白雪姫の物語のその裏
導入部分なので、しばらくは短めです。
チチチ…という小鳥たちの声で、目が覚める。
寝床からむっくりと起き上がった少女は、質素な鏡台の前で髪を梳かし、着替えする。
コンコン…と音のする居間への扉を開くと、自分より早く起きている母ににっこり微笑む。
「おはよう、ママ。今日も綺麗だね」
少女がそういうと、包丁を持った母親はその手を止め、振り返る。
確かに少女の言う通り、母親は美女と言われるくらい美しかった。
その母親は、うっとりとした顔で少女の髪と頬を撫ぜる。
「おはよう、私の可愛いロゼッティ。貴方こそ、本当にこの世の光を集めたかのように、可愛い わ…」
ロゼッティと呼ばれた少女はくすぐったそうに笑う。
「ありがとう、ママ。ご飯作るの邪魔してごめんね。鶏に餌あげてくるね」
そう言って、ドアを開ける。
「えぇ。もうすぐご飯ができるから、早く戻ってね」
走りながら「はーい」と返事をし、少女は家の隣の鶏小屋を目指した。
「おはよー、みんな。朝ご飯だよー」
少女は鶏たちに餌をあげ、ドアを開け放つ。
鶏たちの健康の為にも、昼間は放逐しているのだ。
餌をたらふくつつき、日の当たる場所へ向かう鶏たち。
この鶏たちは非常に頭がよく、放逐してもこの家の周辺から出て行こうとはしない。
そして、この場には狼や熊などは立ち入ることができない為、安全なのだ。
少女は小屋の掃除と卵の回収をし、家へ戻る。
ざわざわっと家の周りの木々が風で揺れる。
「んー…今日はいい天気―」
周辺の住人が、魔の森と呼び恐れている森の奥深く。
誰もが予想していないくらい穏やかな場所。
それが少女、ロゼッティ・ルボアの世界だった。
ロゼッティ・ルボア…ロゼは、この魔の森で生まれ、そして育った。
物心ついたころから、ロゼの周りには母と、家畜と、森の動物しか存在していない。
他の人間には会ったことがなかった。
だから、声にならなかった。
いつもの日課である山菜採りを終えた後に。
目の前に倒れている、銀髪の人間を見つけた時は。




