋藤の顔が曇ったように見えた。
齋藤が、小さく息を吐いて…
母のやっていた絵画教室について話してくれた、
元々は父が始めた絵画教室だったそうだ。
「お父さんは早くに亡くなって、
お互い美術大学の同級生だった事もあり、
母が引き継ぎ続けていたの。」
「母が教えるようになってすぐに、
谷本が教室に来たの…」
「来た時は、私も覚えているけど、
何か殻に閉じこもっていた感じで、
絵を描いても、上手いとはとても言えない絵だったよ…」
「それが、急に絵を描く事が好きになったみたいで、
笑顔を見せるようになった…」
美織が相槌を打って
「5年の6月頃ですよね…よく覚えてます、
絵が変わったな、明るくなったな、って…
感じた時期があったので…」
「そう…その頃だよ、
絵画教室に来て1年くらいの時期だったから
私も良く覚えてるわ」
「何がきっかけだったか…
母から聞いた事があるの…」
「詳しくは、わからないんだけどね、
学校の写生大会で描いた絵を、
誰かに褒められたらしいよ、」
「お母さんも、よほど嬉しかったみたいで、
谷本くんが、笑った顔はじめて見たって…
その席でビール飲んでたの覚えてるわ。」
「たぶん…それが谷本が、
絵にのめり込んだキッカケ…」
「漠然と、美織の頭の中で谷本の絵を、
褒めそうな人物が脳裏に浮かんだ…」
その時だった、
「お疲れ様でした〜」と、池田が入って来た。
「アレ、池田先生!!」
美織が驚いて立ち上がった。
「言ってなかったっけ、
今、ウチの絵画教室は池田先生に見てもらっているの。」
「初耳です…ね、」
美織とひろえが、情報について行けなくなっていた。
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