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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第2章 年季奴隷が前進すると地雷踏む 》
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<2-1>  「年季奴隷と半分真実  (前編)」

最新の本文修正日は2014年11月10日です。

 人生に色々な事が有るのは自分だけではないと知った俺ですが、ここの人達に比べたら高々25年の俺の人生なんて大した事が無いのかもしれない。


 まあ、千年近く生きるといわれている森人や山人に比べる時点で間違いなのだが‥‥‥。ここの人達の人生は敵討ちであったり、気が合って一緒に傭兵やってたりと聞くも涙は語るも涙の人生劇場が有るようだ。


 それにしても治安が良いとは聞いてたが、やはりそれなりに危険が一杯のアラレスティ大陸のようです。まだ先は長い、これからの旅先の出来事に少し不安になる俺であった。






 これから行く馬車町なる所に期待を胸に膨らませていた俺ですが、先立つ物がないのに何を買うか何を食べるかとか、そんな事ばかり考えていた。しかし、現実に戻り次第に気持ちが萎えてしまう。



 そんな現実に戻り憂鬱な気分でいたが、今日の野営地に着いたようだ。気分を変えて今日の野営の準備と周りの様子を見ようと周囲を見回す。


 今日の野営地は昨日の場所よりは少し広い野営地であった。周りの草木に目をやると、なんか見たことがあるような低木の木が生えている。確か、和紙の原料に使われていたように感じる。


 しかし、勝手にそこら辺の木を切って良いのか俺には分らない。一体誰に聞けば良いのだ?


 テントの準備が始まり寝床の準備を手伝う俺はドルバン車長に聞いてみる。


 「あのー、そこら辺に生えている草木って、勝手に採っても良いのでしょうか?


 樹木は勝手に伐採しては駄目だと聞いていますが」




 「へっ? 何で俺に聞くんだ? ああ、どれが必要なんだ?」




 そう聞いて来たので先程見かけた低木の木の所まで一緒に付いて来て貰い、その木を手にとって見せる。




 「ああ、それぐらいはいいんじゃね? これは歯磨きに使われる木だし、俺も時々貰ってるけど。ああ、だけど根こそぎはまずいから数本位にしておけよ」




 「はい、分りました。態々(わざわざ)すいませんでした」


 俺がお礼を言うとドルバン車長は仮設の食堂へ向って行ってしまう。



 俺は自分の道具袋からガルボルテ工作長から貰った小刀を持って来て、10本ばかり切り取って樹皮をはがす。思ったとおり樹皮は綺麗に剥けて、樹皮を10本分手に入れることが出来る。


 樹皮を剥いだ細い茎は歯磨きに使えるそうなので等間隔に切り結構な束になったが自分の魔技箱に突っ込む。それよりとうとう紙の原料を手に入れる事が出来きて、そっちのほうを素直に喜んでしまう。



 しかし、これからが問題である。確か、この樹皮を水と石灰いしばいに入れて何時間か煮込まないといけないし、煮た後は叩き潰して繊維を柔らかくしないといけなかったような‥‥‥。どうやるか、記憶があいまいで今一自信がない。


 まあ、こまめに原料は手に入れよ、そうすれば何時かはトイレットペーパーに行き着くだろう。



 そんな事をしていた為、晩飯の事をすっかり忘れていた事を思い出す。急いで樹皮も魔技箱に入れて仮設の食堂に向かい配膳の列に並ぶと、ぎりぎりセーフで俺が一番最後であった。


 晩飯を食い終わり一旦自分の馬車に行き、先程剥がした樹皮を持ってガルボルテ工作長の工作馬車に向う。



 工作馬車の荷台にはガルボルテ工作長が居て、本を読んでいたようだ。俺は彼に声を掛けて先程の原料を見せて、紙の原料を煮炊きしたいので鍋と石灰を貰えないか聞いてみる。


 「あの~、紙の原料らしき物を手に入れたので、これを煮て見たいので鍋と石灰を分けて貰えないでしょうか?」




 「鍋じゃと? ちょっと、待っとれ!」




 ガルボルテ工作長はそういうとガサゴソと、彼の道具入れの魔技箱らしい物の中から鉄鍋を出してくれる。石灰は大きめの革袋に分けて渡してくれて、鍋は寸胴のような直径20cmもない大きさで深さは50cm位ある。


 何かを煮込むには丁度良い大きさで、それに俺の魔技箱にも入る大きさなのが嬉しい。石灰は2kg程重量があると思う。これで何時でも実験が出来る。




 「それで十分じゃろ、後は無いのか? あっ、焜炉は無いから、そこらへんで焚き火をして煮炊きしてくれ。但し、火の始末だけは必ずしろよ!!」




 「分りました。色々すいませんでした。巧くいったらガルボルテ工作長に見せますね」


 ガルボルテ工作長にそういってお礼をして、自分の馬車に戻る頃にはすっかり辺りが暗くなっていた。


 紙の原料を見つけて嬉しさのあまり、この時は気が付いていなかったがやはり自分は間抜けだった事を後で気付く俺であった。



 プイホンさんに水を入れて貰おうとテントの方に行くと、彼は既に寝てしまったようで何か寝言を言っていて起こすのは可愛そうなのでそっとテントから外に出る。


 仕方なく料理馬車の方へ行くと女性の年季奴隷達が晩飯を食べている。俺は頭を下げながら水を分けて貰い、お礼を言って顔を上げるとその中には何人かの見知った顔がある事に気付く。ああ、俺の大事な物を見て「可愛い物」と、言い放った人達だ。俺は急に恥ずかしくなり顔が赤くなる。


 急いでその場から立去り、野営地の一角へ行く。そして、薪を手に入れようと考えるが俺は他の魔技箱に登録していなかった事を思い出す。そして、それ以前に肝心の火種がない事に気付いてしまう。



 いつもなら事務所の引き出しに誰かが忘れていったライターが数本入れてあって火種に困った事は無かった。飯を炊くのにもスイッチを押せばよかった。


 ああ、何て事だ。先程の料理馬車に行って見えた焜炉を使わして貰うか?


 いや、あの恥ずかしい雰囲気の場所には行ける自信が無い‥‥‥。結局諦め水を捨てるが、捨ててから気付いてしまう。


 あらかじめ水につけて置けばよかった。多少は煮た時に柔らかくなるのが早かったかもしれない。


 ああ、やっぱり間抜けな俺であった。



 意気消沈してその道具を自分の魔技箱に仕舞い、寝袋を出す。「まあ、最初から上手くいく人生じゃないから諦めたら駄目だ」と、自分に言い聞かせて寝袋に包まり簡易ベットに横になり目を閉じる。



 またもや悪夢なのか正夢なのか分らないが奈落に落ちた夢で簡易ベットから落ちて目を覚ましてしまう。相変わらず何を見せたいのか分らない夢であるが直ぐに内容を思いだせなくなる。


 今度寝る時は簡易ベットに紐で縛り付けたほうがいいのかもしれない。そうすればあの夢の続きを見れるような気がする。そう考えながら何時ものように便所に行くが、ある事を思い出す。確か俺が気絶して今日は3日目で外では狩りをしている人達が居る事を。



 テントから顔を出して周囲をキョロキョロして様子を窺う。何も居そうに無いので、更に用心しながら便所に入り用を足す。


 そういえば出る時がもっとも危険だ! そろりと便所の扉を開けまた顔を出す。今の所安全だがその一寸先までは分らない。この間もそうではなかったかと自分に言い聞かせ用心しながらテントに向かい歩いて行く。


 すると、後ろの方でガサゴソと草むらから音がして、俺は慌ててその場から逃げ出しテントの影に隠れ様子を見る。すると、覆面をした人影が姿を現す。昨日のバールートさんかな? だけどいやに体が小さいように感じる。ああ、あれがジョルジョネ大尉がいってたもう一人の人か。



 その人影は辺りの様子を窺うようにキョロキョロしていた。そして、また草陰に入り何処かへと消えて行ってしまう。


 はぁ、ビックリした。心臓に悪いよ。そんな、ほっとした瞬間が一番危険なんだよね。俺は周囲を見回しながら、テントに入り寝袋に包まり目を瞑ると、何処か遠くの方で「ピギィー」と、いう甲高い鳴声を6回程聞いてしまう。ああ、今日は猪じゃないものを取ったらしい。桑原桑原と呟き、深い眠りについてしまう俺であった。




 何時ものように東の空が白んだ頃、他の年季奴隷が起き出し組み手の声で目が覚め、俺も参加する為に起きる。ストレッチをして今日も素振りに励む。ふと、この動きは何かに似ているよな~と、思い出す。剣を上げてはまた下げる‥‥‥。


 この剣先に紐がついた鼠のおもちゃを付けると、あら不思議! 紐付き猫ジャラシに変身する。ふむ、そう思えばなんだか剣が軽く感じて、その先には得物を狙うプイホンさんがいるように見えてくる。その剣を振り回しながらプイホンがじゃれてくるイメージで剣を振り回すとあら不思議! 凄い使い手に見えてくるよ!



 自画自賛してしまったがその様子を見ていたドルバン車長が話しかけてくる。




 「面白い剣筋だなリョウジ、それに見た事無い格好だ。お前が考えたのか?」




 そんな事を言ってくれたので俺は急に顔が赤くなる。


 「あ、あの、あのですね。そのなんていうか、あるものを想像して剣を振っただけでして。その、なんていうか、決して自慢出来るものじゃないです」




 「そんな事は無いぞ、相手を想像して剣を練習するとは筋が良いな。本格的にやってみると、もっと良いかもしれないぞ」




 「ああ、その。大した事じゃないから、あんまり見ないでください。それに皆には内緒ですよ!」




 「ああ、剣技の練習とはそういうものだ。そういう日々鍛錬が実践に役に立つから、練習は怠るなよ!」




 そういってドルバン車長は他の人の指導に行ってしまう。ああ、我ながら凄く恥ずかしい思いをしてしまった。今度は誰にも見えない所で練習しよう。


 いやいや、そうじゃないでしょ。偶々猫ジャラシの仕草をしただけでこんなに誉められると、何か哀しくなってくる。今日は道具を練習の場所に置いて早々に切り上げてしまう。



 そして、何故だか猫ジャラシの道具を作る為、丁度良い長さの低木の茎を小刀で切り何本か集める。よさそうな物を選び後は革を剥いで紙と歯ブラシの原料にしてしまう。


 後は革紐だが、確か貰った革袋はまだ有るはずで道具袋を除くと丁度良い大きさのものがある。その中に草をいれ、ある程度膨らませ低木の茎に結んで、気が付きと簡易的な猫ジャラシを作ってしまう。


 ああ、俺って何やってんだろ。そんな事を嘆きながらその棒を振りまし草むらで遊んでいると、大物が連れました。いやー、マジに釣れると思わなかったよ。



 「プイホンさんおはよー、今日も大きいのは取れたのかい?」




 「へっ? なんだ兄ちゃんか。おいらはもう大人だからそんな物には引っかからないぞ!」




 そう言うプイホンさんですが俺が目の前で棒を振り回すと、最初は黙っていたが我慢出来ず、次第にキョロキョロして猫ジャラシに食いついてくる。どうも言ってる事とやってる事が違うよプイホンさん。


 しかし、プイホンさんはなかなか優秀で直ぐ俺の軌道を読んで囮の革袋を掴んでしまう。やがて飽きたのか、見向きもしなくなり去ってしまう。どうやら本物の朝飯らしい。



 いやー、ひと時だとはいえ、俺は彼の動きに満足してしまう。猫ジャラシを仕舞い、テントと寝床を仕舞うのを手伝う。俺も朝飯を食べる為に、仮設食堂の方へ足を進める。


 今日は収穫がなかったようでプイホンさんの腰の革袋は軽そうでした。移動日は火を起こせないからひょっとして生で食うのか? ああ、恐ろしい想像をしてしまう。


 そんな事を考えながら朝飯を食ったので胸いっぱいになってしまう。しかし、朝のメニューを平らげないとカルさんの視線が怖い、その証拠に今日も俺が最後まで薬を飲むか監視してるよ。俺は青汁を一気飲みして彼女に見せる。




 何時ものように道具袋を持って指揮車に乗り込むと今日はアミュネス少尉と入れ違いになる。彼女が出てきたので何時ものように挨拶をして中に入る。日記を書きながら大尉の様子を見ると出発の時間を計ってるようだ。チラチラ書類を見ながら時計を見ている。



 やがて、馬車が走り出し羊皮紙の束をテーブルに置いて、俺にニコニコしながら彼の前に座るのを待ってるようだ。彼の前に座り羊皮紙を捲りだすと、何時ものように後部座席に行って仮眠を取るジョルジョネ大尉。


 しかし、毎日こんなに計算する事がよくあるよね。いつも捲っているが内容は何時もと変わらない。それにアミュネス少尉は重量計算表を現場で使っていたし、本当にこの隊で使用してるのだろう。


 人工にんく表で大体の隊の人数や賃金は把握できたが、俺の分だけ、見当たらないよな~。他のは書いてあり、順番なんかで誰かは想像できるし、わざと俺のを抜かして俺が計算した後に書き込むのか?


 そうですよね~ 本人が計算しているのに見せる訳は無いか。



 そんな事を考え計算を始める。何時ものように馬の休憩ぐらいには全て終わってしまう。さて、今日は何を聞こうか‥‥‥。暫く考えている内にいつの間にか再び馬車が動いていて、ジョルジョネ大尉が俺の目の前に座りニコニコしていた。




 「さて今日は何の話をしようか。その様子だと何を聞くか迷っているようだね」



 「そうだ、今日は面白い話をしようか? それともなにかあるかな?」




 「いえ、なんていうか何を聞いていいのか、最近分らなくなってきてですね。そのそろそろ本題に入って貰いたいとか、そんな事を考えていました。


 俺って言うか私はこの大陸で何をすればいいのでしょうか? 皆さんのよそよそしさを察するに。その、ここの大陸っていうか、ここの住人ではないのは分っていると思うのですが。そろそろ話して貰ってもいいかな~って思い始めたもので‥‥‥。


 最近、体の変調もあってですね。弱気じゃないのですが、心配になってきましてね。もしかして、俺に『何かを救え』と、言って来るのかと内心ではびくびくしているのですよ? 


 そのせいか、最近夢で奈落に落ちる夢を見て夜中には目は覚めるし、不思議な魔獣には追掛けられるし‥‥‥。どうなんでしょうね?」




 「ああ、君の不安も分るが、はっきり言って何が起きるか私にも分らない。君がここの住人では無いっていう事はヒノモトから来たという勇者の言動からも分っている。


 しかし、私っていうか、この王国中探してもその事を知っている者は居ないと思う。居るとしたら、『神様』か『王国の血の呪い』くらいかもしれない。


 これだけは言える。我々は君を害しようとか、利用しようとかそういうものはない。過去にこちらに来た者の中で何もしなかった者がいた事は事実だ。しかし、その君を利用しようと考える悪い奴がいるかもしれないとは言っておこう」




 急に神妙な顔つきに変わるジョルジョネ大尉は何時もと違って真剣な感じになってしまう。あのニコニコした表情ではない。その彼はこの俺に真実を語ってくれるのかは分からないが、彼の話を引き続き話を聞く事にする。




 「過去にあった、奴隷王事件の事は話したよな。あれの起こる数年前にも君と同じ様な立場の人が召喚された。その時の王国は堕落しきっていて、折角知らせてくれた『王国の血の呪い』の兆しを疎かにしてしまってな。そのお陰で王族の大半が殺され王国の危機が訪れた。


 だから、君には悪いと思うが暫くは我々と共に旅をして、この王国の行く末を見て欲しい。これは俺個人のお願いではない。本当にこんな事言って身勝手だとは思うが少し考えて欲しい。


 それに、もしかしたら帰れる方法が見つかるとは断言できないが勇者もその事を研究していた節もあったようだ。もしかしたら王国の秘蔵書の中に書かれているかもしれない。ずるいかもしれないがこれが現状なんで勘弁して欲しい」




 最後に大尉は力強く重い言葉を俺に言い放つ。




 「その為に俺はこの命を懸けて君を守る覚悟は出来ている」




 がーん、こんなヘビーな話に発展するとは思ってもいなかった俺であった。軽い気持ちで、もしかしたらと思って聞いただけなのだが衝撃過ぎて今は返事が出来ない。



 「いやー、困りましたね。俺はそんなつもりじゃなくて。例えば『魔王を倒してくれ』とか『伝説の怪物を倒してくれ』とか、そういった事を言われたら断ろうと思っただけなんですが‥‥‥。どうせ、他に当てがある訳じゃないし、ここに置いて貰うしか俺には選択がないように思います。


 皆まで聞くと一層ここから去れませんよね。それに岩猪にさえ立ち向かえない、この俺でも良いのでしょうか?」




 何か、大尉の様子がおかしいのですが‥‥‥。なんか「あ、言いすぎた」と、そんな感じがふつふつと沸いてくる。


 あ、目線が泳いだ。まあ、聞いちゃったからしようがないよね?


 そんな感じでジョルジョネ大尉が可愛そうになってくる俺であった。




 後編へつづく

今日は2話分をを投稿しました。閑話の後半は人物紹介でしたが、いかがだったでしょうか?


引き続き第2章も宜しくお願いします。


次話は11/14の夜に投稿します。

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