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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第4章 振り回される年季奴隷 》
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<4-3>  「ようこそ貿易都市ゴルムディアへ!!  (後編)」

最新の本文修正日は2015年1月14日です。

 二階の大広間で居並ぶ御偉方を前にして普段では考えられない堂々とした発言をしてしまった俺ですが、なんだかハルーツン閣下に上手く乗せられた感じになったようです。


 彼らの試練というか試験に合格しなければなんだか何処かに幽閉されていたようで背筋が寒くなる。取り敢えずはゴルムディアから南部に進む事を了承されたようで幽閉や軟禁される事無く前に進めそうです。


 このまま進めなければやはり幽閉か軟禁状態で一生過ごさないと駄目だったのかな?


 まあ、今もその軟禁に近い待遇なんだけどね。奴隷旅団所属中隊に居るという事はそういうことだと思う。



 最近は現実でもこちらの人に振り回されているのに、寝ている間の夢でもこちらの関係者に振り回されて心休まる日々はもう来ないのだろうか?


 夢に出てくる魔人族まびとぞくの王女様とやらに文句を言ってやりたいのだが、相変わらず夢の内容を思い出せなくなんとも歯がゆい俺であった。






 俺の検査の為にやって来たミリクナ医務長とマイネンス医務長補佐の二人はお互いの顔を見て俺に何かを言おうか言わないか迷っている様に見えてしまって、困惑する俺は彼女達が話してくれるのを待つ事しか出来ない。


 暫く間というか言葉に詰まった感じで沈黙が続き、部屋に勢いよく入ってきた人物に驚いてしまう。




 『おう! リョウジ、久しぶりだな!! 元気にしてたか?!


 さて、出かけよう! こんな所はもう沢山だ!』




 そんな言葉を言い放って入って来たデウシー先生の後ろにはしっかりとボフボーニャさんが付いて来て、デウシー先生の服の端を掴んで文句を言い始める。




 「ほら、悪い師匠! 行きますよ?! 大尉も用意してますし。それに国王陛下のご命令なんですから諦めてください!!


 ‥‥‥? あら、お前最近見ないと思ったらここにいたのか?! お前も直ぐに支度しろ! 直ぐに魔人族まびとぞくの王女殿下にお目通りすることになっている」




 なんだか、一応は彼女より年上なんだが、すっかり格下に見られて「お前」呼ばわれしてしまい、唖然とするのだけどさ。確かに彼女には嫌われていたけどそこまで言うか普通‥‥‥。


 まあ、確かにこちらは奴隷であちらはひら宮廷魔素術使い筆頭で偉いのかもしれないけどね。それに準備といわれても持っていくものは無いしサンダルを履くだけである。


 サンダルを履き、紐を結ぶと何かばつが悪そうな医者の二人は御互いため息をして俺を部屋から連れ出して外まで連れて行く。それに、いやいやながらもボフボーニャさんに服を引張られてデウシー先生も後を付いてくる。歩きながら彼女の様子を見ていてふと思う。今日も朝飯は当たらないのね‥‥‥。


 そこで、ハルーツン閣下の言葉が思い出される。明日にならなければその日の事は分からないという事を‥‥‥。その通りになってしまったね。




 外には指揮車が二台並んでいていて、彼女等は後ろの指揮車に乗り込もうとする。俺も同じように乗り込もうとすると、ミリクナ医務長に「貴方は前の指揮車よ」といわれてしまう。


 仕方なく前の指揮車の扉をノックすると顔を出したのは以外にもプイホンさんであった。なんで彼が指揮車に乗っているのか分からないのだけど、久々に会ったというのに彼は俺に抱擁する事無く扉を開けた後、直ぐに前の席に座ってしまう。


 彼が抱擁してくると思っていたので心の準備をしていたのだけど‥‥‥。思わず俺から抱擁しそうになったが紙一重で押とどまる事ができた。


 プイホンさんが座った前の席には何時ものようにジョルジョネ大尉が座っていてあのにやけた顔を晒している。あっ、にやけているというよりは引きつっているといった方が正解かもしれない。


 「あの~。これからどこに向うのでしょうか?


 ボフボーニャさんの話しでは魔人族の王女様に会いに行くという話のようなのですが‥‥‥。行くのですよね、大尉?」




 「ああ、向うのだけど、ちょっと時間がかかるというか。君に説明しなければならない事がある。先ずはプイホン君なんだが君が誘拐された事は知らない‥‥‥」




 そんな事を行ったら目の前に居るプイホンさんにも分かってしまいそうなのだが、大尉の横を見ると何時の間にか彼はいびきをかいて椅子の上で丸くなって寝ているではないか。再び大尉に振り向くと話し出す。




 「今話す事を聞かれるとまずいので少し彼には寝てもらっている。ようやく薬が効いたようだな‥‥‥。まず、王女様には実体が無い」




 行き成りそんな事を口走って何を言っているのか分からない。俺がそんな言葉にぽかんと口を開いて呆けていると大尉が話し出す。




 「あっ、いや、その、なんだ。言い方が悪かった。俺も最初に会った時には自分の妹の生き写しで驚いたものでね。自分の都合がいいようにしか見えないというか、見る人によって違ってくるといった方が正解かもしれない。本当の姿は見せた事が無いらしい。


 記録に残っているものだけでも数え切れないほどの人物像があって。一緒に謁見した人物によってもまちまちなんだ。会いに行った者が恐れを抱いて行けばそれなりの威厳があり恐ろしいい雰囲気の人物になったり。


 そのなんだ、疚しい心根で行くとその通りの絶世の美女になって見たりと。そんな感じで実際の彼女の真の姿を見たものは居ない。あの救国の勇者ですら彼の理想の女性に見えたという言い伝えが残っているぐらいだ。まあ、救国の賢者は会った事が無いらしいけどな。


 一応は前に君に話した姿が定まったというか基本的な魔人族の姿であるが、そんな事で君の心の中を覗いた彼女が君の心に思っている通りの姿で現れるという事だけを話しておく。だから、その、なんだ。その姿に惑わされる事無く対峙してほしい」




 今更驚く事なんかありすぎて今一ピンとこないのだが、何となくあの出来事の事を思い出して納得してしまう。


 俺をこの屋敷から連れ出して飯を奢ってくれた時の姿の事である。焦点が定まらないように食事中に色んな年代の姿の彼女が見えたのはどうやらそういう事らしい。それほど強い力を持つ存在ということか‥‥‥。あっ、そうだよね。この土地の神様だからね。


 「はあ、なんとなく思い当たる事があったので納得しましたが、それでこのプイホンさんは何の為に連れてきたのですか?」




 「ああ、彼はちょっと鈍いというか、森人や森猫を見ても怯まないというか。まあ、そんな理由で荷物持ちとして連れてきた。それに彼は君の生徒であるからちょくちょく君に顔を見せるので、その彼女に面通ししておかないとな。怯えるようだったらまた対策を考えないといけないし」




 まあ、確かにクワビムさんやメルディム護衛分隊長を見ても畏まることは無かったし、あのボグフムさんに盗み食いの犯人だといってクワビムさんを売った実績があるからね。確かに岩猫なんかは彼女等に平伏していたし、プイホンさんはそこらへんは鈍いのかもしれない。




 「ひょっとして、俺、いや私の為ですか? その為に彼が危険な目に会うなら私も少し考えますが。こんな私の為に彼が危険な目に会うなら自重しますよ?」




 「嗚呼、それは考えなくていい。この奴隷旅団所属中隊に配属された時点で危険は何時も付き物だ。それにそれは彼も十分に分かっていると思う。まあ、この中隊に居る限り彼も俺の家族だからそんな危険な目になんか遭わせるはず無いだろ?


 自慢じゃないが、俺が配属された中隊で病気以外で亡くなった奴は皆無だぞ?!


 そういう事で今回プイホン君を連れてきている」




 「分かりました。で、このゴルムディアの町の中に彼女の屋敷があるのですか? 

 結構走っている時間が長いように感じるのですが」




 「ああ、ゴルムディアから少し離れている。彼女からしたら瞬きするまでも無い距離なんだが、昔の偉い人は一応は国交を結んだがやはりその存在が恐ろしいのか無駄というか。まあ、そういうことで少し離れている。


 何というか、君の夢にまで出てくる存在なので君を偉く気に入っていると思うよ? 気に食わない存在ならきっと今回の謁見も叶わなかったと思うし。そう硬くなる事は無い」




 嗚呼、余計な入れ知恵のお陰でなんだかそわそわして落ち着きがなくなってしまう。日本あっちに居た時もそうだが初めて会う人物には緊張してしまう。


 あれ? 初めてじゃないか。この町に来た時に会っているからそれほど緊張する事ではないと思い直す。しかし、先程の話を聞いてしまったので一体彼女はどんな風に見えるのか気になってしまう。そんな気を紛らわせる為に大尉と話をすることにする。


 「そういえば、大尉? 俺が居ない間、彼に勉強を見る事が出来なくてなんだか悪い事した感じなんですが」




 「それは心配ない。彼の中では君が居なかった間も君に勉強を教えて貰ったという記憶というか暗示というか。君に成り代わったペルジャーネ筆頭が君の代わりにプイホン君に勉強を教えていたようだ。


 だから、プイホン君の中では移動日に君に勉強を教えて貰った記憶は残っていると思う。それに内の隊の連中の主な物にもそういう事にして貰っているから、隊に戻っても心配しなくてもいいぞ!」




 そういう訳であったか。どうりで普段と同じ感じのプイホンさんであったのか。余計な事をしてくれて‥‥‥。俺としては久々に会った彼との抱擁を期待していたのだけど。


 そんな話を聞いてしまった為、その後の会話が長続きしなくて無言のまま指揮車は目的地に着いたようだ。どれだけの距離を指揮車が走ったか分からないが1時間ぐらいは走ったと思う。指揮車の中の時計で二刻経っていた。



 目的地に着いてからも暫く待たされて、何時まで経ってもジョルジョネ大尉は降りようとしない。その内、先程まで寝ていたプイホンさんが目を覚まして大きく欠伸をすると立ち上がって背伸びをする姿を目撃してしまう。久々に良い物を見せてくれた彼にお礼を言いたい。


 すると、指揮車の壁の覗き窓からメルディム護衛分隊長が顔を覗かせてジョルジョネ大尉に目配せする。それが合図だったのか、大尉は指揮車の扉を開けて俺に降りろと促する。その際に壁の魔技箱からまるでスーツケースのような旅行鞄を取り出すとプイホンさんに渡して彼に運ばせるようだ。


 プイホンさんでも持てるようなのでそんなに重たいものではないようだ。一体何の為に使うのか分からないがその鞄を持ったプイホンさんの後を着いていくように俺も指揮車から降りる。



 外に出ると、これまた立派な門構えである。綺麗な装飾がしてある金属製の門扉は格子状の頑丈そうで思わず眺めていると、門扉の横の受付所みたいな所に大尉らが歩いて行くので俺もその後について行く。


 すると、後ろの指揮車からもミリクナ医務長を筆頭にマイネンスさんやペルジャーネ先生とボフボーニャさんが歩いてくる。同じように受付に並んで左手を出して受付に見せるではないか。順番に見ていると左手の例の紋章を確認して本人確認をしているようだ。



 結構厳重な警備というかまるで海外旅行に行く時に受ける入国審査のようである。ああ、そうか。ここからは魔人国まびとこくの領地か。


 確か領事館と言っていたような。大使館と同じだよね? 大使館も敷地というか建物内は外国の領土と同じ扱いだったような。変に感心してしまい自分の番になって少し声が上ずってしまい、受付の係り官に怪しまれた感じになってしまう。


 しかし、待っていた大尉が係り官に書類を見せると素直に俺は通される事になる。その間も俺に対して怪しいんでいた係官は皆が受付が終わるまで終始俺に視線を向けていた。よほど不審者に見えたのであろうか?




 「ったく。行くぞ、リョウジ! 君ね、その髪の色が黒いもので、係官が不思議がっただけだ。気にするな!」




 なるほどそういうことか。改めて自分の髪が黒かった事を思い出し、周りの皆の髪の毛を眺めて納得する。黒髪はここに居る皆の中で俺だけである。いや、多分ゴルムディアに住む人族の中でも俺だけだと思う。だからあの係官は気になって俺を見ていたのかと一人納得して歩き始め、彼らの後に付いて行く。


 建物の玄関までは結構距離があるようで15分程歩かされる。敷地はいたって普通で門扉や塀の周りは短く刈った芝生で少し敷地側に入っていくと樹木が植えてあり門扉や塀からは敷地内の建物の様子を窺う事は出来ない様になっている。


 建物までの道には石畳が敷いてあり建物に近付くと3階建ての洋館のような木造建築であった。あえて話すとここでの木造建築の価値は遥かに高い。こちらの世界では石造りの建物とは比べ物にならないくらい高価な木材をふんだんに使っているので、今目前の大使館? 領事館はそれなりの格式ある建物である。


 しかし、ガラスは使っていないようでガラス窓ではなさそうであった。ここには便利な気象結界があるので返ってガラスは発展しなかったのかもしれない。


 そんな周囲を窺いキョロキョロしてしまい何時ものようにこの集団で一番の不審人物になってしまう。思わず前のプイホンさんが止まったのにそれに気が付かなくてぶつかり彼に謝ってしまう。



 建物の入り口にも受付のような所があって、そこにジョルジョネ大尉が前に出て受付をするようだ。門扉の受付と同じように書類を出して左手の紋章を皆と同じように俺も受付の人に見せる。


 門扉の所の受付係官と違い、こちらの受付の係官は俺と同じ黒髪であった。よく見るとメルディム護衛分隊長らの森人と同じような容貌であるが、瞳の色は真っ赤で本人確認の時に俺を凝視した時に固まってしまう。前に大尉が言っていた容貌だが、外見からは女性なのか男性なのか中性的で良く判らない。


 しかし、受付作業が終わった時に「ようこそ、魔人国まびとこく領事館へ」と、言った時の声色でこの人が女性という事が判る。その時ににこやかに微笑むのだがあの真っ赤な瞳だけはあのオレンジ色の森人達と同様に未だに慣れない。



 皆が受付を終わるまでまた同じようにキョロキョロしていると玄関の入り口にこれまた同じような容姿のガードマンのように立っている魔人まびとを見つけてしまう。服装は至って普通の布製と思われるジョルジョネ大尉らと同じような真っ黒な軍服? それを、纏っている。


 そのお陰で露出している白い透き通るよ様な肌が目立つ。直立しているので袖から見えている手なんかはまるで手袋なんかを嵌めているようだ。



 俺がじろじろと眺めているのにその人物は気にしないようで直立不動である。受付で何かがあれば直ぐに飛んでくるよね? そんな彼か彼女か判らない人物を眺めていたのだが、一瞬俺の様子を見るように視線を感じてしまう。僅かにだが瞳が動いて俺を見たようだ。


 受付が終わって皆が移動し始めると、その直立不動であった人物が入り口と思われる大きく重厚な玄関扉を開けてくれる。凄く重そうな扉であったが別にきしむ音はしないし、静かに扉は開く。


 扉が完全に開ききるとお辞儀をしてここの受付の係員の彼女と同じように「ようこそ、魔人国領事館へ」と低い声色で話したのでこの人は男性だったのかと納得する。


 いや、低い声色の女性も居るかもしれないし、男性でも甲高い声色の人は居る。直接本人に確かめないと判らないよね? ふと、入り口から中を覗くと真っ暗闇であった。


 経費節減で消灯しているのか? そんなあほな事を考えて入るのを躊躇していると、ジョルジョネ大尉が先に進みだして、彼が歩みを進める度に周りがぼわっと明るくなって行くではないか。


 足元が光ったり天井や壁全体が光って、照明器具が明かりを灯す状態とは違う。それに明るくなった周りを見渡してもいたって普通の漆喰の壁のような廊下に天井は板目が見えているので木造の天井である。


 床に至っては板張りであり、何故だか歩くたびにキイ、キイ、と鳴り出して鴬張りの廊下か! と、突っ込みたい。そんないたって普通の建物の中も木造建築の廊下であった。


 そういえば入り口から入った時の玄関ホールのようなものは無かった。まあ。ここの流儀で土足厳禁ではないから玄関ホールは要らないのか? それに廊下にいたっては木造の構造材の柱が露出している真壁のようで和風の趣があってなんだか和んでしまう。



 あのハルーツン閣下がいらしたあの屋敷と同じようにこの屋敷も広いようで暫く廊下を歩かされる。しかし、誰も文句一つ言わずにもくもくと一列になって廊下をまっすぐに歩く。


 考えれば結構巾が有る廊下なのに皆は一列になって歩いているので何故だか俺もそれに習って列の中間で先頭のジョルジョネ大尉のあとをついて行く。


 そんな廊下は同じような風景で不思議な事にドアのような部屋の入り口が見当たらない。しかも、俺らが進んでいく中、後ろの照明というか明かりが順に消えてしまいなんだか怖い。



 いい加減歩くのに飽きた頃にあの妙な視線を感じてしまい困惑してしまう。困惑している最中に何故だか視線の感じた方向を見てしまう。


 しかし、その視線の方向を見ながらも皆の後に付いて歩いて行く。その視線の先が気になってその視線の先を見るように目の焦点を合わせると、突然目の前に人が現れて驚いて尻餅を着いてしまう俺であった。




 次話へつづく

次話は3/20木曜日に投稿します。

私事ですが厄災が降りかかりました。

詳しくは活動報告に書いています。

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