#004
俺たちは学校までやってきた、正門ではゴリが竹刀をもって仁王立ちしている。ったくいつの時代の教師だよ。
そこで俺はあることを思い出した。
「三日連続遅刻じゃねぇか!」
ループしたせいでわかんなくなってた!
「遅刻くらい気にすんなよ。さっさと入るぞ」
たいしたことないみたいな顔をして、リョウがそう言ってきた。
「反省文だぞ! そんな時間ないってのに」
ちらりとリョウを見る。
「お前、どうにかできないのか?」
「反省文くらい書いてこいよ、いっつも時間ギリギリにくるからこうなって……いててっ、いてっ、お、おいやめろっ、やめっ、や」
ほっぺを力一杯つねってやった。
「何かあったら助けるって言ったばかりだろ」
「そういう助け方じゃないんだけどな……今回だけだぞ」
リョウはそういうとゴリに近づいていき……
首を背後からチョップした。
刹那、ゴリは泡を吹きあっけなく倒れこんだ。
そしてスキップしながらウキウキで涼が帰ってくる。
「よし、じゃあ教室に……ん? どうしたトウヤ。行かねぇのか?」
「なんてことすんだぼけぇ! 俺がお前に頼んだのは何か魂ならではの魔法とか使えると思ったからであって、なに物理攻撃でくたばらせてんだよ! ほらみろ、あそこのおばさん救急車よぼうとしてんじゃねえか!」
「トウヤが反省文いやだって言うから善意でやってやったんだろ! 感謝の一つや二つあってもいいんだけどな! 今魔法なんて使ったら余計目立つだろ!」
「やっぱり使えないガキじゃねえか!」
「なんだと! いまここでトウヤを灰にしてやろうか!」
リョウはそう言うと掌を俺に向けた。
「そ、それは違うだろ! やっぱお前魔法使えんのかよ」
「この際だからいうけど、オレは俗にいう神ってやつなんだ」
「……は? え、今朝のエッチの?」
「何言ってんだ? 人ってのは死んだら二種類にわかれるんだよ。さっきのコンビニの爺さんみたいに普通の魂になるか、天界に行って神になるかの二択。どっちになるかは死んだときの善行の多さとかその他もろもろで決まるらしい。まあほとんど普通の魂になるけど」
「……」
「オレは小四という若さで死に、さらに事故死ときた。たくさん親孝行もしてきたからなぁ。くぅぅ、懐かしいぜ。そんなわけで神になれたのかもな!」
自慢げに語っているが……まてまて、こいつ、神なのか?
俺はさっき二回ビンタして散々暴言吐いたぞ。
冷や汗が頬をつたう。
「ただ神っていっても全知全能じゃない。もちろんアエロス様はなんでもできるけど。アエロス様が語る言葉一つ一つは、宇宙を揺るがすほどの重みを持ち、その眼差しには、星々の運命さえも読み取ることができるという。彼女の真の姿を見た者は、皆その圧倒的な威厳に畏怖し、そして一瞬で理解する。アエロス様がこの世界を創造し、そして支配していることを。べべんっ!」
うん、何一つ理解できなかった。
結局どういうことだ?
いますぐ土下座したほうがいいのか?
「おい、この情報量に耐えきれずに仏様みたいな顔になってるぞ? まあ、要約するとオレは神だから多少の魔法は使える。姿がくっきりしてるのも神様特典だ。ちなみに神ってのは結構っていうかめちゃ身分高いんだぞ! もっと崇めろ!」
「はい! リョウ様! 是非、エッチな夢を見させてください!」
ゴミを見る目だ。
普段クラスの女性陣が俺を見る目だ。
「で具体的にはどんな魔法が使えるのでしょうか」
俺がリョウに質問した。そこで、鐘が鳴った。
「学校始まるぞ! 急げ!」
「お、おい教えろよ!」
そう言って走っていくリョウを追いかけた。
☆
一限目が終わった休み時間に教室に到着した。
教室まで来る途中、リョウと決まり事を定めた。
一つ、学校では俺に話しかけないこと。
一つ、危険が迫っていたらすぐに知らせ、助けること。
一つ、俺のプライベートは守ること。
そして、悪魔に取り憑かれている人の見分け方を教わった。どうやら瞳が黒く染まるらしい。俺が殺される前に見たあれだ。
「お、トウヤ! なんかあったのか? 今日は休みかと思ってたぜ」
席につくと、横に座っていた陽が話しかけてきた。
「ちょっと体調悪くてな。ほらこれだろ」
俺は鞄からノートを取り出し、陽に渡した。
「わかってんじゃねえか」
ふと典子の方を見ると、友達と楽しそうにお話ししていた。典子に最近なにか変なことがなかったかとか、いろいろと話を聞きたいが、あそこに割って入るというのは、童貞には少しきついシチュエーションだ。
行くのを躊躇っていると、リョウが早く行けよと言わんばかりに脇をつついてきた。
……行くか。
「内貴くん。ちょっといいかい?」
俺が心を決めて一歩踏み出したその瞬間、突然名前を呼ばれた。
「ヒィッ!」
背後にはまったく警戒していなかったせいで、余計びっくりし、思わず叫んでしまった。
そして、クラス中が俺に注目した。そんな目で俺をみるな!
「驚かせてしまってごめんね。僕は八汐ルイ」
「ド、ドウモ」
まさかだ。あのルイが俺に喋りかけてくれるなんて。容姿端麗でスタイル抜群の白髪イケメン。超がつくほどのモテ男。一日十回は告白されているとか。憎たらしい。
そして、クラスの女子がキャーキャーと騒ぎ始めた。
「ちょっと君と話がしたくてね。よかったら放課後一緒に帰らないかい?」
「ハイ」
声がうわずってしまった。なんで男同士なのに照れてんだよ。俺にそっちの気はないんだが!
ん?
引っ張られるような感触を覚え、リョウの方を見ると、何か言いたそうに俺の服を引っ張っていた。
早いとこ切り上げるか。
「じゃあ放課後正門で待ち合わせでいいか?」
「うん。助かるよ」
返事を聞いてそそくさとその場を後にする。とりあえず典子はあとだ。
リョウと話すには……とりあえず廊下でいいか。
俺が廊下に出ると、リョウは後ろをちょこちょことついてきた。
「なあ、どうしたんだ?」
「あいつ、オレのことが見えてやがった。さっきバッチリ目があった!」
俺が聞くと、リョウは慌てた様子で答えた。
「ってことは、どういうことなんだ?」
「たぶん、冥斬士だと思う」
「めいざんし? なんだそれ」
「簡単にいうと悪魔を倒すエキスパート。さっき言った特殊な訓練受けてる人」
ちらっと教室を覗き、ルイを見る。
あいつが冥斬士なのか?
「トウヤ、さっきのやつに冥斬士かどうか聞いてこい」
「えぇ、放課後にしようぜ。今話しかけたら女子たちに変な目で見られる」
「はぁ、本当にチキンなんだな」
「おい、チキンって、いつそんな言葉覚えたんだよ」
☆
学校が終わるとすぐ、俺は正門まで行った。
「トウヤ、あいつもう待ってるじゃねぇか」
「げっ……リョウは黙って観察しといてくれ。何かあったら助けて」
「わかった」
正門の周りでは女子たちがキャーキャーと騒いでる。モテモテだなおい。いまからあの中に入ると考えると肝が冷えるがそれは我慢だ、約束を無碍にするわけにはいかない。いくら俺でもそれは良心が痛む。
勇気を出して人混みをかき分け、ルイの元へと歩み寄った。
「ごめん待たせた」
「いいよ、僕も今来たところだし。さあ行こうか」
やたらと視線をかんじる。数多の女子が俺を見ている。やめてよぉ、そんな目で見ないでよぉ。ヒソヒソなんか言ってる子もいるし。
絶対悪口だ。いじめのにおいがプンプンする。
録音してあとで教育委員会だ!
「ここは人が多いからちょっと走ろうか」
「あ、はい」
ホンマすんません、こんな陰キャに気を遣わせしまって。
しばらく走って人気のない橋にやってきた。
「ここなら大丈夫そうだね」
「そうだな……ルイはその、冥斬士なのか?」
質問をした瞬間、俺の右手首がルイに掴まれた。
「内貴くん、君は一体なんなんだい? それと横の坊ちゃんも」
あれ、ものすごい力で掴まれてる。答えるまで解放しないってか?
「なんなんだって言われても」
「僕には君が半分悪魔に見えるんだけど」
(なあリョウ、これって本当のこと言っていいのか?)
俺が小声でリョウに聞いた途端、俺の手首を掴む力が一層強まった。
「痛って!」
こいつ、骨折る気かよ!
馬鹿みたいに握りしめやがって!
「隠し事はなしだ」
「わかった話す。その前に一つ質問させてくれ、あんたは冥斬士か?」
「そうだよ」
「つまり、俺の味方ってことか?」
「それは君の返答次第」
「俺は、昨日っていうか……七月二日に悪魔に殺されたんだ。でもなぜか七月一日に戻ってきた。こいつとは今朝偶然出会って一緒に行動してる。本当にそれだけで、決して悪魔とかじゃ」
そこでルイの顔を見た。
様子がおかしい、そしてそっと俺の手を離した。
「まさか本当に……?」
何かを考えるような仕草をした後、再度俺の目を見つめた。
「先ほどはすまなかった。ぜひ君に協力させてくれ」
なんなんだこいつぅー!
独りよがりにもほどがあるだろ!
「とにかくもっと詳しく話がしたい、君の家はどこだ」
「え! うちくるのかよ」
「あっち」
「おい、リョウ! 何勝手に教えてんだよ!」
「坊ちゃん感謝する」
ルイは猛スピードで俺の家へと走っていった。




