<3-20> 「年季奴隷と海人族 (後編)」
最新の本文修正日は2014年12月20日です。
小学生の時に行った水族館でラッコの展示を舐めるように見入って時間を忘れてしまった俺ですが、ここのラッコも大好きになりました。
確かに体は俺より遥かに大きく2m越えですが、その愛くるしい顔はあの時見入ったラッコそのものであった。
彼らの長の自宅に何故だか俺も招かれ、昆布茶と刺身をご馳走になる。俺が彼らを気に入ったように、昆布茶と刺身を美味そうに食べた俺も彼らに気に入られたとジョルジョネ大尉は言う。
そして、日用雑貨と物々交換をする為にラッコの長であるチャモイヌさんの貴重な品を見せられる。
その中に在った真っ赤な綺麗な宝石に俺はなぜか魅入られて手に取ってしまう。それが一瞬輝き俺の左手の手の平に何かの焼印をされてしまう。しかし、なぜか大尉は俺の左手の手の平を見ても何も見つけることは出来なかったようだ。
次は一体何が起きるのか心配になってくる俺であった。
「いや、大尉?! 手の平に魔素陣のような焼印が出来ているのですが?」
俺がそう言って左手の手の平を大尉に見せて右手の人差し指で指し示すと、また確認する為に手の平を見るがどうやら大尉には見えないようだ。その様子を見て俺は段々青くなる。
大尉は戻って来たチャモイヌさんに先程の魔素結晶の欠片を借りる事を話して、俺の腕を引張り洞窟の外に連れ出して、何処かへ引っ張って行くではないか。そのままずるずると俺を引張り、何処に連れて行かれるかと思ったが指揮車の前に来てその指揮車の扉を叩く。中からミリクナ医務長が顔を出して、俺と大尉は中に招き入れられる。
「先生、こいつまた何かあったようだ。診てくれ!」
そう話すとミリクナ医務長やマイネンスさんは真剣な表情に変わって先程何があったか俺に話させる。すると、俺の左手をじっくり見る二人だが、彼女達も見えないようだ。
テーブルの上に先程の魔素結晶の欠片を置いてその石も確認しているのだが、驚いた事に先程ルービーのように綺麗な色であった物がいまは赤黒く変色して、まるで力を使い果たしたような感じになっていた。
それを見たミリクナ医務長は何か気付いたようでマイネンスさんの腕を引張る。何事かと思ってマイネンスさんはミリクナ医務長を見るが耳打ちして小声で話していて俺には聞えない。突然マイネンスさんが先祖帰りして俺を舐めるように観察して口を開く。
「あらら? 何かしら? 私は魔素陣に詳しくないから分らないわね~」
そう話すと、後部座席でボフボーニャさんと話し込んでいたペルジャーネさんが前の席に来て顔を覗かせる。
「ふむ、これは魔素陣のようね~。小さくて読みにくいけど何かしら?
‥‥‥。嵐の陣形? 風に水、それに無属性が読み解けるわね~。でも何かが違うのだけど‥‥‥。学院の書庫に詳しい物があったと思うけど」
『どれ、見せてみろ!! ったく興味本位で何でも触るからこうなるんだ!!
ふむふむ‥‥‥。うおっ!! 消えちまったぞ?!』
そう言われて慌てて俺も自分の手の平を見るがデウシーさんが言ったように魔素陣が消えてしまっている。あ~、またなんか起こるのか?
俺がそんな事を思ってくると、なんだか自分の頭がくらくらして血の気が引いてしまう感じになってくる。
その俺の顔色を心配したのかミリクナ医務長が何時ものように水を入れたマグカップに和紙に包まった粉薬を俺に勧めてくる。それを貰うと後部座席に用意された簡易ベットに寝るように言われてしまう。
何故だか、上半身を裸にされてベットに寝かされて、そのまま寝てしまえと周りの人間に言われる。意味が分らない。そのまま、俺は意識を失って寝てしまう。
しかし、なぜだか寝たはずなのに体を起して周りをキョロキョロしてしまう。なんだかフワフワしていてそういえばこんな事が前にもあったような事を思い出す。
ふと、横が気になって見ると自分が横になって寝ているではないか。
幽体離脱? そんなあほな事を口走っていると、横になっている俺を観察するように周りにミリクナ医務長とマイネンスさんや、ペルジャーネさんとボフボーニャさんと、それにジョルジョネ大尉がこれから何が起きるのか知らないが俺をじっと見つめているようだ。
一体何が始まるのか俺も気になってみていると、俺の枕元に先程の赤黒く変色した魔素結晶の欠片が置かれる。それをじっと周りの連中が見つめているではないか。
途中で誰かがこの馬車を訪れたのか大尉が扉の方に振り向いて扉を開ける。すると、アミュネス少尉が顔を出して何か言っている。ああ、この時初めてというか前と同じように声や音が聞えない事に今更気が付く俺であった。
どれだけ待ったのか分らないが、いい加減飽きてきて周りをキョロキョロしていると、ペルジャーネさんが何か二重に見えて、はっきりと彼女を認識できない事に気が付く。なんというか、ピントが合わないというかそんな感じであった。つい、興味本位で、俺は彼女を触って驚いてしまう。
本体というか実態の方は寝ている俺のほうを見ているのだが、二重にみえた影の薄いほうが彼女に触った俺の方に振り返るではないか。そんな彼女は、こちらを振り向いて何か言っているのだが聞えないし何を言っているか分らない。
すると、本体の方も俺に気が付いたのか、寝ている俺を観察するのを止めて後ろにいた俺を見るように振り向いた。同じように口を開いて何かを言っているのだが同じように聞えない。
俺は彼女達に聞えないと、身振り手振りで示す。色々とやっていると分ったという風に向うも身振り手振りで示してくれた。その分ってくれたのかという安心感でほっとすると目の前が真っ白になって、今度こそ意識が飛んでしまう。その後の事は何も思い出せない俺であった。
☆ ☆ ☆
リョウジに薬を飲まして上半身を裸にさせて横に寝かせたミリクナは、これから始まるかもしれない現象の説明を始める。
「まだ、確証が持てない事なのですが、この前の陸ハトゥーの時に起きた事を説明します。あれは、陸ハトゥーが死んで朝方の事です。大尉から貰ったあの魔素結晶の欠片の事なのですが、それが突然霧散して煙のようになりました。
その煙が何処に行ったのが問題です。その煙は彼のこの部分に吸い込まれるように入ったのです。その時は中に入っていると思われる魔素結晶の欠片が仄かに光りまして、最初は私も何が起きたのか理解できませんでした。
それで、今回もその事象が起こるかも知れないと思いまして彼を寝かせました」
「ちょっと待ってくれ先生?! 今回は魔獣は現れていないぞ!!
‥‥‥。あ、ひょっとしてあの竜巻がそうなのか?」
「それは分りかねますが、この赤黒くなった魔素結晶の欠片もどきがそれを証明していると思います。大尉にはこれの入手経緯を後で聞いて欲しいのですが宜しいでしょうか?」
「それは構わないが‥‥‥。ペルジャーネさん? その、あの竜巻をやった時に手ごたえなんか有りましたか?」
『ばっかじゃね~の? そんなこと分るわけね~よ!!
‥‥‥。あっ、そういえば‥‥‥』
「心当たりがあるわよ! なんていうか虫を潰した感じの何気ない感じかしら」
心当たりがあるのか黙ってしまったデウシーに変わってペルジャーネが答えを出す。その彼女が考えだしたかと思うと、突然後ろを振り返って身振り手振りをしだしたので周りの皆は何が起きたのかと驚いて唖然とする。
次第に何かのやり取りをしているのかと納得する皆がペルジャーネがその仕草が終わってこちらを向くのを待つようだ。
ようやく終わったようで振り向いたペルジャーネに対して何があったのか聞いたのはマイネンスであった。
「何時も思うけど、突然変な事をしないで欲しいね~、ペル! 一体何があったんだい?」
「えっ! いや、その、なんていうか。私も驚いちゃって、何がなんだか‥‥‥」
『こいつ! あっ、リョウジの意識が中に居た俺に触りやがってな! まあ、俺じゃ埒が明かないから、ペルに相手させた』
「こちらが話している言葉が通じないというか、聞えないようだったわよ。それになんだか直ぐに消えちゃったけど」
その彼女らの話を聞いていたジョルジョネ大尉は何か思い当たる事があったのか突然叫んで唸りだす。その様子に周りが驚いてミリクナが大尉を見て何があったか聞こうとする。
「大尉? 思い当たる事があるようね」
「ああ、リョウジが誘拐された時の話を思い出した。俺があの建物の中で奴らを処分して首が転がった事が有っただろ‥‥‥。その俺が奴らを殺った状況を何故だかこいつ、リョウジが知っている感じだった。その事を思い出して今の出来事が何か納得してしまってな、大声を出してしまった。その驚かせてしまって‥‥‥」
すると、突然ミリクナは皆に静かにするようにと促す。皆がミリクナに注目すると彼女があるものを指差す。皆がその指先を見ると赤黒くなった魔素結晶の欠片と思われるものが霧散し始めた所であった。
徐々に煙のようになって行く様を皆は唾を飲み込んで観察している。一旦空中に浮かんだ煙が段々リョウジの胸の方に集まっていく様子が見て取れた。
すると、仄かにリョウジの胸、魔素結晶の欠片があると思われる場所が光りだす。今だといわんばかりにマイネンスはメガネを外してその胸の中にあると思われる魔素結晶の欠片を観察しているようだ。森人に変幻したマイネンスはその現象が収まるまでじっとそれを見つめていた。
ようやく仄かな光が収まった所で変幻していたマイネンスは疲れたようにため息をして瞬時に人族の姿に戻る。そして、重い口を億劫そうに開く。
「驚いた。僅かだが例の石が大きくなった。多分、魔素力を計測すると僅かに数値が上がっていると思うよ。こんな事は初めてだよ」
「ちょっと待って!! と、いう事はこれはあの赤黒くなった魔石‥‥‥。
あっ、そうだ!! これは魔石だわ!!
その魔石を吸収して大きくなったという事?
そうすると、これが大きくなって行くと、どうなってしまうのかしら?」
「ミリー先輩!! 私にだって分らないよ?!」
「いやいや、ちょっと待ってくれ先生方。魔石ってあれだろ? 創世大陸の何チャラとか言う洞窟で取れる石だろ? 魔素結晶の欠片よりは力が劣ってこちらの大陸では使い物にならないが、向うでは何かの薬なんかに使えるので重宝されているとか聞いた事があるぞ?!」
そんな3人の話をぶった切るようにペルジャーネが口を開く。
「昔の文献で読んだ事があるのだけれど。魔石を使った魔法陣について書かれた話を‥‥‥。すると、あれは魔素陣ではなく古い魔法陣ってことかしら?
そうすると先程の意味が違ってくるはね。でも、思い出してもあれは魔素陣だったのだけど。ちょっと研究させてくれないかしら?
今すぐ答えが出るものじゃないわよ?!」
「あ~、兎に角。この事はそれぞれの研究機関に紹介して文献を漁ってもらうしかないだろ?
ここで直ぐ答えが出せる物ではない。俺は先生に言われた通り、あの長に聞いてくるよ。それにしても面白い物を見せてくれてありがとう、先生方」
ジョルジョネ大尉はそういうと指揮車から出て長の所に戻ってしまう。
ミリクナとマイネンスは二人で話しながら報告書を書き始める。残りのペルジャーネはリョウジが寝ている簡易ベット横の後部座席に座ってリョウジの左手を握り走査を始めるようだ。
それをぽつんと一人取り残されたボフボーニャは肩から提げている小さな鞄から筆記用具と羊皮紙を取り出して何かを書いて手紙にすると、魔素陣を書いて誰かに報告するようだ。陣を発動させると折りたたまれた手紙は覗き窓から何処かに飛んでいってしまう。
そして、師匠の様子を見ながら黙って突っ立っていた。
一方、外に出たジョルジョネ大尉は急いで長の元に行く。
色々と言い訳を考えなければならない。あの石が消えてしまった事などをどう説明するか考えたが、結局あの石が気に入ったので料金の代わりにしてもらう事にする。それで追加の雑貨などをそれで精算する事に決める。
長からあの石の入手経路を聞くと、昨日に起きた竜巻が消えた後に空から降ってきたと話していたようだ。ミリクナ医務長が予測した通りの結果になってしまったことで、ジョルジョネ大尉は複雑な心境になってしまう。その話を彼女に報告して自分も上司に今日起きた事を手紙に認め、手紙ハトゥーにして飛ばす事になる。
そこでジョルジョネ大尉に疑問が浮かぶ。
それは、まるでこの中隊が動く道を予測しているような出来事に対してであった。この中隊というか多分リョウジに対して連動していると思われるからだ。
そんな疑問がジョルジョネ大尉の脳裏をかすめ、次々に色々な考えが浮かんでくる。
「ひょっとすると先行させている他の奴隷旅団所属中隊は無駄になっているのではないだろうか?」
そんな事を思ったジョルジョネ大尉はリョウジが近くを通ってから初めて罠というか事象が起こる気がして身震いしてしまう。
更にジョルジョネ大尉は考えを巡らす。
「そんな事が可能なのかは分らないが魔素術は奥が深く、自分が知らない事がまだまだあるのではないか‥‥‥。
ひょっとしてこの中隊を監視している者が近くに居て、ああいう事象を起しているのか?」
そんな事を考えた所で、リョウジを誘拐したり、あの伯爵一行を殺害した者共の事がジョルジョネ大尉の頭の中を過ぎる。
再び、筆を取って素早く手紙を認めたジョルジョネ大尉はザルツベ大佐に手紙ハトゥーを送る。そして、ため息をして椅子に寄りかかり考え込むジョルジョネ大尉であった。
☆ ☆ ☆
気が付くと、そこは薄っすらと明るい指揮車の中であった。そういえば俺はまた薬を貰って寝てしまったと思い出す。それにしてもリアルな夢を見たな~‥‥‥。
左手を誰かに握られている感覚がして、頭を動かすと俺の左手を握るペルジャーネさんかデウシーさん?
どちらかは分らないけど、俺がモジモジしていると白く濁った瞳が銀色になる。今はペルジャーネさんのようだ。その彼女が口を開く。
「おや、目が覚めたようね。ずいぶん深い所にもぐっていたわね?
それにしても先程は何を言っていたの?」
へっ? 先程ってなんだ? あれは夢じゃないのか? ‥‥‥。分らない。
「あっ、あ、あの、その、なんていうか。仰る意味が分らないというか。俺の夢まで覗いたのですか?」
「あら、夢として認識していたのね。あれは現実よ?!
貴方は私の中に居たデウシーに触れたの。それで驚いたデウシーが私を呼んであの身振りと手振りをしたのよ」
「はあ、良く分からないですが‥‥‥。あれは話している声というか全ての音が聞えないと表現したのですが‥‥‥。分らなかったですかね?」
「いえ、大体は分ったけど。それより貴方の意識が外に出て私の中のデウシーに触った事に驚いてしまってね。こんな事は初めての事で、どうしていいのか戸惑ってしまってわ。
あっ、体に変調はないかしら? 頭が痛いとか体がだるいとか? もしかしたら自分の意識の片隅に誰かがいるとか? そんな事はないわよね?」
「はあ、体はいたって‥‥‥。あっ、あれ? まだ薬が効いているのか、体が動かないようです。頭から下の感覚がありません。でも、話せるからいいかな。それで、その私の意識の片隅に誰かがいるという事はどういうことでしょうか?」
「難しい話になるから順を追って話すわね。あれは私が五歳になった頃かしら。まだ家族と暮らしていた時の話ね‥‥‥」
そういって彼女は昔を懐かしむように自分の身の上話を始める。彼女が言うにはその五才になった頃にもう一人、自分以外に自分の意識の中に他人が住んでいる事に気が付いたという事らしい。
最初は目には見えないが、目を瞑ると頭の中に出てくる人物に対して驚いたそうで。その姿形が自分と瓜二つで違うのは唇の色と瞳の色だけであったからだ。
最初は何も無い部屋に椅子に座った自分が居て、周りを見ると白い壁に扉がある様子がなんとなく頭の中に浮かんできたそうだ。
そんなある日、突然その扉が開いて自分と同じ顔つきの少女が顔を出した。その少女は最初、椅子に座って寝ている自分の様子を覗き見るように扉の隙間から自分の顔を出してチラ見する程度であった。
それが次第に普段椅子に座って現実の世界を体験している時にも扉が開いてその椅子に座っている自分を観察するようになって来る。
ある日、とうとう椅子に座っている自分を突き飛ばして代わりにその彼女が椅子に座ってしまう。その彼女がデウシーさんのようで彼女はその椅子に座ると今まで自分が出来なくてペルジャーネを羨ましそうに見ていた事の鬱憤を晴らすように現実の元自分の体であったその体を自由に動かし始めた。
驚く事に椅子と扉しかなかった白い空間に、突然外の様子が分るように窓が出来て、その窓のお陰でデウシーが動かす外の体の様子を覗く事ができたそうだ。デウシーさんは乱暴ものでペルジャーネさんが大好きだった人達に乱暴を働いたりした。
手に負えなくなった両親は近くの奴隷組合の療養所に相談したが、結局自分はその両親に見放されて奴隷組合の孤児院に預けられる事になったそうだ。
その時は7歳だったそうで、代わる代わる来る医者の診察に嫌気がした日々だったと言っていた。
結局、その後にアラレスティ王国立魔素術学院に預けられる。そこの学院長が親の代わりをしてくれ、そこで生活の基本を学んだり知識は学院の図書館に篭って身に着けたそうだ。
その間もその空間で椅子を取り合って、体の支配権を争って過ごしたといっていた。ある日、ペルジャーネさんは何で自分の体を取るのか聞いてみたそうだ。すると、もう一人の自分。デウシーさんはペルジャーネさんの体の中に居るという話であった。
そこから推測すると、どうやら彼女達は本来双子で別々に生まれてくる予定の物が、何かの拍子に片方の肉体に取り込まれてしまったに違いない。俺はそんな話を何かの本で読んだ事があったのですんなり納得出来る答えが導き出せた。
驚いた事にその事に気が付いたのは俺以外にも俺の体をスキャン出来るマイネンスさんだけであった。彼女とはそれ以来長い付き合いになったそうで、宮廷魔素術使いになってからも近場の療養所に勤務して時々自分を診に来たそうだ。
デウシーさんは例の風呂の事件があって以来マイネンスさんは嫌ってくれたので、マイネンスさんが居る時は心置きなく自分の体を使う事が出来たと話していた。
そんな内容の話だったと思う。どうして俺にこんな話をしたのか分らないが、突然別の人格でも俺の中に芽生えたのかと考える。
しかし、思い当たる事は無かったような‥‥‥。そういえば俺が誘拐された時に見た妙にリアルな夢を思い出す。ジョルジョネ大尉があの首を取った後に俺が気絶する瞬間を見せられた事を。あの時は変な爺さんが俺の頭を杖みたいな物で叩いて俺が気絶した。
そう確かに変な爺さまだった。まるで仙人のような白い髭に白髪は長髪で‥‥‥。そう、まるで仙人だ。しかし、俺は彼女と違い一通りマイネンスさんに見て貰って体には異常が無いといわれているし。ひょっとして俺の体の中にも居るのか? いやいや、親からそんな事聞いていないし、分らない。
彼女の話が終わって俺はなんて返事というか、どんな反応を示せば良いのか分らない。
「それで、私の体にもそのもう一人の人格が居るのでしょうか?」
「それが分らないの。影のように存在が薄いというか。私が走査をすると隠れちゃうのよね。一応、そういう事があるかもしれないから心の準備をすると、そういう事が起きた時に違うでしょ?」
「はあ、事前にそういう事が分っていれば違うかもしれませんが‥‥‥。それにしても迷惑な話です。まあ、今の所は大丈夫なようだし問題はありませんよ。だって、ペルジャーネさんも受け入れたのですよね?」
そういうと彼女は頷く。その様子を見て俺は微笑む。ああ、微笑むというよりは顔が引きつったといったほうが正解かもしれない。ようやく体が動くようになって体を起すと、先程のだるい感覚やめまいは無くなっていた。起き上がるとすうっと今までペルジャーネさんであった顔つきがデウシーさんに変わる。
『ようは受け入れるか拒否するかだ!! ペルは俺を受け入れたくれた!!
ただ、それだけだ!!』
「じゃあ、私もそういう時は受け入れれば良いのですか?」
『おめえの場合は分らねぇ!! それは多分異物だ!! この国に来た時に混じった何かかも知れねぇし! 召喚の術にはまだ解明されていない何かがあるのかも知れねぇな?! 人格に異変が出たら必ず俺らに言えよ!!』
俺はその彼女達にも分らない出来事に対してどうすれば良いのか分らない。
それに異変が起きたらと言われても、どれがそうなのか分からない。
その場は生返事をする事だけしか出来ない俺であった。
次話へつづく
次話は2/16日曜日の昼頃に投稿する予定です。




