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第36話 闇祓 ナルク

私は孤児院で育った。


14歳になったある日、何人かの白い服を着た人が孤児院を訪れた。


今思えばあの服はイーリス教の法衣だった。


彼らは院長となにか会話をすると、私達の方を見て暫くするとまた、院長と話をしていた。


孤児院の院長が私と他に何人かを呼び出した。


私達の引き取り手が見つかったらしい。


そう言って院長が紹介したのは白い服を着た人達のうちの1番年上に見えた人だった。


「みんな良い子にするんだよ。」


そう院長は私たちに優しく微笑んで声をかけた。


「これからよろしくね。」


白い服を着た老人も優しそうな笑みを浮かべそう言った。


私はこれからの生活に期待を抱いていた。


他の子達もそうだっただろう。


私たちが連れていかれた場所は教会だった。


服装から何となくそんな気はしていたので特に驚きはしなかった。


白い服を着た老人が女の人の像に祈るとその像の後ろへと手を回した。


すると僅かな地響きを伴ってその像が台座ごと前へとせり出してきた。


そこには階段があった。


「この下に今日から住むんだよ。」


白い服の老人が言う。


私の体はまるでその階段に引き込まれる様にして階段を降り始めた。


ふしぎな感覚だった。


階段を降りるとそこにはとても広い空間があり、私達以外にも同じくらいの年の子がいた。


そして白い服を着た人達が私を連れてきた老人以外にも何人もいた。


年齢も性別もバラバラだが、同じ白い服を着ていた。


「全員揃ったようですね。」


奥に居た若い男がそう言った。


「「「「「「はい」」」」」」


白い服を着た人達が全く同時にそう言った。


私はそれに少し不気味さを感じた。


その声に全く感情を感じなかったからだ。


見ると私を連れてきた老人の顔からは優しそうは雰囲気は消えていた。


「君たちにはこれからイーリス教の未来を担うための訓練を受けてもらう。まずはそこにある武器の中から好きなものを選びなさい。」


指をさしている方を見ると沢山の剣や槍、斧や弓など沢山の武器が置いてあった。


私は力が弱かったので短剣を選んだ。


皆が選び終えたのを見ると男がこう言った。


「では、次はあの扉の中に入ってね、ひとつの扉につき5人づつ入れ。」


私は言われた通りに扉の中へと入った。


中には布が被せられた何かがあった。


しばらくして5人揃った様だ。


すると扉が独りでに閉じた。


「あれ?あかないよ。」


興味本位で開けようとした子がそう言った。


他の子も扉を開けようとするが誰も開けられなかった。


私達は何とか扉を開けようとしていたがそれも長くは続かなかった。


なぜならその布が掛けられた何かからゴンッという音がすると、光る物を持った何かが飛び出して着たからだ。


その何かは私の隣にいた男の子の首に飛びかかった。


「えっ……」


男の子の首から血が溢れ出す。


よく見れば飛び出してきた何かは小鬼だった。


その手には血の滴る剣が握られている。


男の子は首を押さえうずくまってしまった。


「キャァァァ」


後ろの方にいた女の子が悲鳴をあげる。


男の子が死んでしまったのは誰の目にも明白だった。


「なんなんだよこれ。」


槍を持った男の子がそう呟く。


小鬼がこちらへと向かってきた。


男の子が槍を突き出すが、簡単に避けられ腹を刺された。


「がぁぁぁ…いてぇ、いてぇよォ」


腹を押さえ痛みに悶える男の子の様子を見ながら小鬼は笑っていた。


そしてその頭に剣を振り下ろした。


男の子の悲鳴がやんだ。


「僕は死にたくないッ!!」


剣を持った男の子が今しがた頭を叩き割って死んだ死体を見え笑う小鬼に涙を浮かべながら向かっていった。


「やぁぁぁッ!!」


しかし振り上げた剣は天井に当たり弾かれた。


男の子はヨロ付き尻もちを着いた。


男の子へ小鬼が剣を振るう。


「ひっ…助けて…」


泣きながら男の子は私と私の隣に居た女の子に助けを求めてきた。


直後恐怖に歪んだ頭が地に落ちた。


女の子何とかして逃げようと扉の隙間に持っていた剣を差し込みこじ開けようとしていた。


剣が折れた。そこへ小鬼がやってきた。


恐怖により女の子の足元には水溜まりができ部屋にアンモニア臭が漂う。


小鬼は剣を手放すと女の子を掴み地面に引き倒した。


それからのことはよく覚えて居ない。


気付いた時にはボロボロになった裸の女の子死体ととそれに覆い被さる首の無い小鬼の体と転がった首があった。


手を見ると血まみれの短剣が握られていた。


扉が独りでに開いた。


さっきまでビクともしなかった扉が。


出ると他にもいくつかの扉が開いており既に何人かの男女が居た。


中には体のどこかを切られ失っている子やそうでなくとも大量に出血し、助かりそうもない子もいた。


その後も何度か扉が開き人が出てきた。


殆どの扉からは1人か2人しかし出てこなかった。多くても3人といった所だろうか。


暫くして白い服の男がやってきた。


「初めの訓練は終了だ。」


まだ開いていない扉もあるのにそう言った。


「訓練ってなんだよッ!ふざけるなッ!」


剣を持った男の子が白い服の男に斬りかかった。


男の子は特に怪我もしていないようだった。


「せっかく生き残ったのに勿体無い。」


男の子が地面に叩きつけられ、肉や骨が潰れる様な音がして、男の子は赤いシミになった。


「それでは次の試練に移りますよ。」


そう言った男に誰かが質問をした。


「あの、空いてない扉がまだ有るんですけど。」


「あぁ、見てみますか?」


そう言うと空いていなかった扉が1つ開いた。


中には5人の死体があった。


うち4人は男の子で最後の1人は体型から女の子なのだろう。


そして頭が砕かれた女の子に小鬼が覆い被さり何かをしていた。


「穢らわしい。」


そう男が言うと女の子の死体と小鬼がさっきの男の子みたいに潰れ赤いシミになった。


「他の扉も同じようなものですよ。まだ見たいですか?」


誰も何も言わなかった。


「次の試練は3週間後です。あの扉はダンジョンに繋がっています。あっちの扉では転職ができます。それらを使い準備をしなさい。」


そう言い残して男は去っていった。


3週間後、人数は4分の1ほど減っていた。


「それでは2回目の試練を始めます。扉の中に入りなさい。今度は1つの扉に1人づつです。」


今度は小鬼が豚鬼に変わっていた。



私は前回のことから考えていた作戦を実行した。


私の人間としての尊厳と引き換えに生き残ることが出来た。


次の試練は全員で20匹の森狼の群れを倒せと言う物だった。


その後もいくつかの試練を経て、私達の人数は初めの10分の1以下にまで減っていた。


いつものように男がやってきた。


「次が最後の試練です。扉の中に入りなさい。」


扉の中に入ると中には何も無かった。


代わりにこれまでと違い前にも扉があったのだ。


しばらくすると扉が開き男の子が入ってきた。


彼はアンディ、この試練で私が仲良くなった子だった。


私達は顔を見合わせた。


「えっと、これは…」


私達が困惑していると頭の中に声が響いた。その声はこれまで指示を出していた男の物だった。


「試験内容は今まで通りです。殺しなさい。」


「なっ…なぁ、他にも何か方法があるんじゃ無いのか。」


「えぇ、そうかも知れない」


2人で考えたが何も無かった。


何も進まないまま2日が過ぎた。


食料は問題なかった。問題は水だった。


人間は水無しでは長くは生きられない。こうしていればやがて死ぬのは目に見えていた。


私は死にたくなかった。


夜になりアンディが寝た。


私はその無防備な首に短剣を突き刺した。


「がッ……」


アンディの目が見開かれ私へと手を伸ばす。


「ナルクッ……なん、で……」


アンディの目から生気が消え、私の方へ伸びていた手からも力が抜けた。


扉が開いたが私はアンディだった物に、私が殺したそれに抱き着き泣いた。


最もあまりの乾きで涙は出なかったが。


扉を出ると何人かが居た。


皆死んだ目をしている。


きっと私もそうなのだろう。


扉はそれから開く事は無かった。


私が最後だったようだ。


男が来た。


そして私達にこう告げた。


「君たちには異端審問官になってもらう。」


そう男が言うと背後から白い服を着た人が現れ何か魔術を私達にかけた。


その後私は異端審問官として、イーリス教に不都合な人物や、汚職を働いた者、危険な魔物などを狩り続けた。


そして私は運良く十天聖になれたら。


最も嬉しくは無かった。


私の心はあの日死んだから。





今日はバラスト都市連合があった辺りに出現した魔将を狩るらしい。


現れてそうそうに十天聖の1人が死んだ。


その後法王達が大技を放つ。


しかし魔将は死んでいなかった。


私は飛翔し、悪魔の背後に回りこみその首を切り落とそうとする。


視界が真っ暗になった。


いや、違う悪魔の黒い手に掴まれたのだ。


ジリジリと手に力を込める。何とか逃れようと藻掻くが全く歯が立たない。短剣を突き立てるも分厚い筋肉により阻まれた。


痛みがドンドン増していく。


気付くと私は悲鳴をあげていた。


そして私の意識は途絶えた。

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