<3-25> 「年季奴隷と傷付いた乙女? (前編)」
最新の本文修正日は2014年12月26日です。
寝る度に悪夢のようなそうで無いような夢にうなされだした俺ですが、安眠妨害は犯罪ですよ?
何度か寝る度に夢を見るのだが「内容は?」と、聞かれても何故だか思い出せない。
それに夕方紙漉きを楽しんでいたデウシー先生に何故寝ないのか聞いてみたのだが、その答えは秘密だそうです。あっ、それと彼女達の事を先生と呼ぶ事に決めました。一応俺の魔素術の先生には違いないのでね。そう心に決めた俺であった。
寝たか寝無いかの状態で目が覚めた俺はなんだかどっと疲れた感じの状態であった。大粒の汗をジンベの袖で拭うと、何故だかため息が出てしまう。まず、見ていたはずの夢が何であったのか思い出せないのと、何かに腹をまたもや立てていたはずのだが‥‥‥。その何かに腹立たしい事だけは思い出したからであった。
嗚呼、参ったな‥‥‥。これでは折角のプイホンさんとの学習タイムが台無しである。何故だかその事だけが気がかりになってしまう。それに彼を一日一回は見たり、彼の頭をなでないと何かが補充できない。今まさにエンプティ状態だ。
そんな事を考えていると指揮車が止まって馬の休憩のようだ。すると、指揮車が止まってから暫くして指揮車の扉をノックする音がする。マイネンスさんが扉を開けると、恐る恐る顔を出したのはプイホンさんであった。彼の手には俺が漉いたわら半紙が握られていた。
「あっ、あの、兄ちゃん。あっ、リョウジ先生いますか?」
そういって頭を下げながらお辞儀して指揮車の外に立っていた。うぉ~~~、俺の事を先生だって?! その事に、なんか猛烈に感動してしまう。
急いで寝ていたベットから飛び起きると皆が唖然とする中、俺はプイホンさんを指揮車の中に招きいれ、前の席に連れて行く。
急いで道具袋からわら半紙を出して次に渡す問題を書き始める。最近は二桁の足し算や引き算が出来るまでになっているプイホンさんであるが、依然九九はまだのようで未だに一桁の九九の問題を出しているのが現状だ。
まあ、旅は長いしゆっくり、彼のペースで覚えれば良いので問題無しである。何時ものように彼が解いて来た用紙に花丸を問題なくつけてやる。
何時もなら喜んで髭がピンと上に上がるのだが今日は見慣れない人が居るので緊張しているのか少し引きつった感じに「ありがとう」と、言って先程俺が渡した問題を必死に考え始める。
問題を考え始めて少し経つと思い出したように「今日の分は明日やるのだった」と、独り言を言って俺が新たに渡した問題を折り畳むと腰の革袋に仕舞う。
代わりに俺が作って彼に渡したわら半紙の手帳というか帳面を出す。そして、日記のように今日の出来事を俺のように書き始める。
彼は何時ものように鉛筆を持ってまず絵を描く。良く見ると誰かがベットに寝ている絵にプイホンさん。自分を書いて涙を流しているような絵であった。嗚呼、今朝の俺の事らしい。
早朝に俺がうなされて寝ていたのでミリクナ医務長を呼んでこの指揮車に運んだようだ。そんなような絵であった。嗚呼、彼に結構心配を掛けてしまって申し訳なる俺は、つい彼の頭を撫でてしまう。
「いや~、プイホンさんにまで心配させてしまって申し訳ない。一応原因というか本人に直接文句は言ったような言わないようなそんな感じでね。その文句を言ったのなら、分って貰えたかは疑問なんだよね?
それにどんな人かと聞かれても分からないけど、聞き分けの良い人なら良いのだけどね!」
そういいながらプイホンさんの頭を撫でてしまう。撫でられた本人は何の事だか分らないのか首を傾げていたが横に座っていたミリクナ医務長がぶっと噴出す。
「まあ、直接本人に文句言ったのなら少しは自重してくださるかもよ! まあ、何百年かに一回の召喚者だから我慢できなかったのかもね」
「はあ、まあ今更迷惑と言っても仕様がないと思いますが」
その後「ここに来た事自体、俺にとっては大迷惑なのですが!!」と、心の中で囁く。暫くプイホンさんの日記や字の練習を眺めてなんだか何かが補充された気分になる。
その楽しい時間はあっという間に過ぎ去って行く。急に指揮車が揺れだして今日の野営地に着いたようだ。プイホンさんは急いで指揮車の外に出て行く。嗚呼、お礼というか授業の終わりの挨拶はしないのね? だって猫だもの。
これから始まる晩飯の準備に余念が無いのだね。そう心の中で呟いて俺も指揮車から降りると、なんだかフラフラな状態で驚いてしまう。おいおい、俺は12時間以上寝たはずだよね? ちょっと指揮車を出た所でしゃがんでしまうが直ぐに立ち上がる。すると、もうなんとも無いようだ。
あ~、なんか俺の身体にまた変調があるのか? それともやはり睡眠妨害の影響がこの足に来ているという事なのか? 分らない。
一応、野営の準備の手伝いをして、ついでにプイホンさんに何時ものように空いた容器に水を入れて貰い紙漉きの準備をする。晩飯を食べ終わって何時ものように紙漉きの段取りをやっているとまたデウシー先生かペルジャーネ先生が俺の様子を見に来る。近付いて来た彼女の口元を確認すると今日は薄いピンクだったのでペルジャーネ先生であった。
「あの~、私も紙漉きやりたいのだけど‥‥‥。駄目かしら?」
ああ、昨晩デウシー先生がやっていたのを見ていたか、体験した事を聞いたのかな? 当然断る理由は無い。ペルジャーネ先生に昨晩と同じようにやり方を見せる。そして、彼女に道具を渡すと体が覚えていたのかすんなり紙を漉く事が出来る。彼女も初めて体験する紙漉きが面白いのか見る見る内に何枚も紙を漉いて行く。
そこで、昨晩と同じように彼女、ペルジャーネ先生にも同じ質問をぶつけてみる事にする。
「あの~、ペルジャーネ先生? 昨晩デウシー先生にも同じ事を聞いたのですが‥‥‥」
俺が全部話し終わらない内に答えが直ぐに返ってくる。答えは「秘密!!」だそうだ。そんな事いわれるとますます気になって気くるのですが‥‥‥。冗談半分というか当てずっぽうでペルジャーネ先生に聞くというか呟いてしまう。
「まさかとは思いますが昨日、今日の俺のように寝ると悪夢を見てしまうという事じゃないですよね?」
すると、若干今まで器用に紙を漉いていた手が止まってしまう。まさかと思うがまさかなのか? まあ、確かに悪夢を見ると分っていて睡眠を取る事を惜しむのは分るのだが‥‥‥。鎌をかけてまた呟いてみる。
「まさかとは思いますが、もしかして俺と同一人物だったりして‥‥‥。なはは‥‥‥」
そんな事を俺が呟くと、彼女は先程の呟きで止まりかけた手が急に動き出し紙を漉く手が雑になって、終いにはぶるぶる震えだして俺の大事な道具を放り出して暗闇に消えて行く。
折角、昨晩デウシー先生が漉いたわら半紙を束ねて彼女に渡そうとしたのだけど。紙の束を纏めると道具袋の中に突っ込んでしまう。
残りの紙を急いで漉いてしまわないとまた寝る時間がなくなってしまう。‥‥‥。あっ、人の心配もそうだけど自分の心配もしなければいけなかったんだ。そうである、俺も睡眠を邪魔され始めたのだ。
そう思うと何故だか寝るのが億劫になってくるというか、ペルジャーネ先生達と同じように寝るのが怖くなってくる。いや、別に怖い訳じゃなく。面倒くさいというか腹立たしいといった方が正解かもしれない。
しかし、具体的に何が腹立たしいといわれても何故だか思い出せないので仕方がない。残りの紙を漉いて、残りかすの溶液を捨ててしまう。俺は後片づけをしながらそんな事を考えていた。
道具を仕舞い終わって、後は寝るだけとなる。寝床に寝転がりながら一応何時ものように探査術の訓練をするのだが身が入らないというか、集中力が途切れてしまって思うように出来ない。その後も寝ようか寝ないか考えていたが、気が付いたら何時もというかあの白い空間で佇んでいる俺であった。
あ~、今日は何が始まるのかなと、自分の眉毛を指につけた唾でぬらしてみる。これは狸が人を化かす時に眉毛の本数を数える所から来る由来であるが‥‥‥。まさか彼女には効くとは思えないのだがついやってしまう。
すると、いきなり後頭部をハリセンかなにかで殴られた感じになって妙に良い音がこの白い空間に響く。
「妾は狸か!!」
思った通りの突っ込みで何処かため息というかほっとしたというか。それに不思議な事になぜだか昨晩睡眠を邪魔しないでくれとクレームをつけた事を思い出す。
「あのですね? 私は貴方にお願いしたはずなのですが? 貴方が私の夢に出てくると私の体が休まらないというか、普段起きている時に行動する時間少なくなって迷惑するのですが!! 今朝だって目が覚めたのは昼過ぎですよ?! 一応やる事が色々あって計画というか予定が詰まっているのですがね?!」
「ん?! それはおかかしいぞよ?! 妾がそなたの夢に出て来ているのではなく、そなたが妾に会いに来ているといった方が正しいぞ?!」
はあ? 何言ってんだかこの人は? 俺が何で彼女に会いに来てる?
‥‥‥。意味が分らない。色々思考を巡らすのだが、そもそも彼女がどこにいるのか分らない俺が勝手に彼女に会いに行ける訳が無い。
それにそんな特技というか能力が何時の間に備わったのだ?
‥‥‥。分らない。
「いやいや、俺はそんな能力ないし、第一貴方が誰だか分らないのに会いに来る事なんか出来ないでしょ?! いい加減私を謀るのは勘弁してほしいのですが‥‥‥。
あっ、そうやってあの彼女の夢に出て来てからかったり、謀って悪夢のような出来事を見させて睡眠の邪魔をしたのですか?
睡眠は人族にとって大事な時間というか生命をはぐくむのに大事な時間なんですよ?!
ちょっとそこに座ってよく私の話を聞いてください!!」
すると、突然俺が住んでいたアパートの部屋の風景になる。万年床のベットの横に置いてある半永久的に設置してあるコタツに着いて、彼女と対面する状態になる。
俺はなんだかんだと言っては彼女に説教を始めるのだが、なんだかしゃべりすぎて喉が渇いて気が付くとコタツの上に置いてあった蜜柑を取ってそれを食べ始める。
いつの間にか部屋の一角に置いてあったテレビのリモコンを彼女が触っている内にテレビのスイッチが入ってしまい驚きながらも何かの番組を見ている。
いやいや、何を寛いでいるのだ? 俺は彼女からリモコンを取り上げてテレビのスイッチを切るとまた説教を始める。しかし、説教のというか苦情の途中で玄関のほうから扉を叩く音がして、しきりに誰かを呼ぶ声がして説教どころでなくなってしまう。
なぜだか舌打ちした俺は説教の途中で立ち上がり音のする玄関の扉の鍵を開けて扉を開こうとするのだが、何故だか躊躇する。
鍵のサムターンに左手をかけ右手にはドアノブを握って、いつでも空ける準備が出来ているのだが、どうしてもその後の行動が出来ない。何度か扉を開けようとするのだが、何故だか開ける事が出来なかった。
そんな扉を開けるのを躊躇していると先程までがんがん扉を叩いていた音がいつの間にか止んでしまって嘘のように静かな状態になる。
そこで俺は完全に扉を開けることを諦め、また部屋の中のほうに戻ってコタツに着くと先程と同じように説教というか文句を彼女に言い始めるのだが、微かに舌打ちした音が聞えてくる。
「いやいや、私は説教をしているのになんで舌打ちするのですか?
ちょっと態度がなっていませんよ?!
貴方は私やペルジャーネさん達の睡眠を邪魔して‥‥‥。」
俺は説教の途中で最後まで言葉を吐けなくなってしまう。気が付くと口が思うように開かない。っと言うか、手で口を触ると口が無くなっていた。今まで大人しく俺の説教というか抗議を黙って聞いていたと思われた彼女が急に立ち上がって何かを言い放つ。
「あ~~、頑丈? いや、強情? なんともガードが硬いの~、そなたの心は。
無意識の行動で開こうとしたが駄目じゃッたわい!!
う~ん、こうなったら物理的に開いてやろうか?!」
俺は口の開けない状態で首を横に振って、う~う~唸って逃げ出そうと巧み見る。しかし、瞬きすると次の瞬間、なんと手術台の上に乗せられていて、まな板の鯉であった。
彼女というと漫画のように白衣に着替えていて色々な道具を手にして俺の腹を開こうとする。いきなり絶体絶命の状態に俺は体中から汗が噴出して汗だくになりながらう~う~唸って抵抗をするのだが‥‥‥。手足が何か縛られていて思うように動かない。
まるでこの地に来た時に枷をつけられた状態である。そんな中でも彼女は手に持った鋸のような物を俺の腹の辺りに当て始める。
「嗚呼、俺は夢の中で解体されるのか?」と、そんな事を嘆いてしまう。ふと「夢?」と、いう言葉が口から出てくる。そうだ、これは夢だ!!
俺の夢なのだからどんな事も出来るはずと勝手に思い込む。すると、先程まで声を出して話す事が出来なかったのに「冗談じゃない!!」と、急に声を出して話すことが出来るようになる。
やったよ、俺!! あれよあれよという間に手足の自由が利くようになって施術台に載せられていた状態から体を起して身近にあった手術道具を手に取り、彼女に反抗しようと立ち上がる。
立ち上がった所で急に拍手のような手を叩く音が今いる空間に響き渡る。一瞬何が起きたのか理解できない俺は周りをキョロキョロするのだがスポットライトが当たっている俺以外の周りは暗闇で窺い知る事はできない。
そんな中、5m位離れた所にスポットライトが当てられてその光の中に先程俺を解剖しようとしていた彼女が現れる。一体なんだといいたい。俺が呆けた眼差しで彼女を見ていると、何か俺に彼女は話し始める。
「そなたは合格じゃ!! これから来るであろう敵はそなたの心の隙間を衝いて来る、今のようにな! まあ、ぎりぎり及第点と言った所じゃがいいじゃろ!
あ~、疲れた。偶にこれをやると酷く疲れ。
まあ、そなたは中々の物であったぞ! 前の勇者なんか妾が十日ほど出てやっと抵抗できるようになったからの! そなたは二日目で抵抗出来たからあの勇者よりは中々見所があるのかも知れんな~」
あ~、またもや俺は試験というか、試練というか。そんなものを勝手に受けさせられていたようです。そういえばデウシー先生が王女とは係わり合いになりたくないといっていた事を思い出す。
人の夢に勝手に出てきて試練というか、試験で試すとは本当にはなはだ迷惑な話である。ん? ひょっとすると俺以外は皆知っていたのか?
そんな疑問も浮かんではくるが「夢から覚めたら多分そんなことは忘れているのだろうな~」と、何処か諦めたというか覚めた俺がブツブツ言っている状態であった。
「まあ、探査術や紙作りも良いが内面の心も鍛えないとな!! デウシー先生やペルの言う事を聞いて男を磨け!!」
急に王女と思われる彼女がそんな事を言って来る。あれ? この人って魔人族の王女様じゃないのか?
そんな事を口走って急にというか急激に今まで居た空間が狭まって目蓋を開けると少しがさついた手の平の感触が俺の顔の皮膚を伝わってくる。
まるで、老人のような手だなと口に出して言いそうになってしまうが目の前に居た人物の顔を見て口を噤む。その顔を見ると若干目の下にはクマがあったりかさついた顔の皮膚を見ると、やはり身体に無理が祟っているように見えて「やはり睡眠は大事だよね」と、呟いてしまう。
意識がハッキリしてくると目の前にいたのはペルジャーネ先生かデウシー先生であった。次第に目の焦点があって来ると彼女の瞳が確認できて思わず呟いてしまう。
「あの~、やはり、その。睡眠は大事ですよ、デウシー先生。体は正直です。睡眠が取れていないと、そのがさついた手の平や目の下にはクマが出来るし、その目の下の黒ずみですよ。それにその顔の肌も少し痛んでいますよ?
少しは夜に寝るようにしないとその内、体が言う事が聞かなくなってきますよ?
それでなくても一つの身体に二つの人生を背負っているのですから、少しは自著しないとその内ポックリと逝ってしまいますよ?」
『あ~、俺が死んでしまっても悲しむ奴なんかいねぇ! 俺のせいでペルは両親に見捨てられたんだぞ!!』
「そんな事を言うものじゃないですよ。少なくても貴方に関った人達は悲しむと思いますよ?
それに私はまだ魔素術を習い始めた所ですし、全部教えてというか使えるようになるまでは死なれては困るのですが?
それにジョルジョネ大尉なんかは貴方に死なれると寂しがるし、ボフボーニャさんなんかは口げんかする相手がいなくなってしょげてしまいますよ。
嗚呼、まあ。確かに魔素術も大切ですが折角知り会えた私も哀しくなってしまいますね」
まあ、なんだか。告白というか心に思っていた事をつい口走ってみた。言い訳じゃないが口走って見たというか寝起きの状態で無防備というか半分夢うつつの状態で俺はそんな事を言ってしまう。
すると、デウシーさんが涙を流し始める。慌てた俺は自分が彼女を泣かしたのかと起き上がってオロオロしてしまう。起き上がると指揮車の中であって前の座席にはミリクナ医務長とマイネンスさんが口に手を当てて好奇な目で俺を見ているし、ミリクナ医務長なんかは少し顔が赤い。
デウシー先生の横にいたボフボーニャさんはブスットしていて何時もの感じである。今度は俺のほうが顔の色が赤くなってオロオロしてしまう。つい言い訳じみた事を口走ってしまうのだが上手く言葉になっていない。
「あ~、どれが本当の事でどれが夢の事なのか混乱してきて分らないのですが?
今見ているのは現実ですよね? あの魔人族の王女様は作り物なんですか?
それとももしかして俺が寝ている間にデウシー先生が作った虚構なのですか?」
矢継ぎ早に俺は周りの人間に質問をするのだが誰も口を開こうとはしない。その内、先程まで泣いていたデウシーさんがようやく泣き止んでまじめな顔をすると急にペルジャーネ先生に変わる。唇が薄いピンクになり、瞳が銀色になったからだ。
「まあ、最初のは本物でしょうね。先程見たのが私とデウシーの合作というか貴方の心に抵抗力をつけるために施術を行ったというか、美味く説明できないけど心の防御力を上げたというか防御力をつける為に行った術というか、そんな所ね。
「この大陸では精神にも魔素術をかけてくる敵がいるのですか?
それとも魔獣が精神攻撃をしてくるとか? もしかして魔人族が精神攻撃をしてくるとか?」
「それは分らないの。でもね、何もしないよりはましでしょ? 転ばぬ先の杖よ! 確か救国の勇者の勇者語録に有った様な。まあ、そんな感じね。」
そう微笑んで俺に話しかけているペルジャーネ先生であるが目は笑っていない。鋭い眼光というか、ひょっとするとデウシーさんよりきついというか迫力があるというか、そんな感じであった。
そこでジョルジョネ大尉が言っていた事を思い出す。今大陸で起きているというか、起こり始めている事の全貌を知る者はこの地にはいないと言う事を。軍や奴隷組合やその他の機関が今必死にこれからこの王国に何が起こるのか調べている事を聞いたはず。
っと、いう事は何が起きても良いように俺に試練というか訓練をしているのか?
それにしてもまったく持って迷惑な話であるが、何時ものように保護対象の俺というか年季奴隷の俺には文句を言える立場ではない。
「ああ、そういえば、私達が寝ない理由を言っていなかったわね。昼間は私が主に活動しているから私が寝る夜にデウシーが活動するのが主な理由よ!
貴方が言うように少しは昼間にもデウシーに出て貰って夜はなるべく休むように努力をしようかしら?
そのほうが長生きできるのでしょ? そうすれば私が死ぬ前に貴方やボフボーニャさんに技術の移転はできるもの!」
「あの~、ペルジャーネ先生ってまだ二十代の前半か真ん中ぐらいですよね?
もう死ぬとか言うのは無しにしませんか? 少なくてもまだ折り返し地点にも行っていないですよ?
私だってまだ二十五ですし、同じ年代としてはその3倍は生きてやるという気概が無いと長生きできませんよ?
それにお肌に良い栄養素は果物に多く含まれていますから‥‥‥。あのすっぱい蜜柑なんか良いと思いますが。それに三食は規則正しく取らないと‥‥‥」
後半は何か夢の続きに様に説教というか講釈を垂れてしまう。まあ、後半の話に聞き耳を立てていたのはペルジャーネ先生だけではなくマイネンスさんやボフボーニャさんまで聞き耳を立ててお肌の美容対策の話を聞いていた。そんな俺の講釈の時間が終わると共に何故だか馬車が止まって馬の休憩時間になってしまう。
すると、昨日と同じようにこの指揮車の扉をノックする音がしてマイネンスさんが扉を開ける。外には昨日と同じように畏まったプイホンさんがお辞儀をしていた。
俺は先程まで寝ていたベットから飛び降りて彼を中に入れると昨日と同じように彼の算術の問題を作る。素早く作った問題を彼に渡すと、彼が持ってきた問題用紙を添削して何時ものように花丸をつける。
そして、彼はというとこれまた昨日と同じように俺から貰った問題を暫く眺めてはまた思い出したようにその問題のわら半紙を畳んで腰の革袋にしまう。問題用紙を仕舞うと代わりにまたわら半紙の手帳を出して日記を書き始める。まるでデジャブーを見ているようだが今日は少し周りの雰囲気に慣れたのかぎこちない動きではなかった。
昨日よりは少し彼を観察する時間が長くなるのかと思っていたが、結局昨日と同じような時間に指揮車は止まる。外に出ると指揮車が入っている車庫の外は真っ暗であった。プイホンさんは最後に馬の休憩後に来たようだ。
結局、二時間程度彼と共に時間を過ごしたようで馬車村に着くと一番最初に降りたのは昨日と同じにプイホンさんであった。彼の走って行く後姿を眺めながら俺は指揮車の外に出ると若干一名が宿舎のほうを見てしかめっ面をする。
「さあ、早く中に入って風呂にはいって夕食を食べましょう?」
そんな事を彼女に言ってしまった後から彼女、主にデウシー先生が風呂嫌いという事を思い出す俺であった。
後編へつづく
次話は2/27木曜日の夕方に投稿する予定です。




