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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第3章 平穏な日常に飽きてくる年季奴隷 》
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<3-21> 「手紙ハトゥー始めました  (前編)」

最新の本文修正日は2014年12月23日です。

 海人族のおさの家で見せて貰った魔素結晶の欠片のような綺麗な宝石を手に取って眺めていた俺ですが、また何か起きたようです。


 一時は胸の中に入った魔素結晶の欠片を思い出して手放したのに、何故だかまた手に取って眺めてしまう。そのお陰で左手の手の平に1円玉ぐらいの大きさの焼印というか魔素陣のようなものが描かれてしまう。


 驚いた事に俺には見えるのに他人は見えないという代物であった。まるで昔読んだ漫画ようで、もしかしたらこの焼印が全身に広がって行くのかと冷や汗が出る。しかし、その焼印は直ぐに消えて見えなくなり体の具合が悪くなって来た俺は薬を飲まされ寝かされる。



 その寝ていた時に見た現実のような夢のような出来事をペルジャーネさんに話されて、困惑してしまう俺であった。






 先程聞いた別人格の出現の話に何か納得行かないというか理解を超えてしまって今一現実味が持てない俺に対して、ペルジャーネさんじゃなく、デウシーさんに変わった彼女はなんとも歯切れの悪い答えのような話をしてくれる。


 それはかつて自分が体験した事に基づく話であるから説得力はある。寄生虫などが俺の体内に居るというならまだ話が分るが別人格が俺の体内に‥‥‥。あ~、この場合は脳なのか?


 寄生虫ならそれを取り除けばそれでお終いだが、別人格となるとどうすれば良いのか俺には思いつかない。まだ幽霊が取り付いているといってくれた方が心持落ち着く。お払いなんかをすればいいしね?


 あっ、そもそもこの国にお払いのような儀式が有るのか分らないが‥‥‥。それも怖い話になってしまうか?


 それに一応は思い当たる人物は見たような見てないような感じである。多分、もしかしたらと思うが、俺が誘拐された時に出た例の後頭部を叩いたあの仙人のような爺さまだ。いったい何者なんだろう。



 そんな事を考えていると、前の座席に座っていたミリクナ医務長とマイネンスさんが起きた俺の様子を見にやってくる。おでこに手を当てるミリクナ医務長とは対照的に、俺をまたベットに寝かせて自分をメガネをとって先祖帰りするのはマイネンスさんである。




 「熱は無いようだけど体の具合はどう?」




 「はあ、特にこれといった事はないですけど。そのマイネンスさん? 俺のこれに異常が起きたのでしょうか?」


 そういって自分の胸の辺りにある魔素結晶の欠片を指差し彼女に尋ねる。




 「ふう、疲れた。ん? あっ、嗚呼、これといって無いわよ。いたって普通の体だよ‥‥‥。それ以外はね!


 あ~、心配はしなくても大丈夫。今の所、それは他の臓器に悪さしていないから。しいて言えば皮膚と筋肉の間に挟まっている状態かしら」




 俺が返事をすると待ってましたというように魔素力の計測器を準備するミリクナ医務長は黙って計測機器の配線を俺の左腕に取り付け始める。最後に配線が付いた帽子を被せると、何時ものように顎で魔素術の動作を行えと命令してくる。俺はため息を付いてその指示に従うしかない。


 すると、何回か動作をしている内に二人の医者は何か頷いている。彼女達から説明があるのだと思っていたのだが話をしてきたのはデウシーさんのほうであった。




 『おう、おめえら。こいつの魔素力が少し上がっているだろ。そうだな! それぐらいだと手紙ハトゥーぐらいは使えるんじゃねぇ? 術の方は多分駄目だけど陣のほうは多少使えると思うぞ。それに一応生誕属性を良く確かめるといいと思うがな』




 そんな事を話したかと思うとミリクナ医務長は計測器のつまみやスイッチのような物をいじって何かやっている。準備が出来たようなのでまた顎で指示される。


 「一応は彼女より年上なんだけどな~」と、心の中で囁きながら魔素術の動作をしていると、計測器とにらめっこをしていたミリクナ医務長がマイネンスさんの肩を叩いて彼女に見せる。計測器を覗いたマイネンスさんも驚いた表情をして何かに記入する。その手は僅かだが震えているように見えた。



 そこに丁度、この指揮車の扉を叩く音がしてミリクナ医務長が扉を開けるとジョルジョネ大尉とボフボーニャさんが入ってくる。ミリクナ医務長はジョルジョネ大尉に小声で何か耳打ちすると、大尉も驚いた表情をして計測器を覗き込む。ボフボーニャさんは何があったのかと同じように計測器を覗き込んで俺に文句を言い始めるではないか。




 「ずるい~~~~!!! なんで~?! 私が良い師匠の一番弟子なのに!!


 なんでお前みたいのが師匠と同じな訳?!


 師匠~~~!! どうしてこいつが全属性使えるのですか?!!」




 そう俺に文句を言ったかと思うと、ペルジャーネさんに変わった彼女に泣き付いてしまう。座った彼女の膝にすがるように顔をうずめその際被っていた帽子が床に落ちる。床に落ちた帽子を大尉が拾って前の席のテーブルに置いて、また計測機器を覗く。


 そんな様子を眺めながら先程の話の事を考える。この俺が全属性使えると話していたような‥‥‥。一体何が起きたのか分らない。


 ペルジャーネさんに聞こうかと思ったがボフボーニャさんをあやしているので聞くに聞けない。それに他の3人は前の席に行ってしまい三人で何か話し合っている。一人取り残された俺はどうすれば良いのか分らない。




 暫くそんな状況を見ながらぼ~っとしていると。いや、呆然としていると、前の席の3人が話し終わったようでこちらに戻ってくる。大尉はなんだか嬉しそうに俺の肩を叩いているが、肝心の説明をしてくれないと俺には分らない。


 「あのー、大尉? 何がそんなに嬉しいのか俺には理解出来ないのですが?


 ひょっとして私はもう魔素術を使えるようになったのですかね?」




 「あっ、ああ、うん。まあ、その、なんていうか。君は選ばれた存在だったと確認が出来たといった所かな。まあ、悪い事じゃないから受け入れて欲しい。君は横の筆頭宮廷魔素術使いと同じように全属性を扱う事が出来るようになったようだ。詳しくはミリクナ医務長に聞くといい。話してやってくれるか先生」




 「そうね、驚いた事にあなたの生誕属性がもう一つ増えたようなの。最初は木属性だったのだけど、先程計測すると風属性も生誕属性になっているのよね。生誕属性が後になって増える事は今までなかった事で皆というか私は驚いてしまって取り乱してしまったわ。そういう事で今の貴方は全属性を使用できる下地は出来上がったのだけど‥‥‥」




 最後に言葉を濁して中々話さない彼女をじっと見る俺はある事を思い浮かべる。ひょっとして全属性は使えるが魔素力が低すぎて使えないとか、使えても威力が低すぎてお粗末な物なのかもしれない事を‥‥‥。嗚呼、俺らしい結論。


 しかし、もしかしたら探査術の範囲は広がったのかもしれない。後で試してみよう。


 「それで、その話の後はひょっとして魔素力の均衡が悪くて魔素術はまだ扱えないという事ですよね?」




 すると、ミリクナ医務長は僅かに頷く。


 「いやいや、俺は全然気にしていませんよ? だって、行き成り魔素術使えても良い事なんか無さそうだし。


 あっ、確かに俺に期待をしている人達に対しては迷惑な話かもしれませんが‥‥‥。逆に私は安心しました。制御しきれない力をいきなり使えるようになっても困るだけですよ。


 まあ、身の丈にあった状態だからこれで良しとしましょう」


 変に開き直った感じになってしまったが俺は凄くガッカリしたかと思われていたようで、俺のその答えに対して拍子抜けといった表情をしたのはミリクナ医務長だけであった。大尉はなぜかニコニコしているし、マイネンスさんは何か呆れた表情をして、あほらしいという仕草で何かの羊皮紙の書類に文字を書いている。


 多分何かの報告書だと思うが、ミリクナ医務長はブツブツ言って俺に着けた配線を取り始める。これでやっと俺は解放されるのかと思って立ち上がると、大尉に肩を掴まれてまた椅子に座らされる。




 「まあ、ちょっと座りなさい。これで魔素術の下地ができたような物だ。それに魔素術は使えなくても、魔素陣は使えるようなのでこれからの移動日は後ろのペルジャーネさんに先ずは手短な物から教えて貰いなさい。


 君は自分を卑下する傾向があるのだが、たまには自分を誇りなさい。あっ、いや、そのなんだ。君は選ばれたのだから自信を持って良いと思ってな。まあ、そういうことだから‥‥‥」




 すると、後ろですすり泣いていたボフボーニャさんがまたとんでもない事を言い放つ。




 「良い師匠は私のだから駄目です!! お前は全属性使えるのだから欲張るな!! ずるい、ずるい!、ずるい!!~~~」




 そういってまた泣き出す‥‥‥。子供か?! ああ、まだ幼さが残る少女だから子供か。それを見かねてペルジャーネさんは彼女の頭を撫でてあやすと、彼女を連れて外に出て行ってしまう。俺はどうするのですか? と、いう様に大尉の顔を見る。




 「あ~、当分はデウシーさんから教えて貰いなさい。まあ、彼女は君を気に入っている様だから問題ないだろ。あっ、それと外に出てもいいが、今日起こった事は他言無用だからな。皆にはか弱いリョウジがまた倒れたと話してあるから余りうろつくなよ」




 そう言い残してジョルジョネ大尉も外に出て行ってしまう。残された俺はようやく解放されたのかと納得して外に出ようとすると、また引き止められる。




 「ついでだから、いつもの検診をやるわよ。そこに大人しく座って、今場所を作るから」




 ミリクナ医務長がそういうと俺が寝ていた簡易ベットを魔技箱に仕舞い壁の前に俺は立たされる。いつものように身長と体重、それにあちこちを計られた後に問診を受けて1時間程経ったと思われる。その結果は何時もと変わらずで、彼女達は無言で結果を羊皮紙に記入する。



 ようやく解放されて指揮車から外に出ると夕方のようで、日が沈む夕焼けが眩しい。あたりに美味しそうな匂いが充満していて急にお腹の虫が鳴る。


 しかし、ガルボルテ工作長の修理作業はまだ続いているようで彼の修理を待つ人影が見える。海産物の仕分け作業は終わったようで、今は満載になった木箱を例の倉庫直結型の魔技箱で送っているようだ。


 そんな様子を眺めていると、どうやら作業は終わりのようで何時ものゴナベル奴隷長の声がする。作業止めの合図で、皆が片付を始める。


 プイホンさんは麻袋を畳んで紐で縛ると、海人族のラッコにそれを渡していた。ツーショットだと、またこれも乙なものである。久しぶりにその光景を目に焼き付けると、プイホンさんは走って配膳の列に並んでしまう。


 どうやら今日はここで野営をするようだ。魔技箱を使っていた馬車が馬車列に戻ってきて、馬の馬具を外したりテントを広げ始める。1号馬車は既にテントを広げて野営の準備をしていたので自分も配膳の列に並ぶ事にする。



 配膳の列に並びながら先程の馬車で起きた事を反芻するように思い出す。急に後ろの人に背中を突かれて自分の番だと認識してしまう。慌てて今日の晩飯を貰ってテーブルに着く。


 しかし、心ここに非ず的な状態で晩飯を食べてしまい、後ろの何時もの視線に気が付き慌てて美味しかったですアピールをする。食器を下げた後もなんだか眠る気分ではなく、俺は何となく海岸の岩の上に座り込んで沈み行く夕日を眺めていた。



 竜巻が起きた後にあの魔素結晶の欠片を手にした後に生誕属性が増えた。その前は‥‥‥。そうだ、あの陸ハトゥーだ。確かあいつのあのでかい頭の眉間にも赤く輝く魔素結晶の欠片のような物があった。その後に探査術が使えるようになった。そうやってつい最近の事を思い出していく。


 あの岩猪の時もそうだった。あれ以来魔素術の動作をすると最初だけだが何かが手の平に集まる感じに気が付いた。まるでジグソパズルのピースが嵌まって行く感じに寒気がしてくる。


 このまま行くとそのパズルが完成した時に一体どうなるんだ俺? 不安? いや、そんな事じゃ無くて。こう、なんか自分が自分で無くなっていくようで怖くなる。


 それにペルジャーネさんが感じたという別人格? そんな他人が俺の中にいるらしい。俺はその他人を御しえるのか? それとも乗っ取られるのか? そんな事を考え始めるとなんだか涙が出てきて、久しぶりに男泣きしてしまう。



 そんな孤独な時間を過ごして、なんだか肌寒くなってきて寝床に戻ろうとすると俺の後ろに立っている人影がこちらに近付いてくる。俺は慌てて先程流した涙をふき取り何事も無かったような素振りをする。


 近寄って来たのはペルジャーネさんかデウシーさんであった。彼女達を判別するには眼前まで近寄って唇と瞳の色を見なければどちらの人格化は分らない。月明かりに照らされたはオレンジ色の瞳に真赤な唇のデウシーさんであった。




 『あ~~、うぜ~。ようやく解放されたぜ!


 そこで何やってんだ、おめえは?』




 「はあ、ちょっと夕陽を眺めて、感傷に浸っていました。これから寝るところです」




 『まあ、ペルもよく泣いていたぞ。自分の体を俺がよく乗っ取るものだから不安で仕様がなかったらしいぞ。まだ中の奴は顔を見せていないし、そのなんだ。前兆はまだ無いのだろ?!』




 「いや、その‥‥‥。なんていうか、もしかしたら見てしまったのかなと、思うのですよ」




 『はあ?! それを早く言え! 何時だ?!』




 「はあ、それはですね四ヶ月ほど前なのですが。私が誘拐されて、解放された時なのですが。その時に先程と同じように意識が私の体を出て、外の様子を観察したようなんですよ。


 その時に私が気を失う時に他人には見えない爺さまが俺の後ろから気絶する前の俺を殴ったように見えた事がありまして。あ~、自分で言ってて、何を言っているか分らないのですが、当時はそれが夢だと思っていたのですよ。その、私が気絶する過程が見れたもので」


 すると、彼女は腕を組んで考え始める。


 「それにですね、現実に起こる事を事前に夢で見てしまう感じなのですが、どこかが違うというか。それも直ぐに分らなくなってしまって一体なんでしょうね?


 後は見た事が無い土地と人物達の夢を見るぐらいです」




 「予知夢ね」




 そう答えたのは銀の瞳に変わったペルジャーネさんであった。




 「正確でないのは予測であって確実性がないから、実際の時間軸によってはその予測に誤差が生じるからかもね。その他の夢はもしかすると隠れた人格の記憶かもしれないわ。断片的な事が多くて多分貴方には意味が分らないと思うけど。


 そうすると、予知無とその記憶の断片が混濁しているともいえるのかもしれないわ」




 そんな事を言ったかと思うと、今度はペルジャーネさんも腕を組んで考えてしまう。すると、また一人この話に参加する人影が近寄ってくる。マイネンスさんであった。




 「楽しそうな話をしているようね。私も混ぜて~」




 何処か場違いの雰囲気ではあるが、ペルジャーネさんの別人格を研究している彼女なら何か答えを見出すのかもしれないと、俺は先程座っていた岩の上に座る。




 「デウシーの場合は彼女を透視して分ったのだけど、貴方の場合はさっぱり分らないのよね。その胸の石にしたって、故意に入れるのは不可能に近いと思わない?


 私がそんな事をやろうとすると不可能だと思うけどね?」




 確かに言われてみればそうだ。この胸の魔素結晶の欠片のお陰でいろんな事が起きたとなると、ジョルジョネ大尉やその上の大佐が知らない人物がこの奴隷旅団所属中隊に紛れ込んで仕組む事になる。


 ミリクナ医務長やもしかしたら他に隠密のような人物がいるこの奴隷旅団所属中隊に忍び込むというか紛れ込むには相当な事をしないと不可能だ。もしかしたら偶々体の近くにあった魔素結晶の欠片に反応して俺の中に居た誰かが目覚めたのか? それとも入り込んだのか? 分らない。




 「でもさあ、あんまり深く考えても仕方がないと思うけどね~。答えなんか出ないと思うよ。まあ、その隠れている人格がリョウジの目の前に現れて事情を聞かない内はね。


 私やペルのように今の自分を受け入れるしかないよ。くよくよ考えるだけ無駄、無駄~。さっさと、寝ちまって忘れた方が良いよ。その内、解決方法が分るかもしれないしね、今は出来る事に集中したら?」




 まあ、確かにマイネンスさんの言う事は正論で反論する余地は無い。実際に彼女達の体も普通の人族とは違い、彼女達も彼女なりに悩んだり苦悩したに違いない。


 特にマイネンスさんは250年近く生きているのだから普通の人生の5倍近く悩んだと思う。そう考えると俺は彼女達よりは幾分マシなのか?


 いやいや、さすがに異世界に連れてこられてこんな体に変化していく人生なんて滅多やたらにないでしょ。




 『あ~、わかんねぇ~。学院の図書館にそんな本があった気がするんだが。違ったかな? さ~て、ちょっとほっつき歩いてくるぜ!』




 そんな事を言って彼女は暗闇に消えて行く。残された俺は仕方なく立つと、ふと、疑問が沸いてくる。


 「マイネンスさん? 彼女達は寝ないのですか?」




 「あ~、そういえばそうだね。彼女達が寝ている所を見たことないね。小さい頃もどちらかが必ず起きていたからね」




 「いや、それはまずいでしょ? 体は休息しないと持たないでしょ?」




 「体に変調があると木属性の魔素術を使っているから大丈夫だと思うよ?」




 「いやいや、そうすると大変な事になると思いますよ? 私が居た所では人族が睡眠を取る理由がありまして、睡眠時に体を休息させて内蔵を休ませたり頭を休めて体調を整えるはずですよ。確かに生命活性の魔素術を使っても活性化させるだけで根本は解決していませんよね?」


 そういうと彼女は考える素振りをしてしまう。そんな彼女をまくし立てるように話を続けてしまう。


 「全速で走って疲れたら休むのが普通ですが、もしかしたらペルジャーネさんは何時までも全速で走り続けている状態ですよね? そうすると、当然、寿命も縮むと思うのですが‥‥‥」


 最後にそんな事を言ってしまったので尚一層彼女は難しい顔をしてしまう。




 「リョウジもそう思うよね。私もそう思って彼女には何回かその事を話していたんだが、魔素術の研究が面白くて寝る暇が惜しいそうだ」




 「まあ、二十歳台は若さに任せて大丈夫かもしれませんが、そろそろ体を休める事を覚えさせないといけないと思いますよ?」




 「じゃあ、リョウジ! 貴方に任せるわ! 彼女を説得しておくれ! 頼んだよ?!」




 そんな事を言って彼女も暗闇に消えていく。あ~、なんだか偉い事を押し付けられてしまったような‥‥‥。自分の事も満足に出来ないのに他人の事なんか出来ないよ~。そう囁いたが後の祭りである。


 嗚呼、なんであったか。俺に手紙ハトゥーを教えてくれるそうだからそれとなく言ってみるか? それに本当に俺が魔素陣を使えるのかも眉唾で、実際に使えるのかは分らない。なんだかこの前までの何にも考えていなかった平和な日々が懐かしくなってくる。



 そんな事を考えながら自分の寝床に入り何時もの探査術の訓練をする。すると、驚いた事に範囲が若干広がった感じがしてくる。どれくらいといわれると前までは寝床を中心に半径5mぐらいであったが今は指揮車の所まで届く感じである。ここから大体5m以上は慣れているから半径にして倍の10mぐらいになったのかもしれない。今誰かが指揮車の中に入った感じがして範囲が広がった実感をかみ締める。




 そんな出来事が合った為「まあ、俺も捨てたものじゃないよね?」と、どこか前向きな気分になってしまい、そのまま寝てしまう俺であった。





 後編へつづく

次話は2/18の夕方に投稿する予定です。

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