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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第3章 平穏な日常に飽きてくる年季奴隷 》
65/229

<3-4>  「年季奴隷と農作業  (中編)」

最新の本文修正日は2014年12月9日です。

 農作業の合間に護衛隊員の訓練風景を見ることが出来た俺ですが、増えた人員の姿を見てガッカリする事になった話しは皆には話せない。


 しかし、その後に出会えたお約束のプイホンさんを脅した悪い猫種の獣人けものびと達に理性のたがが外れてしまう。今迄モフモフできなかった鬱憤を晴らすかのようにその獣人達を追いかけてしまった。二度とプイホンさんに手出ししないように脅す事に成功はしたものの、何か自分のはしたなさを反省してしまう。


 嗚呼、代わりにプイ獲りに俺が行きたいと言いそうになる。二度と手出しはしてこないと思うがジョルジョネ大尉も手を打ってくれるそうだ。


 俺が猫種の獣人達と楽しい追いかけっこをしている様子はプイホンさんに見られてしまい、なぜか距離が開いた事は俺には分らない。俺は彼を助けた事で逆に距離が縮まったと思っていたからだ。そんな事を思っていた俺であった






 白黒の斑模様の猫種の獣人達と追いかけっこの後に、着替えを持って浴室に向かう。浴室内でアワアワタイムを観賞する為に彼を待っていると、ゴナベル奴隷長に連れられたプイホンさんが浴室内に入ってくる。何時ものように洗いっこをする二人を眺めて、湯船に入ってくる二人。ニコニコしてその様子を眺めているとプイホンさんが口を開く。




 「ゴナベル奴隷長、兄ちゃんが意地悪な岩猫の子分を蹴散らしておいらのプイを取り返してくれたんだよ!!」




 あれ? 子分? えっ! まだあの上に親分が居るのか?




 「ほう、岩猫に喧嘩を売ったかぁ、リョウジ?」




 「えっ? ちょっと待ってください。喧嘩を売って来たのはあっちですよ? プイホンさんから彼が取ったプイを巻き上げたのですよ?」




 「ああ、こっちの流儀は知らなかったかぁ? 応援や手伝いの場合はなぁ、その土地でぇ取れた物に対してぇ、取り分を渡さねぇとな。報酬は別に出るぞ。報酬はプイホンに出るからその土地で取れぇた物はそこに住んでぇる者にけぇすのがここの流儀だ!!」




 「え~、それは人族もですか? それとも猫種の獣人達の流儀なんでしょうか?」




 「ああ、岩猫達の流儀だ。彼らは狩猟で生計を立ててぇるのが多いからなぁ。プイホン、土猫達とは流儀が違う」




 「え~、ゴナベルさん!! おいらは確かに人族の偉い人に獲った物は持ち帰って良いよと聞いたよ!!」




 「ったく、この前の朝に獲物を返しに行ったのを忘れたのか?」




 「あっ、‥‥‥。忘れてた。そういえば馬車村で朝早くプイを獲った時に返しに行ったんだった」




 なんていう事だ。俺の勘違いで向うの岩猫さん達を恐怖に陥れてしまった。いやいや、違うだろ。結構前に朝飯の時に薄汚れた格好でプイホンさんが誤魔化した時の事を思い出す。あの時は縄張りを破ってプイを獲って獲物を返しに行ったのか‥‥‥。どうしよう。


 「あの~、今頃返しに行っても遅いですよね~ゴナベル奴隷長?」




 「ああ、お前は奴らに宣戦布告してぇしまったからなぁ。まあ、大丈夫だ! 俺らにはクワビムという使徒もいるしなぁ!」




 ああ、なんていう事だ。事態が段々複雑化して悪化して行く。


 「あー、向い討てば良いのですかね? それとも何か買って行って、お詫びをしにいけば良いですかね?」




 「その村々で岩猫の取り纏め役が居るはずだぁ。まあ、岩猫の十人や二十人大した事ないぞ」




 いやいや、ゴナベル奴隷長だからそうなのであって俺は困るのですが‥‥‥。またリミッターはずして追いかけるか? 俺が考え事をしていると二人はもう上がるようで浴室から出て行く。俺ものぼせそうになってしまい、慌てて風呂から上がる。


 着替えてから食堂に向うと、今日もプイホンさんは美味しそうに晩飯を食べて、最後にゴナベル奴隷長にお酒を二口程ご馳走になって、フラフラしてぶっ倒れる。それをゴナベル奴隷長が抱えて部屋に寝かせに行く風景を晩飯を食べながら堪能するのだが、心ここにあらずである。



 まあ、明日になったら何とかなるよね俺? そう言い聞かせてベットに入り何時もの探査の訓練をして、眠りに就く。



 次の日、何時ものように早朝訓練に参加してから朝食後に道具袋を持って指揮車に向う。指揮車の扉をノックすると今日はユロジェン少尉が中に入れてくれる。どうやら、交代で早番をしているようだ。


 暫くしてから乗り込む二人がやってくる。俺は昨日の話しをしようかしないかモジモジしてしまって不審者のように見えてしまったようで、怪訝な顔をしたジョルジョネ大尉が口を開く。




 「どうしたリョウジ? なんかあったのか?」




 「いや~、昨夜の話なんですけど。岩猫種の獣人達の話でして、私の勘違いもありまして。なんだか俺が岩猫種の獣人達に喧嘩を売ってしまったようなのですが」




 「ああ、昨夜の事か。先程ゴナベル奴隷長から聞いたぞ。しかし、何かおかしいのだがな。岩猫種はそんな暴力的な種族じゃないはずなんだがな」




 「いや~、昨晩はプイホンさんを小突いて足りない分を出せと集団で詰め寄っていましたけど、それに彼は使徒様のように大きな獣人に脅されたといっていましてね。まあ、確かに俺が追いかけたら逃げ回っていましたね」




 「そんな事があったのか。ますますおかしいな? まあ、今日当たり作業していれば乗り込んでくるだろう。その時はリョウジ、相手してやれ!」




 「いやいや、そんな暴力的なこと出来ないですよ?」




 「いや、ちょっと時間稼ぎしてくれるだけで良い」




 最後にそう言って何時もの仕事を渡されて、始めるようにいわれてしまう。小声でアミュネス少尉が昨夜の猫種はどんなのか聞いてきて、俺は「尻尾に長いのはそんなに居なかったですよ」と、言うとガッカリした顔をしていた。


 そんな会話をしていた為、馬車が動いて止まった事に気が付かなくて、後ろでジョルジョネ大尉が咳払いをした事に気が付いた彼女は慌てて外に出て行く。俺も慌てて、道具を出して計算を始める。



 計算が終わった頃に、何か外の方が騒がしくなってくる。すると、かすかに「リョウジという奴は何処だ!」とか「出て来いリョウジ!」と、聞えてくる。早速迎えに来たようだ。俺は今朝大尉に言われたように恐る恐る外に出る。すると、外にはパラダイスが待っていた。



 見渡す限り猫、猫、猫で、100人以上居るかもしれない。アミュネス少尉がしきりに何かを探しているのは内緒だ。俺もつい目移りしてしまい、どれにしようかと迷ってしまう。


 しかし、首根っこを押さえられているプイホンさんを見つけてしまう。慌てて、そいつの所に駆けて行く。プイホンさんが大きいといっていた親分は確かに大きかったが、実際見ると俺の顎下ぐらいで150cm前後のがっちりした体格のネコさんであった。


 俺がそいつに近寄った為に首根っこを掴んでいた猫親分以外は俺を見て少し後ずさりをする。明らかに警戒しているようで、中には昨日見かけた獣人もちらほらと見かけるが、何かがおかしい。包帯のようなものを巻いていて、まるで怪我をしているようなのだが、痛々しいそうには見えない。




 「お前がリョウジか?! 昨夜はこいつらが御世話になったようだが!! その御礼に来てやったぞ!!」




 そう言って俺を見上げる猫親分さんは普通の金色の瞳に短毛で、尻尾が長い真っ白な猫さんであった。




 「いや~、何か誤解があるようで、その怪我は私のせいでは有りませんよ? 先に手出しして来たのはそちらでは? それにプイホンさんを離して欲しいですね! 

 貴方は知らないのですか? 年季奴隷を虐待すると犯罪奴隷行きですよ!」




 そう言い終わると、犯罪奴隷という言葉が効いた様でプイホンさんを離す。離されたプイホンさんは片足を引きずりながら俺の後ろにやってくる。


 その仕草を見てしまった俺は怒りがこみ上げてくるが、プイホンさんが話していた猫種が使う魔素術の事を思い出して躊躇する。


 そこら辺はヘタレの俺であるが、猫親分の後方に周囲のネコさん達を品定めするアミュネス少尉を発見してある事を思いついてしまう。注意を俺に向けさせる為に手をニギニギしながら猫親分に近寄る。




 「これは明らかに年季奴隷の虐待ですね。お仕置きをしなければならないと思いますが‥‥‥。


 アミュネス少尉?! 彼のこれを見てください! ほれ、毛並みが良くてさわり心地がよさそうですよ~」



 猫親分は俺が攻撃してくると思っていたようで身構えていたが、おどろおどろしいその雰囲気についそちらの方に顔が向いてしまう。


 アミュネス少尉が我を忘れてにじり寄ってくるではないか、もう衆目の事を気にしていないようで、まるで昨日の俺のような雰囲気であった。


 アミュネス少尉の手には雷が出る長槍を使う時にしている耐電の為だと思う革の手袋を嵌めていて、嫌な予感がしてくる。思った通りに左手が青白く光ったかと思うと、稲光のような放電現象を目撃してしまう。その瞬間に猫親分を中心に半径2m程に被害が出る。


 当然、その中に俺やその後ろにいたプイホンさんも被害に遭ってしまう。100ボルトのコンセントを裸で触ってしまった時の衝撃が全身を襲う。


 ああ、ジョルジョネ大尉は時間を稼げって行ってたような‥‥‥。そんな事を思い出した俺は体がしびれたまま後ずさり、その範囲から逃れようとするのだが思うように逃げられない。



 そうやってもがいているとようやく電流が止まって、視線を猫親分に戻すと彼はアミュネス少尉に掴まっている。うつ伏せになった彼の上には馬乗りになったアミュネス少尉がいつの間にか手袋を外して素手で尻尾を堪能していた。


 猫親分はぎゃぁぎゃぁ言っていたがお構いなしで、アミュネス少尉はその長い見事な尻尾を愛でていた。



 ようやく、モーゼの十戒のように海が割れるが如く猫の人だかりが分かれて行く。その先にクワビムさんとメルディム護衛分隊長が歩いて来る。


 すると、ものの見事に猫種の獣人は皆平伏して地面に頭をつける。クワビムさんは何か面倒くさそうな感じで欠伸をしながらやってくる。




 「アミュネス少尉? そろそろ離してあげれば? 満足したでしょ?」




 「はっ!! 私は一体何をしていたのかしら? あら、こんな所に可愛い尻尾が有るわ!!」




 そういってまた尻尾を撫でだす。その仕草を見たメルディムさんはもう何も言う事が無いような表情で呆れてしまう。メルディムさんの後ろからジョルジョネ大尉が顔を出して、アミュネス少尉を説得しだしてようやく猫親分は解放される。


 もうどうにでもしてくれという感じであったが、解放されて起き上がると俺の顔を睨む。しかし、周りに雰囲気に首を傾げながらキョロキョロしだしてクワビムさんを見つけると慌てて平伏してしまう。その姿を見ていたクワビムさんはまたかという感じになってプイッとそっぽを向く。



 すると、やっと静かになったのでメルディムさんが口を開く。




 「で、そちらの言い分は?」




 「へっへぇ~~。取り決めを破った土猫を成敗しやしたが。昨夜、子分共がお世話になって帰ってきやして、そのお礼をしないと示しがつきやせん。子分共は怪我を負ったといってやして」




 「ふ~ん、怪我をしているには随分元気そうよ?」




 すると、包帯をしていた子分共が慌てて包帯を治して痛そうにしている。それを見た親分がそいつらの包帯を取り始める。やはり仮病だったようで、プイを取り返された言い訳をしたようであった。


 子分の様子を一通り確認した猫親分は俺に頭を下げて謝って来たので、一瞬下げてきた頭を撫でたくなる衝動が襲ってくるがグッと我慢する。俺の後ろのほうに隠れているプイホンさんが腰にしがみ付いていて、そちらの方が気になってしまったからだ。




 「だけど、制裁は感心しないわね。彼は土猫よ? 岩猫の流儀を押し付けるのはどうかと思うわ。それに応援を頼んだのはそちらでしょ?


 昔の仕来りかもしれないけど、獲った物を引渡すなんてばかげているわよ!


 応援に来て貰っているのだから、これからは歓迎してやるという気持ちでもてなさないと駄目よ。それが嫌なら応援なんて頼まない事ね。


 そういう事を任されているのが貴方の役目でしょ? 違う?」




 「へっへぇ~~。しかし、この取り決めは古からの決まりでして‥‥‥」




 それまで諭すようだったメルディムさんの表情が段々イラつく感じになってくる。




 「貴方は、私の言葉が理解できなかったのかしら?! この私がお願いしているのにそれでも駄目なのかしら?」




 そういうと不機嫌になってきたメルディムさんの顔を見たクワビムさんがまるで自分がイライラするような事をされたように怒り出す。それを見た平伏している猫達は恐れ慄く。




 「この~~!! 我らが姫様のお言葉を無碍にするのか!! 我が姫様は大森林のイルソル氏族の直系の姫さまなるぞ!!」




 そう言った途端、渋々猫親分が返事をする。




 「へっへぇ~~。森の掟には逆らえません。そのように致します」




 そう言って地面に頭を擦り付けた。やっと納得してくれたかとメルディムさんはため息をする。




 「新たな掟として、近隣に広めなさい!! まあ、せめて、半分までにしなさい。半分を治めるように決めなさい、全部は駄目よ」




 「お慈悲を賜りありがてえです姫様!!」




 「では下がってよろしい!!」




 最後にメルディムさんがそう言い放つと猫の皆さんはすごすごと後ずさって行き、ある程度離れると慌てて走って逃げてしまう。


 俺はメルディム護衛分隊長に話を治めてくれた事に感謝をする。その時にクワビムさんに睨まれたのは置いといて、彼女にも頭を下げる。ああ、当然プイッとそっぽを向かれました。



 俺の腰にしがみついていたプイホンさんはホッとした様で腰から手を放し傷を舐めている。俺は念願の彼を抱きかかえてミリクナ医務長を探すが彼女はは見当たらない。指揮車が二台並んでいたので後ろの指揮車をノックする。扉が開いたので中に入りプイホンさんを治療してもらう。


 傷は大したことがなくて、直ぐに木属性の魔素術で手当てをすると直ぐに歩けるようになる。俺もプイホンさんと同じようにミリクナ医務長に異常がないか診られる。


 彼女が言うには電撃を浴びたからだと言っていた。相変わらず現場を見もしないで現状を見たかのごとく話していたので驚いてしまう。二人で外に出ると何事も無かったように皆は仕事をしていた。


 若干一命が名残惜しそうに走り去って行った猫達の方向を見ていたのは内緒である。それにプイホンさんを抱っこした余韻が手に残っていた俺は満足感が一杯であった。



 ジョルジョネ大尉も自分の指揮車に戻ったようなので、扉をノックして中に入れて貰う。中に入ると大尉の他にメルディム護衛分隊長もいて、二人してため息を付いていた。


 「あの~、なんか俺の為にすいません。権力を傘にするのは嫌いなんですよねメルディム護衛分隊長?」




 「ああ、その事は良いのだけど。私は古い仕来りは嫌いだからね。それを取り払う為なら権力を大いに使うわ!


 しかし、本来は違う意味で伝えたはずなんだけどね。何処でどう間違ったのか、ああいう理不尽な仕来りになってしまったようだよ。まあ、半分を上納させれば双方から文句は出ないでしょう」




 「えっ? 本来は違ったのですか?」




 「ええ、確か聞いた所では手伝った御礼に獲った分をそこの土地神にささげてお供えした後に皆で分け与えるという話だったような。それがそこの土地の者に取ったもの全部渡すという話になってしまったようだわ。まあ、神は気まぐれだからその後に違う事を言ったのかもね」




 「えっ!! 神様がこのアラレスティ大陸に居るのですか?」



 俺がそういうと、メルディム護衛分隊長は大尉の顔を見て何かを確認するような仕草をする。すると、大尉の方が口を開く。




 「まあ、それに近いというか、そんな呼ばれ方をされている人は居るが、君にはまだ早い。いずれ話すよ」




 そういって大尉は話を濁す。釈然としないが、また例の如くミリクナ医務長がこの指揮車に乗り込んで来るのも面倒なので、それ以上は追求しなかった。


 一応、計算した羊皮紙をもう一度返してもらい検算しなおす。途中で騒動に巻き込まれた為、計算は終わっていたがきちんと確かめなかったからだ。


 メルディム護衛分隊長は俺が算盤をはじく風景を見てフフ~ンと鼻を鳴らしていた。全部見直しが終わって、大尉に羊皮紙を返す。道具を仕舞って道具袋を持って出て行こうとすると、大尉が俺を引き止める。俺は首を傾げながら席に座る。




 「あ~、君に話して置く事がある。今回は丸く収まったように見えるが、次は無いかもしれない。確かに君にとって理不尽な事があるかもしれないが、少し考えて行動をしてくれ。君が言っていた言葉にこの国を混乱させたくは無いという言動があったはずだが」




 「はあ、すいません。以後気を付けます。しかし、仲間がやられている所は見逃せないのですが‥‥‥」




 「ぐっ、その事は礼を言う。しかし、これから寄る町や村などでああいった事が起きて君が首を突っ込む事で迷惑が掛かる人も居るということを分ってくれるとありがたい‥‥‥。と、いうのは建前だが俺達が居るからと言って自分から突っ込む事がないようにしてくれ」




 「それは無理だよジョネ!! 召喚者は黙っていても災いが寄って来るってお婆様が言っていたわ。ほれ、この前話た勇者の話にあったでしょ。一時は穏やかな時があっても必ず災いの方からか、こちらから絶対近寄って行くものよ」




 今、俺はとんでもない事を聞いたのは聞き間違いであろうか?


 まるで俺はトラブルメーカーのような物言いであった。冷や汗が流れてきて過去に起きた事が走馬灯のように甦ってくる。


 俺が過去を思い出している時にメルディム護衛分隊長は指揮車から出て行ってしまう。そして、大尉は自分の魔技箱だと思うそれから一冊の本を取り出す。それを俺に渡して今日はそれでも読んでいろというように顎を突き出す。


 「あの~、何でしょうかこれ?」




 「まあ、俺が書いた本だ、読んでみろ。読み終わってから感想を聞かせてくれ。俺は外を巡回してくる」




 最初を捲った時に物語は唐突に始まる。


 「追いかけられるアウタルス王子と衛士ゾンディウムは森の中を馬に跨りながら駆け抜ける」と、書いてある。


 「大尉、いきなり始まって、俺には分らないのですが」



 俺は大尉に進められた本を読んで、ジョルジョネ大尉に文句を言う。題名は「王子と救国の勇者」という。なんか上中下の三部作のうちの中巻らしい。上巻はないのかと聞いてみると前に君に話したじゃないかと、言われてしまい困惑してしまう。


 次第に消された記憶の一部じゃなかったと思い出す。上巻の話が気になるが読んでいる内に思い出すかもしれない。それに分厚いものじゃないし挿絵が所々に書いてあって文字も大きい、どうやら絵本の原稿のようだ。俺は時を忘れてように読み始めた。



 俺が本を読み始めて大尉は外に出て行った‥‥‥。(内容は2章閑話1~3話を参照してください)




 どれくらい時間が経ったが分らないが読み終わる頃に大尉が戻ってくる。




 「なっ、な、なんでこれだけの登場しかしないのですか? 折角、王子と勇者という題名なのに登場したのは最後だけですよ? それに、中興の祖である王子をこんな感じにしちゃって良いのですかジョルジョネ大尉?」




 「え~、そんな事言っても。勇者の事が書かれている文献は少なすぎて伝わった技術や文化は残っているけど、勇者や王子の人物像も知り合いの森人もりびとから又聞きしたものだし~」




 「それにしても、森人の名前の最後の『ム』の謎が解けました。森の子という意味だったのですね~。後これ絵本にしては結構難しいように思えるのですが? おまけに秘密を暴露して良いのですかメルディム護衛分隊長に命を狙われますよ?」




 「あ、その事か。メルディムは何も言ってこないよ!! その話メルディムから聞いた事だし‥‥‥」




 先程の意味ありげな会話を思い出した俺はそんな事を言って黙り込んでしまったジョルジョネ大尉を見て、相変わらず大尉は胡散臭くて何処まで本当の事か分らない話だと思う。首を傾げながら再びテーブルに置かれた本を見て、何か納得できないでいる俺であった。





 後編へつづく

次話は明日1/12の昼ぐらいに投稿する予定です。

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