<4-2> 「ようこそ貿易都市ゴルムディアへ!! (中編)」
最新の本文修正日は2015年1月14日です。
正直当面の目的地である貿易都市ゴルムディアに到着して物々しい警備が敷かれた屋敷のような宮殿のような建物に困惑する俺ですが、未だに自分が試される存在という事に辟易してくる。
まあ、突然攫われて着いた先が客間のような所で以前の俺なんかは顔を見せたハルーツン閣下に驚くのであろうが、それ以上にこの地で色々な事が有り過ぎてその彼のインパクトが薄すく感じて、問題にならなかったというのが本音であった。
彼は俺が文句を言ったので至極ガッカリしていたのだけど相変わらず飄々としていて、その心内を表には決して現さない。その心内を表情に出さない様はジョルジョネ大尉が問題にならないくらい怪しい人物であった。
それに、ひとっ風呂浴びてスッキリした俺の隙を窺うように例の王女様が突然俺の目の前に現れて俺は再び拉致される。しかし、何故だか拉致されたのに俺は彼女の後を着いて行き飯を奢って貰うのだが、彼女の胃はブラックホールのようで底なしの食欲であった。そんな彼女が突然消えると迎えが来たようです。
俺は屋敷に戻されると、きっと自分が誘拐されてどんな対応を取るのかつぶさに観察されていて、評議の時になんかその事を皆で話しするのか?
まあ、大半は軍の行動についての評議だと思うのだが、これから向う評議の場が億劫になってくる俺であった。
屋敷に戻ってあのハルーツン閣下の顔を見ると、なんだか足取りが重い。そんな重い足を嫌々ながらも上げては屋敷の階段ホールの階段を上がって行く。この場から逃げ出したい気分であるが、ジョルジョネ大尉が俺の横についているので逃げ出せる訳は無い。まるで何処かへ連行されるようだ。
やっとのことで階段を上りきり廊下を歩いて行くと、ドアの前に立っている衛兵のような人物を目撃する。ジョルジョネ大尉等と同じような服装ではあるが大尉の赤い上着とは違い、白くて金刺繍がしていて綺麗な服装であった。
しかし、その人物の左腰にはしっかりとサーベルのような武器が装備されている。外部の侵入者を阻む意気込みのような物を感じてしまう。それに何処か見た事があるようで俺が彼と目線が合うとウインクしてくる。あのたわわな胸の彼女であった。その横にも見たことがある人物であったが、彼も俺を誘拐した人物の一人であった。
俺はそんなに軍事知識には詳しくは無いがあれは下士官?
入り口の両側に立っていて威圧感がある。赤の上着が尉官でその上司の佐官が紺色であったような。それに閣下と呼ばれたハルーツン閣下は深緑のような上着であった。すると白い上着は何だ?
尉官の下だとすると、その下は何の位なのか気になって考えるのだが‥‥‥。俺の知っているのは曹長か軍曹?
後は皆に嫌われている伍長を思い出しあのちょび髭がそうだったよねと思い出す。
その事を大尉に聞こうかと思ったら口に人差し指を当てられて首を前に向かされてしまう。嫌々ながらも首を前に向けると両脇の白い軍服を着た彼女等が部屋の扉を開けてくれたようで、その部屋の入り口から部屋の中を見渡すと皆が俺を注目しているではないか。
「ジョルジョネ大尉及びアサガ・リョウジ、部屋に入ります」
すると、ご苦労という声が聞えてきたが一体誰が声を掛けたのか分らない。部屋の中心には大きなテーブルの上に地図のような物が敷かれていて小さな駒が置かれている。
まるでボードゲームのヘックスのようで、六角形が地図上に無数に書かれていて大戦略のマップである。街道や町や村、それに山や川まで描かれていている。図上で今回の演習? その総評をするらしい。
そのテーブルの周りにはジョルジョネ大尉と同じような上着で色が紺色や深緑の服装の人物達が立っている。見るからに偉そうな人達が俺とジョルジョネ大尉に注目してテーブルまで近寄って来るのを待っている。
そんな異様な雰囲気に、はっきり言ってこの部屋から逃げ出したい。しかし、部屋の中に入ってもジョルジョネ大尉は俺の横に立ってまるで逃げ出さないように横に居るようだ。
「途中、王女様。ああ、私達のじゃありませんよ。例の王女ですが、彼を彼女に連れ出されまして。まあ、彼女に関しては言うまでも無いのですが、向うが興味を持ってくれているようなのでそれはそれで結構な事です。では、皆さん今回の総評を致しましょう」
司会者はハルーツン閣下であった。彼は事の起こりからジョルジョネ大尉の動き。それに前後周辺の奴隷旅団所属中隊の動きに付いて皆に説明を始める。
まあ、長々と俺のその時の状況まで説明してくれた。やはり俺の様子をしっかりと観察されていたようだ。図上でこの屋敷までの動きを示す行程が終わった頃に今回の俺が入手した色んな物までテーブルの上に広げられ一々説明というか彼等の考察が始まる。
それが終わると今度はそれぞれの中隊長が呼ばれて横に立っていたジョルジョネ大尉も前に出る。そして、それぞれの考察に着いての意見を述べ始める。
ジョルジョネ大尉が意見を述べると皆が誉める中、一々ニコニコしていて表情が今一読めない。何時ものようにいやらしいニコニコ顔であるからだ。若干辛口のハルーツン閣下から総評で小言を言われて顔が引きつったが直ぐに何時ものあのいやらしい顔に戻る。
ああ、あれはひょっとして何時ものように何かを考えている表情だよね?
するとあれはひょっとしてハルーツン閣下のように内面の心情を読み取られないようにポーカーフェイスのつもりなのか?
そんな事を思っていると他の中隊長連中も同じようにハルーツン閣下はそれぞれ総評で辛口というか嫌味をぶつけ始める。まあ、こういう人が上司に居ないと部下は弛むからこんなものかと人事のように聞いていると、突然俺にお鉢が回ってくる。
「さて、最後にリョウジ殿についての総評だが‥‥‥。まあ、はっきりいって驚いた。普通の人物が突然攫われた場合、八割方が何も出来なく命乞いやどうにも出来なく震えているのだが。
彼は見事にこれらのものを入手して自分自身を保っていました。それにここに来た時にこの私に悪態までつく余裕までありました。このワラの結び目は多分日数を確認するのに使ったのでしょう。
これは普通監禁された人物は日数の事など考えずにただ助かる事を思うのに彼は失望せずに、先ずは自分の立ち位置というかそういうものを確保して過ごしていました。
まあ、これらの道具はどれもそういうものです。まるで訓練された軍人のようでありまして、間違いなくこれから先に足を進める資格がある人物だと思います。いかがですか皆様?」
そんな問に対して「ワシならそこから脱出を巧み見る」とか「何で抵抗しないのだ?」など言いたい放題の偉そうな人物達であった。そんな中、少し年配の深緑の上着を着た人物が口を開く。
「良かろう。少将のいう通りこの先の障害に対して自らも対処出来る能力はあると証明されたと思ってよかろう。それにそこのスペンサー大尉のように見事魔王陛下の王女殿下に気に入られているようだからな!」
へっ? スペンサー大尉?
その偉そうな御仁がジョルジョネ大尉を見て話していたので驚いてしまったが‥‥‥。ああ、スペンサーってジョルジョネ大尉の姓名なのか。
そんな事までも俺を試す道具にしてたのか~‥‥‥。まったく持って迷惑な話であった。それにこの先に進んで宜しいとか言っていたけど、またもや俺は試練というか試験をクリアしたようです。
「まあ、将軍が宜しいというのなら、他の将軍に異論は無いと思いますよ。では、他に意見はありますか?
無ければそこのリョウジ殿にも意見を聞きましょうか?」
行き成り俺に意見とかまったく持って意地悪な表情をするハルーツン閣下である。意地悪には意地悪で対処すれば良いのか分らないが‥‥‥。
「はあ、何か皆さん偉そうな方々ばかりでこんな若輩が意見して良いのか分りませんが、あえて聞きたい事がありまして‥‥‥
明日の朝飯は頂けますよね?」
そんな場違いな質問をしてこの部屋にいる皆が失笑をする。しかし、この中で俺に対して真剣な表情をしていたのはその俺に許可を出した偉そうな御仁とハルーツン閣下、それにジョルジョネ大尉だけである。まあ、大尉は違った意味で驚いた表情をしていたが‥‥‥。多分余計な事を言いよってとでも思っているに違いない。
「そんな事は明日の朝にならないと分らないな~。だって明日にならないと何があるか分らないじゃないか?
まあ、先程みたいに誰かに拉致されて朝食をご馳走になるかもね」
そういってハルーツン閣下は俺にウインクする。そうであるこれから先はいかなる事が起こるのか分らないというのがこの場にいる人達の正直な所だと俺は思う。
俺だって明日の朝飯が食えるなんて予想なんか出来ない。今迄この地で過ごした俺が一番分っている事だ。
そういった意味で俺の言った言葉に対して意味ある答えを出すのは、やはりハルーツン閣下だけであった。この人も飄々としているが見た目では騙されてはいけない人だと改めて納得してしまう。
「そうですよね~。いや、最近朝飯が当たらなかったもので。今となってはなんですが、これってあの契約違反ですよね?
まあ、今更ではありますが‥‥‥。あ、この先もまた試験というか俺を試すようなことがあるのですよね?」
「嗚呼、奴隷契約の事か。特記事項をもう少し読んだ方が良いよ?
そこには軍や奴隷組合関係の行事によってはこの限りではないと書いた記憶があったけどね。まあ、今日は遅いし明日の昼ごろに君が居た中隊には戻れると思うよ。あと他にあるかな?
ああ、皆さんも遠慮なく質問を受け付けるよ」
そんな事が書いてあるとは抜け目ない。どうせ見えるか見えないような小さな字で書いてあるのだよね、保険の約款みたいに。それに書いた記憶があるって‥‥‥。あれはお前が書いたのか? まあ、どうせ代筆させたのだろうと思うけど。
あと、明日の昼には中隊に戻れるだと? 本当に戻れるのか?
‥‥‥。お前、さっきは明日の事は分からないとか言っていなかったか?
そんな状況の中、皆は何も無い様でし~んと静まり返る室内で咳払いをしたジョルジョネ大尉が話し出す。
「え~、何も無いのでありますが、夜も更けました。これで下がりたいと思いますが宜しいでしょうか?
それにこのリョウジも色々と疲れている様なのですが?」
「分かった下がって宜しい。明日は先程の通り頼むよ!」
そういわれると俺は大尉が敬礼をしたのでつられてお辞儀してその部屋から出る事が出来た。ジョルジョネ大尉は部屋を出るとため息をして歩きながら俺に話しかけてくる。
「君ね~。まあ、言っても仕様がないか。並み居る将軍閣下がいらっしゃる中、まあ堂々と嫌味なんかを言って俺は冷や汗をかいたよ」
「はあ、話は変わるのですがドアの横に居た人達は何なんですか?
あれって衛兵ですか?」
「ったく‥‥‥。あれは司令部付きの特務隊の連中だよ。あのハルーツン閣下の直属の部隊だ。詳しい事はいえないが普段はああやって重要な会議の警備を任されている。あれでいろんな事をやっていてね。先程は警護兵の衣装を着ていたな。偶にあんな事、演習の敵役なんかを引き受けている」
なるほど、そんな部隊があるのか。まあ、何処の世界にも似た様な部隊があるのだね。まあ、その他にも小言を部屋に着くまで言われてしまう。ジョルジョネ大尉も結構、彼の上司に文句を言いたかったのだろうけどシステム上そんな事は言える訳は無い。
どうせ俺に文句を言って憂さ晴らしをやっているのだよね?
現場の中間管理職はつらい立場なのは職種や世界が代わっても変わる事が無い永遠のテーマである。当然、俺が現場監督をやっていた時もそうであった。
何処か遠く昔の出来事だったように遠い目をして思い出す。そういえば半年も会社というか現場事務所に顔を出さなかったら当然首だよね?
‥‥‥。それより失踪届けが出てたりして。帰れるのか俺? いや、帰ったら無職なのか俺? 家賃を多めに払って置けばよかった。
そんなどうでもいい事ばかり思い出していて、大尉が連れて来てくれた部屋の前で佇んで声をかけられてここが今日の俺の部屋だと知らされる。
ジョルジョネ大尉にお休みの挨拶をして部屋に入ると部屋が真っ暗で困惑してしまう。普通なら部屋の入り口付近に照明のスイッチがあるのだが真っ暗な中、手探りで壁を探すのだが見当たらない。終いには入ってきたドアすら分からなくなる。
俺はいったい何処に居るのかわからない中、仕方なく手探りの中ベットを探す。暫く壁に当たったり、何かに躓いて盛大な音を立ててしまう。
その音に反応したのか部屋の扉を叩く音がしてドアを開けて入ってくる人物が部屋の明かりをつけてくれる。ジョルジョネ大尉であった。
「君ね‥‥‥。あっ、そうか。すまなかった。君はこういった部屋には慣れていないというか初めてだったか。いつもなら勝手に部屋の明かりが点いたり消えたりしていたからな。
ここに左手を当てて『点灯』と言えば灯りは点く、魔技箱と同じだ。それに一度点灯と言ってしまえばベットに横なっても口頭で『消灯』といえば灯りは独りでに消える。これは一般的な部屋の灯りなんかで使われている仕組みだ。この際覚えておきたまえ。では良い夢を」
そういって大尉は部屋から出て行ってしまう。大尉が言った通りに部屋の明かりを点けたり消したりして暫く遊んでしまう。珍しいものには時を惜しんでしまう。いい加減飽きてくるとベットに横になり探査術の訓練をして寝てしまう。
気が付くと朝日が眩しいとかそんな事は無く、例の白い空間に座っていたのでついため息をしてしまう。
あ~、確かペルジャーネ先生が俺に耐心魔素術を掛けてくれたはずなのにまたもやこんな世界に来てしまうとは‥‥‥。全然効いてないじゃないか!!
今度は誰が俺の夢に潜り込んで来たのか気にはなるが、あの時はさよならというかまた今度と、挨拶をしなかった彼女が俺の夢に潜り込んで来たと思う。
何が始まるのかドキドキしていると今日は違ったようだ。久々に白い空間に映像が流れ始める。
久々というか今までの夢の総集編といった物が流れ始める。森を進む風景に例の大きな土山である。その後は馬に跨った人物がこちらの視線の中に入ってきて何か話し始める。その話が終わらない内に落とし穴のような所に落ちる映像であった。
何回も見ている映像なのだが一体何なのか分からない。それに落とし穴の底に着くといったん風景が変わって何か楽しそうな風景が見える。
ふと、俺が見ている映像に対してブツブツ言っている人物を発見してしまう。気が付くと俺の膝上に座っていているではないか。複合で来るのは反則である。
「そなたもけったいな物を見るようじゃな? これは一体なんじゃ? それにそなたの奥底にいるのは誰じゃ?」
俺に聞かれても困るのだが‥‥‥。それが分かれば苦労しない。それにお前こそ誰だと言いたい。勝手に人の夢に入り込むのは勘弁してほしい。
「それよりこいつ等はなんで笑っているのじゃろ? 何か楽しそうじゃな~。妾もこんな風景はここ暫く見てなんだ。こんな楽しいそうな出来事は何時以来かの?
あのジョネの困った時も面白かったがこれほどではなかったしな~‥‥‥。そなたのあのキョトンとした表情は中々面白かったぞ!!
耐心魔素術も中半端というか何かが防いでいるのかえ?」
相変わらずおかしな物言いに困惑するが‥‥‥。あれ? なんで相変わらずなんだ? 分からない。それにこの幼女は誰なんだ? まあ、次々に疑問が出てくるというか、確か寝る前は覚えていたように思えるのに何故だか思い出せない。
そんな困惑した俺を他所に再び映像に集中した彼女が声を上げる。俺がその声に驚いて慌てて自分の映像を見ようと視線を動かした時に変な視線を感じてしまう。そう、あの陸ハトゥーの時のような嫌な視線である。
そんな視線が気になってくると俺の膝の上で座っていた幼女がいつの間にか消えてしまい、何故だか俺はその視線に怯えてしまう。そして、その視線から逃げる為に立ち上がって走り出す。
もうそれは久々に追い着かれないように走り出す。しかし、どれだけ走りまくっても逃れられないようで何時までも視線が付きまとって離れない。
あ~、逃げている途中で何故だか耐心魔素術の事を思い出す。そういえばこれは俺の夢である。俺の夢なのだからどうにでもなるのではないのか?
そんな疑問が沸いてくると不思議にその先程まで恐ろしかった視線が恐ろしいという気持ちがなくなってしまう。
それよりこの視線の持ち主というか視線の先が気になってしまう。恐る恐るというかゆっくりとその視線の方向に自分の視線を向けて今度はその視線を凝視するようにというか焦点を合わせるようにその視線の先を見定める。
始めは何か見えにくいというか、モヤモヤしていて中々焦点が合わない。何度も挑戦して見定めるのだが上手くいかない。
まるで探査術を始めてやった時に似ている状況になってきてふと閃く。直に見ようとするから見えないのか? それとも近付きすぎて見えないのか? っと、いった内のどれかだと思う。
もしかしたら誰かというか視線の本人が邪魔をしているのか? など、色々考えながらその視線を見定める為に挑戦していると、ようやくコツというかそんなものが分かってくる。
やはり近付きすぎて焦点が合わなかったようで少しずつ焦点をずらして行くと、突然目の前に幼女が現れる。
「ほほう~。ここまで筋が良いと驚くな。今の要領を忘れるなよ?! 今日はこんな所かな‥‥‥。
あっ、すまん。その、なんだ。起きたらその要領忘れてるかも知れん。まいったな~‥‥‥。どうやろうか? あ~、面倒くさい。じゃあな」
最後に「じゃあな」という声が周りの空間に反響し出して彼女は消えてしまうではないか。嗚呼、一体何が起きたのか理解できない。あの嫌な視線を見定めたら幼女が出てきた。それもメルディム護衛分隊長が小さくなった感じで髪の色が真っ黒で‥‥‥。一体なんだんだ~~~~。
目を開けると白衣を着た誰かが右往左往していて皆一様に俺の叫び声に注目したというかビックリしているではないか。その何といっていいか分からないというか、一体あなた達は誰? と、突っ込みたい。
またもや俺は突然体を起して無意識に叫んだようだ。白衣の連中の中にジョルジョネ大尉を見つけて何故だかほっとしてしまう。
「あの~、これは一体何事なんでしょうね?」
「おはよう、リョウジ。まあ、その、なんていうか。何時もの身体検査の準備で君の部屋を訪れてみると君が汗だくになってうなされていてな。暫く皆がその様子を見ていたというか調べていたというか。ひと段落してみれば君が突然叫んだので驚いた所だ。一体何があった? もしかして王女様がらみか? それなら聞くだけ無駄なので諦めるが」
嗚呼、そういわれて初めて自分が何の夢を見ていたのか分からなくなる。ジンベの袖で顔の玉のような汗を拭くと一体何を見たのか考え始める。何時もの映像の夢を見ていたような。
それに誰かの視線を感じて誰かが現れて誉められたというかまた試された感じに腹を立てたような。そんな感じだけはなぜか深く印象に残っている。
多分王女様かな? それともまたペルジャーネ先生が俺を鍛える為に夢に入ってきたのかは分からない。俺はジョルジョネ大尉にはにかむというか愛想笑いしか出来なかった。
「はあ、何時ものような夢だったというかそんな感じでして。多分、あの王女様が出てきたような感じだと思います」
「それじゃあ、私達にもどうにも出来ない。まったく、もう少し待てないかな?
これは早めに会いに行くしかないのか? あ~めんどうだ、上司に丸投げしようか? ‥‥‥」
そう独り言を言ってジョルジョネ大尉はこの部屋から出て行ってしまう。残された俺はどうすれば良いのか分からなくなって呆然としていると、部屋に画板を抱えたミリクナ医務長とマイネンスさんがやって来る。
結構久々な感じに懐かしくなってくるが二人とも若干顔が引きつっていて何処かよそよそしい。それでもマイネンスさんは俺にウインクしてきたのだが、何の合図なのか分からない。
周りの白衣を着た連中に指揮車でやられていた計測をやられてうんざりし始める。その計測した数値を聞いて彼女等が画板の羊皮紙に記入し始める。もう、なるようにしかならないので、ここは彼等に成すがまま抵抗は諦めた。計測が終わると問診が始まり彼らの問に答えて行く。
どれだけ時間が経ったのか分からないが最後に魔素力の計測をして、彼らは去って行く。先程まで騒がしかった部屋が急に静かになり二人の彼女等のため息がして、まだこの部屋に人が居たのかと知ることになる。
「割と元気そうで何よりね。ミリー先輩が貴方の様子を窺いに何回か訪れたので心配はしていなかったのだけど。それに例の薬も飲ませていなかったもので結構心配したのだけど、会った時と変わりなく健康体のようね。それでも粗食のお陰で少し体が身軽になったようね」
「はあ、じゃあもうあの薬は飲まなくても良いのですよね?」
「それはどうかしら? まだこの地に来て半年しか経っていないのよ? もう少しこの地の風土に体を慣らす意味で続けた方があなたの為に良いと思うけど?
まあ、無理にとは言わないけどね」
「それで、今日はこれからどうなるのでしょうね? また何かの検査とかあるのでしょうか? 先程の人達は軍関係ですか? また次に今度は何処かの組織が俺を検査するのでしょうか? それとも原隊復帰よろしく、元の奴隷旅団所属中隊に戻れるのでしょうか?」
そんな俺の問に彼女等はお互いの顔を見て何かを確認するというか目で合図していて、その沈黙の時間に不安を覚える俺であった。
次話へつづく
次話は3/18火曜日の夕方に投稿する予定です。




