<3-23> 「悪夢再び? (前編)」
最新の本文修正日は2014年12月24日です。
一度出会った人物に手紙を飛ばす事が出来る便利な魔素術、手紙ハトゥーを3回目にしてなんとか使うことが出来た俺ですが、またもや自分の不甲斐無さに呆れてしまう。たった三回その術を使っただけで気を失ってしまったからだ。
まるで初めて探査術を使った時のように半端無い疲労感に襲われて気を失ってしまう。気が付くと、そこにはこの指揮車の面々が雁首揃えて俺に注目しているではないか。俺が一体何をやったというのだ? ‥‥‥。そう、訳が分らない俺であった
俺が質問した事に驚いたのか、皆は黙ったまま何も言わない。あれ? 何かやばい事でも起きたのか? 段々不安になってきてしまうチキンな俺である。すると、ため息混じりにミリクナ医務長が口を開く。
「いやね、大抵はこの手紙ハトゥーを覚えるのに一年ぐらい掛かるのに貴方は3回目で成功したので喜んでいたのだけど。ものの見事に貴方はその力に翻弄されて気を失ったものだから少しほっとしたというか、呆れたというか。まあ、そんな所ね。貴方は一刻ぐらい気を失っていたわよ」
「はあ、そうですか。我ながら情けないというか‥‥‥。あ、ひょっとしてこれも使いすぎると死ぬことがあるのですか? あの探査術と同じように‥‥‥」
その探査術の話を聞いたボフボーニャさんがいきなり険しい表情になる。
「お前は探査術も出来るの?! ずる~~~い!! 何でお前ばかり~~~~~」
また始まってしまった。一体俺が何をやったというのだ。それにしてもやはり、探査術が出来るという事は凄い事なのか? そうでなければ平宮廷魔素術使い筆頭に君臨している彼女が羨ましがるはずは無い。俺が考え込む横を多分ペルジャーネさんだと思うがボフボーニャさんの肩に手を添えて後ろの席に連れて行く。それを見たミリクナ医務長がまた俺に話しかけてくる。
「分った? 貴方は凄いのよ。もっと自信を持ちなさい! 当分はその手紙ハトゥーの練習と探査術の訓練をするといいわ! また分らない事があれば後ろの彼女に聞けばいいわ!」
「はあ、そうですか。でも魔素陣を使うのにも精神というか疲労が伴うものなのですね? 初めて使って驚きました。ひょっとすると魔素術も使えるようになると同じように疲労感というか精神は疲れるのですか?」
「まあ、慣れね。普段使っていればその内慣れるわよ。探査術の訓練はしているのでしょ?」
「はあ、そうなんですけど一行に持続時間は延びないし‥‥‥。あっ、そういえば言ったかな? 探査術の探査する範囲が何か広がったというか倍になったのですが」
そういうと横に座っていたマイネンスさんが驚く。まじまじと俺の顔を見たかと思うと視線をミリクナ医務長に向ける。あちゃ~、俺なんかまずい事をいったのかな? 俺はまたもや不安になってくる。しかし、視線を向けられたミリクナ医務長はそっけなく言い放つ。
「あら、そう。良かったわね。練習というか訓練の賜物でわ? 倍といっても十メトぐらいでしょ? まあ、貴方の事だから今更驚かないわ。で、それ以外に何か変調を来していないの?」
なんか隣のマイネンスさんが驚いたのにミリクナ医務長がこんな感じに流したのでそんな物かと思ってしまう。だけどミリクナ医務長がそんな事をいっている間、横のマイネンスさんは口をぱくぱくしていたのは気のせいであろうか。
すると、丁度馬の休憩なのか指揮車が大きく揺れて動きが止まる。指揮車が止まると扉を叩く音がする。俺はマイネンスさんの隣に座っていたので自分が立ち上がって扉を開こうとすると立ちくらみがしてそのまま指揮車の床に倒れてしまう。なんだか、そのまま眠気がして寝てしまう俺であった。
☆ ☆ ☆
リョウジが扉を開こうとして指揮車の床に転んだ姿を目撃したミリクナはため息をして、マイネンスに簡易寝具の用意を目配せする。自ら扉を開いて、中にジョルジョネ大尉を招き入れる。
床の上にうつ伏せの状態で寝転がっているリョウジを見て最初は驚いたジョルジョネ大尉であったが、またかとため息を付いてリョウジを抱き上げるとそのまま簡易ベットの上に寝かせる。
寝かされたリョウジの上着を捲るミリクナは胸の魔素結晶の欠片の辺りを凝視する。一瞬指揮車の中を暗くして見るが彼の胸は普通の状態であった。その事に皆が集まってミリクナと同じようにリョウジの胸を凝視していたが一様にため息をして視線を外す。
「あら、大尉?! 頬が何か切れていますよ? 治しましょうか?」
そういうとミリクナは左手をジョルジョネ大尉の頬に当てて傷を治す。
「いや~~、手紙ハトゥーが凶器になるとは知らなかった。いつもなら手元にヒラヒラと降りてくるのだけど‥‥‥。覗き窓から直線的に入ってきて俺の頬をかすめてな、机に紙が刺さったぞ!!」
すると、後ろの席でボフボーニャと話していたペルジャーネが突然デウシーに変わり、ケッケッケと笑い出す。
『俺らもな! あれに殺されかけた! 俺らだけじゃ癪だからおめぇえにも体験させてやったぜぇ!』
「はあ、それは構わないのですけど、何回目で出来たのですか? 百回ぐらいやったのですか?」
「三回目よ!!」
そうミリクナが言い放つと目を丸くして「たった三回だと?!」と、言って驚くジョルジョネ大尉。急にブツブツ言い出して腕を組んで考え出す。
『俺も驚いたが、三回目で出来たのは俺と、そこのボフ公ぐらいしか聞かないぞ?! それに数えるぐらいじゃねぇ? 俺は校長のを見よう見真似でやって出来たけど、こいつはすんなり出来た。それに文言が少し可笑しいのはあれか、その首輪のお陰か?』
「はあ、首輪は完璧ではありません。多少はヒノモトの言葉と齟齬があるのかもしれません。それに四百年も立てばこちらだって口調が少し変わるのですから向こうだって変わっているのかも知れません」
『そういうもんか?! まあ、上位の魔素陣はちょっとやべぇかも知れないな~‥‥‥』
「とりあえずは生活系の魔素陣からでお願いします。リョウジの魔素力から行くといきなり攻撃系はこちらに被害が出るかも知れないので控えてくれますよね、筆頭?!」
不安そうな表情でデウシーを見る大尉の顔に微笑みながら返事をしたのはペルジャーネであった。
「当然でしょ?! 扱えない物を行き成りやらしたら制御できなくなって自滅してしまいますわ!」
その言葉を聞いてほっとする大尉は彼女に「頼みますよ!!」と、一言言って外に出て行く。馬の休憩が終わりのようで暫くしてまた指揮車が動き出す。
リョウジが横になって寝ている為、ジョルジョネ大尉が外に出て行くと指揮車の中は静かになるが、各人がそれぞれ上司に報告する為の筆を走らせる音だけが妙に響く指揮車の中であった。
☆ ☆ ☆
うっ、うっ‥‥‥。う~、確か俺は指揮車の中で‥‥‥。そう、扉を叩く音がして‥‥‥。あっ、そうだ。その扉を開けようとして立ち上がった。あれ、立ち上がってそのあと足がもつれてそのまま倒れたのだったよね?
目を覚ますと何時もとは違う風景に困惑する。今日は起きると何時もの相部屋の3段ベットの上では無く、個室の妙に寝心地が良いベットの上であった。体を起すと窓側の机にはミリクナ医務長が着いていて何かの書類に向って眉をひそめて考えている途中の風景であった。
俺が起き上がると視線を俺に向けて話しかけてくる。
「あら、起きたようね! 今夕食を持ってくるからそこに居てね」
そういってこの部屋から出て行ってしまう。まあ、自分で食いに行ってもいいのだけど‥‥‥。体を起してベットから立ち上がろうとして、また立ち眩みがしてベットに座り込んでしまう。
あらら~、これはいよいよ探査術の時と同じ状態である。あの時も始めて使った後はこんな状態であった。それにしても魔素術ってこんなにも身体に負担がかかるものなのか? それとも始めて使った力に慣れないからか? その力は精神だけじゃなく身体に負担がかかるものなのか? ‥‥‥。分らない。
良く超能力なんかを多用するとぶっ倒れる主人公なんかを小説なんかで見かけたが、これもある意味同じ様に感じる。それにそもそも魔素術って一体なんなんだ?
‥‥‥。分らない。
火が燃えるという事は酸素と色んな物が化学反応するという酸化現象が俺が習った一般的な科学である。そんな酸化現象が起きるには酸素と他の物質が不可欠で素の人間が起せる現象ではない。
まあ、ライターなんかを使えば火をつける事が出来るが何も無い状態で火を起すなんて不可能に近い。それが魔素術では簡単にやってしまう。
その魔素術というのはその科学反応を操るっていうことか? 火属性の魔素術なんかは何となく理解できそうであるが、‥‥‥。じゃあ、あの風属性の「手紙ハトゥー」は何の化学反応なんだ? タダでさえ悪い頭なのに更に難しい事を急に考えると酷く疲れてくる。
丁度頭をかきむしっている所にミリクナ医務長が入って来ると、驚いた表情をして俺に駆け寄ってくる。
「いや~、ちょっと難しい事を考えてしまって、結局分らなくて今の状態でして。その、なんと言うか。私がおかしくなった訳ではないので、その。まあ、そういう事でしてなんともありません」
変な言い訳をしてしまって怪訝な表情をするミリクナ医務長を他所に俺は持って来て貰った晩飯を食べる。嗚呼、一生懸命食べる事で今の変な言い訳をごまかしたといった方が正しいのかもしれない。
一通り晩飯を平らげて最後に何時ものバリウムのような薬を飲み干すと腹が膨れて今度は目蓋が重くなってくる。自分の部屋に行こうとして立ち上がるが上手く歩けないというか、またベットに尻餅をついてしまう。その様子を見かねたのか、ミリクナ医務長に「今日はここで寝なさい」と、いわれてしまう。
仕方なく彼女の言う通りにベットに横になると、自然に目蓋が下がってきて意識が飛んでしまう。
気が付くと何時も通りというか、久々に何も無い白い空間に座っている自分がそこにいる。またここが夢というか、またもや俺は夢を見ているんだと、認識する事が出来る。
また何時ものように訳の分からない映像を見せられるのかとブツブツ文句を言いたくなるが寝ている俺に文句を言っても仕様がない。
すると、突然ふかふかのソファーに座る自分に驚く。服装は何時ものここに来てから着ているジンベでは無く、俺が通勤で着ていていたスーツのパンツに半そでのワイシャツでネクタイまで締めている。それにおまけにサンダルを履いていた足がいつの間にか革靴を替わっていた。
突然、ふかふかのソファーの目の前に小さなテーブルが現れ、なんていうか何時もというか偶に現場の所長や主任に連れて行かれる場末のスナックの様な飲み屋の雰囲気になる。
急に周りが暗くなって来て、天井に薄暗い明かりが灯される。薄暗くなった途端に何処からかカラオケで流れる演歌のような曲が流れ、テーブルには乾き物とウィスキーの水割りが入ったグラスが現る。その様子に、なんだか自分の世界に返ってきた雰囲気になってしまう。
嗚呼、仕事が一段落した時なんか、よくこんな寂れたスナックに連れてこられたな~‥‥‥。なぜだか割り勘だったけど。
それに新入社員の時に始めて配属させられた現場で、余興としてしこたまお酒を飲まされた挙句、こんな場末のスナックのステージで裸踊りをさせられた事を思い出す。
俺の黒歴史でも上位に占める嫌な出来事であった。嗚呼、歌えない歌も歌わされた記憶も甦ってくる。そんな状況に次から次へと俺の黒歴史が甦ってくる。
それに、こんな所に連れてこられるよりは早く帰って公園の猫と猫らに囲まれて過ごしたかったのだけど。そんな事を思っていると周囲に人がいつの間にか現れて、誰かがカラオケで歌っているし。
俺の隣には知らないお姉さんが中身が少なくなったグラスに氷を入れてウイスキーを注ぐ。そして、ガラス瓶に入った水をグラスに注ぐとマドラーでかき混ぜて台拭きでグラスの底と側の水滴を取り俺にどうぞとグラスを渡してくる。
妙にリアルな夢というか過去の記憶というかそんな感じであるが、周りを見渡すと所々アラレスティ大陸の匂いというか雰囲気が散りばめられているのはやはりこれは俺の夢だからであろうか?
壁にかけてある絵や時々カラオケの曲が流れているモニターには獣人が出てきたりしていて妙におかしい。
それに夢なのに先程作ってもらった水割りの味が妙に甘ったるくこんな水割りなら何杯でもいけそうだ。夢なのに味や音が流れている状況に俺は少しというか段々困惑してくる。
カラオケを歌っている人物を見ると、あの現場の現場所長であった。相変わらず音程が何処かずれていて、本人は気持ちよく歌っているので気には留めないのだが‥‥‥。俺に振ってこなければ問題無しだ。
あ~早く帰りたいな~と、思っている自分であるが、一体何処に帰るのか疑問に思う。いやいや、今俺はアラレスティ大陸というか多分違う惑星に来ているのだから地球の日本に帰りたい。
すると、横の女性が俺の側に寄ってきてポツリと囁く。
「え~~、もう帰っちゃうの? 折角来たのだからもっと楽しみましょうよ~。慌てて帰る理由でもあるの?」
そんな事を俺に囁いて来るではないか。驚いた事に大音響でカラオケが流れているのにもかかわらずにそんな囁く声が聞えて来たのは俺の都合の良い夢だからであろうか?
いつの間にか横の女性は俺の腕を掴んでまだ返さないぞといった風な仕草をする。しかし、この女性、何かがおかしい。いや面白いという意味ではなく日本人というか何処か外人なんだが黒髪で白い肌に真っ赤なルージュが目に付く。
あれ~、こんな感じの人を何処かで見たような‥‥‥。暫く彼女が俺の腕にしがみ付きながら色々囁くのを他所に俺は考える。あっ、そうだ。突然、森人のメルディムさんに何処と無く似ている事を思い出す。
すると、横にいた彼女が舌打ちして俺を突き放す。あれ~、なんだこれ。俺が驚いていると妙な事を言う彼女。
「チィッ、もう感ずいたか‥‥‥。もう少し妾を楽しませる為に、もそっと、ここにいやれ!」
はあ? 何言ってんだこの人? なんで俺がこの人を楽しませる為に態々ここにいないといけないのだ? なんだか腹が立ってきて自分の夢ながらなんでこんな夢を見るのか分らない。
「俺、いや私は帰らなければ」
「ふ~ん、一体何処に帰るというのじゃ?」
そう彼女が言ったので、俺は考える。確か先程までは帰る場所を覚えていたのだが‥‥‥。いざ帰る場所を考え始めると靄がかかって見えなくなったように思い出せなくなる。
その俺が言葉に詰まっている様子を楽しむように彼女は俺に微笑んで答えを出すのを待っているようだ。段々脂汗のようなものが出てきて、汗を拭き拭き帰る場所を考えるのだが一行に思い出せない。
「テラは遠いぞ~~~、ここからそなたの物差しだと500万光年は離れているかの~~~。それに宇宙船も無いのにどうやって戻るのかえ?」
「テラ」? あれ? 何処かで聞いたことのある言葉にふと我に帰る。あっ、そうだ。俺は「地球」に帰るのであった。それに「テラ」ってラテン語の地球の意味だったような。そんな事を思い出す。
「ほう、そなたの言葉では「地球」というのか。ふむ、まあ民族が違えば言葉が変わる。で、どうやってその地球に帰るというのかえ?」
なんだか俺が考えている事が筒抜けの様に感じるが自分の夢であるからそれも仕方がない。
「どうやってと、いうか。俺、いや私は妙な術でこの世界に飛ばされたというか招かれたというかそんな感じなんで、同じように帰る予定なのですが?」
そういうと彼女は口を押さえて上品に俺を笑い飛ばす。彼女が笑っている間にジョルジョネ大尉の言葉を思い出す。確か大尉が言っていたある種族の容貌を。どんな種族だったか何故だか思い出せないが大尉が言っていた透き通るような白い肌に真っ赤な唇に漆黒の髪。確か瞳は真っ赤だったような。そんな事を思い出した後メルディム護衛分隊長やペルジャーネさんが言っていたこの地にいる神様の話を思い出す。
そんな事を思い出したところで俺を笑い飛ばしていた彼女が急に押し黙る。そして、またもや舌打ちをする。
「チィッ、今回の召喚者は割りと感が働くわ!! いや、なに、その‥‥‥。まあ、なんだ。待ちきれなくて様子を見にやってきた。タダそれだけだ。そなたは中々面白い物を持っているので気になってな!
でっ、もそっとこの大陸というかこの惑星に滞在する気は無いのかえ?」
なんだか言葉がおかしい。上品になったり男ことばになったりと統一性が無い話し方で、そちらの方が気になってくる。
「いちいち、そちは細かいの~。まあ、よい。今回は顔見世だからのぅ~!
前のヒノモトから来た奴は素直にこの惑星に滞在していたぞよ~」
「それは俺のように知識が無かっただけでは無いですかね。なにか俺の頭の中も覗いたようですけど、先程の風景は俺が一番嫌いな場所です?
『そんな所に居ろ!』と、いわれても不快に思うだけで返って薮蛇だったようですね」
「あら、まあ。そうだったの? 貴方の記憶の奥底に強烈に残っていたものだから、きっとすばらしい場所なんだと思っていたのだけど。嫌な方で強烈に残っていた場所だったようね」
「あ~、そんなに強烈に記憶に残っていたのか。トラウマだったかな?」
そんな事をつい口走ってしまったが彼女はお構い無しで話しを続ける。
「あ~、そろそろ時間切れの様ね! 貴方はやる事やってからでないと帰れないと思うけど? その為に呼ばれたのでしょ?
‥‥‥。じゃあチャッチャっと終わらして帰れば?」
はあ? 何を言っているんだか‥‥‥。それが分れば苦労しない。俺は何の為にこの地に呼ばれたか分らないだけでなく、これから起こるであろう何かを終わらすなんて夢にも思わない事である。それを軽々しく言われてしまって何を言ってんだと腹が立ってきて声を大にして大声で叫んでしまう。
突然、俺はベットから身体を起して「一昨日きやがれ!!」と、つい大声で叫んでしまう。
ふと、目蓋を開けると目を丸くして固まったミリクナ医務長とマイネンスさんが俺を凝視しているではないか。窓の木戸は開いていて朝の心地よい風が部屋に入って来て、今は朝なのだと俺は気が付く。なぜだか右手をグーにして天井に突き出していて二人の俺への視線が妙に痛い。
「いや~、変な夢を見ましてね‥‥‥。あれ? 一体何の夢を見たのか忘れましたが‥‥‥」
気が付くと、顔と身体には玉のような汗が浮き出ていた。それをジンベの袖で拭うと昨日とは打って変わって身体が軽い。立ち上がっても昨日のように立ち眩みはしない。その様子にも彼女達は驚いている。一旦立った俺を再びベットに座らせるミリクナ医務長が俺のおでこに手をやって体温を測っているようだ。
「いや~、貴方が朝方になって寝汗をかいてうなされていたものだから、マイ姉を呼んで貴方の様子を診て貰ったのだけど。本当にに何処も異常は無いの? それに夢を見たといっていたけどこの前のような悪夢だったのかしら?」
「はあ、悪夢? と、はいえない様な。そんな感じなような。だけど恐ろしいというより腹立たしいという事だけが俺の記憶に残っていまして、今思い出せるのはそれだけです」
「まあ、いいわ! 皆は朝の訓練が終わって朝食を食べている頃よ。あなたも支度をして指揮車に乗り込んでね!」
俺は返事をして朝飯にありつくために食堂に向う。その道すがら俺が見ていた夢の事を必死に思い出そうとするのだが、なぜだか思い出せない俺であった。
後編へつづく
次話は2/23日曜日の昼頃に投稿する予定です。




