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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第3章 平穏な日常に飽きてくる年季奴隷 》
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<3-11> 「迫られる年季奴隷  (前編)」

最新の本文修正日は2014年12月17日です。

 ハルーツンさんを皮切りに次々公爵家の関係者が作業をしている果樹園に訪れてうんざりする俺ですが、初めて合コンというかお見合いみたいなものを体験する。


 慣れない事をするのはストレスが溜まるようで、お食事会の後で男性陣と酒の飲み比べをしてしまう。気が付いた時には彼らは全て撃沈していて、その原因は俺だとミリクナ医務長に告げられる。



 早朝の俺の素振りに乱入してきた三人の女性に俺は誰かに操られたようにして彼女達を返り討ちにしてしまう。ああ、当然俺がやった訳ではなく誰かに操られて勝ったので明らかにズルをしたと思う。


 まあ、俺が望んだ結果ではないので、この後に何が起きるか怖くなってくるのは俺が小心者だからであろうか?


 そんな事を思って朝食を食べていた俺であった。






 身支度を整えて、身の回りのものを自分の魔技箱に仕舞う。道具袋を出すと、指揮車に向うのだが人だかりが出来ていて思わず躊躇してしまう。


 メンバーを見ると二日酔いが治ったのか少し元気になっていた昨日の男性陣であった。その人達を掻き分けて乗って良いのかと考えていると、後ろからジョルジョネ大尉がやって来る。彼は俺の肩をつかんで強引というか、俺を誘導するように彼によって指揮車に乗せられてしまう。それに伴って外にいた御仁達も一緒に乗って来るではないか。


 そんなに乗ったら狭い気がするのだが、そんな事はお構い無しのようだ。俺は前の席の奥に座らされて対面は大尉が座る。何時ものように羊皮紙の束を渡されて計算をしないといけないらしい。


 今日はギャラリーが多くて少し喧しいが贅沢は言ってられない。馬車が安定して動くまでに道具を出したり羊皮紙を捲って内容を確かめる。椅子に座ってしまえば外野の事や体の筋肉痛の事は忘れてしまう。


 大尉の合図で馬車が動き出して暫くすると馬車の動きが安定する。それを見計らって俺は何時ものように計算を始めるのだが、合計14個の視線が妙に痛い。普段見ている大尉まで俺の計算風景を見物しているではないか。「あ~、普段は仮眠しているから正確ではなかったか」等と、心の中で自分に突っ込む。



 しかし、計算をやり始めると外野の声が聞えなくなって1回目の馬の休憩の時間までに終わらす事が出来る。ああ、これで閉鎖空間から解放できるのだと道具を仕舞って指揮車から出る準備を始めると、ジョルジョネ大尉がニコニコして俺を見るではないか。「あ~、また変な事を考えてるよこの親父」と、声には出さないがそう思う。




 「さて、お気に入りの彼女は見つかったかなリョウジ?」




 そんな言葉に思わずギョッとしてしまい。「何を言っているのだこの親父?」と、思ってしまう。しかし、大尉は何かを訴えかけるような目線を送ってくるので何かと考え、思わず「嗚呼そうか」と、納得してしまう。


 「あ~、皆さん綺麗ですばらしい女性でしたが、残念な事に私には国に残した妻がいまして、それを裏切る事は出来ません。非常に残念ですが申し訳ありません」


 その俺の答えに最初に納得したように頷いたのはジョルジョネ大尉であった。しきりによく言ったぞと言わんばかりにウインクしてくる。それを聞いた御仁達は不服な様子で「そんな報告は聞いていないぞ大尉」と、ジョルジョネ大尉に詰め寄る。


 「ああ、そんなに大尉を責めないでください。今、始めて彼に話したことなんで。それに、最初はどういう事情か分らなかったのであえて伏せていました。私の国では一人の妻を愛するのが掟と言うか習慣でして、妻以外に他の女性を娶るつもりはありません」


 面倒くさいのでそこまで言い切ってしまう。その言い切ってしまった事で皆さんはガッカリしたように先程とは違う感じになってしまう。すると、皆一様に肩を落とした感じに指揮車を出て行ってしまう。その様子に俺はほっとした表情を浮べて座っていた席の壁に寄りかかる。


 「あ~、疲れましたよ大尉」




 「中々の機転だったよリョウジ。気が付いてくれてありがとう。この事は一応報告にあげるけどかまわないよね?」




 「今更嘘でしたとか通じる相手じゃないですよね? 面倒なので大尉にお任せします。それに今朝はメルディム護衛分隊長に操られて彼女達と稽古をしましたので酷く疲れましてね。もう俺は玩具かと言いたかったですよ」




 「なに? そんな事があったのか、初耳だぞ?」




 「え~、じゃあ誰が俺を操ったのですか?


 ラグフム護衛副分隊長ですか?


 それとも、もう一人のランメネエムさんでしたっけ?


 あれは完全に俺の意思ではありませんでした」


 当然の事だと思っていた俺はそんな事を大尉に文句を言ってしまう。しかし、大尉は少し考え事をしたが結論は出なかったようだ。


 木の板に何かメモ書きをしてそれを伏せる。天井を叩いて上に居るメルディム護衛分隊長を呼んだ様だ。


 大尉は覗き窓から顔を出したメルディム護衛分隊長を中に入るように呼ぶ。中に入ってきたメルディム護衛分隊長は俺の横に座って「何か用事?」と、いう様に大尉を見る。




 「今朝、お前らリョウジに何かやったのか?」




 そういうジョルジョネ大尉の目線を向けられたメルディム護衛分隊長は何かあったのという風にきょとんとしている。




 「今朝は私達は昨日獲ったプイを酒の肴に酒盛りしていたのだけど。なんかあったの?」




 え~~、あれはメルディムさんじゃないのか? じゃあ、誰が俺を操ったの?


 「え~、でも確かに私は誰かに剣と盾を動かせられていましたよ。それに二人目では相手の森人だと思いますが、対戦相手の武器を操っていた風に見えましたよ?


 その操っていた武器を絡め取るように‥‥‥。この前、果樹園の演習で見せて貰ったメルディム護衛分隊長がランメネエムさんの武器を奪うというか操れなくするようにしていたと思いますが」




 「へ~、リョウジはあれが見えたのか? 私も最近やっと何となく感じる事ができてね。この前のように練習していたのだが、あれを見ただけで感じ取ってしまうとは驚いたよ」




 「そんな事があったのか、こいつは驚いた。で、どんな風に見えたのだね、リョウジ?」




 「はあ、どんな風というか。透明な糸のようなものが武器に絡み付いて操られているように見えましたが、それが何か?」




 「へぇ、リョウジにはそういう風に見えるんだ~。やはり人族は私らとは違う感じに見えるようだね。面白いね、ジョネ!!」




 「で、本当の事はどうなんだねメルディム護衛分隊長?」




 「面白かったわジョネ。最初にずるをしてきたのはあいつらだよ!!


 私はリョウジが怪我をしないように見ていただけなんだけど、余りに見事に避けるものだから途中であいつらが手を出してきたのさ!


 お嬢様方にあんな動きが出来るはずも無い!」




 「嗚呼、お互い様っていう事か。まったく、人を玩具にするものではないぞ。リョウジは体中が痛いと思うぞ」




 「は~い、以後気を付けま~す。面白かったでしょ、リョウジ?」




 「はあ、確かに操っている方は面白かったと思いますよ。彼らの悔しそうな顔をさんざん笑い飛ばしたのでしょうから‥‥‥。お陰で体中が痛いですよ。彼らは知り合いなのですか?」




 「半分は知っている顔だったけど、他は知らないわね。森人族っていっても全員が顔見知りじゃないからね。大森林に属さないはぐれもいるから私には分らないわ」




 そうですよね~、俺だって大多数の顔を覚えるのは無理だよ!


 「それで大尉、彼らは諦めて帰ってくれたのですよね? もう芝居なんかしなくても良いですよね?」




 「あー、それは分らん。だって俺より遥かに偉い人達なんだからな。何を考えているのか俺には分らない。昨日のハルーツン閣下に会っただろ? そういう事だ。このままだと次の野営地までついてくるのかな‥‥‥。


 この俺に彼らを止める権限はないから! これだけは言っておく!」




 そう自信満々で言われても困るのは俺なんだけど‥‥‥。彼らが諦めるまで駄目な俺を披露するしかないようだ。


 「それで、今日は自分の馬車に戻って宜しいのでしょうか? そろそろ動きますよね?」




 「あー、戻らないほうが良いように思えるのだが、戻りたいのなら止めない」




 「何ですか、その意味深な物言いは‥‥‥。じゃあ、ここにいてもお仕事の邪魔でしょうから自分の馬車に戻ります」


 そういってお辞儀をして指揮車を出ると、急いで1号馬車に乗り込む。プイホンさんが俺が何時もより早く戻ってきたので少し驚いていた。彼は俺が出した宿題を必死に考えている途中だったのか、また問題用紙に視線を戻して計算を始める。


 そんな彼を横目に今朝書けなかった日記を書き始める。昨日の出来事や今日の出来事など書き終わると、封印して道具袋に仕舞う。


 代わりに新しいわら半紙を出して今日の日付と共にプイホンさんへの新しい問題を書き込む。書き終わってプイホンさんの様子を見ていると誰かの視線を感じてしまう。


 それは斜め後ろを石畳と道路脇の土の上当たりを闊歩する馬に跨った女性であった。良く見ると今朝対戦した内の一人で名前は知らないというか忘れていた。


 少し目を離すとまた違う視線を感じる。あぁ、交互に俺を観察しているようだ。まあ、彼女達を見つめるのもなんか嫌なのでプイホンさんの勉強の様子を見る。彼は一つの桁が10になるのを指で数えて計算をしている。


 それを見た俺は今日書いた問題を書き直す。10を先に書いて10にする為にはどの数字を足せば良いか計算を答えにした問題を作ってみる。そんな問題を4問ほど作って、九九の問題も1問書き直してみた。



 ようやく解き終わったようなので、それを添削して花丸をつけてやる。彼はその花丸に満足したのか髭がピンと上に上がる。そして新しい問題を渡す。




 「あれ? 兄ちゃん、今日はなんかおかしな問題だね? 何時もとやり方が違うよ?」




 「あ~、プイホンさんは十になる数字を組み合わせるのを覚えると、今日の問題を解くのが早くなると思ってね。答えは沢山あるから全部書き出してね」




 「へぇ、答えは一つだけじゃないのか~。難しそうだね」




 「そんな事ないよ。順番に指から引いていけば、直ぐに答えが出るよ。面倒だけど暫くこういった問題に変えてみるよ」




 「へぇ、分ったよ兄ちゃん。あっ、藁は袋に入れて前の所に置いてあるよ。あとは字を練習した紙を返すね」




 そういってプイホンさんは真っ黒になった紙の束を返して来ると、代わりに新しいわら半紙を50枚ほど渡す。


 そういえば再利用の実験はまだやっていなかったことを思い出す。これだけ真っ黒になると、いくらか新しいわらを混ぜないと駄目なのかなと考える。それに少し洗わないと駄目かな?


 そんな事を考えている間も代わる代わる馬に乗った彼女達や御仁が俺の教師ップリを観察していた。やはり、今日の野営地まで着いてくるらしい。迷惑な事だけど俺に拒否する権利はない。



 ため息を付いてプイホンさんの様子を見ると彼は今度は文字の練習をするらしい。可愛い手に鉛筆を持って必死に文字を書いていた。そっと彼の革袋に試作のエンピッツの残りを入れてあげる。


 まあ、在庫処分と考えれば良いだろう。字の練習には太すぎるかもしれないが使わないで捨てるのももったいない。その俺の様子に驚いたプイホンさんであるが小さな声でありがとうと聞えたので俺はそれだけで十分である。



 ぼ~っとしていると2回目の馬の休憩になる。俺はプイホンさんと共に馬に水をやる準備をする。プイホンさんが水を出している仕草を観察していると、彼女達というかその集団の馬にも水をやるようで、同じように馬を休めている様子が見える。


 ここの上流家庭のお嬢様は馬にも乗れるんだねと改めて感心して眺めていると、大事そうに自分の馬を撫でていたり鞄のようなものから餌のようなものを出して直接手から与えていた。



 俺の貴族のイメージだと貴族のお嬢様って馬になんか乗らないイメージなんだけど‥‥‥。綺麗に着飾って、俺のような一般人をごみを見るように見下し、箱馬車のようなものに載って夜毎舞踏会に参加しているよね。このような活発なイメージとは程遠いものであった。


 馬車の点検をしていたドルバン車長に少し聞いてみると、貴族のお嬢様で遊び惚けているのは新参の貴族ぐらいで、アラレスティ王国の古くからの貴族はあのように馬を駆って領地や自分の土地の管理に奔走しているという事であった。


 そういえば大尉の言葉を思い出す。女性でも家長になれるという事を。いざ、男兄弟に何か遭った暁には自分達が家を守るという覚悟が出来ているのだろう。彼女達もそれぞれ事情があるのだねと一人感心する。




 そんな様子を3回目の馬の休憩の時にも見かけ、結局今日の野営地まで彼女達は着いて来るではないか。昨日のあっさりしたハルーツンさんとは違い、彼らと彼女達は諦めが悪いようだ。


 野営地に着いてから最近移動日の日課である紙漉きの段取りをして晩飯を食べる為に配膳の列に並ぶと、俺らの野営地の近くで彼ら彼女達は野営をするようだ。馬車と馬車の隙間から三角のテントなどが見える。


 そそくさと夕食を済まし、プイホンさんに馬の水やり台に水を貯めて貰い、その他にも空いた鍋やタライにも入れて貰う。それが終わると彼は欠伸をして自分の寝床に行ってしまう。俺はこの前の村で買った魔素道具の行灯をセットして準備を始める。


 鍋の中身が煮立って程よく柔らかくなったわらを木の板に載せて木槌で繊維を解す。それに変わりに貯めていた水にプイホンさんから回収した古い紙を入れて再生の準備をする。


 お湯に入れた紙は暫くして解れて行き、真っ黒な水になる。それを綺麗な水で何回か洗って新しい解したわらと混ぜてみる。例の粉を入れてタライをかき混ぜてみると何時もと変わらない気がして試しに漉いてみる。


 灯りが有る為に昼間と変わらないように紙が漉けるので高い買い物をした成果はあった。それを順に漉いてはすだれをはずして1号馬車の屋根の仕掛けを作動させながら板に貼って行く。わらの分量が少し多かったのか若干多めにあまってしまう。しかし、もう張るスペースがないので漏斗を使って樽に移す。



 そんな俺の様子をしっかりと6組の男女が観察していた事に俺は樽を料理馬車に持って行く時に気付いて驚いてしまう。しかし、早くしないとギムネーヤ料理長が寝てしまうので、彼女が起きている内に樽を冷蔵庫に入れて貰わないと困る。


 彼らを無視して樽をギムネーヤ料理長に預けて戻ってくると、彼らは俺の道具を不思議そうに手に取って見ていた。それをやんわり諭すようにお願いして返して貰うと、後片付けを済ます。そして、道具を仕舞い終わると残念そうに彼等は去って行く。


 すっかり日は落ちて辺りは暗いがランプのお陰で見落としの道具がないか確認できる。俺は寝る準備をしてテントに戻ろうかとすると、再び昨日の6人がちょっと一杯やらないかとお誘いにやって来る。無碍に断るのも悪いので仕方なく彼らに付き合う事にする。


 俺は連行されるように彼らに囲まれながら、彼等のキャンプ場まで連れて行かれる。その間、指折り数えて「今日はメルディム護衛分隊長達の狩りの日じゃないよね?」と、自分に確認する。「そういえば昼前に晩餐したと聞いたじゃないか」と、心の中の俺が突っ込んでくる。



 じゃあ「呼ばれてもいないのに来る来訪者というか、魔獣は来ないよね?」と、思っていると、彼らの護衛の中に森人が多数いたことを思い出す。もう嫌な予感がびんびんである。しかし「10人以上の森人達の手に余る魔獣はさすがにいないよね?」と、自分を納得させる。しかし、魔獣よりこの人達のほうが恐ろしく感じてしまう。


 俺を囲むように地面に敷いたフェルトのような生地のシートの上に、簡素な軽食がお盆の上に置いてあり、違うお盆には杯が置いてある。俺は昨日の酒盛りの事を思い出し、控え目にちびちび酒を飲む。酔ってこの人達に何をされるか分らない。もしかしたら既成事実を作られて「責任を取って妻に娶れ!」と、言ってこないよね?


 ‥‥‥。ありえそうで怖い。


 「あのー、差し出がましい物言いで立腹されるかもしれませんが。一応、この私は国王陛下の所有物になってしまいました。最初は立腹しましたが、色々と事情を聞きましたので、微力ではありますが王国の危機というものの対処に手を貸すつもりですよ?」


 先手を取って国王陛下には協力しますよアピールをする。こうすればあえて婚約と、そんな言葉は出てこないと高を括ってしまう。すると、その中の年配の御仁が口を開く。




 「いや、なに。今回の召喚者のリョウジ殿がどういった人物だったのかと、見に来ただけだからそんなに身構えなくて良い。貴殿は私達に気を使って昼間の言動だと分っている。それに、まだ時間は沢山ある。その内、私達の領地に立ち寄った時には歓待するからな!!


 ゴルムディアから南にいけば直轄地は終わる。そこから色んな貴族の誘いや接待がごまんとあるけど、貴殿はそんなものに惹かれる人物ではないと分っただけで今回は収穫があった。まあ、娘達も貴殿の顔を覚えたからその時はお茶会にでも付き合ってあげて欲しい。なにせ、ワシの娘の薙刀をあのように見事に打ち負かしたのだからな!」




 「あ~、それは私じゃないですよ~」っと、言葉に出そうになるが飲み込んでしまう。しかし、今後色んな意味で期待させるのも可愛そうなので、正直に話す事にする。


 「あっ、あれはですね。そのなんと言うか。お嬢様方と同じ仕掛けでありまして、ここの護衛分隊長に操られていました。その、そういう事で武道はまるっきり駄目ですから期待しないでください」


 俺は彼らに憤慨されて怒鳴られるかと思ったのだが雰囲気としては全然違ってしまう。




 「なぁ、皆の衆。言った通りだっただろ! 彼は仁義の持ち主だと。正直に話してくれたじゃないか」




 そういった彼と相槌を打つように皆が頷いて鼻を鳴らす。全部お見通しのようであった。まあ、これだけ広大な大陸を治める国の重鎮の関係者だけあって俺の行動は全てお見通しのようだ。




 すると「やはり、ワシの娘の婿に欲しいものだ」とか「私の妹の夫になって欲しいだとか」とか「ぜひ、私の旦那様になってください」と、それぞれの人物に詰め寄られる。人生最大のモテ期じゃないかと思えるぐらいの勢いだ。


 若干、心が揺らいだのは内緒であるが、俺一人が公爵家個人と関係を持つのはお家騒動の始まりになってしまう。ここはグッと我慢で、俺のせいで公爵家を割ったとなるとお先真っ暗だ。


 「大変、皆様のお誘いはありがたいのですが、私があなた方と個人的な関係を結んでしまうと、それこそ王家の危機になってしまいます。そこら辺をご理解の上、ご寛恕下さい 」


 すると、今度は皆が一様に笑い出す。俺は何が起きたのかと一瞬思ったが、やっと理解出来た。彼らは俺を試していたのだ。


 こんな事で嫁を娶るならばそれまでの男としてよくて飼い殺し、悪くて一生幽閉じゃないかと‥‥‥。良かった~俺、一応選択を間違わなかったようだ。


 ほっとした俺の肩を後ろから誰かが叩く。振り返るとジョルジョネ大尉であった。




 「どうでしたか皆様? 彼はこういう男です。まあ確かに()()()ですが、皆様の御眼鏡に適う人物だと思いますが」




 「おう、ジョネ!! これからしっかり頼むぞ!!」




 そう誰かが言い放ったと同時に他の人も同じような言葉を発する。すごいぞ~俺!! なんだか知らない内に面接が終わっていて、一応はぎりぎりで合格らしい。




 「我等、筆頭公爵家以下、一家を残して王家と王国を守る為にリョウジ殿を擁護して共に戦う事をここに誓う」




 代表者の誰かがそう宣言すると、皆も同じような言葉を発して乾杯が始まる。俺は何がなんだか良く分からないが彼らと杯を交わす。また、酔いつぶす事がないようにその乾杯の後に、俺はジョルジョネ大尉に自分のテントに連れて行かれる。


 歩いて行く時になんだか良く分からないが大尉は俺に「おめでとう」と、言っていた。俺はそれにただ「はあ」としか、ため息のような返事しか出来なかった。



 テントに入って寝床に横になると、先程の言葉を反芻する‥‥‥。あれ? そういえば七家って言っていたよね? 八家在るのではないのか?


 公爵家は八家だったよね? 確か王国八家門って大尉が言っていたような‥‥‥。ああ、最近公爵になったといっていたから員数外って事か、7年前に公爵家になったと大尉が言っていた事を思い出す。




 そんな事を思い出しながら考えた後に何時ものように探査の練習をするとやがて疲れて寝てしまう俺であった。




 後編へつづく

次話は1/25の昼頃に投稿する予定です。

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