<2-10> 「年季奴隷と悪夢 (後編)」
最新の本文修正日は2014年11月15日です。
最近、新しい出来事や話を聞くと邪魔っていうか後戻りのような事が多い俺ですが、具体的に何をって聞かれても分るはずもない。
ミリクナ医務長は俺とジョルジョネ大尉の会話を盗聴でもしているのか? ジョルジョネ大尉が話した後にしかめっ面をすると、今日も指揮車に乗り込んでくるではないか。
今回も素早く行動するミリクナ医務長ですが、同じように何が起こったか分らなくなる俺であった。
最後に「またかよ!!」と、毒づいてしまうが、いざ起き上がると何に毒づいたか分らない。そして、ミリクナ医務長の顔を不思議そうに眺めていると、陶器のマグカップに水を入れたものと白い和紙のようなものに包まれた薬を渡される。
「あの~、これは何でしょうか? 事態が飲み込めないのですが?」
「あら、あなたはまた倒れたのよ?! 私がジョルジョネ大尉に用事があって来て見ると、貴方は倒れていたのよ!!」
「はあ、そうなんですか。でっ、これは何ですか?」
「もう仕様がないわね~。それは目眩を治す薬よ!! さっさとそれを飲んで、後ろで寝たほうが貴方の身の為よ?!」
「はあ、そうですか‥‥‥」
薬を飲んで横になると、睡魔が襲ってくる迄に何となく思い出す。ああ、また記憶いじられた。何が地雷なのか良くわからないがどうやらそれを踏んだようで、多分王国に都合が悪い事はこうやって消されるのかもしれない。
ああ、地雷踏まないように会話しないといけないのかよ。そんな事を考えながら睡魔に襲われ寝てしまう俺であった。
☆ ☆ ☆
リョウジが後ろの席で横になって寝たことを確認すると、困り顔でジョルジョネ大尉はミリクナに話しかける。
「あの~、先生? 今の会話の何がいけなかったの?」
「そんな事より銃の話を直ぐ報告しないといけないでしょうが!!
リョウジが言っていた銃や大筒で国王陛下や王族の方々が狙われたら目も当てられないわよ?!
分っているの? もっとしっかりしてくださいジョルジョネ大尉!!」
「はあ、それは分っているけど。でも、リョウジは話さないって言ってたじゃないか」
「はあー、あのね、大尉。ラグフム護衛副分隊長が記憶操作された話は聞いているわよね?
もし、リョウジが同じ事されてその武器の話をしてしまったら大変でしょうが!! 本人の意思なんか関係ないのよ!!」
「嗚呼、そうか!! そうだよね!! うんうん、そうだ。いやー、俺は貴方みたいに記憶を操作できないから失念してました。じゃあ、私の記憶を消すの?」
「まったく知っててその話をするのですか? 貴方は一応その訓練を受けたじゃないですか!! あの翻訳首輪をしても、今の貴方には記憶操作に抵抗できるだけの能力があるのではないのですか? 本当に頭きちゃうわ!!」
「そうでしたな。それで報告なんですが、先程の話を聞く限り防ぎようが無いように思えるのですが‥‥‥。対策はあるのですか?」
「そうね‥‥‥。無くはないけど。私なら殺意は分るし、宮廷魔素術使いの中にもその道に長けた人物は結構居るわよ。
操られて魔素術使う不振人物を偶に排除するからね。でも大筒になると、どうかしら? 遠距離からの攻撃を察知するのは難しいわ」
「そうですな、私なら‥‥‥。その大筒を設置する場所を押さえるか、現物を事前に入手するかですな。
それか、運よく実験している所を抑えることが出来れば、性能を確かめ距離を精査して人員を配置するってのが一番良い方法なんでしょうが‥‥‥。それをやるには膨大な人員が必要でしょう。
大筒を1台でも見逃したら大変ですな。後はその大筒の原料と火薬の出所を押さえるかですが、これは奴隷組合のお仕事ですよね?」
「ええ、そうよ!! まったく頭が痛くなってくるわ!! こんなに平和な王国で花火を打ち上げようとする馬鹿は何処のどいつよ?! まったく腹が立つわ!!
今は、リョウジを連れまわして王国中を巡回しながら探らないといけないわ!!
その事を念頭にして報告書をお互い書きましょうね!!」
「はいはいー。そうしましょうー」
適当な言葉で締めくくったジョルジョネ大尉の表情は次第に険しくなっいく。そして、ジョルジョネ大尉は深く考え込む。
「万が一リョウジがその銃や大筒に狙われた時に、果たして彼を守りきるか分らない。この前のようにリョウジが攫われる事だけはもう無い様にしないといけないと、俺は誓う!」
そんな誓いを立てたところで有る可能性を思いつき、その対策を上申する為に報告書に記する事を思いついた彼は、それを認めながら後ろのリョウジの寝顔を見る。そのリョウジの寝顔を見て気を引き締めるジョルジョネ大尉であった。
ミリクナはミリクナでこれから起きるであろう事柄を予測して、どう報告書に書くか頭を悩ます。ミリクナは内心色々考える。
「これからリョウジを守りながら、周辺の領主の不振な行動を監視しなければならない。当然一人で‥‥‥。
余りにも多くの事が圧し掛かって来る様で目眩がしてくる。もしかしたら、応援を頼まないと駄目だよね?
だけど、私程優秀な人間はいないと自負しているし‥‥‥。
そんな事を口に出せる訳はないわ!」
そんな事を思って、これからの事をいろいろ思案するミリクナであった。
☆ ☆ ☆
そんな頭を悩ます二人の事を知ってか知らずか、肝心の俺は野営地の自分の寝床で目を覚ます。しかし、俺は俺で、どうしてこんな所で寝ているのか頭を悩ましてしまう。
さて、俺は何故こんな所で寝ているのだ?
確か、ジョルジョネ大尉の指揮車で倒れたからと、ミリクナ医務長が俺に薬を飲ました事は覚えている。
それで、その前にジョルジョネ大尉に何かを話していたように感じるが。あっ、何か俺はこの件について口を噤みますって言ったような気がする‥‥‥。
ああ、もういいや! その内またその話になるかもだし‥‥‥。そんな投槍になってしまう俺であった。
そんな事より自分のお腹の心配をしたほうが良い。先程から腹の虫が鳴り、情けない音がしている。外に出て仮設食堂にフラフラになりながら向うと、まだ食事の時間らしく人は疎らだが、食事をしている人もいるようだ。
慌てて、ふらふらになりながらも配膳の所に並ぶ。そして、何時ものように食事とは別に渡される晩の薬が入った木のジョッキを眺めてしまう。そのバリウム状のものを眺めてうんざりする俺だが、仕方なくテーブルに着いて晩飯を食べ始める。
すると、この俺が何処からか誰かに見られている不思議な感覚の視線を感じて、その先をつい見てしまう。何時ものように副料理長のカルさんではない。なんていうか周りの夕焼けに照らされた草原の向こう側に、そんな視線を感じてしまう。
そんな不思議な感覚の視線に、首を傾げながら残りの食事を平らげて薬を飲む。薬だけでも結構腹が膨れてくる。最近ビールをやめたせいか、お腹の出っ張りが心持へこんだ気がする。しかし、今の薬を飲んだ為、元通りに戻ってしまう。
そんな自分のお腹を見てつい手で叩いてしまう。はあ、ぽんぽんと。もう少し早朝の剣術に身を入れて鍛えないと、また簡単に拉致されちゃうよね?
そんなあほな事をしてしまうが、またその視線を感じてしまう。しかし、この地に来てからこういった不思議な事は有りすぎて一々気にしてはいられない。頭をかきながら食べ終わった晩飯の食器を下げ、自分の寝床に向う。
自分の寝床に横になって寝てしまう俺であったが、案の定その晩は悪夢にうなされる。それは昨夜に見た何かの視線に怯え、走り去る夢である。ああ、なんかこの視線はミリクナ医務長じゃないのかな? あの人は地獄耳だし。
そんな恐怖で逃げているのに、変に冷静な自分が同居する不思議な感覚で目が覚める。寝起きは最悪で寝汗をかき、顔中に大粒の汗が浮き出ていた。
寝床から外に出て空を見ると、まだ日が上るには早いようで周りは暗い。しかし、今日は普段と違い月が一個分しかない明るさだ。それでも地球にいた時に比べれば明るい夜空である。
汗を拭いながら便所に行くと、草原から誰かが歩いてくる。良く見ると背中の大きめの長い長剣を背負ったラグフム護衛副分隊長だと思う。腰から30cm以上伸びた長剣と腰に挿した片手剣が見える距離まで近寄って来る。
「やあ、リョウジ殿! どうしたんだい? そんな青い顔と大粒の汗が出て、まるで悪夢にでもうなされたようだね。俺も経験があるから分るよ。
そんな時は頭を空っぽにして歩き回るのも良いが、まだ夜は続く。明るくなってから歩き回った方が良い」
「はあ、そうですよね。無心で何かやると良いかも知れませんね。今はその『トイレ』。あ、う、便所に起きたもので。失礼して用を足します」
「ああ、それは悪かった。あっ、最後に悪夢を見た時は身近な誰かに話すと、少しは気が晴れるかもしれないよ。では、用を足したら寝るといい。次の夢が良い夢でありますように!」
そういってラグフム護衛副分隊長は暗闇に消えて行く。ああ、そうですよね。人に話すと良いかも知れないが、俺の場合はどうなるか分らないから話せないよね? と、心の中で囁き慌てて用を足す。そして、寝床に入りウトウトとしている内に眠ってしまう。
大した時間が経っていない様に感じたが、外で何時もの掛け声が聞えてくる。ちょっと体はだるいが、体を動かせば少しは気がまぎれると思い、重い目蓋を開き体を起こす。
何時も通りにテントの中には誰もいなかった。相変わらず皆さん早起きで、プイホンさんもいない。多分、彼はここが草原だからプイでも取りに行ったのであろう。
今日は少し離れた広い場所で皆は訓練をしていた。俺は端っこに置いてある道具に視線を向け、先ずはストレッチをする。嗚呼、今朝もなにやら視線を感じてしまう。
あまり気にしていても仕様がないので道具を手に取り素振りを始める。しかし、今一身が入らないっていうか視線が気になって集中できない。少し薄っすら汗をかいたところで、素振りを止めてしまう。
ぼけ~っとしようかと思ったが、昨夜に言われた通り無心になって野営地の周りを歩く。見渡す限りの草原で遥か向うに山のような物が見える。あれはこの前通って来た山の方向かもしれない。
そんな事を思い一通り周囲を歩いて、一休みしようと周囲をキョロキョロする。視線の先の草叢の中に丁度良い岩を見つけ、それに腰掛ける。
何かほっとして空を見上げると、座った所が揺れて自分の頭も揺れる。地震かと思って立ち上がったが、地面が揺れている気配はない。
岩が揺れたのかと思い、その岩を見る。すると、陸亀の親分のようなものが頭をもたげ、こちらを見るではないか。
なんじゃこりゃと、良く見るがその亀は草原の草をモシャモシャと反芻しているようで、どう見ても肉食じゃないように思える。
陸亀っていうか、どちらかというとゾウガメであった。ゾウガメは人が乗って動けるような大きな亀であるが、こちらは二周りぐらい小さく大人二人ぐらいで持てそうだ。すると、草叢からプイホンさんが顔を出す。
「兄ちゃん、おはよ。何やってんだ?」
「ああ、何か大きな『亀』。あっ、その大きな『亀』を見つけちゃってね。一体これって何なのか分る」
「うひゃ~、兄ちゃんこれ『ニワ亀』だよ!! この卵は美味しいよ!! あっ、卵探さなくっちゃ~」
「へぇっ? ちょっとプイホンさん何処に?」
プイホンさんは「卵を探さなくっちゃ~」って、そのまま草叢に潜り込んでいなくなってしまう。あー、何かいやな予感がする。
ふと、そのニワ亀の甲羅の端に文字が書いてあるのを見つける。首をかしげて読むと掠れて良く見えないが、何とか所属ニワ亀三六五と読める。なんだこれ?
その甲羅にかかれた文字に首をかしげていると、草叢がガサゴソと揺れてプイホンさんが現れる。彼の手には鶏の卵と同じ大きさの卵を3個ほど持っていた。
その卵を見て、何となく落ちは分ってくる。多分、何処かの農場で買われているこの亀があのハムエッグの正体だと感じる。まあ、虫の卵よりは何倍かましだから良いけどね。
「プイホンさんそれって馬車村とかで朝のご飯に出てくるあれですよね?」
「うん、そうだよ。おいらの家でも3匹いたよ。毎日餌さえやっていれば3個ぐらい卵産むからね。餌をやらなくなると卵産まないんだ。餌は野菜くずとか何でも食べるよ」
「へぇー、『ニワトリ』の替わりかー」
思わず呟いてしまったが、プイホンさんには無視される。今はそれどころじゃないらしい。その卵を生で食べるか、茹でて食べるか、焼いて食べるか考えているのであろう。
彼は何か思いつめてそれを抱えて料理馬車の方へ駆けて行ってしまう。嗚呼、その何か思案している姿も可愛いです!! と、久々に感動する。
暫くすると、ギムネーヤ料理長が5人の女性の年季奴隷達を率いてこちらにやって来る。
「あら、やっぱりニワ亀だね。どれどれ~。あら持ち主は居るようだけどこれじゃ分らないね。仕方ないから皆で運んでおくれ!!」
そういうと、女性の年季奴隷が5人がかりでそのニワ亀を運んで何処かに持て行く。皆一様に筋肉質で、中には見たことがある人が俺に向ってウインクしていくではありませんか。ああ、どうやら俺のお宝を見た人に違いない。
「リョウジ!! お手柄だよ! 野良のニワ亀なら夕食に出そうかと思ったけど、あれは飼い主が居るようだ。次の馬車村に行けば持ち主が分るかもしれないよ。まあ、あの様子だと相当昔に野良になったものだね」
「そんなに長生きするのですか?」
「ああ、大体二百年は生きるよ。五年位で卵を産むようになってね、百五十歳位まで毎日卵を産むから元は取れるよ。旅には向いていないから、村や町の農場でしか飼えないけどね。
ああ、そろそろ行かないと。困ったね~、少ない物は皆に分けられないから頭が痛くなってくるよ」
そういってギムネーヤ料理長は自分の仕事場へと歩いて行く。へぇー、150年も毎日卵産むのかあっちの亀とは大違いだ。すると、何時もの大尉達の目覚ましの爆音が響いてくる。
急いで自分のテントに向かい、移動の準備と支度を済ませる。朝飯の芋の汁に卵の残骸らしき物が少し乗っかっていた。
どうやらプイホンさんは自分では食べずにギムネーヤ料理長に全部渡し、その卵を考えた挙句芋のスープに入れたらしい。中々良いところも有るじゃないかプイホンさん。
俺は少し彼を見直して良い気分で朝飯を平らげたが、青汁を飲んで気分が沈む。相変わらず朝の薬は不味い。
あー、指揮車に行くのがなんか億劫になる。計算は嫌ではなかったが、その後の話がなんか嫌だなー‥‥‥。休んじゃうか?
いやいや、ここで休んだらあのミリクナ医務長に何をされるか分らない。「病気ですか? じゃぁ、私が見ますね~」って、言って来てあんな事されたりするんだよきっと。
嗚呼、仕方がない。道具袋を持って指揮車に向い、何時ものように指揮車の後ろで日記を付けながら考え事をする。しかし、何か今日は雰囲気が違うって言うか、緊迫した感じで書類? それをイソイソとして送ったりしている。何があったのか分らないがその時はそう感じてしまう。
慌しい時間が過ぎて、アミュネス少尉がここから出て行く。やがて馬車が動き出すと何時ものように計算を始める。ジョルジョネ大尉は何時ものように後ろの席に仮眠しているようで寝ているのだが、その後ろの方からの視線に気付く。
後ろを振り返ると大尉以外はいないし、今のは敵意って言うか興味がある誰かに見られているような感覚だ。
それに馬車が進んでからそれとは別に昨日の嫌な視線が段々近付いてきてるようで、その興味があるような視線よりも前方からの嫌な視線のほうが何となく痛い。
その内、後ろからの視線は気にならなくなり、前方の嫌な視線を気にしながら計算をやってしまった為、何回か計算ミスをしてしまう。顔を叩いて気持ちを切り替え、計算に集中してくると視線が気にならなくなる。
ようやく計算が終わった頃、大尉が起きて来て馬の休憩の合図をする。計算した羊皮紙を大尉に渡して、今日の議題を考えるが当たり障りの無い物にするか‥‥‥。
迷っていると馬車は動き出す。そして、何時ものようにニコニコしたジョルジョネ大尉がこちらを見る。俺は思わず困った表情になってしまう。
「さて、今日は何を話そうか? そろそろ奴隷旅団所属中隊の日常には慣れてきたと思うけど、特に聞いておきたい事でもある?」
そういって俺の顔色を見るジョルジョネ大尉に思わず文句めいた事を言ってしまう。
「えー、だって。肝心な事は軍機じゃないですかー。それに記憶‥‥‥」
思わず「記憶を消すじゃないですか」と、話そうとした時に、何やら後ろからの視線が気になり思わず後ろを見てしまう。
明らかに誰かに見られた感じで、敵意ではないが「それを言っちゃって良いの?」と、いうような感じの視線で、思わず最後まで言わずに口を噤む。前を振り返った時にその俺の仕草を見てジョルジョネ大尉が不振顔をしてしまう。
「いや、首を寝違えましてね。何か首がおかしくて思わず後ろを見てしまいました」
思わず、そういった誤魔化し方をしてしまう俺だが、内心冷や汗が洪水のように流れていた。
ジョルジョネ大尉は「何を言ってんだこいつ」と、いうような表情で俺を見ている。仕様がないので今朝見た亀の話をして誤魔化す事にする。
「そ、そういえば。今朝、ニワ亀という獣? その獣を見たのですが、あれは何ですか?」
「へぇっ?、ああ、君が見つけたのか。あれは農場で飼っていた物であの卵は美味しい。確か創生大陸から王家が移住して来た時に一時絶滅しかけたのだが、飼育が上手くいってな。次第に数が増えて農場などで育てている。
肉も結構美味しくてな。ああ、それはちょっと高価で取引されていて、庶民には手に入らないが‥‥‥。
それに、野良のニワ亀も最近増えてきて偶に奴隷旅団所属中隊でも捕まえては食卓に上る事もある。あの岩猪に比べて淡白だがそれなりに美味しいよ。機会があれば食べさせてやる」
「その他に農場で飼っている獣とか居るのですか?」
「ああ、何種類かいるけど、興味が沸いたかね?」
そういってジョルジョネ大尉はメモ用の木の板に家畜の絵を4種類程描いていく。最初に書いたのはサイ? 角が一本で長い顔の鼻先にあり、鼻先の上に角があり、どう見てもサイに見える。
次に岩猪に見える獣だが牙は無い。そして、次に書いたものを見て驚いてしまう。それはダチョウだ。首が長く足も長いが手は見えない、もうそれはダチョウそっくりだ。最後にニワ亀を描いてくれる。
「こんなものかな~。ああ、その他にこの馬車を引いている『馬』だな、最初に書いたのは『一角牛』で次が『土猪』、それでその珍妙なのが『陸ハトゥー』最後はいわなくてもわかるが『ニワ亀』だな。
馬と一角牛、土猪は王家が創世大陸に移住した時に連れて来た。創世大陸にいた家畜だ。陸ハトゥーとニワ亀はここの土地の原産だ。ハトゥーの事はこの前話したよな?
このハトゥーはその腕が他のハトゥーに似ているが木から滑空しないで陸を走り回るけど、その腕が似ているから陸ハトゥーと名づけられた。大きい陸ハトゥーは人を乗せて走るそうだ。
何処だったかの先住民が乗っていたのを見た事がある。結構早かったなー。だけど馬よりは体力が無いのか直ぐに走るのをやめるけどな」
嗚呼、なんかあるものを思い出して喉の所まで出掛かったが収めてしまう。しかし、一角牛って牛なのかサイなのか? 分らない。土猪は豚の代わりだと思うが一角牛は牛の代わりなのか?
「あの~、一角牛ってもしかして、乳を搾って飲んだりしますか?」
「ほう、良く知っているな。まさにその通り。昔は春に子供を生んで夏ぐらいまで乳を搾っていたが、今は年中絞れるように子供を生む時期をずらしていると聞いた事があるな。
なんだったかな? 学院の偉い先生が子供を産む時期をずらして作れるように薬だか、魔素術を使う方法を編み出したかと聞いているが、詳しくは分らない。お陰で最近は一年中一角牛の乳が飲める。馬車村に行った時、今度飲ませてやるよ」
不思議な事に家畜の話をしだすと後ろからの視線が無くなり、前からの嫌な視線ばかり目立つようになってくる。ああ、ジョルジョネ大尉の視線でないが、その遥か向うから見られる視線だ。
あれ? 後ろからの視線って、後ろに乗っているミリクナ医務長の視線ていうか気配なのか?
ジョルジョネ大尉の話を半分しか聞かないで、そんな事を考えていた俺であった。
次話へつづく
次話は11/30の夜に投稿します。




