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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-24> 「増える年季奴隷  (前編)」

最新の本文修正日は2014年12月3日です。

 研究者とミリクナ医務長、それに新たに合流したマイネンス医務長補佐に囲まれて、まるでモルモットのように体のあちこちを調べられ色んな物を採取された俺ですが、結局研究したかったのはこの俺自身だったと改めて思い知らされる。


 その後の女子会のようなメルディム護衛分隊長とマイネンス医務長補佐の再開の祝杯に強引に招かれ、彼女達の愚痴を聞かされる。愚痴ばかりじゃなかったが色々と情報が入って、結局最後には酔いつぶれるという事態になってしまう俺であった。






 指揮車の簡易ベットで起きた俺は頭痛がして、完全な二日酔いの状態であった。俺が起きたのを確認したミリクナ医務長はマグカップに水を瞬時に入れ、薬の包みを渡してくれる。俺がなんなのかと首を傾げていると、二日酔いの薬だと教えてくれる。


 二人の姿が見えないので彼女に聞いてみると、俺が酔いつぶれたので二人はまだ外で飲んでいるという。ざるの彼女達には付いていけないと頭を振った俺は貰った薬を口に入れ水を飲む。


 結構苦い薬だったが効果は徐々に現れ、胃のむかむかと頭痛が徐々に取れていく。すると、調子が戻ってきたのかお腹が鳴ってしまう。



 ミリクナ医務長に今の時間を聞くと夜半過ぎで、後2つ時もしないで朝になるという事であった。今仮に飯を食っても4時間したら朝飯である。


 我慢して横になるか自分の寝床に戻るか考えるが、夜の薬をミリクナ医務長に渡され、それを飲むと空腹が紛れてしまう。薬を呑んだせいか結局トイレに行きたくなり「帰りは自分の寝床に横になる」と、ミリクナ医務長に話して指揮車を出る。



 外に出ると、夜露に濡れた気象結界についた水滴が俺の顔に着いて不快にさせてくれる。そのお陰ですっかり目が覚めてしまい、トイレに行った後は目が冴えて自分の寝床に横になっても寝られない。


 ふと、横を見ると。そこにいるはずのプイホンさんはもういなくなっているではないか。早起きだね~。っていうかそもそも猫って夜行性のほうが多いよね? 多分今頃は必死にプイを追掛けている頃だと思う。


 俺は一瞬閃くと、徐にテントの外に出て草原の方向に歩いて行く。



 耳を澄まして、草原の方から聞える音を探す。これだと目を付けた方向に向かい、探査の術を使ってみる。アクティブな方ではなくパッシブな方で頭の中に水面を浮かべる。


 一瞬こんなくだらない事に便利な能力を使ってしまう自分を責めながらも癒し成分を見つける為だと自分に言い聞かせる。


 すると、小さな物がチョコチョコと水面を蹴るような波紋が見え、その跡に少し大きい波紋が広がっていく。しだいにそれらが近くなり小さい方の波紋が消える。


 目を開くと波紋がやってくる方向を確かめながら、俺はプイホンさんがプイをゲットしたと思っていた。もう一度目を瞑り確かめると、次第にその波紋が近付いてくる。



 目の前の草原の茂みから顔を出してきたのは真っ黒な姿であった。良く見えなくて目を凝らすとオレンジ色の瞳がぱちくりと点滅する。俺は後ろに後ずさり、逃げようかと準備する。


 現れたのはクワビムさんであった。当然、何かをされると思っていたのは事実である。だって、先程までメルディムさん達と一緒にお酒を飲んでいたからね。額に汗が浮き上がって来て、こめかみの横を一筋の汗が流れていく。




 「こんな所で何をやっている、人族?! まだ朝じゃないぞ?!」




 声をかけながら近寄ってってきたクワビムさんが俺の体に対して鼻をくんくんさせるではないか。そして、しかめっ面をする。




 「酒臭いぞ、人族!! 姫様と同じ酒の臭いがする。あっち行け!!」




 そう言って、あっちにいけという仕草をするではないか。ああ、()()()()でよかった~。普通、同じ酒の臭いがしたなら疑うよね? 


 俺は彼女に言われるままそこを立去ろうとして後ろを向いて二三歩、歩いて背中から声がする。




 「ん? なんで、姫様と同じ酒の臭いがするんだ? クンクン。あれ? 微かに姫様の匂いがしてきたぞ? ‥‥‥」




 俺はその場から一目散に逃げ出す。もう後ろを振り向いてる余裕は無い。指揮車の前を通り過ぎ、望みがある護衛隊の焚き火の場所まで走る。


 焚き火が見えて二人の酒盛りの様子を見て一息を付くと、後ろには誰もいなかった。あれ? 確かにいたはずなんだが‥‥‥。来た道を戻ると指揮馬車の前で黒い者の首根っこを押さえたボグフムさんを見かける。




 「ちょっと~、ボグフム姉様~。何をするの~? あたいはあいつが逃げたから追ったのに~‥‥‥。


 あっ、戻ってきたな~、人族!! その姫様の臭いを何処でつけてきた?!」




 「好きで付けた訳じゃないですよ。マイネンスさんい羽交い絞めにされて、無理やりメルディム護衛分隊長に口にお酒をいれられましてね‥‥‥。


 それに、今は仕事で野営地を巡回していたのではないのですか? あれは駄目だと思いますよ?」



 そう俺が話すと急に大人しくなるクワビムさんは耳が垂れて聞きたくないと意思表示をしている。あ~、それもありですと、心の中で叫ぶ。


 それを聞いたボグフムさんがじろりとクワビムさんを睨む。何があったかは大体想像できたのかボグフムさんが口を開こうとすると、俺の後ろから酔っ払ったメルディムさんが歩いてくる。




 「クロッ!! ご苦労!! マイネンスの酒の肴は取れたか?」




 あれ? あれって仕事の一環でしたか。俺はそうとは知らずに交渉の材料としようとしたのか?




 「はい!!姫様~。その通りです!!


 だから、ボグフム姉様、放してくださ~い!」




 「黒は偉いね~。主人が命令しなくても、ちゃんと理解して歩哨中に酒の肴を取ってくれるのだからね~‥‥‥。早くそれをおよこし!!」




 そういって、焚き火のある所に言ってしまう。ああ、半分は正解だったようで、これで良いような悪いような雰囲気にその場の空気は包まれる。




 「さて、クワビムさん。その主人が言わなくても気遣うのは良いですけど、私にも気遣って欲しいわね?


 それで、貴方は歩哨の途中で何をやっていたのかしら? プイは良いとしてリョウジは獲物じゃないわよね?」




 つい、うんうんと俺のほうが首を縦に振ってしまう。見ると小さくなったクワビムさんが今にも叩かれる準備をしている。よく見ると手で頭を抑えて構えているではないか。これはチャンスだよね? ここで彼女のピンチを救えば俺の株が少しは上がる気がして思わず口を出す。


 「もうそのへんで良いのではないでしょうか? 俺もつい逃げてしまった事だし、それに最初は茂みからプイホンさんが出てくるのかと思って逃げなかった俺も悪いです‥‥‥」




 「そうね~、でもね。このは教育しないと、後で私の後任の獣僕の手本にならないといけないからね。今は教育してる途中だから口を出さないで欲しいわね、リョウジ!!」




 「でも、その鉄拳制裁はいかがなものかと思いますよ? 言葉で話せば分ると思いますが? ‥‥‥」



 すると、その言葉を聴いたクワビムさんが首を縦に振ってうんうんと頷いている。しかし、その仕草がボグフムさんの気に障ったらしい。「ゴツン」といって頭を抑えるクワビムさんにボグフムさんは言い放つ。




 「以後気をつけるのよ!」




 結局、鉄拳制裁をしたボグフムさんは消えて行く。残されたクワビムさんは頭を撫でて俺に向って文句を言うではないか。




 「もっと気の利いた言葉で説得してよね!!」




 まあ、なんと言うか‥‥‥。「ツンデレかよ!!」と、心の中で突っ込む。しかし、野性味あふれた森猫種と普通に会話できただけでも良しとしよう。彼女は頭を撫でながら草原の茂みに消えていってしまう。



 そんな事が有った為、すっかり目が覚めてしまった俺は今更寝る事は出来なかった。やる事が無くぶらぶらしているのもまたトラブルの原因になる。仕方なく簡易ベットをテントの外に出してぼ~っと、夜空の星を眺めながらここでは普通の双子月も眺めていた。



 やがて、東の空が白んでくると、ジョルジョネ大尉とアミュネス少尉が指揮車から出てくる。「一緒に寝てたのか?」と、下衆の勘繰りを入れてしまったが、目が合ったジョルジョネ大尉が俺に言い訳じみた事を言っていたので多分違うと思う。


 大尉の話では徹夜で仕事をしていて、アミュネス少尉は道具を取りに指揮車に来ただけだといっていた。真偽の程は分らないがそういう事なのであろう。


 お返しに俺は何でそこに寝ているのかと聞かれ、逆に俺のほうが言い訳じみた事を言ってしまう。俺のその不振な言い訳のせいか、大尉は怪訝な顔をして体を解しながら歩いていってしまう。



 大尉がいなくなると、次々に年季奴隷の皆さんが起き出して、周囲に挨拶する声が聞えてくる。そして、道具を出して練習を始める為に騒がしくなって来るので俺もそれを手伝いながら体を解す。


 何時ものように素振りの練習を始めると、回りも最初は個人の練習をしていたが人数が多くなってくると、ゴナベル奴隷長の集合の合図で皆が集まる。



 皆が集まると、何時もと違う雰囲気に気付いてしまう。人が3割増しに多く、10人程の列が10列あり、前は7列だった事を思い出す。


 そして、容量の無い頭の隅から応援を寄越すと言っていた大佐の言葉をようやく思い出す。ジョルジョネ大尉達も何時もなら2人でやってる練習も3人でやっていた。



 暫くは行進のような全体練習をしていたかと思うと、3人の尉官が並んでいる年季奴隷の列の前に立ち、訓示めいた事を始める。


 内容はこれから共にする仲間を見捨てるな。だとか、これから待ち受ける試練を共に打ち破ろうとかそういう話であった。


 俺には関係ない事のようだったので端の方に行き、素振りをしようと歩き始めると、いきなり俺の名前が呼ばれて大尉達の前に来るようにと大声でよばれるではないか。


 しぶしぶ、俺は彼ら年季奴隷の前に行き大尉の横に立つ。彼らの前に立つとジョルジョネ大尉が俺の事を説明するようだ。




 「こいつはリョウジと言って同じ年季奴隷だがこの俺の専属秘書の年季奴隷である。主に計算を手伝って貰っている。戦闘は得意じゃないがこの隊の一員なので皆よろしくやってくれ」



 まあ、こいつ呼ばわれしたのはいいが、昨日に引き続き100人近くの人の衆目を浴びると緊張してしまう。


 挨拶をしてくれと言った大尉の言葉に何処か上ずった感じで自己紹介をしてしまい、くすくすと笑いを取ってしまう。


 まあ、実際にへタレでか弱い人間だからそれでいいのだけど、なんか勘違いされて腕比べとか申し込まれても困るよね?



 俺の自己紹介が終わった後に大尉達が自分達の紹介をして、その場は解散となった。どの人も皆、西洋人っていうかヨーロッパ人の風貌で、茶色の髪や金髪などでおまけに体もごつい。東洋人の俺としてはすこし肩身が狭くなってくるような感じの人達であった。


 道具を仕舞う手伝いをしてテントや簡易ベットの片づけをする傍ら、自分の道具も魔技箱に仕舞う。今日はプイホンさんも片付けの手伝いをしていたので、彼に水を出してもらい身支度を済ませる。


 その後、プイホンさんと久々に朝飯を一緒に食べに行くことが出来る。歩く傍ら彼についた草をとってやると、久々なので思わず抱きしめたくなる衝動を抑えるのに一苦労してしまう。



 朝飯の後、道具袋に陰干ししてあった紙を剥がして急いで詰める。板は魔技箱に突っ込んで、忘れ物がないか確認をする。無い様なので指揮車に向かい、ノックをすると今日はユロジェン少尉が俺を中に入れてくれる。


 中に入ると、何時ものように何かの書類を送っていて、忙しそうに皆働いていた。俺は何時ものように日記をつけ始める。


 しかし、今日は何時もと違い彼女らはこの指揮車から出て行くそぶりを見せない。「変だな?」と、訝しながらも日記を書き続ける。真剣に日記を書いていたので、気が付くと大尉が出発の合図を出した所で馬車が動き始めるではないか。



 やはり今日は彼女らはここで仕事をするらしい。俺は何処で算盤を弾こうかと思案する。ここは座り心地がいいが大尉の仮眠する場所だしね。


 すると、大尉が俺を招く仕草をする。揺れながらも前の席に行くと、大尉が自分の座っていた所に俺を座らせ、羊皮紙の束を渡して後ろの席に行って仮眠を始めてしまう。


 仕方なく道具を出して、計算をやり始めるのだが二人の彼女の視線が痛い。じぃっと俺の計算風景を眺めているではないか。暗算をやってメモ書きすると、小声で「おぉ~」とか「頭の中で計算したの?」など、二人で一々驚いていて中々計算に集中できない。


 しかし、何時ものように集中のピークになると外野の声が聞えなくなる。今日は暫く計算の仕事が無かった為に何時もより倍以上の量があった。結局終わったのは2回目の馬の休憩の時であった。


 途中で飽きた二人はよだれを垂らしながら、椅子にもたれながら眠っていた。計算途中でテーブルに持たれかかってこなくて良かったと思う。



 出来た物をジョルジョネ大尉に渡して中身を見て貰う。今日も無事に俺の仕事は終わったようで、道具を仕舞い指揮車を出ようと立ち上がると、大尉は俺の話があると言って引き止めるではないか。


 一体何が有るのかと俺は首を傾げながら前の席に戻り大尉の横に座る。話すのは出発してからだというので、それまで大尉が入れてくれたホット麦茶をすする。昨晩は忙しかったようで、まだ二人の彼女達はぐっすり睡眠中であった。


 アミュネス少尉が椅子の背もたれと壁に頭を寄せていて、ユロジェン少尉がアミュネス少尉の肩に頭を乗せて一見仲良くなって良かったね状態で寝ている。


 ジョルジョネ大尉が言ってたようにお互いの実力を認めて打ち解けたように思える。「良かった良かったと、めでたしめでたし~」と、内心俺は喜ぶ。あのままギクシャクした雰囲気で一緒に仕事はしたくないよね? それにその為にアミュネス少尉に殴られたようなものだったしね。


 そんな事を考えていると、大尉が合図を出して馬車が進む。寝ている彼女達を横目に大尉が話しを始める。




 「さて、人員が少し増えてね。少し大所帯になってしまったよ。部下を二人も持つなんて夢にも思っていなかった。まあ、リョウジのお陰かな。殴られたと聞いたぞ?」




 「はあ、そのお陰で表面上は仲良くなって良かったです。そういえば、あのミンハンス大尉はどうなるのでしょうね?」




 「多分大丈夫。部下の引渡しも順調にいったし、今頃はあの馬車町に戻っている頃だと思う。一端休養と再編成して再び俺らの後を追ってくるらしい。それだけ君が大事だと認識してくれるとありがたい」




 「はあ、まあ大尉の恩人に報う事が出来たのなら、一発や二発位殴られても気にはしませんが。それにアミュネス少尉はヘロヘロで腰の入っていなかった拳でしたからね」



 そういう見栄を張ると、ニコリとするジョルジョネ大尉。彼がこのニコリとすると大抵はろくな話ではないので改めて身構えてしまう。




 「なんで身構えるのだ? まあいい。それでだ、最近は君の質問に答えてばかりだったのでそろそろ君の話も聞きたくなってな。何から聞こうかな‥‥‥」




 ああ、やっぱり気になるよね現代日本。カルチャーショックで寝込んでしまうと思うよ。俺がここに来て受けたショックのようにね。


 「なんて、言っていいか分らないのですが。多くを語るとひょっとして王国を揺るがす事に繫がるかもしれませんよ?


 もう根本的に考え方自体がこことは違うと思いますし、そんな事を話し終わってから軟禁って言われても、私が困るだけなように聞えますが? ‥‥‥」



 俺がそう言うと、ジョルジョネ大尉は考え込んでしまって腕組をして黙ってしまう。しかし「我ながら大風呂敷を広げたな?」と。


 それに一小市民の俺が持つ情報なんて高が知れている。そんな俺が重大な情報を持っている訳が無いよね?


 せいぜい現体制の否定するような事ぐらいで、皆まで言って果たしてここの人達は理解できるか分らない。結局は最後に話した後に軟禁や拘束されたくない為の言い訳であった。



 その事に気付いたか分らないが、大尉は言葉を選ぶように俺に話しかけてくる。一瞬、俺のブラフが気付かれたかと思ったが、そうでもないらしい。




 「そうか~、それは困ったな~‥‥‥。じゃあ身近なことから聞くか。じゃあ家族は?」




 大尉の質問が始まると、例のミリクナ医務長の視線というか水面がここまで張っているような感覚に気が付いてしまう。彼女も俺の話に興味があるようだ。仕方なくその感覚に気が付きながらも話し始める。


 「家族ですか? そうですね。一応自立してまして、一人で部屋を借りて住んでました。両親は健在で田舎の方に暮らしていますよ。俺は一人っ子なので、将来は面倒を見ないといけないかなと思っていましたが、今となってはどうしようもないですよね? それに結構元気だったんで心配ないと思いますよ?」




 「家を継がなくて良いのか?」




 「ああ、昔って言うか百年程昔はそんな事をいって家に縛り付けられたと聞いていますが、俺が居た時期っていうか最近はそれは希薄になっていましたね」




 「家を継がなくて良いのか、じゃあ誰が政治をやっているのだ?」




 思わす、口に出そうになって困惑してしまう。民主主義の事を話して良いものなのかどうかだ。しかし、日本式は良いかもしれないとなぜだかそう思ってしまう。



 「その近隣の国の事は良く分りませんが、ヒノモトが多分特殊だったのだと思います。昔からヒノモトは大きな幹を軸に貴族や武家が政治をしていました。それが細かい葉っぱが枝を選んで政治をする仕組みに変わりまして。


 まあ、なんというか。それにも色々問題があるのですが、一通りやった結果の政治体制だったと思います。ヒノモトが識字率が高かったのが一因ではないかと思います」



 そういう風に話をはぐらかせてしまったが、大尉はそれで察しがついたようで納得するように頷く。




 「やはり、王国ももっと文小屋ふみごやを増やさないと駄目だな。学院のような所も増やさないと駄目だろうか‥‥‥」




 そう言って腕を組んで考え始める。文小屋? 寺子屋の事か? それとも学校だったかな?


 なんだかジョルジョネ大尉の誘導尋問に引っかかる俺であるが、これぐらいはいいよね?


 急激な改革は革命に繫がるし、結局困るのは何も知らない市民だよ。政治システムはその国の人に任せないといけないよね?


 まあ、本音は俺の知識のせいでそんな事が起きたとあったら寝覚めが悪すぎる。


 「あの~、あんまり政治『システ・』あ、う、仕組みに他国の俺の意見を取り込むのも危険なように感じるので勘弁してください大尉。そのせいで苦しむのは何時も民衆です」




 「そんなのは分っている、リョウジ。でもな、この王国は既にヒノモトのまつりごとの仕組みを取り入れているからそんな心配はしなくて良い。但し、この会話の事は皆に話さないでいてくれ。国王陛下や官僚はその辺の思考は結構柔軟で、周りの国を反面教師にしたお陰でもあるがね。新しい仕組みは議論して取り入れる度量がある」




 「いやだって、ひょっとするとその国王陛下を否定‥‥‥。するかもしれませんよ?」




 結局言ってしまった。一番言ってはいけない事を。何時ものように言ってしまってから後悔する。しかし、大尉はそれを見透かしたように話し出す。




 「でも、君の国は結局否定しなかったのだろう? と、いう事はそういう道もあるという事だと思うけどな? しかし、この国にはまだ早い考え方だ。もっと民衆が自分で考えるだけの知識を持たないと駄目だ‥‥‥」




 そういって再び腕組みをして考えるジョルジョネ大尉をただ見つめる事だけしかできない俺であった。




 後編につづく

次話は12/28の夕方に投稿する予定です。

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