第35話 裏切り
勤勉之勇者サルバン
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流石は傲慢が召喚した悪魔と言えるだろう。
酷く傲慢な発言だ。
そしてそれに実力が伴っているのだからタチが悪い。
だが今回はそれが仇となるだろう。
〖狂育〗を解除したのはいつぶりだろうか。
抑えられていた力が戻るのが分かる。
そうして増えたMPとSPを使い〖真装〗を発動させた。
同時にアルテミアとギーツもそれぞれ大技の準備に入る。
「行くぞッ!!!」
私の号令に2人が頷く。
「〖攻撃陣形〗」「〖多重詠唱〗オーバーブーストッ!」
知将マクギリスの味方の攻撃能力を高める補助スキルと、付与王バルザークの全ステータスを大幅に上げる魔術が発動する。
「ディバインズレイッ!!」「ジャッチメントアローッ!!」「ホーリーブレイドッ!!」
そして私の〈万浄聖剣〉から全てを浄化する光が放たれ、
アルテミアの魔弓からジャッチメントが矢となり放たれ、
ギーツの剣から清浄の力を纏った斬撃が放たれ、
それらが空中で1つとなり、より強大な聖なる力の奔流となり悪魔へと襲いかかる。
「ギィャァァァアアア」
悪魔の悲鳴が響き渡る。
その場にいた多くのものが悪魔の死を確信した。
だがその光の奔流を突き破り黒い禍々しい槍が飛んでき、アルテミアを貫き黒い灰へと変えた。
その後更に2つ同じものが飛んできた。
ひとつはマクギリスへ、もう1つはギーツへと放たれた。
マクギリスはソレに反応出来ずアルテミア同様貫かれ黒い灰になった。
ギーツは何とか防ぐも剣はくだけ持っていた左腕も肩から先が無くなっていた。
更に肩から黒い物がギーツを侵食していた。
「クハハハハッ時間切れだ。」
悪魔の背後に短剣を持った小さな影が見えた。
それは十天聖の1人であるナルクであった。
「……………!!!」
よせ!!そう思った時にはもう全てが遅かった。
悪魔がナルクの頭を鷲掴みにした。
「ぎゃぁぁぁぁ」
悪魔がゆっくりと手に力を入れナルクの頭を握り潰していく。
何とか助かろうと藻掻くが力が違い過ぎた。
やがてナルク体が脱力し悲鳴もやんだ。
そして悪魔が手を離すと頭部がグチャグチャになったナルクの死体が地面に落ちた。
なんという事だ。
十天聖がこの短時間に3人も殆ど何も出来ず殺されるとは。
「ひッ」
残った4人の十天聖のうちの1人であるラナーヴァが引き攣った悲鳴をあげる。
「死ぬのが怖いか?仲間を捧げれば助けてやるぞ?」
それはまさに悪魔の囁きだった。
無論十天聖であるラナーヴァがそんな誘いに乗るはずが無い。
そのはずだった。
「あっ…あっ…あぁぁぁぁッ!!!」
ラナーヴァはしばし怯えるような声を上げ、何かを決心したかのように斧を握り締めるとガガーランへと振り下ろした。
魔術師系統の特級職である壁王に就くガガーランではソレを防げず頭をかち割られ死んだ。
ラナーヴァは自身の斧とソレにより砕かれた仲間の頭部との間で何度も視線を往復させていた。
「何をやっとるんじゃ!愚か者がぁぁッ!!」
十天聖の1人である大僧正ダグラスがラナーヴァに〖神掌〗を打ち込もうとする。
だがそれは阻まれた。この事態を引き起こした悪魔によって。
「クハハハハッ己の身可愛さに仲間を殺すとは、まさにそのジジイが言うように愚か者だな。」
「貴様ぁ!どんな邪法を使ったぁッ!!」
ダグラスが鬼の様な形相で悪魔へ攻撃を仕掛けようとする。
「ダグラス!ここは下がれ!奴の相手は余がする。」
「貴様はまだ何か有るのか?」
「〖聖人化〗守護天使よ、我を守り、悪を滅せよ!!!」
私の体から聖なる光が溢れる。そして先程まで味方全体にバフをかけていた守護天使がそれを辞め私の元へと来た。
そして私へと〖憑依〗する。
「行くぞ、悪魔王ッ!」
私は〈万浄聖剣〉をギュッと握り悪魔王へと向かっていった。
それに応えるかのように悪魔王は6本の腕に黒く禍々しい魔力で出来た剣を生み出し、迎え撃った。
激しい攻防が繰り返される。
2000年という時間をかけた私の剣術に奴は対抗してきていた。
常に2本の腕で自身を守り、残りの4本で攻めてくる。
傲慢な発言と裏腹に奴の剣術は堅実だった。
やがて〈万浄聖剣〉が弾かれた。
同時に〖聖人化〗の副作用により視界がボヤけてきた。
腹から何かが込み上げ気付くと吐血していた。
胸に違和感を感じ見てみると胸から剣が生えていた。
不思議な点が有るとすればその剣が悪魔の持つ禍々しい黒い色で無かった事だろう。
その色は聖騎士に支給される聖剣の色とよく似ていた。
いや、全く一緒であった。




