<4-5> 「年季奴隷と魔人国領事館 (後編)」
最新の本文修正日は2015年1月15日です。
魔人国領事館に入ってから行き成り試練というか試験のような事で試された俺ですが、突然現れた魔人の少女に身に覚えの無い事を言われても困惑するだけである。
内心ひょっとしてあのうなされた数日間に遭った事なのかと考えるのだが思い出すことは出来なかった。
その後のアラレスティ王国の代表としてやって来た皆がそれぞれの組織を代表して親書や書状を渡すのだが、当の王女殿下は文句一つ言わずそれを全て了承したようだ。
何か人族の要求を丸呑みしたようで包容力のある王女殿下なのか、それとも王女殿下側が飲めない条件しか出して来たのかは俺には分からない。だって、俺は年季奴隷。その親書や書状を見る事なんて叶わないよね?
その公式の謁見のような公務が終わると今度はジョルジョネ大尉が軍務に戻ると宣言して俺と大尉以外は先に帰るようです。
二人残された謁見の間? その客間に突然先程退出した王女殿下が舞い戻って大尉と昔話に花を咲かせる。その昔話に黙って耳を傾ける俺であった。
そんな二人の世界に俺は参加できないようです。懐かしそうに昔話を語る王女殿下、それに相槌を打つように頷いて見せたり反論をするのはジョルジョネ大尉のほうであった。
どれだけ時間がたったのか分からないが、その会話を邪魔するように入ってきたのは先程から王女殿下の付人のような事をやったり執事のように皆にお茶を入れていた人であった。
「主様、会食のご用意が出来ておりますので、お隣のお部屋にお越しください」
「もう、そんな時間かえ? じゃあ続きは会食しながらじゃな」
そういってジョルジョネ大尉の方に手を添えて王女殿下は大尉と共にこの部屋から出て行ってしまう。俺もご相伴に預かれると思ったのだが彼女達の後に付いて部屋を出ようとすると、例の執事のような秘書さんが俺を通せんぼする。
何となく二人の時間を邪魔するなと言った感じを察するに、諦めて彼らの時間が過ぎるのを待つしかないのかと、ため息を付いて部屋の椅子に腰掛ける。
すると、俺が椅子に座った事を確認すると廊下からその秘書さんが配膳台を押して来る。配膳台を俺の側まで押してくると、お茶とお菓子のようなものを入れた白い器を出して来て、これでも食ってろというような素振りを見せる。
朝から何も食べていなかったので、この際見た目は美味しそうなポテトチップのような薄く何かをスライスして揚げたようなお菓子を摘まんで食べる事にする。
口の中に入れて、やはりこれがポテトチップだという事を再認識する。仄かに塩味が効いていて久しぶりというか半年振りに向うの味にありつく事が出来て、貪るようにそのポテトチップを食べ、出されたお茶をすする。当然お茶はホット麦茶であった。
白い器が空になる頃、なんだか腹が膨れて人心地がつく。お茶を飲み干し周りを見渡すと今食べた物を運んで来た秘書さんや王女殿下が入って来たと思われる扉が壁から消えていた。
それどころか先程まで見えていた外の景色を見る為の窓枠も無くなっていて、どうやら閉鎖空間というかこの客間に閉じ込められたらしい。辺りを見回すと壁を打ち破れそうな物は無い。
それになんだか部屋が少しずつ狭まっているようで目の錯覚かと思ってしまう‥‥‥。目蓋をこすって、再び目蓋を開けると、どうやら違うらしい。確実に少しずつであるが部屋というか空間が狭くなってきている。ぼやぼやしていると俺はこの部屋の中で潰されてしまうのか?
そんな状況にオロオロしてしまうが、ここに来た時の事を思い出す。またあの王女殿下が俺に見せているものなのかとため息が出てきたが、今度はあの視線が向ってくる事は無い。
視線が無ければ先程のように彼女を捜す事は出来ないように思えて再びオロオロしてしまう。思わず探査術を使って先程感じた視線と同じようなものを探ってみる事にする。
視線が感じられない以上、それしか手は無いように思えてワラにもすがる思いで探査術を使う為に精神を集中する。しかし、その間も俺が居る空間が狭くなってきているので立って精神を集中する事は出来ない。頭上に余裕を持つ為、床に座って胡坐をかいてまるで禅僧のように精神を集中して探査術を使う。
ところが、あの莫大な存在感というかそういったものを王女殿下自ら抑えているようでそれらしい物が中々感じられなくて額から汗が出てくる。
そろそろ5分ぐらい経ってきそうで時間が刻々と迫ってくる。何が迫ってくるのかというと、俺の探査術の時間は短時間である。最初は5分も持たなかったが最近というか誘拐された時はやることが無いので探査術の訓練ばかりやっていて、僅かだが術の発動時間は延びている。
それでも最大10分以内であり範囲は竜巻以来10mと変わっていない。そう考えると、王女殿下は少し俺に意地悪してぎりぎりの10mぐらい離れた所にいるかもっと意地悪してそれ以上離れているのかもしれない。
はたまた迷惑な話であるがきっとまた俺を鍛える為に遊んでいらっしゃるのだよね? 多分彼女を見つけると突然会食している所の場面になってまた俺一人奇声を上げて驚くという落ちなのか?
途中そんな雑念が入ってしまい集中できなくなる。ぶるぶると頭を振るうと回りは先程より狭い空間になっているではないか。段々焦って来て思うように集中できなくなる。
普通の人間は焦ると焦るほど意識を集中とうか神経を研ぎ澄ませる事が出来にくくなってくる。当然凡人である俺もその一人である。
まだ空間が狭まっているだけマシじゃないか? これが直接俺の命に危険があるという訳じゃないと勝手に思い込み足を崩して横になって、いつもやっているように寝ながら精神を集中する事にする。
そんな中も段々と俺が居る空間が狭くなってきているのだが‥‥‥。今なんだか足の裏に壁が付いた感覚がしてくる。すると、ヅルヅルと床を押される間隔がしていよいよやばいのかと不安が頭の中を過ぎる。
そんな痛覚というか感覚を無視するように探査術に集中するように意識をそこに持って行く。すると、僅かだが王女とは別の何かが居るというか存、在するというかそんな感覚がして来る。何となく水面が揺れる感覚がしてそこに何かが居るようだ。
更に神経を研ぎ澄ましてその水面が揺れた所をアクティブの方で探ってみるとボヤットした輪郭が浮き上がって、それをまるで手で触って確かめるように探査をしてみる。
すると、突然その人物に触れて確かめたような感覚がしてきて目を開くと目の前にあの秘書さんが立っているではないか。今、彼女の体を触っていた手は妙に暖かくて柔らかい所に触れていた。ついモミモミしてしまい、慌ててその場で言い訳じみた事を言ってしまう。
「なっ、な、いや、その。別に疚しい気持ちじゃないですよ? いや、そんな気持ちはこれっぽっちもありません!! その探査術の一環でして偶然触った所がそこだっただけで。まさに手探りの状況でして‥‥‥」
そんな自分の胸をも揉まれた彼女は視線を横に移して誰かに訴えかけるような素振りを見せて、ここでの落ちが見えてくる。彼女に釣られて俺も彼女の視線の方向を見ると王女殿下とジョルジョネ大尉がまじまじと俺達二人を見ている所であった。
「なっ、な、何を?! 何をやっているのかね君は?!
‥‥‥。あ、いや、その、なんだ。またやったのですか王女殿下?!」
そういって王女殿下を問い詰めるように言い放つジョルジョネ大尉。当の王女殿下は我関せずでテーブルの上に載っている料理を食べていた。食べている途中でやめていた料理を片付けると、徐にナプキンのような布切れで口の周りを拭いて話し出す。
「妾は感知せぬ事じゃ! そやつがリョウジを試す為に勝手にやった事であろう。それに、何時までそこに手を添えているのかリョウジ殿は?」
初めてというか彼女の質問に気が付いて慌てて今迄触っていた手を引っ込める。嗚呼、もうちょっと触っていたかったとは決して口に出せないどころか、心の中で考えては駄目だと自分に言い聞かせる。彼女達は俺の心の中まで見通せるのだからね。
「一々、そなたの考えている事に腹を立てるほど狭量ではないぞえ? それにそのラシャネスの胸の触り心地は良かったか?
彼女は妾の侍女であり秘書である。生まれながらにしてその姿であるが妾は実際に手を触れた事がある訳ではないのでその感覚に付いて今一分からないのだが‥‥‥」
そういって俺に微笑む王女殿下は皮肉めいた事を言ってくれる。ばつが悪そうに俺はラシャネスさんに今まで胸を触っていた事に頭を下げて侘びをいれる。
侘びを入れながらも王女殿下の話しを聞いていると、そのラシャネスさんが俺にジョルジョネ大尉の横の席を勧めてくれて同じように食事というか会食を勧めてくれる。
何か先程とは打って変わったような待遇に驚いてしまい、手をつけていいのか悪いのか俺には判断出来なくて、ついジョルジョネ大尉の顔を覗いて確認を取ってしまう。
まるで飼い犬が飼い主に餌を食べていいのか聞いているようで、なんだか情けなくなってくるのだけど。今、対峙している人物が魔人国の王女殿下である。
この身分制度がある世界でそんな事、年季奴隷である俺が一緒に食事をしても良いのであろうかと疑問を持ってしまう。
しかし、大尉が口を開く前に王女殿下が一言「さっさと食え! 料理が冷めてしまうではないか!」と、言ってくれたのでありがたくテーブルの箸置きに置いてあった箸を取って「頂きます」と、いうと料理に箸を付ける。
テーブルの上に載っていた料理は和洋折衷の和食のようであり洋食のようなものであった。懐かしいハンバーグやナポリタンのようなものまである。何かここに来て俺が食べたかった物ばかりでどれから食べて良いか迷ってしまう。
しかし、全部一人分に取り分けてあるのでなくなる心配はしなくていいのだと自分に言い聞かせて懐かしくて食べたかった物を口に入れて後悔してしまう。
口にの中に入って来た物はハンバーグの見た目で味は何か違うものであった。ナポリタンも同じように美味しいものだけど何かが違う。
そんな事で他の料理も次々と手をつけて行くのだが確かに変な味やまずいものでは無く、それなりに美味しい物ばかりであるのだが感覚的に受け付けないというか驚いてしまってどう対処すれば言いのか分からないといったほうが正解かもしれない。
そんな困惑した俺に文句めいた事を言う王女殿下。
「そんな事言ったって仕方がなかろう!! そなたの記憶には見た目のこれらの料理が強烈にあったのだけど、そなたは料理をしないから作り方が分からないようで、どうやって妾達に作れというのだ? それなりにこちらの料理を参考に作るしかなかろう?!
それに材料だってそなたの住んでいた所の物とは違うからの! でも、味はよかろう?! 妾が食べ歩いた店に味を参考にしたのだからな! 残りも冷めない内に食ってしまえ! 遠慮する事はない。今のそなたは妾の客人だからな!!」
そういって彼女はまた自分の料理に手をつけてむしゃむしゃと食べ始める。先程の威厳があった王女殿下とは違い、今はただの普通の少女に見えるのはあの例の実態のない彼女だからかは分からない。それは美味しそうにあの時と同じように料理を食べていた。
まあ、確かに見た目と味は一致しないが今迄食べていた。主に人質になっていた時の事を考えればはるかに美味しい物にありついているのだから文句は無いよね。
そう思うとこれはここの世界の別な美味しい料理なんだと自分に言い聞かせて出された料理を楽しむように平らげる。その様子に満足したのか王女殿下は何か頷いてまたジョルジョネ大尉と昔話をしながら会食は進んで行く。
最後に空になった皿が下げられると例のホット麦茶が出てきて一息つく。
「あの~、それで先程の部屋というか空間は何だったのでしょうね? あっ、王女殿下は察知というか感知していなかったでしたか?」
「嗚呼、あれはラシャネスがやった事だから今一意味は分からないが。どうなんじゃ、ラシャネス?」
「はあ、主様。このリョウジ殿が道中探査術をしっかり練習と言いますか修行をしていたか確かめたのであります。一歩間違えば廃人になっていたといえば宜しかったですか? このお方は何か追い詰められないと、その力というか術が使えないようでしたので試してみました」
「それでどうだったのかえ?」
「はあ、ぎりぎり合格というか、あの私めの胸を触った事でお分かりでしょうに、主様」
「ふ~ん。それでラシャネスの胸を揉んでいたのか。役得だったなリョウジ!!」
いやいや、皆サラット流したけど一歩間違えれば廃人になっていたといったよね? 俺の聞えた耳がおかしかったのか? じゃあ、あのままあの空間に閉じ込められたままなら、そのまま潰されて廃人になっていたということか?
なんとも恐ろしい試練というか試験をしてくれたものだ。昨日までのハルーツン閣下が行っていた演習が児戯に等しいくらいだよ!
冷や汗が出てきて肝を冷やしたが彼女達には俺が思っていた事が分かるのでこれ以上は考えない事にする。命というか、そういったものをかけてまで俺を試して、どうやら俺はその賭けに勝ったというか次のステージに進む事を許してくれた事を逆に感謝しなければならないようだ。
そんな事を思っているとその通りだという風に王女殿下は俺にウインクする。その仕草にジョルジョネ大尉は何が有ったのかと不思議そうな顔をする。
その後はとりとめも無い話をして「さて準備をするか」という言葉を吐いた王女殿下が席を立つと、同じようにジョルジョネ大尉も席を立つ。一体何事かと思っていたが俺も釣られて席を立つと彼女達の後を付いて行く。
部屋の扉を開くとバスケットコートぐらいはあろうかという広い空間の場所に出る。一瞬外に出たのかと思ったが違ったようだ。その部屋には山のように積んだ旅行鞄というか、海賊映画になんか出て来そうな宝箱のような箱が山積みされていた。一体ここは何の部屋かと思うぐらいであった。
その荷物は大きく分けると三つに分かれているようで三列に渡って置かれていた。ジョルジョネ大尉はため息を付いて、俺にプイホンさんが持って来たあのスーツケースのような旅行鞄を渡すと、魔技箱のように登録を行えと命じてくる。
そこで初めてこれがあのアミュネス少尉が持っていた様な持ち運び可能な魔技箱だと気付く。登録を済ませると明らかに外から見た大きさと鞄の中の空間の奥行きが違う現象を目撃してしまう。
あの荷馬車の魔技箱とは違い真っ暗な空間では無かったので、それが分かったのだけどね。一応は鞄の底が見えて何処かほっとしたというか‥‥‥。それでも明らかに外側とは違うので驚く対象なのだけど‥‥‥。
すると、ジョルジョネ大尉の選別が始まるようだ。まず、最初の箱の山は衣装ケースのようで、様々な衣装が箱から出てくる。中には靴なんかも混ぜてあってハイヒールやサンダルのようなものまで出てくる。
「あ~、こんなに用意して一体何年分の衣装を買ったのですか? 勿体無い。一応これは文句ではありませんよ?! あくまでも私個人の意見ですからあとで嫌がらせをしようとか思わないでくださいね。当然王女殿下は分かってらっしゃるでしょうが‥‥‥。
これとこれぐらいでいいです。下着数組に人前で着るのはこれぐらいでいいです。靴に至っては歩いて旅をする訳じゃないのでこの服に合うもので宜しいですよ。
後は足りない物を現地にて調達するか、私に言ってくれれば軍や組合が調達して魔技箱で送ってくれます。それに第一あなた方に服は要らないでしょ? 必要に応じて姿を変えられるのだから‥‥‥」
そういうと大尉が選んだ衣類を俺に渡して魔技箱の鞄に詰めろと命令をする。彼から受け取った衣類を見て俺は首を傾げてしまう。どう見てもサイズが合わないように思えるのだが‥‥‥。まさか魔素道具見たいに自在に伸ばしたり出来るのか?
つい下着を手に取って眺めてしまう。
しかし、いたって普通の木綿のかぼちゃパンツであって俺が履いているパンツと同じ素材の物であった。その様子を王女殿下やラシャネスさんに見られてしまい顔が赤くなる。急いで思っていた疑問を払拭して箱詰め作業に戻る。
あらかた衣装関係を選び終わると、次の箱の山に移る。その間、王女殿下は文句を言う事無くジョルジョネ大尉の言う通りに選んだ服を眺めていた。真ん中の山は書籍のようで箱を開けた大尉がまたもやため息をする。
「一体何冊持っていく気ですか? まさか王立史書館ごと移動なさるつもりですか? せめて10冊程度にしてください。こればかりは私が選ぶ訳には行きません。ご自分で10冊程度選んでリョウジに渡してください」
すると、王女殿下は膨れっ面を作りブツブツ文句を言いながら渋々箱を漁って20冊ほどの本を選んで持ってくる。持ってきた本はどれも付箋のような物を挟んであって細かい字がびっしりと書かれている。
渡された本の一冊を手に取って見ると、驚く事にその細かい字を含めて本の題名まで日本語に見えてくるではないか。嗚呼、翻訳首輪の力を借りなくてもよくなったようです。
こんな事ならきっと書くほうもそういう事なのだよね? 書いた文字は現地語になってるし書かれた文字もきっと俺には日本語に見えるのだよね? これなんていうバイリンガル? この機能だけは地球に持って返りたいな‥‥‥。そもそも帰れるのか俺?
彼女が持ってきた本を手に取ってそんな事を考えていた俺とは違って、俺からその本を取り上げたジョルジョネ大尉はぱらぱらと本を捲っては少し驚いた感じに話し出す。
「なっ! これはご自分で書かれた物ですか? まあ、細かく書かれていて‥‥‥。何々‥‥‥。馬車町料理屋見聞録? なっ、これ全部見聞録ですか?
こんなに書かれていますが私達が寄らない町や村まで書かれていますね‥‥‥。まあ、宜しいでしょう。これ全部詰め込んで差し上げてください」
何とかジョルジョネ大尉の許可が出て情けない顔をしていた王女殿下の顔がぱっと明るくなる。20冊も詰め込むのか重たくなってしまうと一瞬思ったのだけど、この鞄が魔技箱だと思い出してほっとしてしまう。
そこでやっと不思議な事が目の前で起こっていた事に気が付く。選別が終わった箱の山が目の前から消えていたからだ。先程まであの山のように在った物が視線を外した途端に消えているではないか。嗚呼、さすが神様。なんでもありである。この際深く突っ込むのはよそうと心に決める。
最後の箱の山の前に来ると次は何が出てくるのかと逆にわくわくしてきて楽しみになってくる。箱を開けたジョルジョネ大尉が驚いた声を上げる。
「なっ! なんじゃこりゃ?! ‥‥‥。王女殿下? これは一体何のつもりですか?」
そういって大尉が箱の中から布着れというか革袋のような物を取り出して、中身を出して王女殿下を問い詰める。袋の中からは先程あの空間で食べたポテトチップのようなお菓子が出てきた。不思議な事に袋から出したのにあの柔らかいポテトチップは砕かれる事無く形を保っているではないか。それを口に入れてポリポリ食べながら説教が始まる。
「あのですね、王女殿下? ‥‥‥。食べものは途中でというか時間が経つと腐敗しますよ? 魔技箱に入れたらいいかもしれませんがこんな量を持って行く事は出来ません。申し訳ありませんが食べ物は無しでお願いします。一応、朝晩中隊でお食事は出ますので皆と同じ物を食して頂きます。いいですね?」
これまた哀しそうな顔をする王女殿下に俺は哀悼の意をささげてしまう。彼女は黙って頷いて右手を横に払ったかと思うとその食べ物が入った箱が消えてしまう。最後に残ったのは箱が4つほどであった。
最後の箱には何が入っているのか気になったが今まで見て来た物の事を思うと最後に残ったのはやはり先立つ物だよねと勘ぐってしまう。
案の定、大尉が箱を空けて一瞬驚いた声を上げる。箱の中びっしりに現生が入っていたからだ。最初に明けたのは金貨がびっしり入った箱であった。まさしく宝箱のようであった。
その眩しさに思わず目を瞑ってしまう俺であった。
次話へつづく
次話は3/25火曜日の夕方に投稿する予定です。




