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森には魔女が住んでいる  作者: もちもちもちこ
22/26

新しい魔法を使う時は、卸したての靴を履く気分と似ていると思う。

ものすごい難産でした。いや、どっちにしようかなぁと展開で悩んで悩んで風邪ひいてこっちになりました。

久しぶりに魔法をいっぱい使ってます。

でも地味な作業になるのはご愛敬。

















『魔獣だって!ロゼロゼ、行こう!私魔法試したい!!!』


「いや、構わないけど。魔獣って反射魔法リフレクトの意味あるのかな…」


そんな事お構いなしに、ミラはGOGO!!とやる気だ。

ロゼも結局観念し、人々が大樹へ逃げる中逆方向へ走り出した。

何人かがロゼを心配して声をかけようとするが、それを無視した形になる。

フォルトゥーナは古い石でできたの壁に守られている。

頑丈そうだが、如何せん古いもので、いくつか崩れている場所も見受けられる。

この物騒な時代でそれで平気だったのは、ひとえに大樹のおかげだろう。

だが、相手が魔獣では些か分が悪い。


魔獣は、ただの獣ではない。

その名の通り、魔を纏う獣なのだ。

魔法使いや魔女と同じで、魔力を持つ獣は、魔力に惹かれる性質を持っている。

それなのに、この街が今の今まで魔獣に襲われた形跡がなかったのは、偏に魔獣の数自体が少ないことにある。

元々はただの獣だったものが長く濃い魔力を受けてなるのが魔獣だ。

なので、結構魔女や魔法使いが自分たちの使役用に作ったりすることもあるのだが。

それが群れを成すほどの数がいるとはなかなか珍しいことだった。

しかも辺境の方が魔獣の被害は多かったりするのに、フォルトゥーナ程の大きな街の周辺で。


「ちょろっと行くだけだからね?きっと街在中の騎士団が出てるだろうし…」


ロゼが予想した通り、城壁にたどり着くと、ちょうど騎士団が魔獣退治へ向かうところだった。

ひょいっと木に登っていき、壁の向こう側の様子を見る。

馬に乗った騎士団の直線状に、確かに魔獣の姿が見える。

丘が黒く見えているのは、全て狼型の魔獣だろう。

いや、そんなことよりも。


「魔獣相手に、正面対決って…」


『…度胸があるというか、馬鹿正直というか』


ロゼとミラが思わず零したように。

狼型の魔獣は突っ込んできた騎士団をものともせず、彼らの足である馬に噛みつく。

馬が体制を崩したところで、騎士を引き剥がし、その牙をむける。

魔獣は魔力を持っているだけでなく、知恵がある。

それを知っていれば、真正面対決などするものでもないのだが…。

総崩れになっていく騎士団を見て、ロゼはため息を吐く。


「…知らなかったんだね」


『…で、しょうね。魔獣の数ってそんなにいないしね…。それにしても、知識位は入れときなさい。勉強不足だわ』


ミラは身も蓋もないことを言う。

まぁ、こうもあっさりやられてしまっては騎士団の意味がない、面目丸つぶれだ。


『だーかーら、私たちが退治しちゃお!だってほら、この街が襲われたらロゼたち困るでしょー?』


たしかに、この街が襲われたら今夜寝る場所はなくなるし、明日来る予定の辻馬車だって来なくなる可能性がある。

負けを悟った騎士団は、早々に撤退を始めていた。

ここにノヴァが言ったら間違いなく言うだろう。「情けないそれでも騎士か!」と。

正騎士以上に騎士であることに忠実な見習い騎士兼王子のノヴァは、今どこだろうか。

もしかしたら、あの騎士たちと一緒に戦場へ出ようとして、偉い人達に止められていきり立っているかもしれない。

というか、その想像がありありと出来た。


「ま、露払いくらいならいっか。この後ご飯もしっかり食べたいものね」


そう言って、ロゼはひらりと城壁から外へと飛び降りた。

魔獣に近づいて歩いていくと、敗走した騎士たちとすれ違う。

何人かはロゼに気付き、「お嬢ちゃん危ないから早く逃げるんだ!!」と叫ぶ。

が、もちろんロゼがそんなことを聞くこともなく。

丘全体が見えるいい位置に着き、魔力を練り始める。

大樹の近くということもあり、ロゼの魔力は通常よりも研ぎ澄まされているようだった。


「それじゃあ、とりあえず、火球ファイアーボールよ!」


自分で試しに作り出して、驚いてしまった。

いつもと同じように作ったのに、火球の大きさは普段の倍以上の大きさになっていた。


「うわぁ。フォルトゥーナの大樹様様だ」


濃い魔力が近くにあるおかげで、威力はうなぎ登りのようだった。

しかし、それは魔獣たちにも言えることで。


「よい、しょっと!」


大きすぎて投げるのが大変だったが、とりあえず前に投げられたので良かったことにする。

魔獣たちが一直線に走ってきていることもあり、見事火球は命中する。

煙が晴れると、黒焦げになって倒れている魔獣の姿が見えた。

しかし、それも大群の前では焼け石に水だ。

直接攻撃するのでは拉致が明かない。


「だったら…地震アースクエイク!」


ロゼが力ある言葉を放つと、魔獣たちの進行方向の地面が急に揺れ、まるで堀のような大穴を開ける。

勢いよく走っていた魔獣たちは止まることが出来ず、どんどんその大穴に落ちていく。

ロゼは小さくガッツポーズを作る。


『はっ!狼タイプの魔獣じゃ魔法使わないじゃない!私の魔法試せない!!』


ロゼの活躍を見て、やっと気付いたらしいミラに、ロゼは呆れ顔だ。

ミラが覚えた魔法は全て反射魔法リフレクト

つまり、相手が魔力を使った攻撃をしてこないと意味がないのだ。


「まぁまぁ。対魔女相手だったらこれ以上ないってくらいの魔法だよ。今度私と試してみよう」


そう言いながらも、ロゼは回り込もうとしている魔獣を見逃すことなくまた穴に埋めていく。

地味な作業だが、効率は良かったようで、1時間もしないうちに残った魔獣たちは撤退していった。

その代わり、フォルトゥーナの街の周りは穴ぼこだらけ(しかも中には魔獣の遺骸)だが。

生き残りがいるかもしれないし、焼却も含め、穴に火球ファイアーボールを投げ込んでいく作業を始める。

その作業を始めた辺りで、数人の騎士たちがフォルトゥーナの街から出てくる。


「こ、これは、君が、全てやったのかい?」


ロゼはコクリと頷く。

ここまで大々的にやって、嘘を吐いても意味がないと思ったからだ。

騎士たちは驚きの目をロゼに向けた。

やりすぎたかな、と少しロゼも緊張が走る。

その時だった。


「ロゼ!!!やっぱり君だったのか!!!」


白い馬に乗るノヴァは、間違いなく王子だった。

ちょうちんブルマで白タイツではなかったが。

それでも、自身の味方が来たことに、少しホッとする。

ノヴァに手を振ろうとした時だった。

少し遠くの穴が、光ったのだ。

そしてロゼとミラには、それが魔力の光だと瞬時に理解した。

それが、誰を狙っているのかも。


『ロゼ!!投げて!!!!』


ミラの指示に、ロゼは微塵も戸惑わなかった。

大切な手鏡を、勢いよくノヴァに向かって放り投げる。

手鏡は、勢いよく、弧を描き回転しながら飛んでいく。

何が起こったか、分からないというノヴァの顔が見えた。

それとほぼ同時だった。

穴から光が走り、それがノヴァへと伸びる。

それが魔法だということに、その場で理解していたのはロゼとミラだけだろう。

だから、魔法は届かなかった。


反射リフレクト!』


まるで手鏡が意思を持ったかのように、ノヴァの手に収まる。

そして、ぐいっと勝手に前に出たのだ。

穴から放たれた魔法は、手鏡へと吸い込まれ、そして言葉の通り跳ね返された。

跳ね返された先で、断末魔が響き渡る。

ノヴァを乗せた馬は驚いて急停止し、ノヴァはバランスを何とかとる。

ロゼはそのままその穴へと飛び込んだ。


「…魔獣の中に、黒魔導士がいたみたい」


ロゼが見下ろす先を、騎士たちやノヴァも急いで見る。

魔獣の遺骸の上に、事切れた男が横たわっていた。


「どうやら、今回の騒ぎの首謀者みたいね」


普段は数がそんなに多くなく、大きな街に来ることのなかった魔獣たちが一挙に押し寄せた理由が分かった。


「…お嬢さん、その、黒魔導士、というのは魔法使いと違うのかい…?」


騎士の一人がおずっと手を挙げてロゼに問う。

もう、この場で自体を誰が一番理解しているのか、自ずと分かったのだろう。


「黒魔導士というのは、魔法を使う人たちが使っている呼称でね。『理性をなくした魔導士』って言われてるの」


善良で、人々に溶け込んで暮らしている魔法使いとも違う。

自由気まま、思うままに生きているプレシアスやセビリアーナのような魔女とも違う。

魔力に溺れ、力に溺れ、人であることを忘れた者を、そう呼んでいるのだとロゼは答える。


「こいつが魔獣たちを魔法で操作して、フォルトゥーナの街を襲ったんだと思う」


でも、間抜けにも穴に落ちた。

だから穴に落ちなかった魔獣たちは黒魔導士の魔法が切れ、去っていったのだ。

でなければ、あそこまで統制のとれた動きを魔獣がするはずがない。

ロゼは黒魔導士をそのまま穴に残し、地上に戻る。

そのまま、火球を投げ入れた。

そしてノヴァに駆け寄る。


「ノヴァ、怪我なかった?ミラちゃん、ありがとう」


魔法が防げたことは分かっていたが、驚いた馬から落ちかけていたのが気になっていたのだ。

そんなロゼに、ノヴァは笑顔で「大丈夫だよ」と答える。


『ふふふふーん、私もなかなかやると思わない?ねね、そうでしょ?ロゼ、ノヴァ!!』


「あぁ、助かったよ、ミラ。ミラも魔法が使えたんだね」


『いや、さっき覚えたて。どうしても使ってみたかったんだー。機会があってよかったw』


「そうなのかい!?もしきちんと魔法が発動しなかったらどうなってたやら」


『大丈夫ダイジョブ!自身はあったから!!』


「根拠のない自信ね。でも、私も本能でミラの事投げたし。同じかも」


「…ロゼ。…まぁ、魔法に関しては君たちのことは信用しているけどね」


命のやりとりも、ミラにとっては「魔法を使えたいい機会」になるらしい。

思わずロゼもノヴァも苦笑する。

ともかく無事でよかった、と手を取りあって喜び合う。









騎士たちだけが、一体どうしたことやらと途方に暮れたようにその場に立ち尽くしていた。














この前から説明が多くなってすみません。

一応こんな感じで書き分けているつもり。


・魔法使い(魔法薬師・占い師・宮廷魔術師 等)→普通の人々と共に魔法を職業にしている人たち。善良。


・魔女→職業ではないが、魔法を使って生きている。自分たちで『魔女』と名乗ることでそう呼称されることが多い。理性はあるが、自由なので人に迷惑をかけることを考えない。性格がねじ曲がっている人たちが多い傾向がある。


・黒魔導士→魔力に溺れて理性をなくした魔法使いの成れの果て。思考は獣に近い。



こんな感じ。自分の設定を忘れないようにします。

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