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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-2>  「年季奴隷と半分真実  (後編)」

最新の本文修正日は2014年11月11日です。

 早朝の訓練で開眼したかのように猫ジャラシ剣を振るう俺ですが、傍から見ると何か良い感じの剣技に見えるのかもしれない。そんな真剣に言われても困るのは本人でよ?!


 ドルバン車長に誉められるも、俺はただプイホンさんを想定して猫ジャラシを振っていただけですとは言えずじまい。しかし、現実のプイホンさんは明らかに格上でした。



 そんな朝の一時とは違い、大尉の話から思わぬ話を聞いてしまう。その結果、俺も困ったがどうやら先走ったジョルジョネ大尉も困ったようです。そんな困った表情をする彼を眺める俺であった。






 「あのー、ジョルジョネ大尉? 今の話は半分だけ聞いてしまったことで良いですよ。それに俺はその事を他人に話すつもりもありませんし、そんなに焦らなくても良いと思いますが。なんだったら、全て聞かなかった事にしましょうか?


 これから、ジョルジョネ大尉には俺の事を助けてくれるそうなので‥‥‥。いえ、決して上から目線じゃないですよ?


 それに、気になる言葉を聞いてしまったので、ついでにとは言いませんが教えて欲しくて。その『王家の血の呪い』って何ですか? ひょっとしてこれも軍機ですか?」




 「ああ、仕様がない。ここまで言ってしまった俺にも非があるし、聞かせてやるが他言無用だぞ! そうしないと俺が君の命を奪わないといけなくなるかもしれないからな!」




 俺はどうやら何とか川を渡ったようで、賽は投げられた。覚悟を決め大尉の話を聞くことにして彼に頷く。




 「あれは、王国がこの大陸に来る何百年か前の話だと聞いている。正確な年数は俺には分らない。アラレスティ王国の始祖達の娘の中に特異な能力を持って生まれてくる者が出たらしい。そこで、その娘が成人を迎える十五歳の年齢になると、何処かに消えて召喚者を呼ぶ儀式のようなものをしたそうだ。


 その儀式が行われるのは確か双子月が両方満月になる時であったと思う。その時、地面に魔法陣か魔素陣のようなものを描くらしい。そして、半月すると召喚者が現れる。その召喚者が現れ、数年経つと必ず王国に危機が訪れ、その召喚者が王国の危機を救ったと言い伝えられている。


 どう救ったのかは分らないが、確かに救ったといわれている。そのお陰で今の王国は創世大陸から無事にこの大陸まで逃げ延び、この地に新しい王国を建国出来たといわれている。その召喚者は王国の守護聖人といわれていて正式な王国の紋章にも描かれているほどだ。


 そんな事で何百年かに一度王国が危機に陥る予兆としてその『王家の血の呪い』が現れるといわれている。最初は『呪い』とは呼ばれていなかったのだが、度重なる王国の危機があり次第にその呼び方になったらしい」




 最初こそ真剣な面持ちで話していたジョルジョネ大尉であるが、段々と後半の話のほうになってくると、何時ものようないやらしい顔つきになり始める。極め付けが今話そうとしている時であった。




 「そうだな~、ついでだ! 奴隷王事件の時の話を少し話そう。‥‥‥(1章閑話1話と閑話2話参照してください)‥‥‥」




 「ここから話は盛上るんだなー、これが!」




 そういってニコニコしながら話すジョルジョネ大尉を見て、真偽のほどが怪しすぎるよと怪訝な顔をする俺である。少しまじめな顔をして話をして欲しいもんだとは本人にいえないが、更に興味が有るような振りをして話を聞こうと身構える。




 「と、いう事で今日は時間となりました。また今度な!」




 「えー、折角面白い話じゃないですか。あ、もしかして、その衛士ゾンディウムって、ジョルジョネ大尉のご先祖様かなんかですか?」




 「馬鹿言っちゃいけないよ~、我が家は代々人族だぞ‥‥‥。あれ、そうだったよな? 家系図ではそうなっていたはずだぞ‥‥‥」




 そして、急に俺の目を見てまじめな話をしてきたジョルジョネ大尉。




 「話は戻るが、今回も君が呼ばれたのはその『王家の血の呪い』が君を必要としたから呼んだと思う。君は最後に呼ばれ、君の前に二人居た。居たというのは最初の召喚者は原因が分らないが周囲を攻撃して村人やここと同じ迎えに行った奴隷旅団所属中隊を一つ潰して共に消滅した。


 二人目は原因が分らないが、召喚されてこの地に来てから意識不明で今は王国の学院に移送されて、もう着いて治療していると思う。君が唯一まともに召喚された人物といって良い。君だけが周りに危害を加えないで、まともに俺達の話を聞いてくれている。


 まあ、最初は理不尽な事もしたかもしれないが許して欲しい。あれは最初の召喚者がああだったもんで、命令で君にあのような事をしてしまった。ああ、だけど年季奴隷はだから取り消しは出来ない。あれは正式な物だから国王の命令でも取り消しは出来ない。しかし、あの羊皮紙に書いてあることは真実だから気にしてないよな?」




 「あのー、俺が来た理由は分りましたが、やっぱり年季奴隷なんですね。あはは、そうですか。じゃあ、五年は年季奴隷でその後はどうなるんでしょうねー? 何も無ければ王国は良いでしょうが、俺は帰る方法を探さないといけないのか。


 ああ、それだけでも分っただけでなんだか心の中のモヤモヤが少し晴れた気がします。それに先程から聞いた事のは俺の記憶から消しますよ。あまり重要な事を聞くとなんか心が重たくなるし、そうですね血の話と前の召喚者の話は忘れます。


 それに俺は年季奴隷でこれからジョルジョネ大尉と一緒について行くしかないし。その内、王都に着いたらその王国の秘蔵書とやらを見せてもらえますか?」




 「約束は出来ないが、努力はしよう。あ、馬の休憩時間だ。ちょっと停めるよ」




 そう言うとジョルジョネ大尉は馬車を停める合図をして次第に速度が緩み馬車が止まると同時に扉を叩く音がする。


 ジョルジョネ大尉は渋い顔をして扉を開けると、そこにはミリクナ医務長が立っていて、彼女は有無を言わさず中に入ってきて扉を閉める。




 「さあ、皆さん。お話の続きは馬車が動いてからしましょうね~」




 何か先程から俺とジョルジョネ大尉の話を聞いていた感じに彼女は話しかけてくる。ジョルジョネ大尉を見ると顔に手を当てて舌打ちしてるし、何かブツブツ言っている。


 そのせいで先程から嫌な空気がこの指揮車の中に充満して息苦しくなってくる。時間は刻々と過ぎて行くが‥‥‥。嗚呼、最後まで絶えられそうにも無いな‥‥‥。




 ようやく出発の時間になりジョルジョネ大尉はため息を付いて合図を出す。馬車が動き出し俺とジョルジョネ大尉は黙ってテーブルの木の年輪を見るように目線を合わせない。




 「さて、ジョルジョネ大尉? あそこまでは話しても良いですが、私にも相談して欲しいと思いますわ。で、私は医者なのは本当ですが組合関係者でリョウジの事を国王陛下に報告するのが私の役目です。ああ、もちろん貴方の健康管理も任されていますが、医者の腕は確かですから安心して良いわ。


 それで、後は何が知りたいのリョウジさん。先程の話は全部本当の事であなたを守るために王国中が手を出しているわ。その他の事は何も分っていないのも真実よ」




 「いやー、俺はほんの軽い気持ちで聞いたのですが、その先程ジョルジョネ大尉にも話しましたが魔王や怪物なんかを俺に倒してくれって言われるかと思ってまして。


 その俺って、弱々しいし、臆病でへたれだし。そんな俺が王国の役に立ちそうも無いな~って思っちゃいまして。役に立てそうも無いなら解放して貰ってジョルジョネ大尉に頼んで国に帰ろうかと思ってました‥‥‥。しかし、無理なようなので諦めます。」




 「ふーん、ずいぶん殊勝れっしょうな心がけね。だけど肝心な事は忘れてもらうわね」




 そういって彼女は冷たい笑みを浮かべ、その表情に俺は寒気がして体がぶるぶる震えてしまう。そして、彼女は俺の背後にするりと回りこみ、首の後方で何かブツブツ言ってくるのが聞えてくる。呪文のような言葉が終わると、首輪が何か光ったようで、その首輪が熱くなり頭の中から何かが抜けていく感じがしてくる。それと共に気を失ってしまう俺であった。






☆  ☆  ☆






 「さて、肝心な事は忘れてしまったはずよ! もう少し慎重になって貰わないと困りますよ、ジョルジョネ大尉!!」




 「いやー、すまんすまん。つい口走ってしまって。その、俺の記憶も奪う?」




 「はあ? 何言ってるんですか!! そんな事は出来ない事ぐらい知ってるくせに。今回は首輪のお陰でリョウジの記憶の一部を消去しただけですよ!! 


 それに彼は魔素力が並外れているから完全に消去できたかは分りません! まったく、こんな事をするとは思っていませんでした!!」




 「ああ、すまん。だけど、この指揮車には盗聴用の魔素道具でも仕込まれているの?」




 「そんな事有る訳無いでしょ!! ジョルジョネ大尉の魔素の流れで大体何を話していたかは分りますわ!! これでも奴隷組合の特級潜入監察官ですよ‥‥‥。あ、今のは聞かなかった事にしてください。これをばらしちゃうと上司に怒られちゃいます」




 「ああ、そうだね。お互いなかった事にしましょうね~」




 「そろそろ目を覚ますと思いますよ」






☆  ☆  ☆






 あれー、なんだ。何が起こったんだ? 大尉と何か話していてミリクナ医務長が乗り込んできて何かやった気がするが分からない。あれ? ジョルジョネ大尉と何を話していたんだっけ? あれー‥‥‥。分らない。



 「あのー、何があったんでしょうね?」




 「君ね、次の馬車町の話をしていたら気分が悪くなって倒れたんだよ。だから、ミリクナ医務長を呼んで診て貰ったけど、大丈夫か?」




 「はあ、なんか話はしていたと思いますが‥‥‥。何か目眩がして意識が飛んだようです」




 「他の症状はある? 無い様なら今日はこれまでにして、後ろの席で仮眠した方が良いわ。それにこの薬を飲んで横になると良いわ。今、水を出すからそこに座って待っててね」





 そうミリクナ医務長に言われ、俺は陶器のマグカップのような器に水を入れたものと和紙のような紙に載せられた粉薬のようなものを飲んで後部座席に横になる。



 寝ている内に先程の光景が甦ってくる。確か大尉が何か謝っていて俺は真実の半分は忘れますって言っていた事を思い出す。


 何の真実を忘れたのかは思い出せないが()。俺を悪いようにはしない事と年季奴隷は解除できない代わりに俺はジョルジョネ大尉に、5年は付き合ってこの奴隷旅団所属中隊に居るという決意をした事や、更に王国に着いたら何かを見せて貰う。


 そんな話だと思うがそんな事の記憶が徐々に甦ってくる。



 どうやら、知ってはいけない事か。まだ知らされてはいけない事を聞かされたようで、それを消されたか上書きされたのかもしれない。


 ミリクナ医務長、怖すぎる。それに監察官とか聞えたのは空耳だろうか? そんな事が頭の中を駆け巡り次第に深い眠りに就いたのか、意識が飛んでしまう俺であった。






☆  ☆  ☆






 「ふう、これで町までは起きませんし、副作用も無く次に目が覚める時はすっきりして奴隷旅団所属中隊のお仕事に就けると思います。あんまりこういう事はしたくないので事前に教えてくださいジョルジョネ大尉!!」




 「いやー、悪いねー。お手数かけます。でも、いずれ話さないといけない事ですし、さっきの話で困るのはの話だけだと思うのですが?」




 「物事には順番って言うものがあります! 彼はここに来てまだ一ヶ月も経っていないし、彼がこれからどう行動するのかも分らない内はあまり話さない方が良いかと思いますわ!!


 せめて、ゴルムディアまで着くまでは様子を見るべきですわ! 半年もすれば魔素力が平均化して魔素術を教えたり出来るかもしれないし、それに国王や彼に仇なす集団や個人の実態も明らかになるかもですよ?


 ですが、今の所はそんな集団や個人は特定もされていないし明らかにもなっていません!」




 「いやー、何だか。俺も軍人だからリョウジの気持ちが分るっていうか、心情が手に取るように分るよ。何も知らされずに作戦に借り出されて現状を打破しなければいけない事なんか山ほど有るけど、彼は軍人じゃないし武人でもないからね。ここ最近彼の様子を見てたけど、彼にきちんと話せば分ってくれると思うよ?」




 「はいはい、私に文句を言わないでください! 文句は私の上司か国王陛下に言ってください! あ、上奏だわ。まあ、先程の半分の話なら良いと私は思いますがまだその時じゃないですよ。


 そうですね。あの方に会えばそれとなく知られちゃう気がしますわ。それまでは真実は半分までにしてくださいね」




 「ああ、そうするよ。彼には我々に協力して貰わないといけないからね、それとなく話すよ」




 そういってジョルジョネ大尉はため息を付くのであった。






☆  ☆  ☆






 そんな会話があったとは知らない俺は指揮車の中で寝かされたまま、日が暮れて馬車町に着いた。その俺は馬車町に着いても目を覚ます事は無く、奴隷組合の宿泊施設の寝具の上まで運ばれそこに寝かされていた。



 森を抜け切ったせいか‥‥‥。そのせいかは分らないが夢を見ることは無かった。お腹が空いて腹の虫がなった音で目が覚めてしまう。


 さて、また見覚えの無い所で目を覚ました俺だが次第に意識がハッキリすると、ここは奴隷組合の宿泊施設で、その部屋のベットで寝かされて居る事は把握できてきる。


 しかし、この首輪にあんな仕組みがあるなんて、素直には色々教えてくれそうも無い。それに記憶の一部が抜け落ちたのは確かで思い出せない。


 まあ、記憶の中で俺が半分真実を忘れるって、言っていたから良しとしよう。


 俺は何かを一旦決心して何とか川を渡りきる前に、引き返した情けない人物らしい。投げたサイコロを拾って「今の無し!!」って叫んだようだ。俺の人生らしくて良いかな? それに、また記憶を操作されるのは面倒だ。




 部屋の明かりがついているって事はまだ営業時間って言うか消灯ではないよね。風呂に入りたいし、お腹が空いてフラフラだ。


 体を起こしベットから立つと腹のせいばかりじゃないらしい。頭がくらくらして一旦ベットに座り込んでしまう。絶対、ミリクナ医務長は薬の分量か用法間違えている気がする。


 そんな悪態をついて、再び立ち上がりドアに張られている羊皮紙に書かれている建物の配置図を見る。何か他の馬車村の宿泊施設と同じような配置だが泊まる部屋数が多いようだ。



 俺はそこに書かれた食堂と浴室を確認するが着替えを馬車から降ろしていない事に気付く。ふと、ベットの毛布の端っこに着替えが置いてあるのを見つける。


 それを持って、食堂に向う為にドアを開けると、そこには白い服を着ていた人物が立っているではないか。またかよと、その立っている人と目を合わす。




 「あら、起きたようね、皆は食堂やお風呂に行ってるわよ! 貴方も食事とお風呂に入っていいからね。あ、それは貴方の着替えだから夕食を食べて、お風呂でさっぱりするといいわ。私は貴方を起こそうとしただけだから」




 そういって、ミリクナ医務長は廊下を歩いて行ってしまう。何か危機的な状況じゃなかったらしい。俺は早く晩飯を食って、ある状況を見に行かなければならない! 宿泊施設に泊まる最大の楽しみイベントを見逃す訳には行かない事を思い出す。



 はやる心を抑え急いで食堂に着いて愕然としてしまい、そこに佇む俺であった。





 次話へつづく

次話11/16の夜に投稿します。

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