アフターケアは契約で
やっと仕事が落ち着いたので少しずつ更新できたらなと思います。
もうすぐ、ロゼのモデルになったフィギュアが届く…!
ロゼとノヴァ(とミラ)はそのまま騎士団の詰め所に行くことになった。
ロゼとミラが予想していた通り、ノヴァは魔獣たちの群れがこの街に近づいたと知るや出撃しようとして全力で騎士たちに止められたらしい。
それに関しては、よくやったと心の中で褒めてあげる二人だった。
どうやらフォルトゥーナの騎士団長である髭の男は、ロゼたちを歓迎した。
「本当に貴方方のような方々がこの街にいらしたのは、幸運な事でした。これもフォルトゥーナの大樹の力なのかもしれませんね」
どうやら、この騎士団長も大概信心深い人物のようだ。
しかし、ロゼには気になることがあった。
「ここのエント…フォルトゥーナの大樹についてなんだけど…。これだけの魔力を生み出す大樹があるってことは、この街に魔法の使い手がいた筈なんだけど…」
エントは魔法の使い手がいなければ至らない。
だから、きっとこの街には魔法を使う人がいるのだと思っていた。
だが、騎士団の様子からしても、あまりそれの期待が持てない。
案の定、騎士団長は複雑な顔をする。
「数年前までは確かにこの街にはまじない師の老女がいたんですよ。代々ですが、老女の代で途切れてしまい…。弟子だった男もいたのですが、魔法に対しての意見だかなんだかの食い違いで結局彼は出て行って…。その老女も去年亡くなりましてな。以来、この街に魔法が使える人間は誰一人として居らんのですよ」
それで納得した。
まじない師は、どちらかというと魔法の使い手の中でも人々の生活に密着した職業だ。
魔獣に対しての知識もあまりないだろうし、それを騎士団に伝えることもなかったのだろう。
そして恐らく、先ほど倒した黒魔導士。
あれが騎士団長の話で出た弟子の男だったのかもしれない。
この街に強い魔法の使い手がいないことを知っていたからこそ、魔獣を嗾けたとも考えられる。
「ロゼ、そのエントは、魔法使いが近くにいないとどうなるんだい?」
ロゼやミラと話すことで、だいぶ魔法関係に明るくなったノヴァは、手を挙げて質問する。
騎士団長辺りは、ノヴァの質問の意図すら分からないだろう。
「そのうち、魔力を生み出すことが出来なくなってしまうでしょうね。そして、弱って消えてしまう」
「そうか…せっかくの大樹なのに、もったいないな…」
「そうだね。この街にまた魔法使いが来るか、大樹と契約者がいればいいんだけど」
魔法関係者が徐々に少なくなっている今、それも難しいだろうとロゼは言う。
すると、ノヴァが不思議そうな顔をする。
「ロゼ、その契約者っていうのはなんだい?」
どう説明すれば分かりやすいかな、とロゼが考えていると、ミラが助け船を出す。
『まぁ、私とリアナの関係ね。リアナは私という魔道具を所有する代わり、私に必要なだけ魔力を渡さなければならない。そのかわり、私はリアナの所有物になるっていう』
その説明に、ノヴァはなるほど、と理解する。
「それ、フォルトゥーナの大樹とロゼの間ではできないのか?」
ロゼも、ミラも、そして騎士団長もしばし黙る。
最初に口を開けたのは、ミラだった。
『あぁ、それいいかも。ロゼはまだ契約したことないし。この大樹自体は、元は木なんだし、そこまで魔力を必要としてない。私と違ってね』
「ちょ!!ミラ、軽く言うけど、契約って一人前の魔女になってからじゃないとしちゃいけないって前にママが言ってたんだけど!?」
驚くロゼに、ミラは気楽に「大丈夫大丈夫ー」と唖然とするくらいの呑気な声を出す。
『私から見れば、もうロゼは立派な魔女よ!それに、これからもドンドン才能伸ばせるだろうし!ほら、やってみなって』
そんなものでいいのだろうか、とロゼは思うが、他にいい方法も見当たらない。
ダメで元々という言葉もあるというノヴァの一言で、やってみることになった。
先ほど行った魔導書の店に事情を話すと、すぐに契約に関する書を持ってきてくれた。
今回は無料でいいと言った店主は「お嬢さんがここの主になったら面白くなりそうだ」と笑っていた。
やっぱり一言多いと思う。
ノヴァはにやにやと笑っている。
「契約、なんて見るのは初めてだよ。ちょっとワクワクするね」
「…他人事だと思って…。ノヴァ、前は少し魔法に疑念持ってたのに、もうすっかり慣れたよね」
「そうかな?」
そう言うノヴァはやっぱりなんだか楽しそうに見えた。
まぁいいや、とロゼは術に集中する。
「えーっと…我、ロゼッティ・ルボワが汝と契約し、汝に魔力を生み出す力を与える。この契約は、我と汝どちらかの命尽きるまで続くものとする。…貴方の好きなこの街を、どうか守って」
不思議と、ロゼにはフォルトゥーナの大樹の気持ちが伝わってきた気がした。
この大樹は、この街が大好きで、守りたくて。
でもその力が尽きようとしていることを悲しく思っていた。
だからだろう、まだ見習いであるロゼの言葉に応えたのは。
本来ならば、見習い魔女と契約を結ぼうとするなんて、ありえないことだ。
ロゼの言葉に応えるように、大樹はその大きな枝葉を大きく揺らした。
「…ふぅ。終わったー」
ロゼが大きく息を吸うと、その場にいたノヴァも、騎士団長も目を丸くしてた。
その様子に、ロゼが疑問符を浮かべる。
「私にも、分かったよ。今この場の空気が変わったことが」
ノヴァの言葉に騎士団長も頷く。
その言葉に、ロゼは「あぁ」と気付く。
正確には魔力を生み出す力が復活したからなのだが、魔力を感じることのできないノヴァたちには空気が変わったと感じたのだろう。
「これで大丈夫だと思う。契約者と所有物は離れても魔力で繋がってるから問題ないし」
つまりは、ロゼが死なない限り魔力の枯渇を懸念する必要がないということだ。
ロゼには、大樹がすぐにこの街の結界を張りなおすのが感じられた。
『やったねロゼ!これで一人前の魔女だよっ!!』
「いや、さすがにそういうわけじゃないと思うけど…」
それでも、やりきったという達成感をロゼの中に充満した。
「ま、魔女殿。それで、どうなったんですか?フォルトゥーナの大樹は、フォルトゥーナの街は…どうなるのですか?」
心配そうに騎士団長がロゼに問いかける。
「うん、大樹が結界を今直したから、もう大丈夫だと思うよ。例えば、今日みたいな魔獣が襲ってきても、大樹が守ってくれる」
よっぽどの力がある魔獣でない限り、この街に侵入することすらできないだろう。
その言葉を聞いて、騎士団長は心からホッとする。
「ありがとうございます!フォルトゥーナの街の住民を代表してお礼を申し上げます!!」
「お礼を言ってくれるのはありがたいんだけど、いざという時の為に魔獣と戦う術は身につけておいた方がいいよ…」
ロゼがそう言うと、騎士団長は笑って「そうですね!」と答えた。
何事も、最後は自分の手で守らなければならないのだから。
ロゼとノヴァ(とミラ)は宿へと戻った。
感謝してくれた騎士団長は、明日までに馬を用意してくれると言ってくれた。
なので、明日に向けて休むことにした。
宿の下の食堂で食事をしていると、ロゼの昼間の活躍を見ていた人がいたらしく、デザートを奢ってくれてロゼはホクホクだ。
「それにしても、凄いものを見せてもらったよ。やっぱりロゼは力ある魔女なんだね」
ノヴァは嬉しそうに言う。
よっぽどロゼの契約を見たのが楽しかったらしい。
ロゼは少し照れてしまう。
「…少しは、ママに近づけたかな?ママはもっと凄いんだから。魔の森全部の木と契約してるし、ミラちゃんとも契約してるし」
ロゼの目標はセビリアーナだ。
でも、その一歩を今日踏み出した。
「きっとなれるよ、ロゼなら。偉大な素晴らしい魔女に」
ノヴァがそう信じてくれるなら、ロゼは何にだってなれる気がした。
もしそうなれた、偉大な王になる友人を助けたい。
心からそう思った。
すると、ミラが急に『あれ?』と声を出す。
『その伝説級の魔女様からお呼び出しだ。ちょっといってるね~』
しゅん!と手鏡からミラの姿が消える。
ミラが消えている間、ロゼとノヴァは明日からのルートの確認を行うことにした。
北を目指すのは変わらないが、大きな山脈もあるので危険だ。
「迂回するルートもあるけど、そうなると時間がかかるな…」
「そもそも策もなしに、プレシアスに近づくのは危ないよね。…でも対応策ねぇ…」
ちょっとやそっと魔法を上達させても敵う気がしない相手だ。
それを無策で行くのは危険極まりないことだろう。
うーんと考えてると。
『たっだいまー。私がいない間、二人ともイケないことしてなかった?』
ミラが言うと、二人して首を傾げて「いけないことってなに?」と純粋な目を向ける。
『うっ!純粋すぎて心が痛いっ!二人とも真っ白でミラちゃんやり辛いっ!』
それはさておき、とミラは二人に話し始める。
『朗報だよ。セビリアーナが昔旅してた時に隠した魔道具とか、魔導書があるんだって!』
伝説級の魔女であるセビリアーナの魔道具や魔導書と聞いて、ロゼもノヴァも身を乗り出す。
『場所はなんとシャスター侯爵領!』
「へぇ。シャスター侯爵の領地に魔道具がね。でもいい案かもしれないね。魔道具は有効だし、魔導書があればロゼやミラの役に立つかも。少し逸れるけど、侯爵領からだったら山脈を超えずに北へ向かうルートがある」
答えが決まった瞬間だった。
ロゼも納得して頷く。
「よーし、じゃあシャスター侯爵領に向かって、皆で魔道具と魔導書探しに決定っ!」
翌日、三人はフォルトゥーナの街をあとにした。
フォルトゥーナの大樹が、いってらっしゃいというように
その枝葉を揺らして、彼らの旅立ちを祝福していた。
というわけで、侯爵領へ向かいまーす。
一応年内に1話更新できてよかった!!!




