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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
52/229

<2-20> 「なぜか審査員な年季奴隷  (前編)」

最新の本文修正日は2014年11月30日です。

 合流して来た別の奴隷旅団所属中隊の軍人二人組みに会った俺ですが、何でか行きがかり上、二人の女性少尉の料理対決の審査員にされてしまう。


 その訳は合流してきたミンハンス大尉が何か可愛そうであの場は口を出さないといけないような気がしたからである。あのままではそのミンハンス大尉に懲罰が重なってしまうのはなぜか理不尽なように思えて仕方がなかった。


 それにジョルジョネ大尉もミンハンス大尉に御世話になっているようで彼を助けたかったと思う。多分、ジョルジョネ大尉は立場上出来なかったのかもしれない。俺が間に入り適当に彼女らを焚き付けた事によってジョルジョネ大尉から睨みつけられたがミンハンス大尉は踏ん切りがついたようだ。



 これでよかったのかは対戦しないと分らない。結果的に二人の上司に恨みは行かず、何故だか俺に向ってくる気がして後が怖くなってくる俺であった。






 俺は研究の為に漉いた紙が乾くまで探査の練習をしていたが、疲れが出てのか眠ってしまう。気が付くと夕方のようで、微かな美味しそうな臭いで目が覚める。


 飛び起きた俺は外に干してある紙の様子を見る。天日干ししてあった奴は乾いたようだ。木の板からはがしてみると旨く剥がせる物や少し破れた物があって概ね良好である。


 しかし、陰干しした奴はまだ乾いていなくてこのままにするか考えたが一端集めて重ねて纏めておく。他の道具や木の板などを集めて馬車の下に纏める。


 出来た紙を数枚捲りながら数えると20枚は上手くいったように思える。後は曲げたり引張ったりして試したが、昨日の奴よりは遥かに出来が良くて文字を書くには十分すぎると思う。



 仮設の食堂に行くと、ガルボルテ工作長が晩飯を食っていたので見せる。




 「ほう、出来たか。まあまあ、だな。後はもっと均一に漉く練習をすれば店で売れるじゃろ。ああ、これは特許に出せないからな! 既に出ているからのぉ」




 「はあ。まあ、そんな事はどうでも良いのですが、もっと、色々な材料で試したいですね」




 「うむ、その心意気はよい事じゃ!! 日々研鑽が大事だぞ!!」




 「では、一応の報告でした」




 「ああ、また必要な物があったらワシに言ってくれ!」




 まあ、あの反応は今一の分類だろうと思う。あの昆布の粉みたいのが少なかったのだろうか? 


 あっ、そういえば二掴みって言ってたけど、あれはガルボルテ工作長の手で二掴みって事いうで、俺の手だともっとという事か?


 ああ、そういうことか。また今度試す時にやってみよう。



 そんな事を考えながら配膳の列に並ぶと、俺だけ別メニューのようで明らかに他の人とは違う物がお盆に載せられる。


 お盆に載せた人物の顔を見ると、前掛けをしたアミュネス少尉であった。ああ、実験台にされるようです。その横に居たカルさんに尋ねてみる。


 「カルさん、これを食べた後の薬ってありますか?」




 「えっ!! そ、そ、それ、それは、だ、だい、大丈夫! じ、じゅ、十回目で、で、でき、出来たから!!」




 「何を言っているのかしらリョウジさん? 私は完璧なのよ! これぐらいどうって事ないわ!!」




 「ですが、あのミンハンス大尉が言ってましたよね、体が弱っていると。その人達にこの濃厚で脂ぎった食事は果たして受け入れられるのでしょうか?」



 それを言った途端にアミュネス少尉の顔が明らかに青くなったように感じる。確かに普段なら今出されてもので問題ないと思う。しかし、彼らは明らかに疲労困憊で胃の腑も弱っているよね?




 「カルマイネ料理長補佐!! 胃の腑が弱っている方のお食事の作り方を教えてください!!」




 「えっ!! ま、ま、また、ですか?」




 ああ、カルさんって「カルマイネさん」と、いうのか。今更だがカルさんの名前が分る。それにしても戸惑った表情はまたこれから数時間、料理の教えを説くのかという様で困惑顔のカルマイネさんであった。


 俺は、お盆に載った別メニューと薬と水を乗せて席に着く。プイホンさんがいたので紙を十枚ほど渡す。



 「これが、出来た紙ですよ。まだ沢山出来ないのでこれで勘弁してください」




 「すげー、兄ちゃん!! 紙を作れるんだね!! ありがとー。おいらこれで字を書く練習をするよ」




 「ああ、書けなくなったら新しい紙に作り直せるので持って来て下さい」




 「えっ? そんな事もできるのか? すげぇーよ兄ちゃん!! 見直したよ!!」




 ああ、その驚きの表情の為に紙を作ったようだよ俺!! グッジョブ俺!! と、内心自分を誉め称える。


 しかし、肝心のこれをトイレットペーパーにするとなると、少し考えてしまう。なんていうかこんな所で貧乏根性見たいのが出てきて、勿体無く感じてしまう。


 ああ、試しに何枚か使ってみれば良いか。しかし、肌触りが今一なんだよね。多分あのトウモロコシの葉っぱと変わらないように感じる。トイレットペーパーはもっとこう柔らかくソフトな感じでお尻にやさしいよね?



 そんな事を考えながら晩飯を食べると、案の定アミュネス少尉が作ったスープは脂っこく、これでもかと胃を痛めつける感じである。体調が良い時にはこれぐらいが良い感じだが。


 これはなんていうか‥‥‥。ラーメンのスープで麺を入れると良いかもしれない、そんな味だった。再びラーメンが食べたくなる。我慢が出来なくなってきたのである事を思いつく。


 さっさと晩飯と薬を片付けると、配膳の所に行ってギムネーヤ料理長を見つけ声を掛ける。



 「あの~ギムネーヤ料理長? あのですね、勇者様がその『ソバ』。あ、う『ソバ』という粉を練って細長くした食べ物なんか伝えていないですか?


 ああ、『ウドン』。あ、う、それか『ウドン』でもいいですが」




 「へぇっ? 『ソバ』に『ウドン』だって? ちょっと待っておくれよ‥‥‥。配膳が終る頃来ておくれよ」




 「ああ、すいません。忙しいですよね。また後で来ます」



 まだ人がいて駄目であったようだ。仕方なくテーブルに座ってぼーっと調理風景を眺めていると、アミュネス少尉は結構包丁捌きは上手いようで材料を刻むのは手馴れた様子である。


 しかし、味付けが駄目なようで、何度か塩や調味料を入れているのだがカルマイネさんに駄目だしを何度も食らっている。


 多分あちらでも違う料理長の下でユロジェン少尉も修行しているよね。一夜漬けで上手くいくのか? すると、年季奴隷達の囁き声が聞えてくる。




 「おい、聞いたか? 明日の昼に内の少尉と向うの少尉が料理対決をするらしいぜ!」




 「おめえは誰に賭ける?」




 「俺はアミュネス少尉だ!」




 そんな声がちらほらと聞えてきて、賭けに乗ったとか乗らないとか聞えてくる。ああ、暇だからねー。研究員だかが来るまではやる事はないし、警備も交代だからそれ以外の人達はやる事が無い。


 訓練はしているようだが一日中やる訳ではないようだし。今朝までは新たに来た奴隷旅団所属中隊の野営地を作る為に草刈をしていたようだけど、それも午前中で終わったしねー。


 しかし、引き分けに賭けた人は誰も居なかったようだ。まあ、俺は審査員だから賭けには加わる事は出来ないけどね。



 すると、一段落したようで隣の席にギムネーヤ料理長が座ってくる。




 「すまないね、待たせたね。それでなんだったか」




 「いえ、すいません。俺こそ忙しい所を邪魔してすいません。それで『ソバ』と『ウドン』の事なんですが」




 「ああ、勇者が書き残した物にそんなものが有ったと思うよ。『ソバ』は季節ものでね、秋に取れるソバの実から取れる実を石臼で引いて粉にする。そして、それを水でこねて引き伸ばして細く切る。後はそれを茹でて汁につけて食べる料理だろ?


 ウドンは確か小麦だったかね? それを同じように粉にしてソバと同じようにこねて茹でる。後は同じような汁につけると美味しいとか言われていたはずだよ。それがどうしたの?」




 「いや~、ギムネーヤ料理長がそれを作る事が出来るのか知りたくて。出来ればなんていうか久しぶりに食べてみたいと思いまして」




 「なるほどね、家が恋しくなって住んでいた所のものが食べたくなったのかい? でも、小麦は石臼で引かないといけないし、ソバの実は取り寄せないといけないよ。あれは結構寒い地方でしか取れないからね。南の方にいけば直ぐ手に入るけど?」




 「はあ、じゃあソバは諦めますウドンは行けますか? あれならばどんな汁でもいけますよ。なんだったら石臼で俺が粉を挽きますよ!! ああ、ついでにウドンを造ります!! いや、作らせてください!!」




 「仕様がないねー。そこまで言うなら小麦は在庫にあるからいいとして、造り方はちょいと本を見るから明日の朝食後でいいかい?」




 「汁の造り方も分りますか? 分れば尚良いです。なんだったらこの紙に書いていただければ材料と道具を持って自分で一人で作ります!!」



 そういって俺は残りの紙の束を彼女に渡すと、まじまじとそれらを捲って口を開く。




 「おや、これが朝から作っていた紙かい? こんな上等な物に書いて良いのかい?」




 「いえ、無くなればまた造りますから大丈夫です。あ、もっと入用なら暇を見て造りますよ」




 「そうかい、じゃあこれに書き留めるよ」




 そういって彼女は自分の仕事場に行ってしまう。ああ、ウドンが食える!! 久々の麺類だ!!


 まあ、ラーメンは食えないけど同じ麺類ならこの際贅沢は言わない。蕎麦は南下してからのお楽しみにして、まずはうどんだ! ウドンが出来れば何時かはラーメンに近付くだろう。浮き浮きした気分で空いたテーブルの片づけを手伝う。



 寝床に向かい馬車の方に行くとプイホンさんがランプの近くで何かやっているのを発見する。空はすっかり暗くなっていて薄っすらと付いたランプにプイホンさんの顔がはっきりと見える。


 どうやら彼は文字の練習をしているようだ。こっそり近付いて見ると「い、ろ、は、に、ほ、へ、と‥‥‥」と、読める。えっ? 何故にいろは歌? 良く分からない。


 多分アルファベットのように現地語で書いていると思う。首輪で訳されてそのように見えるからどう仕様がない。20cmあったエンピッツはもう5cm程までに短くなっていて彼の努力を垣間見る。


 俺はそっと自分の魔技箱から道具袋を出してもう一本エンピッツを彼に渡す。すると、大層喜んで彼の革袋に大切そうに仕舞う。ああ、俺グッジョブ!!


 今日はもう疲れたようで眠そうに欠伸をするプイホンさん。一緒にテントに入りベットに横になるとプイホンさんは直ぐに寝息を立てて眠ってしまう。俺はその彼の寝姿を見て癒し成分を補充する。



 明日は審査員の仕事が待っている。ああ、無事に終わるのだろうか? そんな事ばかり考えてしまい、中々眠れない。


 仕方なく、疲れるように探査の修行をする。範囲は相変わらず5mぐらい。昨日のように誰かが通れば良いのだが、テントの近くには誰も寄ってこないようで水面は静かに漂っている状態である。


 少しづつ範囲を広げてみると、直ぐに限界のようでヒュウズが切れて俺は気を失ってしまった。ああ、寝れたから良かったのかは分らない。




 それからどれくらい時間が経ったか分らないが昨日と同じ変な夢を見る。皆が楽しげな雰囲気でいて、なんだか俺も楽しくなる。


 嗚呼、こういう風な夢なら何度も見ても不快にはならない。相変わらず回りの人物はぼやけていてはっきり見えない。


 いい加減、何が楽しいのかと声を出して聞いてみる。すると、ほれ見ろと誰かが言う。見ると俺が倒れているではないか。え~~~、これって悪夢だったのか? と、誰かに聞いた所で目が覚める。



 全身汗だらけで玉のような汗が体を起したことで流れ落ちる。いやー、悪夢だったよね。悪夢だった。ああ、悪夢だった。何で俺は倒れていたんだ?


 どうして俺は倒れていたんだ? ‥‥‥。考えられる事は三つある。


 一つは探査の実験のしすぎで力尽きる。もう一つは料理を試食して食あたりをする。最後に料理対決の結果でどちらかに八つ当たり的なものを受けて倒れる。


 うーん、一番可能性があるのはどれだ? なんかどれも起きそうで怖い。しかし、皆が楽しい雰囲気であったような‥‥‥。分からない。


 あれ、何時もは忘れるっていうか、もやっとしていて思い出せないのに今日はなんで覚えているんだ?


 ああ、考えれば考えるほど分らなくなる。



 対策としては、先ずは無理をしないで探査の練習をする。当面は持続時間のみにして範囲を広げないようにする。持続時間は自分で調整できるし、疲労を感じたら直ぐやめるようにすればいい。いきなり範囲を広げるのは上手く調整が出来なく、頃合が良く分からないからだ。


 二つ目の味見は周りが口をつけてから俺が口をつける。うん、これで良いはずだ。変な味やおかしい時は誰かが必ず気が付くはず。


 三つ目が問題だ。審査する時に順番に審査すると真ん中に座れば良いが、多分一番端っこな気がする。この場合は一番困る。2対2になった時どうすれば良いのか分らない。ああ、なるようにしかならないか。



 あと、考えられるのはなんだ?


 まあ、何か失敗して笑われるのは良いのだが、俺に何かがあって倒れるのが気になる。用心して行動するしかないか?


 そうやって色々考えていた為時が過ぎるのを忘れてしまい、周囲がぞろぞろと起きたようで掛け声のようなものが聞えて来る。俺は顔の汗を拭って体を起すと、同じテントの人達に挨拶をしながら外に出る。



 体を解しながら、訓練している場所に行く。そして、ほぐれた体に木製の剣と盾を装備して素振りを始める。皆も疎らだが集まってきてそれぞれ訓練を始めているようだ。


 その内「集まれ!」と、ゴナベル奴隷長の声がして大きな盾に持ち替えて集団防御の訓練が始まる。俺はそれを横目に剣を振る。何回振ったか分らないが汗だくになった頃に解散の声がして来る。



 道具を仕舞うのを手伝って、朝の支度を皆に混じりながら行う。何か無心に剣を振ったお陰で何か吹っ切れた感じになる。


 それに、確か一番最初に見た感じの夢の出来事は今の所起こっていないよね?


 多分、起こっていない。そう自分に言い聞かせて朝飯の配膳の列に並ぶ。


 俺の番になって昨日と同じように別メニューをお盆に載せられる。薬と水を乗せて、紙の束を渡される。紙の束には文字が書いてあり一体何事かと思ってギムネーヤ料理長の顔を見ると彼女が口を開く。




 「昨日のいっていたやつだよ。材料は朝食の忙しい時間が終わってからね」




 そうギムネーヤ料理長は俺に話す。俺は昨日話した事を思い出すと、一人納得してギムネーヤ料理長にお辞儀をしてお礼を言う。


 別メニューを乗せてくれたアミュネス少尉とカルマイネさんは少しやつれた顔をしていた。相当頑張ったようだ。


 別メニューはスープで、初めてここに来た時に俺が食べた感じのようなものだった。これなら胃にやさしそうである。俺は席に着いてそれを食べ始めると、俺の席の前に座るアミュネス少尉は「味はどうだ?」とか「うまいか?」とか聞いてきて心配なようだ。


 俺は口に入れて味見をする。まあ、あっさりしていて胃にはやさしいと思う。しかし、何かが足りないような気がしてならない。


 「アミュネス少尉? 多分、塩をあと一つまみ入れればいけると思いますよ。ご自分で頂くと分ると思いますが、今は相当お疲れの様子ですよ。その時に美味しいと思えば成功でないかと思いますよ?」




 すると、アミュネス少尉はニコリとして、喜んで調理場のほうに行ってしまう。しかし、これで勝てるかといわれれば俺には分らない。相手がどんな物を作ってくるか分からないからだ。


 一応はオーダーに則った料理だったが‥‥‥。ああ、胃が痛くなってくる。さっさと料理を片付けてウドンの製法に集中しよう。そう自分に言い聞かせる。



 食器を下げてから再びテーブルに着いて、紙を捲りながら内容を読む。なになに、小麦粉1000キナムに対して水450キナム、塩50キナム。えーと、キナムって千分の一キラ((kg))だったよな。


 そうすると20対9対1の重量比率か?


 ふむふむ、なるほど。あれ? なんだ。なんだって~~~。なんていうことだ。魔素術で作り出した水では上手くいく確立は低いと書いてある。なんという事だ。そうすると馬車町まで行かないと無理という事か?


 俺はショックを受けて呆然としてしまう。


 あー、水のミネラル分に関係するのかな? と、いう事はあの魔素術で作る水は超純水なのか? 究極の水だよね? はあ、ため息しか出ない。


 次の馬車町までどれくらい時間がかかるのかな?


 あっ、それまで小麦粉を作れば良いのか。そうだ、そうしよう。前向きに考えないとやってられない。なんか良いこと思いつく度に何かの障害があってうまく進まない。



 気持ちを切り替えて別の考えを巡らす。小麦粉にして、それを冷蔵庫にでも入れて貰って何時でも使えるようにして貰えれば良いか。ああ、前向きに考えるんだ俺!! そうやって自分を奮い立たせる。


 そう決意した所にギムネーヤ料理長と複数の女性がやってくる。木のお盆の大きな物をテーブルに載せると、その上に石臼を乗せて足元に麻袋を置いた。持ってみると30キロぐらいはある。その袋を開けると脱穀した小麦が入っている。枡のようなものが入っていてそれで図りながら石臼でひくらしい。




 「あんまり早くひいたら駄目だよ。ゆっくり一定の速さでひくと美味しい粉になるからね。あたしらは朝食を食べて、夜と明日の朝の仕込があるから勝手にやっておくれ。粉はこの鍋に入れておくれ」




 ギムネーヤ料理長が俺にそういって寸胴の鍋を2個テーブルに載せる。昼まではまだ時間もあるし、それまでには終わるだろうと高を括っていた。これから地獄の時間が始まるとは知らずに石臼をひく。


 最初の一時間は割りと上手くひけたと思う。まあ、最初はやった事が無くて、物珍しさが先行していて難なく石臼をひく。一時間経ってくるとさすがに飽きてくるのと、腕が痛くなってくる。しかし、うどんの為と自分を鼓舞して右腕が駄目なら左腕だと、交互にやり始める。


 袋の半分程やると良い感じに少しハイテンションになりながらも「ウドン、ウドン」と、言いながらひいていたが残りの半分からが地獄であった。玉のような汗が出てきて結構な拷問のような感じになってくる。


 嗚呼、機械のありがたみを改めて実感する。30kg程の小麦を石臼でひき終わった頃にはふらふらでとうとうひっくり返ってしまった。それを見た女性人が何か笑っているように笑い声がしてくる。




 「おや、本当にやってしまうとは、呆れたねリョウジ。一応これも魔素道具なんだけど。使い方を聞いてくれれば教えたのに手でひくとは呆れたよ」




 なんていう事だ、それを先に言って欲しい!! 俺はその言葉を聴いて目がうつろになって寝転がって笑ってしまった。すると周りの女性人も笑っている。ああ、これが夢の落ちねと一人納得してしまう。


 「早く言って欲しかったですよ、ギムネーヤ料理長!!」




 「ごめんよ、まさか使い方を知らないとは思っていなかったんだよ。気が付いたらもう出来上がっていた状態なんだよ。仕様がないじゃないかー!」




 「それで、粉はよろしいでしょうか?」




 「そうだね、こんな感じで良いよ。後は馬車町に行った時にそこの水を使って作ってみるよ。粉をリョウジが作ってくれたから、あたしがウドンを作るよ。楽しみにしてな」




 「嗚呼、ありがとうございます。楽しみにしていますんで!!」




 そういってその場を後にするが歩きながら先程の事を考える。あれは予知夢なのか? だけど、あの夢には男の人が多数居たようなんだけど‥‥‥。そういった疑問が浮かんできたが、両腕が痛いのと腰を使って廻した事で腰も痛い為に、疑問に思っていた事がどうでもよくなる。我ながら単純な自分と思いながらストレッチをして筋肉を伸ばし、これから来る筋肉痛に備える。


 自分の馬車に戻るとギムネーヤ料理長が書いてくれた紙の束を道具袋に仕舞う。すると、周りが騒がしくなってきて周囲を見渡すとそろそろ料理対決の準備をするらしい。


 料理馬車に皆が群がって移動の準備をして、内の隊の料理馬車を向うに運ぶようだ。皆が仮設食堂の長椅子やテーブルを収納して馬車を向うの野営地まで運んで行く。その後ろを皆がぞろぞろと歩いて付いて行く。



 向うの料理馬車も同じ造りのようで対面して調理場が置かれる。それを見渡せるように審査員席と対面に観客席のような席が作られていく。椅子やテーブルもこちらの料理馬車からも順に出して準備して行く。それにこちらの人が座りだし、どちらが勝つかと話し始める。


 俺が料理する訳ではないがなぜか緊張してしまう。ああ、朝礼と思えばなんでもないと自分に言い聞かせる。



 嗚呼、一番最初の朝礼の時は緊張した。100人以上の作業員の目の前で、作業の説明や注意事項などを説明するのである。慣れない内は変な発音になったりして周りを沸かせて赤くなった事を思い出す。


 今回の主役は俺ではないから大丈夫。そんな事を自分に言い聞かせると、真ん中に白いシーツのような物をかぶせられたテーブルが見える。あれが今回の材料であろう。生ものはそんなにないと思う。野菜中心の食材だろう。



 いよいよ審査員席に座らされるようで、ギムネーヤ料理長とジョルジョネ大尉が真ん中の方に座る。俺は結局一番端に座らされた。ああ、想定通り。向うも同じように座る。


審査員が揃ったのを確認したミンハンス大尉が皆に聞えるように大きな声で今回の趣旨を説明する。競技は一時で約二時間、材料はテーブルに載せてあるものと調味料、水以外は使用禁止だそうだ。


 最後に対戦相手がそれぞれ説明されてそれぞれの料理馬車の位置に付く。調理器具などを確認した後にお互いの中間にあるシーツが掛かったテーブルの所に二人が並ぶ。緊張する俺。いや、もっと緊張しているのはあの二人だ。



 「始め!!」と、言う号令と共にシーツが退かされて、皆のどよめきが聞えてくる。俺は何がどよめく対象なのか今一分らない。



 いったい、何がどよめく対象なのか分らない俺であった。




 後編へつづく

後編は12/21の夕方に予約投稿する予定です。

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