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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-7>  「年季奴隷が馬車町見物  (後編)」

最新の本文修正日は2014年11月13日です。

 犯人が何処の誰か分らないが誘拐された俺ですが、何処か変に冷めた感じに冷静であった。


 それはこの馬車町に来るまでに色々と怖い事が有りすぎて、多少の事では動じなくなっていたと思っていたいたからだ。しかし、やっぱりスプラッター物はまだ駄目なようです。


 転がった来た首と目が合ってしまい。嗚呼、正確には目はありませんでしたが、それを見てまたもや気を失ってしまう俺であった。






 俺は寝ていた時っていうか気を失って何処かに運ばれながらも、夢みたいなものを見ていた。後からもはっきりと思い出せるほど鮮明で、先程の俺が気を失う前から動画のようにゆっくり巻き戻って行く先程の様子を眺めていた自分がそこにいた。


 そこといわれても良く分からないが、まるで白いスクリーンに映った映像の中に入ったような感じで、ひたすら佇んで逆戻りする映像を眺める俺であった。




 撒き戻った映像が止まり、映像の再生が始まったようだ。その映像には俺にニコニコ顔を晒すジョルジョネ大尉が行き成り映る。不思議な事に何故か自分の姿も映っていて、まるで映画のワンシーンのような感じであった。


 そのジョルジョネ大尉が焼け爛れた住宅の玄関らしき所から家の中に突入していく風景が見える。まるで先程の事を再現しているようだ。


 あの時は建物の中から聞いたこともない叫び声が聞えた‥‥‥。俺は追いかけるカメラマンのように大尉の後ろを歩かないのに追って行く。


 建物の中に入った大尉は走りながら、行き成りスライディングして対象の蜥蜴人間? その蜥蜴とかげ人間の股の間をスライディングしてくぐる。


 その大尉は股の間を通り抜けると、左手から何かを発したように見えてありえない角度で体を起こし、その蜥蜴人間の頭を後ろから刎ねる。


 次に、大尉に向って来る蜥蜴人間は大尉目掛けて殴るか掴みかかろうと、そんな仕草をしたがその手はむなしく空を切った。


 その手を体捌きで左に交わした大尉は体を右回転しながら1回転してその蜥蜴人間の後頭部から首を刎ねる。


 一連の動きはあっという間の出来事で10秒も掛かっていない。その落とした頭から魔素結晶の欠片を取り出した時に、手を滑らして頭が玄関のほうに転がり外に行ってしまう。


 俺は何故だか再び歩いていないのに、その後転がる首の後を追って自分が倒れる姿を目撃してしまう。



 嗚呼、我ながら自分の倒れる姿は情けなく思う。そのまま地面に倒れるかと思っていた自分の体だが、驚いた事にその倒れた俺の体をミリクナ医務長は自分の肩に軽々と担ぐではないか。それから多分、宿泊所に向って歩いて行ってしまう。


 あー、凄い力持ちなんですねミリクナ医務長と、そんな事を思っていると後方で何かの気配を感じる。


 後ろを振り返り、再び建物の中に入ると先程の蜥蜴人間が縮んでしまうのを目撃してしまう。そして、その縮んだトカゲ人間を見て周囲の大尉らが何かを言っているようだ。そこで、初めて俺は今の映像が無音で流れている事に気付く。


 そのジョルジョネ大尉は皆に何かを言って、この場を離れていくようだ。何故か俺は再びその後を追ってしまう。



 大尉の後を追って行くと木造の役所の方角に向っていくようだ。彼は役所とは違う反対側の石造りの建物の中に入って行く。


 俺は慌てて彼を追って行くが、右から来た馬車に轢かれてしまう‥‥‥。ああ、確かに轢かれたと思ったが、馬車は俺の体をすり抜けて走り去っていってしまう。


 そんな状況に俺は首を傾げながらジョルジョネ大尉を追いかけ、その石造りの建物に入って行く。


 またもや、今度は壁をすり抜けてしまう。不思議な出来事であるが首を傾げながらも周辺を見回し、大尉の姿を見つけ近寄る。しかし、勢いがついてしまったのか行き過ぎてしまい、思わず今度も壁を通り抜けてしまう。


 壁を通り抜けたところで大尉がその部屋に入って来ると、なにやら驚いている様子を目撃してしまう。何かを言っているようで、相変わらず音と話し声は聞えない。俺はその姿を呆然と眺めるだけであった。その大尉が驚いた対象に視線を移すと、50歳ぐらいの中年の男性がソファーに座っている。


 その男性は白髪交じりの頭に口髭はカイゼルで横に跳ねている。服装はジョルジョネ大尉とは色違いの上着を着ている。色は紺色のような感じでますます学生服っていうか、昔の日本海軍の佐官や尉官が着ていた服装のようだ。


 その中年の人物は何かを話して直ぐにこの部屋から出て行ってしまう。部屋に残ったジョルジョネ大尉は頭を抱えると、手で顔を覆い何か悪態ついたような感じで、何かを言っているようだ。



 すると、突然今まで見ていた風景が逆再生のように急に遡ってしまう。何処まで遡っていくのかと思っていたら、先程俺が倒れるシーンまで戻るではないか。


 俺は変な夢だな? と、暢気に構えていた。ふと、俺が倒れるシーンで動画が止まり、ある事に気付いてしまう。


 俺の後ろにいるのはミリクナ医務長なのだが、その間に薄っすらと仙人のような爺様が杖で俺の頭を殴ろうとしているではないか。


 当然、ミリクナ医務長は気付いていないし、周りを見渡しても誰もその事には気付いていない。


 その事を確認したと思ったら、巻き戻っていた動画がゆっくり動き出し再生が始まる。再生が始まった途端、俺はその爺様に頭を後ろから殴られて倒れるように見えた。一瞬、何が起こったのか俺は理解できなかった。


 その状況に唖然としていると、次第に周りの景色が白くなって行く。気が付くと宿泊所のベットだと思う。プイホンさんが心配そうに俺の顔を覗いていた。




 「やあ、プイホンさん。おはよう」




 そんな間抜けな会話で挨拶をしたが、俺はこれも夢の一部だと思っていた。やがて意識がハッキリしてくると体を起こし、またもや頭を上のベットの床下にぶつけてしまう。その様子を見たプイホンさんは俺に呆れながらも、彼は話しかけてくる。




 「兄ちゃん、頭大丈夫か? ‥‥‥。あ、そうだ!


 変なやつ等に掴まって、酷い事されなかった?


 おいらもお腹を殴られて、あの時は直ぐに助けに行けなくてごめんよ」




 「いやー、この通り無事だから、いいのでは? プイホンさんも怪我は大丈夫ですか?」




 「うん、おいらはちょっとお腹が痛かっただけだよ。でも、兄ちゃんは気を失ってここに運ばれてきたから、おいら心配しちゃった」




 俺はベットから立ち上がり両手を挙げてプイホンさんに大丈夫だと姿を見せる。


 「ほれ、この通り、さっきぶつけた頭以外は大丈夫!!


 あーあ、折角楽しい買い物と町見物がだいなしになっちゃて残念だよ。あの後は屋台でお昼ご飯を食べて本屋さんに行って調べたいものがあったのだけどなー‥‥‥」




 「でも、ゴナベル奴隷長は『今日はここで大人しくしてろ』って、言っていたから今日は何処にもいけないよ?」




 「あーあ、残念だなー。折角プイホンさんに値切ってもらった分のお礼をしようと思ったけど、今度の休みの日に何かご馳走させてください。ついでに『ブラッシング』させてください」


 さりげなく、彼に「ブラッシング」の話をして興味を抱かせた俺は中々の策士だと、自画自賛してしまう。しかし、何かの異様さを感じたプイホンさんは突っ込みを入れて来る。




 「兄ちゃん?! 最後の『()()()()()』ってなんだ? この前みたいにおいらの手の平に触る事か?」




 「な、な、何をいっているのかな?


 それは俺の国で親しくなった人に先程雑貨屋で買った櫛で撫でる行為の事で、決してやましい気持ちなんかこれっぽちも無いですよ?」


 そんな言い訳じみた事を言いながら冷や汗が出る俺でした‥‥‥。中々鋭い!




 「ふ~ん、でも、あの櫛は気持ちよかったよ。特に顎の下辺りを撫でられた時は母ちゃんに撫でられたかと思ったよ」




 なるほど、プイホンさんのウイークポイントは顎ですね!! そんなあほな事を思っていると、この部屋にミリクナ医務長が入ってくる。




 「リョウジさん。さあ、夕食をお持ちしました。それにお薬もありますから、今日はこれで寝たほうが良いですよ」




 そう言われたので窓の外を見るといつの間にか夕方になっているではないか。嗚呼、一日丸ごと大損した気分になり、至極ガッカリして肩を落とす。


 出された夕食を平らげ薬を飲む‥‥‥。ああ、またかよ。これ絶対睡眠薬入ってるよね? と、その記憶を最後に意識が遠くなりベットに倒れこんでしまう。


 しかし、熟睡する前に薄っすらと二人の様子が聞える。




 「さて、プイホンちゃんも夕食を食べて寝た方が良いわよ。お腹もまだ痛いわよね?」




 「うん、おいらもご飯食べたら寝るよ」




 そう言って二人はこの部屋から出て行ってしまう。その後は完全に熟睡してしまう俺であった。






☆  ☆  ☆






 今、独り頭を抱えて悩むジョルジョネ大尉は自分の宿泊している部屋の執務机に着いていた。頭を悩ます原因は、先程岩蜥蜴種とおぼしき獣人けものびとの頭の額から切り取った魔素結晶の欠片と思われるものを眺めいたからであった。


 ジョルジョネ大尉は一頻りその欠片を眺めると、徐に革袋に仕舞って机の上に置く。そして、アミュネス少尉から上がってきた書類に目を通しながら先程の事を思い出す。




 周囲には俺らを観察する怪しい影は見当たらなかった。突入した家にはあの蜥蜴二匹の死体以外に、8人程の食い散らかせた死体らしき物があった。それ以外に存在する者の痕跡はなかった。


 家は暫く空き家になっていて、大家の話だと最近は誰も見には来ていなかったと言う。周辺の住民は、人の出入りが有ったのは昨日の夕方と言っていた。だから人影は見たが顔までははっきりとは見ていないという。



 例のあほ伯爵の方も、最近引越しした農家の空き家に惨殺されて放置されていた。その農家の作業小屋に21名の惨殺死体があった。21名の方は両手足と体を紐で結ばれ、一瞬でやられたのであろう。逃げまとう様子を示す争った形跡は無かった。


 そちらの方は、偶々引越しした事を知らないその農家の知り合いが訪れた時に鍵が開いていた為、中に入り伯爵を発見したのだという。


 そして、最後の生き残り。リョウジの身代わりにされた人物は伯爵の従僕で、領地から連れてこられて背格好がリョウジに似ていた為にあそこにいたのであろう。



 それにしても、相手の目的が分らない。リョウジが目的ならば、何故あの地下に放置したのか?


 もしも、俺達の実力を測っているとしたら、何も町でリョウジを襲わないで道中に幾らでも襲う機会があったはずなのだが‥‥‥。良く分らない。



 ラグフムのあの恐れた声色は間違いなく例の奴のように思えたが、聞いていた攻撃は俺が直撃を貰っても防ぐ事が出来る程度のものであった。まあ、ここで起きた事を詳細に書き留めて大佐の所に送れば、大佐が軍を使って調べてくれるだろ。




 ジョルジョネ大尉はそんな事を考えながら、アミュネス少尉が詳細を書いた報告書を捲っていた。


 途中、何か気になったのか、再び革袋から黒く変色した魔素結晶の欠片を出す。例の蜥蜴の頭の額から切り出した物である。


 すると、部屋の扉を叩く音がして、慌てて魔素結晶の欠片を机の引き出しに隠す。返事をして部屋に入って来た人物を見て、ため息を漏らしながら先程仕舞った魔素結晶の欠片を机の上に出した。



 ミリクナはそれを見て、同じくため息をする。ため息で会話をしているように見える二人はその机の上に出された魔素結晶の欠片を見て一段と大きいため息をしてしまう。




 「それで、これは組合に渡せば宜しいか?」




 「ちょっと待ってください大尉!」




 そうすると、二個の黒ずんだ魔素結晶の欠片に異変が起こる。まるで魔素結晶の欠片が蒸発するかのように煙になり、霧散してしまったのだ。その様子にジョルジョネ大尉は驚く。




 「な、な、なん、なんだ?! おい! 消えちまったぞ!!」




 「やっぱり、そうですか。この前の魔素結晶の欠片も報告書を書いていたら消えちゃったのよ。まあ証拠隠滅がお上手な奴がいるのかしら?」




 「はあ? こんな事は初めてだぞ! っと、言うと。もしかして何例か報告された奴もこうやって消えたのか?」




 「ええ、そうよ。これで手がかりはなくなったわ。奴隷組合の工房で調べれば、何処で取れたか分ると思ったけど。これじゃ調べようが無いわ」




 「魔素結晶の欠片って力がなくなると黒くはならないですよね? 俺が知っているのは色が薄くなって透明になるって聞いているのですが」




 「そうね、私もそう聞いているわ。まあ、これから油断しないように行かないと駄目だと思うわ」




 「この事は組合に報告しましたよね?」




 「ええ、もちろん報告しました。今回も今の出来事を報告しますわ」




 「はあ、俺もそのように報告しますか。明日は、作業しないで馬車の総点検します。いたずら書き以外に細工されていないか確認する必要が出てきました。リョウジの方はどうですか?」




 「ああ、彼は大人しく寝て貰ったわ。顔色も少し青かったし、それ以外は何かされた形跡は見当たらなかったわ。明日はどうしますか?」




 「ちょっと、彼には悪いが囮になって貰います。馬車の整備は20人も居れば点検できますから、後はメルディム護衛分隊長に上からと周囲を見晴らせます。どうせ、ミリクナ医務長も様子を窺うのでしょうから俺はここで何かあり次第駆けつける用意をしています」




 「まあ、いいわ。じゃあ、私は自分の仕事をしますわ」




 そう言い残してミリクナは部屋から出て行ってしまう。ジョルジョネ大尉はアミュネス少尉を呼ぶために隣の部屋の壁を叩く。すると、アミュネス少尉は扉を軽く叩いて部屋に入って来る。そして、明日の予定と詳細な打合せを二人で始めるのであった。






☆  ☆  ☆






 翌朝、目が覚めると何時ものように外からむさい男共の声が窓から聞えてくる。慌てて参加しようと起き上がり床に立つと、ベットの横に昨日頼んだ商品が置かれていた。


 驚いた事に銀1枚のブラシは桐の箱のような白い木箱に入っていた。焜炉は厚手の革袋に入っていて中には取扱説明書の羊皮紙が入っている。取り出して見ると電機焜炉のように電熱線のようなものが表面に見え、それが発熱するようだ。


 それに直接鍋を載せるのではなく、鍋台のようなものが付いていてそれを乗せて鍋や釜を乗せる仕様になっていた。


 もちろんコンセントは付いていないがレバーのようなものが付いていてそれで火力を調整するようだ。説明書に依ると使用時間が書いてあり、連続で3時間使って毎日使用しても20年は使えると書いてある。


 すげー、おまけに使えなくなった商品は何処でも回収して魔素結晶の欠片を補充して再利用出来ると書いてある。



 嗚呼、こんなのがあれば煮炊きに木材や炭を使わなくてもいいよねー。だから、ここの住宅に煙突が無かったのかと、町の風景を思い出す。


 いやいや、こんな事している場合じゃないでしょ。俺も練習に行かなきゃとドアを開けようとすると、ドアが独りでに開きプイホンさんが入ってくる。




 「兄ちゃん、おはよー。あのねゴナベル奴隷長がね『今日は昨日の事件の後始末があるから、リョウジと町をぶらついていろ』って、言われてね。迎えに来たよ。晩御飯までは戻って来いだって~。それで、お小遣い貰っちゃった!」




 いやいや、昨日は俺は誘拐されたんだよ? 意味が分らない。とりあえず、プイホンさんを連れて食堂に行く。途中でアミュネス少尉に出会って今日の事を尋ねてみる。




 「あの~、プイホンさんから聞いたのですが。俺って、今日も休んで良いのですか?」




 「そうですよ。昨日は酷い目に会って、かわいそうだから今日も休んで明日からの仕事の英気を養ってくれって言ってましたわよ! ‥‥‥」




 「はあ、そうですか‥‥‥」




 「あーあ、羨ましい。その、プイホンさんとは仲がよろしいのですね。どんな手を使いましたの?」




 「いや、どんな手と言われましても普通に接しているだけですよ」




 そういうと彼女はプイッと、横を向いて去ってしまう。相当悔しいのかもしれない。まあ、俺の作戦が成功したら伝授してもかまわないですと上から目線で彼女の背中を眺める。


 そんなあほな俺は急に服を引張られよろけてしまう。プイホンさんのお腹の虫が鳴ったようです。俺は慌てて、食堂の方に足を運ぶ。


 何時ものように配膳の場所で待っているとカルさんが俺のお盆に朝飯と薬を載せた時に珍しく話しかけて来る。




 「あ、あ、あの。き、きの、昨日は、さ、さい、災難でしたね。わ、わ、私が居たら、た、たす、助けられたのに‥‥‥」




 相当勇気を絞って話しかけてくれたのだと思う。オドオドとモジモジをしながら話しかけてきたのでマスクから見える頬が少し赤い。


 「御心配をかけてしまってすいません」


 何故だか俺は彼女に謝ってしまう。っていうか、普通は女性の前に出ると赤面して緊張してしまう俺だ。しかし、その俺が上から目線で普通に話してしまった事に驚いてしまう。


 それに、あの場所にカルさんがいたらそれこそ大惨事で、ジョルジョネ大尉は頭を抱えてしまうのではないかと思ってしまう。



 朝飯を食べた後に支度を整え、荷物を纏めて邪魔にならないようにベットの上に置く。そういえば、昨日は銀貨3枚程使った為に革袋の中身がさびしい気がしくる。


 なので、町を散策する前に奴隷組合の口座から銀貨を引き出そうと、プイホンさんに奴隷組合に連れて行って貰う。



 初めて奴隷組合という所に顔を出すと、早朝にも関らず営業していた。そこは市役所みたいな所で窓口が20箇所もある。案内板の様な物が天井から垂れ下がっていてその通りに歩いていくと、奴隷組合口座案内と書かれた所に行き着く。


 窓口のカウンターには綺麗なお姉さんが座っているのではなく、強面のお兄さんが座っている。久々に緊張しながら左手を見せて、ジョルジョネ大尉から貰った預かり証を見せる。


 「あのー、私の口座から銀貨を十枚程下ろしたいのですが。銀貨九枚と銅貨百枚でお願いします。」




 「少々お待ちください。これに引き出したい硬貨の枚数を記入してください」




 普通の銀行取引のように丁寧な感じに驚いたが、言われるまま羊皮紙の書類に記入する。すると、直ぐにお金を渡してくれる。それと共に預り証の更新がされたものを一緒に渡してくれる。当然残高は銀貨三十五枚である。まあ、最初は物入りだから仕様がない。



 プイホンさんは文句を言わずに椅子に座って待っていてくれた。そこに置かれていた本を見ていたようだ。


 俺が近付くと顔を上げて早く行こうと立ち上がって先導してくれる。回りを見ながら歩いていると、何人かの商人らしい人物が窓口で何か相談してたり話し込んでいた。



 外に出て、昨日と同じに東の大通りを渡り、仲通に足を進める。雑貨は昨日手に入れたので、これと言って欲しいものは無い。


 今日は出来れば本屋にいって、お昼はカフェ的な所で町の様子を見ながらランチとしゃれ込みたいなーと、歩いているとまた誰かにぶつかってしまう。



 嗚呼、つくづく間抜けで自分がトラブルメーカーだと思う俺であった。





 次話へつづく

次話は明日11/24の夜に投稿します。

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