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未来を変える為に魔女として生きていきます  作者: 桜井 更紗
第五章

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閑話─皇太子宮の使用人達

 



 昨夜は皇太子の魔女として、あの後アリスティアは皇太子宮に連行された。


 つい最近まで聖女が滞在していた皇太子宮に。

 今度は魔女が滞在する事になり、皇太子宮の使用人達は大騒ぎだった。


 しかしだ。

 聖女と違う所は、魔女は皇太子妃の部屋に連れて行かれた事だった。



「 わたくしは……皇太子妃ではありませんわ? 」

「 この部屋は君の部屋だよ。僕が皇太子に冊立され、この宮に来た時から君の為に用意していた部屋だ 」


 この部屋は君が来るのを待っていたんだよと言って、レイモンドはニッコリと笑った。

 そしてアリスティアの肩に手をやり、クルリと回転させた。


「 待っていたのは部屋だけではないよ。皇太子宮の使用人達皆が、君が入内して来るのを待っていたんだ 」


 アリスティアの目の前には大勢の使用人達がいた。

 侍従のマルローと侍女頭のロザリーを筆頭に、ズラリと並んだ使用人達がアリスティアに向かって頭を下げている。


「 ……… 」

 下唇を噛み締めて皆をじっと見ていたアリスティアの、ヘーゼルナッツ色の大きな瞳からはボロボロと大粒の涙が溢れ落ちた。


 転生前の事を思い出して。



 あれは結婚式を3ヶ月後に控えた頃。

 皇太子妃の部屋は既に改装に入っていて、ウェディングドレスも試着の段階に入り、各国の王室へは招待状の発送も全て終わっていた。


 しかしある日突然にその全ての未来が絶たれた。

 幸せな花嫁になる筈だったのに。


 大聖堂で……

 皇太子殿下と愛を誓う花嫁は、自分ではなく聖女だった。



「 ティア……君をちゃんと僕の花嫁にするよ 」

 アリスティアの涙の意味を知っているレイモンドは、漆黒のドレスのアリスティアの肩をそっと抱き寄せた。

 

 顔を両手で覆い、コクコクと何度も何度も頷きながら、嗚咽を殺して泣くアリスティアの頭を、レイモンドは優しく撫でた。



 そんな二人の姿に使用人達も泣いた。

 勿論、アリスティアの涙の本当の意味は知らないが。


 二人が困難な恋をしている事は知っている。

 あれだけ大好きだった皇子様との婚約を解消した理由も。


 それは全て彼女が魔女になったからで。


 それがどんなに辛かったのかと思うと、皆はただただ悲しかった。


 アリスティアを幼い頃から知る皇太子宮の使用人達は、アリスティアが魔女である事をちゃんと受け入れていた。


 それはグレーゼ公爵家の使用人達と同様に。


 そして……

 アリスティアを皇太子妃にする事に、尽力している主君を、皇太子宮の使用人達は応援している。


 皆もアリスティアが皇太子妃になる事を望んでいるのだ。

 聖女(タナカハナコ)が、皇太子宮にいた事に辟易していた事もあって。


「 お二人の恋を応援致しましょう 」

 それは皇太子宮の使用人達総出で決めたスローガン。



 ***



「 殿下が楽しそうじゃわい 」

「 早く正式に妃殿下になって頂きたいですわ 」

 ベッドで一緒に寝るか寝ないでギャアギャアと揉めている二人を、マルローとロザリーは目を細めながら見ていた。



 不思議なもので。

 婚約関係にあった時の二人には距離があった。

 それは五歳も年下のアリスティアには、流石に手を出せない事もあって。


 そんな事からも、不仲説が噂されたりもしたのだ。



 レイモンドがどれだけアリスティアを愛しているのか、どれだけ大事に想って来たのかは、マルローやロザリーは知っている。


 あの不可解な婚約解消も。

 彼女が魔女になったからだと知れば、その全てに納得をする事が出来た。


 あれだけレイモンドの事を好きだったアリスティアが、どんな想いで身を引いたのかと思うと胸が痛くてなった。


 そして……

 結婚式の発表の記者会見の日に、突然アリスティアが消えてからの、レイモンドの苦悩を見て来たのだ。


 困難な中、愛し合う二人がここまで辿り着いた事に、マルローとロザリーは感無量だった。


 昨夜の貴族達の反発を、マルローとロザリーも会場の隅で見ていて。

 アリスティアを、皇太子宮で監視をする事となった時には、二人でハイタッチをした。


「 殿下……ご立派ですぞ…… 」と目頭を熱くして。



「 お世継ぎ様が誕生すれば、世間の考えも変わるかもしれんのう 」


 あの()()()()()を活躍させる時が来たのだと、マルローはギラギラと燃えるのだった。


 世継ぎの御子を抱っこする事が、老い先短い爺の夢。



 二人はいつの間にかベランダに出ていて。

 仲良く寄り添って、夜空を見上げている後ろ姿があった。


 そこには確かに幸せな未来があった。


 二人に深く頭を下げたマルローとロザリーは、そっと部屋を後にした。















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― 新着の感想 ―
「 あの立・派・な・も・の・を活躍させる時が来たのだと、マルローはギラギラと燃えるのだった。」 たまぁに出てくる周りの方々のちょいと下世話な感じがなんとも好きです。 (他の作品の爺さま方とか)
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