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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-22> 「モルモットな年季奴隷  (前編)」

最新の本文修正日は2014年11月30日です。

 料理対決で決着が付かなかったアミュネス少尉とユロジェン少尉は結局拳で語らうようで、その姿を眺めていた俺ですが、最後に自分がノックアウトされて彼女達の戦いは終わりのようです。


 そんな二人の料理勝負の勝敗は双方失格で、どちらも引き下がれなくなり対決したようだ。


 しかし、料理対決は結局俺が勝った様なものだよね?


 ジョルジョネ大尉とギムネーヤ料理長、向うの料理長が美味しいといって俺の炊いた米と味噌汁を飲み干したからね。



 最後に何で俺が殴られたのかは今一分らないが、以前から疑問に思っていた俺の生誕属性である木属性(もくぞくせいの魔素術がなんなのか分っただけでどうでもよくなる俺であった。






 アミュネス少尉とユロジェン少尉が料理馬車の方で酒盛りを始めたようで、向こうがなんだか賑やかになる。俺はその様子に馬鹿らしくなり、自分のテントの方に足を向ける。同じようにミリクナ医務長も付いてくる。ただ一人、向うの医務長は自分の馬車に戻るかと思っていたが、なんだか俺達の後を付いてくる。


 「あのー、そういえば名前を名乗っていなかったですね。俺はリョウジと言います。それで貴方のお名前は?」




 「ああ、知っているよリョウジさん。私はミリー先輩と同じ師匠の下で医者の修行をしたものでね。医者としてミリー先輩よりは先輩なんだけど奴隷組合では部下でね、私はマイネンスという。家名はないからただのマイネンスとだけで良い。専門は切り刻むのが仕事でね! 良かったら今度やらせてくれる?」




 「はあ? 何を仰っているのか分りません。切り刻むのは勘弁してくださいマイネンスさん。それで、何で俺らの後に着いてくるのでしょうか?」




 「いやー、実験体をよく見たいかららねー。生きている内にじっくり観察しないといけないじゃないかー」




 ああ、もう何を言っているのか分らない。この人は少しねじが緩んだ系の人らしい。多分マットな科学者系なんだよね?


 俺は背筋が寒くなる感覚がしてくる。後ろを振り返るとマイネンスさんが人差し指で俺の背中を撫でているではないか。俺はビックリして話し返そうとした瞬間にミリクナ医務長が口を開く。




 「いい怪訝にしてください、マイ姉!! リョウジが怖がっているではありませんか!! それ以上やると私が許しませんわよ!!」




 「お~こわっ!! ミリー先輩は怖すぎですわー。その殺気はやめてくださいねー。マジで怖いですから」




 「だったら、素直に従って付いてくる!!」




 「は~い、ミリー先輩!」




 嗚呼、なんともユーモアなのか素なのか良く分からない人である。すると、この前と同じような特急馬車? そんな馬車だったか、それがジョルジョネ大尉の指揮車の前に止まっている。


 俺らはミリクナ医務長の馬車に入っていく。何でか知らないが、いつの間にか俺の腕を掴んだミリクナ医務長が少し強引に俺を引張って指揮車に乗せたからであった。


 「あのー、なんでこちらに乗せられたのでしょうか?」




 「はいはい、黙っていましょうね~。色々と検査するからそこに大人しく座っていましょうね!」




 そういってミリクナ医務長は俺を後部座席に座らすと、二人は正面に立って俺を見下ろしている。ああ、なんか嫌な雰囲気だなと、思っているとこの指揮車の扉がノックされる。ミリクナ医務長はドアを開いて中に人を招きいれる。



 中に入って来たのは白衣を着た医者風の男女二人と黒い外套を羽織った老婆? それと、その老婆の杖代わりなのか、手を添える若い女性が乗り込んで来る。


 いよいよなんだか意味が分らず俺は身構える。すると、その老婆は俺の左側に座って俺の左手を握るではないか。しかし、その老婆の手は少し暖かくて、なんだかやさしさを感じる俺であった。



 ふと、視線が気になり俺は老婆の顔を見ると、老婆は目を開きその白い瞳を俺に見せる。しかし、焦点は合っておらず、なんだか遠くを見ているようである。ひょっとして目が見えないのかもしれない。


 斜め向かいに向かい合うような状態の老婆と俺は暫く膝を突き合わせて黙っている。俺は堪らず、いったい何をしているのかと口を開こうとすると、その老婆の手を取っていた女性? その彼女が、俺の口を静止する仕草をする。


 良く見るとアニメに出てきそうな魔女っ子の典型的な服装である。同じ外套に魔女が被る尖った帽子につばの長い感じはまさにそれである。




 「少し静かにしてください。リョウジ殿! 


 今、筆頭魔素術使い補佐様があなたの魔素力をお調べになっております。今は心を静かにして座っていてください!」




 俺はただ頷くしかできなかった。こんな事しなくても魔素力を調べる機械? その魔素道具が有ったように思えて不思議に思う。どれくらい時間が経ったか分らないが、欠伸が出掛かって口を押さえようとした頃にようやく俺の左手を離してくれた。




 「ああ、こりゃだめじゃな。わしゃにもわからん!!


 おぬしは不思議な魔素力を持っているようだが不自由はないぞね?」




 「はあ、良く分かりませんがそこのミリクナ医務長からは、魔素力の三要素でしたか。それが不均衡で俺には魔素術は使えないと言っていました」




 「ふむ、その胸の光は分るのだが。いったいなんなのかと問われても、わしゃにはわからんぞい。それはなんじゃ?」




 「はあ、数日前にゴダ芋とかいう芋から見つけた魔素結晶の欠片を皮袋に入れて首からぶら下げていまして。それが俺が高熱で倒れて暫くして、私の胸に入り込みまして多分その事だとは思いますが、それ以上は分りません」




 「ふむ、そういう事か。あー、分らん。わしゃにも分らん。さて、少し疲れたので外に出て休むかのぉー。じゃあ、連れて行っておくれ!」




 そういって婆様と、魔女っ子は外に出て行ってしまう。良く分らない人達であった。そして、残ったのは、白衣の男女である。


 彼らはアミュネス少尉が持っていた同じようなスーツケース型の魔技箱を持っていて、その中から魔素力を計測する装置? その器具と同じような物を出してセットを始める。


 俺に例のように電極みたいな線を付け出して、頭にはつばのない配線が付いた帽子をかぶせる。そして、お決まりの魔素術の動作をやれと命じてくる。仕方なくその動作をすると。別に驚く風でもなく淡々と何かに記入を始める。


 都合5回ほど魔素術の動作をやらされて、その度に計測をして何かに記入をする。いい加減勘弁してくれと言いたかったが、彼らは有無を言わせず更に5回もその動作を俺はやらされた。



 その結果に納得したのか分らないが、配線を全て外し始める。そして、今度は、お医者さんで問診のような事をやらされたのを思い出すが、それと同じような問診を始めだした。


 最近はどうとか、一日何回便所に行くだとか。多分一時間近く質問攻めにされたと思う。何を答えたか良く思いだせないが、ただひたすらそれに答える俺であった。




 ようやく介抱されるようで、その男女も外に出て行く。俺はなんだかぐったりな状態で、ひどく疲れてしまう。次はなんだと思うと、マイネンスさんが今度は俺に立ち上がった姿を見せろといってくる。


 俺の前に立ったマイネンスさんは徐に彼女の丸いメガネを外す。すると、灰色だった瞳のはずが、メガネを取るとオレンジ色になっているではないか。その途端、肌が透き通るように白くなって金色だった髪の毛が銀色になる。まるで森人のようで俺は腰を抜かしてしまう。



 すると、ミリクナ医務長が口を開く。




 「ああ、彼女のご先祖に森人がいたようで、魔素術を使う時にその血が出てしまうのよ。今は貴方の体を透かしてみているからその姿になったようね。普段は人族と同じようなんだけどね」




 ミリクナ医務長がそう話し終わると、体をスキャンし終わったマイネンスさんは疲れきった表情になる。すると、先程の金髪に戻り肌も普通の白人の肌のように赤みと黄色の普通の肌に戻る。


 視線を顔に向けると、瞳も同じようにグレーに戻ってしまう。おいおい、人間CTかよ!! 魔素術でそんな事も出来るのか? しかし、彼女は手の動作をしていなかった。はて何の力か分らない。




 「ふう。やっぱり疲れるわ! どう見ても普通の人族よねー。これといった物はその胸の奴だけね。根を伸ばしている風でもないし、ただの魔素結晶の欠片にしか見えないは。いったい何の不思議があるというのミリー先輩?」




 「貴方の目でも分らないとなるとお手上げだわ。さて、今日はこれでお終いにする?」




 「いや、今、サラッと流しましたが。やはりこれは異常事態なんですね?」




 「えー、違うって言っていたでしょう。偶に有るのは事実だし。これと言って体に変調もないでしょ?」




 「そうよ、私だって五人ほど知っているのよ。何れも皆は普通に生活してるよ?」




 二人して、とぼけた風でもなく普通に話していて、どれが本当だか良く分からない。俺は頭をかく事しかできなかった。




 「明日もう一度調べるから。今日は寝た方が良いわよ」




 「はあ、そうなんですか。朝早くやるのですか?」




 「いえ、明日はあの陸ハトゥーの最後をみせてあげる。その後、検査しましょう‥‥‥」




 そういわれて首を傾げながら指揮車を出ようとすると、一旦ミリクナ医務長に引き止められる。何かと思えば暫く待てといわれてしまう。そして、彼女は外に出て行ってしまい、俺はマイネンスさんと二人にされて困惑してしまう。


 そうかと言って彼女と会話が出来るほど対人能力も無い。そんな事が出来れば彼女いない歴イコール年齢にはなっていない。あー、何かを話さないといけないのかと心の中で葛藤していると、突然指揮車のドアが開く。


 中に入ってきたのはミリクナ医務長であった。彼女の手には何時もの薬が入った木製ジョッキを持っている。ああ、何時もの薬かとため息をしてそれを飲み干すと、ようやく俺は解放されるらしい。



 空になったジョッキをミリクナ医務長に返すと指揮車から外に出る。外に出るとすっかり日が落ちていて暗闇に包まれている。時々雲の切れ目から二つの月が顔を出して当たりを照らす。


 すると、指揮車の近くに置いてあった特急馬車の馬達は馬具を外されてその場には居なかった。残っていたのは箱型の部分だけでぽつんと置かれていた。




 ため息を付いて自分の寝床に歩みを進める。ああ、なんだか良く分らない検査のような事に俺は戸惑ってしまった。その内、標本になんかくれとか言われそうで、そう思うと身震いがしてくる。


 便所に行ってから寝床に入りそろそろ風呂に入りたいと、思いながら体を横に向けると薄っすらとプイホンさんが気持ちよさそうに寝ている姿を見ることが出来た。


 そういえばコイツ今日は何処に行っていたんだろうと疑問が沸いてくる。しかし、そんな事は大したことではなく、それより明日の検査の事が気にかかって寝れなくなってしまう。



 仕方なく少しの疲労感を得る為に探査の修行をする。ただひたすら静かな水面を思い浮かべる。何時ものようにこのテント周辺には動く物が無い。それでも限界近く水面を思い浮かべる5分ほどすると程よい疲労を覚え、眠くなる。やがて何時の間にか寝てしまう。




 どれだけ時間が経ったか分らないが何時ものように夢を見た。良く分からないが断片的なシーンばかりで、今まで繫がったストーリというものが無い夢である。


 時々見た事がある人が出るのは昼間の影響だと思う。しかし、何時も俺って言うか映像を写している本人の姿は見えない。


 一体何が言いたいのか分らない俺であるが、ただひたすら見せられる。ひょっとして何かのメッセージ? とも思うが、関連性が分らない俺には分らない。


 このモヤモヤは何時になったら晴れるのであろうか。そんな事を思いながら同じ夢を見ていたが、不思議な事にあの和やかな雰囲気の夢まで見てしまう。


 そう、誰かに何があったかと尋ねた夢である。俺が何があったかと同じように聞いて倒れた自分の姿を見る。いやいや、それはもう済んだ事だよね? そう思っていると汗だくになりながらも目が覚める。



 体を起すと何時ものような訓練時間の頃だと思う。辺りを見回すと既にテントの中は俺以外誰もいない。見回した後にはもうその時は何の夢を見ていたのか分らなくなる。


 ふと、考えると、パターン的なものが見えてくる。覚えている夢は平均的に現実に起きている事を思い出す。しかし、あの穴に落ちるような夢は中途まで覚えていなかったよね? よくよく考えると俺の仮説は当てにはならない。


 まだ見る夢の種類が少なく断片的なものしか見ていないので結論は出ない。考えれば考えるほど分らなくなり頭を振って今は目の前の事に集中しようと思い直す。


 寝袋を丸めながらそんな事を考え、訓練の場に行き体を解すと、装備をつけて今日も剣の素振りを無心で行う。考えながらだと駄目なのは分っているので、ただひたすら剣を振る。足と剣の振るタイミングをあわせて素振りを行う。



 良い汗が掛けたと思う頃にジョルジョネ大尉の爆音が野営地に響く。すると、何処かで「うるせー!!」と、女性の声が二人分聞えてきた。多分朝近くまで飲んでいた二人だと思うが‥‥‥。仕事しましょうね? お二人さん。と、小声で囁くが実際に面と向って言えない俺である。また殴りかかってこられても困るよね? 触らぬ神にたたり無しと昔の偉い人は言ったよ。桑原桑原~。




 他の年季奴隷達に紛れて身支度を済ませ、配膳の列に並ぶと何時ものようにお盆にスープを載せてくれる。良く見ると今日は芋の味噌汁であった。ああ、パンには合わないけどこれも有りだよね? ありがたくそれを頂いて薬の青汁を飲む。


 食後に一応ジョルジョネ大尉に顔を見せないといけないと思い、彼の指揮車をノックする。すると、青い顔をしたアミュネス少尉が顔を出し扉を開けてくれた。中に入るとジョルジョネ大尉は俺を見て首を傾げる。


 「いや~、そろそろ仕事をしないといけないと思いまして顔を出しました」




 「あっ! そうだった。君に言い忘れていたよ。今日は君の検査やあの陸ハトゥーの運ぶ様子を見学させてやろうと思っていて、すっかり君に話すのを忘れていた。すまん。明日からは通常の移動になるからそれまでそういう事だ」




 大尉の話が終わらない内に昨晩にミリクナ医務長から言われた事を思い出し、相変わらず間抜けな自分を思い出す。


 「はあ、分りました。では外で待っていればよろしいですね?」




 「ああ、そうだ。ミリクナ医務長が君を連れ廻すと思う。付きやってくれ。俺らは部隊の再編で忙しくてそれどころじゃないからな」




 そういってジョルジョネ大尉は自分の仕事に集中してしまう。俺は首を傾げこれから何をされるのかという事に考えを巡らし指揮車の外に出る。すると、いつの間にか特急馬車には馬が6頭繋がれているではないか。


 急に特急馬車の扉が開いて俺を手招きする人物がいる事に気付く。ミリクナ医務長であった。俺がその特急馬車に乗ると馬車は動き出す。


 特急馬車の中は指揮車と同じ感じの馬車であったが、違うのは前も後部座席と同じふかふかの椅子であった。中には俺とミリクナ医務長、マイネンス医務長? それに魔女っ子と、ばあ様。ああ、え~と、筆頭宮廷魔素術使い補佐だったかな。その他に昨日の白服の男女が乗っていた。


 一瞬満員電車を思い浮かべるが、まあすし詰めでもないし、それに大した距離ではないので俺は立って壁に掴まる。暫くすると馬車は止まってミリクナ医務長が扉を開く。




 そこには凍りついた陸ハトゥーが転がっていた。あれ? 何時の間に魔素術で凍らせたのだ? プイホンさんじゃ無理だよね? 良く分らない。


 俺らが着いたと同時に何故だか分らないが凍っていたはずの表面が溶け出し始める。かすかに青白い光が消えたように見えたのは何時ものように俺だけのようだ。誰も何も言わない。しかし、ばあ様だけが俺に耳打ちしてくる。




 「綺麗だったろ、あれが氷属性の魔素術の解ける時に出る残り香だ。それに気が付くとはおぬしも捨て置けぬな」




 そんな事を言っていたと思う。少しなまりがきつくて皆までははっきり聞えなかった。


 視線を動かすと周りには大八車のような大きな荷台の馬車が10台ほど横付けされていた。各馬車には馬が4頭繋がれていて、あれで亡骸を運ぶらしい。何回か往復しないといけないように思えるのだが、10台ではとても運べる大きさではないからだ。


 そんな俺の考えを他所に解体作業は始まるようで、陸ハトゥーを鋸のようなもので切り刻む。ばらばらになった陸ハトゥーは順番にその荷馬車に乗せられていくと、シートのような布をかぶせられてロープで固定されていく。


 次々に乗せるのだが載せているのは例の人型重機の山人で、交代でクレーンの代わりのように載せていく。何回かに一回に交代して同じ岩人形を操っていく。荷馬車も次々とやって来て、最終的に全て載せて行ってしまった。嗚呼、そだよね~。俺の予想はそんなもので大佐だか、あの偉い人はちゃんと目算して手配したようだ。


 積み込みが終わったのか重機代わりの土人形は元の土くれに戻って平らになっていく。その平らになっていく地面から山人の大きな体が浮き上がってくる。軽く体の土を払って、乗って来たと思われる馬車に皆乗って行くようだ。残ったの陸ハトゥーの血の跡と、あの長い首の下になった仮設トイレの残骸だけであった。



 そういえば陸ハトゥーの近くに俺が落ちた大きな穴があったはずなのだが何時の間にか無くなっている。何時の間に無くなったのか分らない。


 すると、俺達から少し離れた魔女っ子が左手で魔素術の仕草をはじめる。先程そこにあった陸ハトゥーの周りにはもう誰もいなくなっていた事を確認しての行動だと思う。


 その魔女っ子の左腕が一旦胸元からまた空に翳すと自分の身長より倍以上もある大きな青白い火球を左手の上に出現させる。微かによっこらしょと、聞えたかと思うとゆっくりと大きな青白い火球がその痕跡があった場所に放たれる。


 火球がその場所に到達すると爆発するかと思ったが、ゆっくり一帯を焼き尽くす勢いでその火球は地面と平行に広がって行く。良く見ると周りの草や土の表面が蒸発する勢いで燃え上がる。まるでガス切断機の青白い炎が鉄板を切断するが如く土の表面を焼き尽くす感じで、この一帯を浄化するように焼き尽くす。


 炎が消えた後は表面の土がガラス化してきらきら光っていた。その場で驚いて見ていたのはただ一人、俺だけであった。次に魔女っ子が魔素術の動作をして左手を地面に当てる。すると今度はガラス化した地面がひっくり返ったように真新しい地面に変わる。先程の灼熱地獄で焼かれた痕跡が消えてしまうではないか。



 まるで耕された畑のようになった地面の上をマイネンスさんが革袋を持って革袋の中から何か蒔きながら歩き出す。大体蒔き終わり周りをキョロキョロしだして目的の場所に来るとしゃがんで地面に左手を当てる。


 すると、髪の色が一瞬変わり左手が一瞬緑色に光りだし、先程までむき出しの地面から緑色の草がニョキニョキと生えてくるではないか。草の種でも蒔いたのかと一人納得する。やがて、他の場所と同じようの草原になってしまって、先程までの惨状は何処にあったか分らなくなってしまう。



 腰まで伸びた草の中からマイネンスさんが顔を出すと、既に彼女は元の姿に戻っていた。それにマイネンスさんが大地に手を当てた時に緑色の光が見えた事を思い出す。同じように魔女っ子が地面に触れた時には黄色に光って見えた。火球を出した時には一瞬赤く光って見えた。その途中で大きな火球の青白い炎に照らされて若干見えにくくなったが確かにそれも見えた。俺がそんな事を思っていたのを見透かしたようにあのばあ様が口を開く。




 「ほう、放出の光も見えるとはまた面白い。じゃが自分は魔素術が使えんとはなんとも皮肉じゃな~」




 ばあ様は確かにそう呟いた。ああ、まったく大きなお世話だがそれは口に出せない。それを知ってか知らずか、ばあ様は見えない瞳で俺の方を見て微笑む。なんだかすべて見透かされているようで背筋が凍りそうになる。




 「よかったわね~、リョウジさん。今日は滅多に見れないものを見れたわよ! 


 私としては筆頭魔素術使い補佐の魔素術が見たかったのだけど、まあ平の宮廷魔素術使いの実力も見れたから良いわ。そういえば貴方は2番目よね?」




 そんな俺の気持ちを知ってか知らないのか、珍しい物が見れたと自慢するミリクナ医務長。その彼女が魔女っ子を見下すように最後に喧嘩を売ったように見えてしまう。喧嘩を売られた魔女っ子はあからさまに不快な表情をして言い放つ。




 「ああそうよ! 今は二番目だけど次は一番になるわ!! 今に見ていなさい!!」




 ああ、なんか魔女っ子に火をつけたようで、彼女は拳を振り上げてそう言い放っていた。しかし、俺の興味は別の所に行ってしまう。彼女達の話では平の宮廷魔素術使いにはランク付けがあるようだ。少し彼女らに興味が沸いて来て腕を組んでいると、またもやばあ様が口を開く。




 「ほう、興味が沸いたか? では、王都に戻ってきた際は案内するよ、坊や」




 ますます恐ろしいばあ様である。俺は「その時は頼みます」と、しか返事は出来なかった。すっかり周囲が元に戻ってしまったこの場所には用が無くなったのか、再び特急馬車に乗るように急かされる。仕方なくそれに乗り、また同じ場所に向う。中ではまた同じ事をやるから降りないでここに居ろとだけ、ミリクナ医務長に言われる。



 馬車に乗せられ、後部座席に座らされその横に筆頭宮廷魔素術使い補佐のばあ様が座る。馬車が動き出して先程の事を反芻するように考えていると馬車が止まって、昨日と同じようにばあ様に手を握られる。


 何を探っているのかは分らないが、静かに左手を探って俺をその白い瞳で探るように見つめる。しかし、焦点は合っていないようでどこか違う所を見ているようであった。そろそろ良いのか分らないが、手を放してばあ様は何か言ってくる。




 「さて、お前様の質問に答えてやるかのぉ。魔素術が使えなくて困っているのじゃろう?」




 「はあ、まあそれもありますが‥‥‥」




 「そうじゃのぉ。」




 そういってばあ様が話し始めるのを待つ俺であった。




 後編へつづく

次話は明日12/23の夕方に予約投稿する予定です。

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