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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-16> 「懐疑で会議で懐疑?  (後編)」

最新の本文修正日は2014年11月20日です。

 嘘か真か分らないが懸案事項の2つがごく普通にある出来事のようで納得出来るようで出来ない俺ですが、ここは異世界。その答えが分るはずも無い。


 何時もの日課が終わりその後の質問タイムが省かれた俺はプイホンさんの手伝いをする。そこで、御者とその弟子と称する御者親子に出会い、初めて会話をする事が出来る。


 何回か挨拶をした事はあったが、面と向かって話したのは始めてであった。親父さんは中々のユーモアのセンスが有るようで無い、残念な人であった。息子さんに促されて落ちをばらされ、はにかむ姿は多分同じ年代のゴナベル奴隷長とはまた違うタイプの人であろうと思う俺であった。






 昼の休憩に紙の材料を煮込もうと考えていた俺に、プイホンさんが差し出した手には、プイが舌を出して昇天した姿が見て取れた。流石、プイホンさんはサバイバルの鬼教官である。容赦が無い。




 「あのね、プイホンさん? 俺は先程、朝飯を食ったばかりでまだお腹がすいていないんだ。悪いね?」


 俺の言葉を最後まで聞かない彼は、この前の麻袋と薪を調達してきて、目の前でプイを捌き始める。器用に皮を爪と小刀で剥いで、お腹を割いて内蔵を取り出す。腸の内容物をしぼりとると。つるりとそうめんでも食べるように吸い込んで食べてしまう。


 ああ、まじまじと見てしまったが、最近のスプラッターものに慣れているせいか良く見ればどうっという事は無い。


 次に木の枝を持ってきてプイの口から器用に指すと、準備が出来たようで、薪に火を起こす準備を始める。鋸屑に火打石のような物をカチッ、カチッ、と何回か火花をだして鋸屑から煙が立ってくる。


 それを手の平に載せてフウフウと息を吹きかけ次第に炎が上がってくると小さな薪に乗せて、息を吹きかけながら炎を大きくしていくと、あっという間に薪に火がつきだした。


 それに先程捌いたプイを炙る為に地面にプイを刺した枝を突き刺す。そして、一匹目の処理が終わると、次々に大きな袋からプイを出して捌き、下準備をするではないか。



 俺はその様子に呆気に囚われて言葉が出なかった。焚き火の周りには15匹ほどの捌かれたプイが焼かれている。


 すると、一号馬車のメンバーがぞろぞろと焚き火の周りに集まり、焚き火を囲んで座りだすではないか。


 誰かが薪を足して火の勢いを強くすると、ほんのり香ばしい臭いがあたりを包む。仕上げに小さな袋から白い粉を出して、それを焼きあがった物に振り掛ける。


 準備が出来た頃にプイホンさんが腰の革袋の一つから見慣れない石を出す。そして、左手から水を出してその石をニギニギしながら洗い出すと泡が立つではないか。石鹸? 石鹸なのか?


 「プイホンさんそれって『セッケン』。あっ、じゃなくてそれは何?」




 「ん? ああ、これねさっき拾ったんだ。時々落ちてる泡沫石っていうんだ。これはお金いらないから」




 「へっ? 宿泊所にあったやつもそれと同じなの?」




 「ん? あれは分らない」




 すると、集まったメンバーの中のドルバン車長が教えてくれる。




 「あれな、時たま石切り場で出て来るそうだ。今は学院で造り方が分って、商工業組合の工房で生産されているぞ。あっ、材料は聞くなよ。俺はしらん」




 「はあ、じゃあ一般的に『泡沫石』って言うのですね」




 「ああ、そういう風に呼ばれている」




 なるほど、そういう事らしい。石鹸が泡沫石ね。後でメモしておこう。



 会話をしている内に手を洗い終わったプイホンさんが皆に焼きあがったプイを配り始める。最初は、やはりゴナベル奴隷長で次にドルバン車長と年功序列なのか歳の順のようで、焼きあがったプイを配り終わり最後に自分の分と俺の分を渡してくれる。


 まあ、配る順番はどうでも良い。それに、このプイは焼いてしまえば気にならなくなるもので、香ばしい臭いに負けてしまいかぶりつく。


 先程の白い粉は塩のようでその塩味が効いていて中々である。小骨を出しながら皆一心不乱にパンと共に食べている。


 「焼きたては美味しいです。プイホンさん」


 つい口に出てしまい。それを聞いたプイホンさんは髭がピンと上がり得意顔のようだ。しかし、何時の間に15匹も捕まえたのだ?


 何処かにキープして置いて、どっかから掘り起こして持ってきたのか分らないがプイが入っていた袋には少し土が付いていた。



 皆、プイの塩焼きを食べ終わり休憩しながら色々と何かを話し始める。しかし、俺は他人の会話より気になる事があってゴナベル奴隷長に聞いて見る。



 「あの~ゴナベル奴隷長? 俺って、昼飯食ったら何を手伝えばいいのでしょうね?」




 「あっ、俺は何も聞いてねぇぞ?! 適当にそこら辺、散歩してぇらぁいいんじゃねぇか?


 俺らはこれからあの大物の警備があるからなぁ。ここからいなくなるけぇど。あっ、こいつは馬の世話をするけぇどなぁ」




 そういってプイホンさんの頭を撫でる。




 「一応、おめぇの上司はジョルジョネ大尉だから聞いてみれぇば、いいんじゃねぇか?」




 「はあ、特に何も言われなかったんですよ」




 「じゃあ、好きにすればいい。おめぇは秘書だから、用事のねぇ時は何してもいいはずだぞ」




 「はあ、じゃあここで研究でもしています」




 「ああ、大人しくここに居た方がいいぞ。ここは草刈ってぇ、煙で燻してぇるから安全だぁ。あっちこっち歩き回るとぉ、あぶねぇぞ!」




 そういって、プイとパンを食べ終わりプイホンさんが持ってきた水を飲み干すと馬車に乗り込み移動しようとしたので、慌てて一号馬車の道具や材料を魔技箱から取り出して彼らを見送る。


 ああ、確かに俺は警備なんかは向いていない。仕方なく鍋に水を入れて貰う為にプイホンさんにお願いをする。彼は気前良く水をいっぱい出してくれて、二つの鍋は満杯になる。


 先ずはこの前の木の皮を煮込む事にする。どれだけ石灰いしばいを入れれば良いのか分らないので、適当に手で漉くって勘を頼りに二杯程手ですくって鍋に入れる。次に木の皮を入れて魔素道具の焜炉に乗せてスイッチを入れてみる。



 プイホンさんは食後に少し横になり寝てしまう。その寝顔をみて心が和む。すると、思ったより早くグツグツいい出して慌ててスイッチに触り、強から中にしてみるがまだ火力が強いようで弱にする。


 後は様子を見ながらひたすら皮が柔らかくなるまで煮込むしかない。今度は周りを見て手頃な大き目の平たい石を探す。草地の為そんな都合のいいものは見当たらない。仕様がないのでメモ用の木の板を出して木槌でこれを台にしてに茹で上がった木の皮を叩く事にする。


 その様子を見ながら、これが失敗したらわら半紙に挑戦しようとかそんな事を考える。そして、今朝の出来事を反芻しながら思い出す。



 ミリクナ医務長は俺の胸に入った魔素結晶の欠片はよくある事と言っていたが、やはりあのジョルジョネ大尉の態度が気にかかる。


 それはそんな事がある分け無いと示しているようで、結局どれが本当のことなのか分らなくなり頭が混乱してくる。結論は出ないが、解剖は無いようなので良しとするか。


 しかし、動物園の動物よろしく研究材料にでもされるのかと新たな恐怖が湧いてきて、気が付いた頃には焜炉から警告音が出ていて鍋の中身が全てこげているではないか。弱でも火力が強かったらしい。


 ひょっとして不良品でもつかませれたのかと思ったが、部品を一つ忘れていたようだ。焜炉に直接鍋を置いた為、火力の調整が上手くいかなかったらしい。鍋台を置いて使用してくださいと書いてあった取扱説明書を思い出しす。



 ああ、そうです。何時も取説を読みませんよ。変に開き直ったが時既に遅し、後の祭りである。また、紙の道は遠のいた。プイにを刺した枝を小枝箸のように使い残骸の焦げた物を先程のプイを焼いた焚き火にくべる。


 プイホンさんが起きて仕事に行くというので、馬の敷き草で小麦の茎のような物が無いか聞いてみる。すると、あると言うので一抱え貰って先程焦げた鍋を洗い、それに千切って先程と同じように煮込む事にする。今度は鍋台を置いたので大丈夫であろう。


 中火にして、工作馬車の方に行く。中に居たガルボルテ工作長に大工道具と深さが浅く幅広の桶を借りて、木片を貰ってくる。訳を聞かれなかったがすんなり借りられたのでそんなに時間は取られなかった。



 戻ると、鍋が沸騰していたので弱火にする。その様子を見ながら、紙を漉く為の枠とすだれの代わりに網を代用しようかと考えたがそんな物はなく。周りを見渡し麻袋が使えそうなのでちょっと失敬して小刀で切り取る。


 釘も小さな釘を数本貰ったので木枠を木片から切り出してA4ぐらいの大きさで作る。それに麻袋の切れを張ってさらに木片で挟んで釘を打つ。割と自画自賛だが良いものが出来たと思う。工作は嫌いではない。



 後は鍋の様子を見て小枝箸で取り出し様子を見る。若干柔らかくなったように感じて指ですりつぶすと良い感じに繊維がバラける。


 先程作った紙漉き木枠で越して鍋の中の物を出す。水を切って木の板に載せてペッタンペッタンと小槌で叩いて繊維をばらばらにするように叩く。


 水が足りなさそうなので桶と空になった鍋を持ってプイホンさんの所まで走っていく。二回ほど往復して水の入ったものを用意すると、また先程の物を小槌で叩いて解す。


 そろそろ良いかと思い、桶の中に入れると細かい繊維がばらばらになって水の中に混ざる。我ながら良い感じだと思っていたが、何か足りないように感じて考えるが何が足りないのか分らない。水をかき混ぜながら紙漉き枠を入れて紙を漉いて見る。これが結構難しい。



 四苦八苦していると後ろにいつの間にかガルボルテ工作長が忍び寄っていて俺の紙漉きの様子を見ているではないか。


 その彼の視線に耐えながら、丁度良い頃合の物が出来たようなので板の上にワラの繊維が貯まった紙漉き木枠を逆さにしてチョンチョンと叩いてみる。


 しかし、中々出てこなくて少し強く叩いてやってみる。木の板の上には薄っすらと繊維の絡まった紙のような布切れのような物が乗っかっていた。


 後はこれを乾燥させてどうなるかだが‥‥‥。それにしても後ろのガルボルテ工作長の視線が気になり、仕方なく彼に木の板に乗せた物を見せる。




 「ふむ、後はそのまま乾燥させるか潰して水を切ってから乾燥させた方がいいのかのぉ?」




 「はあ、多分それで良いと思いますが、最初の木の皮のやつが失敗してしまってあれが試せなかったのは痛いです」




 「じゃが、これだと乾いてもボロボロになりそうじゃが」




 「そこらへんは色々とやってみないと分りません。あっ、こういう木の板はもっとないでしょうか?


 漉いた紙を乗せて重ねて置けば水が切れて便利かと思いまして」




 「ふむ、ちょっとまっておれ」




 そういって、一抱えも持ってきて俺の側に置く。桶の繊維が漉け無くなるまで紙らしきものを作る。結局20枚分ほど漉けたが、厚さは不均一でどうなるかは乾燥させないと分らない。


 20枚分の木の板を重ねて最後に木の板を載せて圧力をかける。自分の体重で十分だ。水が染み出してきて、頃合を見計らって一番上をはがしてみる。上手くはがれたので順番にはがしていくと何枚かは失敗したが概ね成功する。後は乾燥させるだけだ。


 板を周辺に置いて日の光に当てる。そして、道具を片付け借りた大工道具を返しに行くとガルボルテ工作長も見よう見真似なのか俺より遥かに上手く紙漉きの木枠を作って俺に見せる。




 「さすがはガルボルテ工作長ですね。一度見たものをより良く作るなんて感心しました。あっ、これはすだれですね!


 嗚呼、これが欲しかったのですがこの前の店では売っていなくて困っていたのですよ」




 「そうか、言ってくれればこのぐらい作ってやったがのぉ。また何か必要なら作ってやるわい」




 「じゃあ、この次はお願いします。あっ、それとこの前の話はどうなりましたか」




 「ああ、まだ返事が来ん。エンピッツのほうは多分次の町に着いている頃だと思うがのぉ。後はもう少し待っておれ」




 「はい、忙しいのにすいません。ではこの紙漉き枠は貰って良いのですか?」




 「ああ、持ってけ小僧」




 ああ、最初からガルボルテ工作長に頼んだ方が良かった。まあ、結果オーライでいいよね?


 ガルボルテ工作長が作った紙漉き枠は俺のと同じ大きさで簾が取り外せるようになっていて、漉いた紙を外す時は便利に出来ている。次にやる時に試してみよう。



 俺が暢気に紙漉きの後始末をやっていると指揮車の覗き窓から朝に見たパタパタと何か飛んで行く様子がまた視線に入ってしまう。


 やはり、あれも魔素術の何かなのか? そんな事を思って、首を傾げながら片付けをしていると、街道の方からこの前見た事がある馬車が近付いてくる。



 あれは確か特急馬車だか、急行馬車だったかな? と思い出す。その内、誰かが石畳の道路の溝に木の棒を置いている様子を目撃する。


 そして、その馬車がゆっくり速度を落として、その木の棒に乗り上げてこちらに進路を向けて来る。ゆっくり指揮車の近くに来て止まると、中から見たことのある人物が二人降りてくる。



 俺はぽかんと呆けその様子を眺めて、ふと我に返る。あの髭面の偉そうな人は確か町でぶつかった人物だ。その横の爺様は俺にお礼だといって銀貨20枚も渡してきた人物である。その二人は俺には気が付かなかったようでジョルジョネ大尉がいる指揮車に入って行く。



 俺は道具を纏めて、警備しに行った1号馬車に踏まれないように見える位置に一箇所に置いて、乾燥した板に乗った紙を回収して行く。出来た物はなんていうか、はがきのように厚く、折るとボロボロになりそうだ。


 しかし、メモ紙ぐらいにはなる。失敗のようで成功でもなかった。プイホンさんにも少し分けてやろう。字を書くには支障ないし、また水に戻したら紙が作れそう。



 そんな事を考えながらニヤニヤしていると、いつの間にかジョルジョネ大尉の指揮車から爺様が出てきていて俺の様子を窺っている。俺は不振者に見えたと思う。近付いて来て俺が持っている物を眺めると、話しかけてくる。




 「ほう、おぬしは紙も作れるのか? じゃが、まだまだなようだな」




 「はあ、何がいけないのかは大体分っているのですが、設備が無いとこれぐらいが現状では良い所でしょう。あっ、そういえばこの前の銀貨ありがとうございます」




 「覚えて居ったか。ワシは先程の人の付人でのぉ、色んな事をして下準備の手配などをしている爺じゃ。上司の話が終わるまではこうして暇つぶしじゃ。おぬしと同じようにな」




 そういってニコニコする爺さまであった。


 「あっ、そういえば貴方は私の名前を知っているのに、私は貴方の名前を知りません。御世話になっていて、これでは不便なので名前を聞いてもよろしいでしょうか?」




 「そうじゃのぉ~。最近、だあれも名前で呼んでくれんけど。まあ、いいか。ワシは『ナウセイス』ただのナウセイスだ。貴族や市民階級じゃないからそれしかない」




 「そうですか。ナウセイスさんですか。改めて御礼をいいます」


 俺がそのナウセイス爺さんと話していると、指揮車からジョルジョネ大尉が顔を出して俺を呼ぶ。俺は爺様にお辞儀をして指揮車に向う。


 ああ、偉い人に面接なんかするのはあの会社で面接した以来だ。少し緊張してしまう。指揮車の中に入ると、例の人物は前の席の一番奥に座っていた。そして、俺をその人物の前の席に座るようにと、大尉が促してくる。



 俺は開口一番に町でぶつかった事を謝ってみる。


 「この前は余所見をしてぶつかってしまい、申し訳ありません出した」




 「なんだ、覚えていたのか。中々洞察力はあるようだ。私はザルツベ大佐だ。宜しく頼む」




 大佐って行ったら結構偉いよね?


 良く分らないが、ただの年季奴隷に面接してくれるなんて、よっぽど暇なのか王国は。良く分らない。




 「内情は色々聞いていると思うが。あっ、これからも聞けると思う。この前は君の事が気になって、偶々近くを視察していた時にあの町に寄ったところだ


 それで、詳しい事は大尉に聞くと良い。一応何でも君の問には答えてくれるはずだ。しかし、聞いていると思うが口外は無用だからな。そこらへんを考えて欲しい。


 それで、そのままでは不安だろうから、目標みたいな物を教えておこう。五年間この王国を旅して王都に戻った際は年季奴隷から解放しよう。そして、報奨金を君に出す。自由に王国の何処にでも住んでもかまわない。但し大陸からは出られないけどな」




 「はあ、いや、あのですね。私としては元のヒノモトに帰りたいのですが?」




 「ああ、それは聞いているが、果たして帰れるのかは私には分らないぞ。あっ、そうか。それで王家の古文書を見たいと話しておったのか。まあ、国内を旅してその道を探すのも良かろう。その際は自由に動けるように手配してやる。だがその前に王国を巡回して王都に戻ってこないといけないがな」




 「はあ、そうですか。それじゃあ、仕方がないですね。まあ旅をしながら手探りでやってみます」


 俺はそれだけしか言えなかった。実際に王都に行って、本当に解放してくれるかは分らない。監視つきで何処かに軟禁か監禁されるかもしれない。


 この俺が王国の秘密を知れば尚更だ。それを知った上で国内を自由に旅して良いというなら何かがおかしい。疑い始めれば切が無いが対応に困ってしまう。


 俺はここに来て、まだ何も能力といった物が無いし、視線の事だってあれ以来感じていない。それに、魔素術が使える訳でも無い。魔素陣はまだ試していないがこれも使えるか分らない。


 すがる物は今の所この奴隷旅団所属中隊しかないのである。今は爪を研ぐしかない。嗚呼、その爪は無いが‥‥‥。



 すると、また誰かに覗かれているような感覚の視線を感じてしまう。思わずそちらの方に振り返ってしまいその場にいた二人に不振がられてしまう。


 「いや、何か物音が聞えたように感じまして」


 丁度その時に指揮車の扉を叩く音がしたのでその場は何とか誤魔化す事が出来る。


 指揮車の扉をノックをしたのはアミュネス少尉で、中に入って来た彼女は非常に驚いてしまう。大佐と呼ばれる人物がこんな所にいるとは想像できていなかったようだ。




 「ザルツベ大佐? はっ!! 失礼しました。まさか大佐がこんな所に御出でとは思いませんでした。大変驚いてしまい、失礼しました」




 「ああ、悪かったね。どうだいジョルジョネ大尉とは?」





 「はあ? 意味が分りかねます、大佐!」




 「まあいい、じゃあ、大尉。俺は一端オードメの馬車町に戻る。それで、王都からあれを研究したいという連中がこちらに向っているので、それまであれを警備して幹線道路からも見えないようにして欲しい。その後、オードメまで運んで詳しく研究するそうだ。俺はその仮の研究施設の手配をしないといけないのでな。それに色々と仕事がたまっている。では、後を頼むよ」




 「はっ!! 了解しました。それで、研究員は何時頃来るのでしょうか?」




 「あ、そうだな。ここに三日後だな。野営地はこのままここの方が良いだろう。何かあっても被害が少なくてすむ。交代で警備させてくれ‥‥‥。


 そうだ、もう一つ忘れておった。君に就ける馬車をもう二台と人員も三十人ほど追加するから上手く使ってくれ」




 最後にジョルジョネ大尉にそういって出てく大佐を全員で見送る為に、中に居たジョルジョネ大尉とアミュネス少尉、それに俺は外に出る。すると、さっきの爺様がミリクナ医務長が乗っている馬車から同じ様に出てくる。そのナウセイス爺さんは俺にニッコリ微笑みながら乗ってきた特急馬車に乗り込む時に一言言い放つ。




 「王都で待っているからのぉ!!」




 俺は意味が分らず首を傾げてお辞儀するしか出来なかった。ミリクナ医務長はお見送りには出てこなかった。


 特急馬車は空いてる隙間を縫うように止まっている馬車の間を通り抜けて草地を走り幹線道路に戻って行く。そして、来た道を戻るように今度は左側の溝に入って急激にスピードを上げて走り去ってしまう。



 俺は最終的に何が面接だったのか良くわからずに。なんていうか、ただあの大佐は俺の顔を見に来ただけに感じてしまう。


 「態々俺に会いに来て大変だなー、何の取り柄もないのに」と、呟きその特急馬車が消えるまで見送る。


 そして、振り返ると先程視線を感じた方向にはミリクナ医務長が乗った馬車があった事だけが何か引っかかる俺であった。





 次話へつづく

次話は12/12の夜に投稿します。

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