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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
29/229

<1-28> 「年季奴隷と護衛分隊  (中編)」

最新の本文修正日は2014年11月7日です。

 ラグフム護衛副分隊長は俺のような人生とは違い、激動の人生を送っていたようですが、内容は詳しくは知りません。そんな事を知る由もない俺ですが、肝心の自分のほうは簡易ベットの中でまた例の夢を見ていた。そんな何時もの夢を見てモヤモヤしながら寝袋に包まり寝ている俺であった。






☆  ☆  ☆






 ラグフムはあの時見た悪夢の事を思い出し、もう終わった事なのにと自分に言い聞かせた。傍らに立つメルディムにも同じ様な言葉を言われる。


 しかし、未だに見る悪夢は何時まで自分を苦しめるのかと考える。そう、またあの事を思い出すラグフムであった。




□ □ □




 あの時、俺は夢を見ていた。あの時の惨状を見ている自分がいる。何も出来なく大尉を目の前で失うそんな状況だ。そんな自分は重石を体中につけられたような感覚がして、その隊員を救う事ができなかった。


 もっと力があったら助けられたのかと次第に自問自答している自分がいて、それが更に自分を責めるているように感じる。次第に、死んでいった仲間のような顔をした何かが俺の体中に這い上がってきて何故助けてくれなかったのかと俺を責める。


 俺は言い訳じみた言葉しか吐くことが出来ず、ズルズルとその何かに飲み込まれ気が付くと何処かの部屋にいた。その部屋の中では、俺の横で小うるさく叫ぶ人族がいる。軍人だろうとは王国の軍服で分るが、ここはいったい何処か分らない。


 俺は確か‥‥‥。




 「ラグフム護衛分隊長! 起きたまえ! いったい何が起きたというんだ! 詳細を説明したまえ!」




 そういう威圧的な声で俺は我に返る。我に返ると俺の革鎧は剥がされ、人族が着るジンベとかいう物を着せられ、中には包帯を巻かれていた。


 俺はその高圧的な人族を観察すると、それ以外にも人族がいるようで、もう一人はどうやら佐官らしい。一人は高圧的な憲兵のような奴と一人は物静かな感じの佐官であろう。制服の色が紺色で佐官を示している。


 そして、普通のジンベを着ている多分奴隷組合の関係者だと思う人物は、初老で彼も落ち着いた雰囲気で俺の様子を見ている。その後ろの白い服を着ている人族は、多分医者だろう。


 その4人で俺の寝ている寝具を囲み俺の様子を窺っていた。



 まだ体中が痛み、顔をしかめながら俺は体を動かし上半身を起こす。




 「私は、今回の作戦の詳細を聞いていませんが、何が起こったかについては実際見たので分っています。ある人物を迎える為にあの村の手前で訓練などをして待機してました。


 しかし、村の向こう。多分、目的の人物が現れる所だと思いますが、訓練が終わり夕食を食べようとしていた時、その方向から突然光の柱が輝いて見えました。



 大尉は別働隊の斥候兵だと思いますが、その連絡を受けて出動準備をかけました。その準備が整い大尉は先に村の様子を確認させる為に私に斥候の命令をだしました。



 私は護衛分隊を街道を挟んで二手に分け、お互い連携して村を捜索しました。すると、街道を挟んで村の左手の方向から火柱が上がり、村人達の悲鳴と逃げまとう声がしていました。


 私は左翼の副分隊長から合図が聞えなくなったのを不振に思い駆けつけ確認すると既に3名の隊員がられ、奴の火属性の魔素術で残りの3名の隊員がなぎ倒されまして。私は応援を呼びに5人の隊員を大尉の方へ行かせました。


 私は彼らが無事に行ける様に、多分奴は山蜥蜴種の獣人だと思いますがそいつに攻撃をして返り討ちに合い屋根に吹飛ばされました。



 大尉達は応戦したのですがそいつに皆()られまして、最後に大尉と俺で奴の体を切り刻んだのですが、最後はよく思い出せません。大尉がお亡くなりになったのは確認できましたが、私も満身創痍だった為‥‥‥。思い出せません。


 その後は‥‥‥。やっぱり思い出せません。次に目を覚ましたら誰かに声を掛けられたまでは覚えていますが。その後、目を覚ましたらここだったようで‥‥‥」




 俺の話を聞いていた年配の軍人は目頭を押さえて俺に話しかけてくる。




 「あの惨状の原因は分かった。せめてもの救いは貴君が生き残ってあの惨状の原因を伝えてくれた事に感謝しよう。あの大尉は惜しい事をした。あれは私の部下でね。魔素術が俺より凄くて自慢の部下だった。貴君が彼の最後を見ていてくれた事に感謝するよ」




 俺は今一現状が飲み込めない。いったい何があったか知りたくなり。大尉の元上司という人にあの後、あの後の事を聞いてみる。




 「奴はどうなりました? 胸に剣を差した記憶はありますが、それに得体の知れない集団がいたはずですが? 黒い装束を着ていて‥‥‥。あれ、奴らは何か話していたのに‥‥‥。思い出せない」




 いったいどういう事なのか分らない。あの惨事の前のことは思い出せるのに、肝心の大尉が亡くなった後の事が思い出せない。何度も思い出そうとするが何故だか穴がぽっかり開いたように、思い出せないでいる。




 「ああ、多分記憶をやられたのかもしれない。そんな魔素術もあるそうだ。他の村人からの報告でそのような集団を見たと報告を受けている」




 すると、偉そうな憲兵が年配の軍人の話を遮った。




 「あの、大佐! そのような事を彼に話してよろしいのでしょうか?」




 ああ、この人は大佐か、徽章が軍服に着いていなかったから分らなかった。




 「ああ、心配ない、彼は傷が癒えたら申し訳ないが、三個目の奴隷旅団所属中隊に行ってもらう手はずになっているから大丈夫だ」




 俺は唐突にそんな事を言われてしまい驚いた。



 「えっ、そんな話は聞いていませんが?」




 「ああ、君には言っていないが、これは古き盟約に基づいて君に拒否する権利は無いはずだ。これを見たまえ」




 そういって大佐と呼ばれた人物は俺が拝見した事も無いが聞いた事がある高位の氏族の署名入りの書類を見せてくれた。上位の氏族の命令とあらば、この下っ端の氏族出身の俺には拒否権などなかった。


 それに、約束がなされた時には俺の家族の安全が保障されると、書いてあった。こうなっては手も足も出ない。



 「分りました。古き盟約を持ち出されては私など下っ端の森人に、抗う事は出来ません。それで、何時まで王都に向えばよろしいでしょうか」




 「多分、一月半後だと思う。その時が双子月になるからな。後は、今日この場で会った事は無かった事にしてくれ。俺は王都に居る事になっているからな。それでは一月半後に王都で会おう」




 そういって大佐と呼ばれる人物と憲兵はこの部屋から出て行った。残ったのは医者と奴隷組合の関係者だと思われる人物だけであった。




 「軍関係者は戻ったようだ。私は奴隷組合の関係者とだけ言っておくかのぉ。それで、奴の姿に何か変なところは無かったか? 思い当たる事全て話してくれんか?」




 俺は記憶の中から見たものをゆっくり思い出す。そして、少尉が突撃した後に大尉が突っ込んでいった時の事を思い出す。確か俺も大尉を援護しようとして屋根とクナイを伝って上から援護しようとした時だ。次々とあの時の事が思い出される。



 「あっ、そういえば。奴の腕をぶった切ったのに生えてきていました。心臓に剣を刺したはずなんですが奴は死んだのでしょうか?」




 「ああ、両腕が切断されて心臓におぬしのと思われる長剣が刺さった黒焦げの死体があったぞ。多分山蜥蜴の死体と思われる物が転がっていたのぉ。それが半月前だ」




 「えっ? 俺はそんなに寝ていたのですか?」




 「ああ、そうだ。君はその焼け焦げの死体から20メト((m))程離れた所で気を失っていた。あれなら、普通の人族では即死であっただろう。強靭な森人の体に感謝するといい。それに、後方にいた女性の年季奴隷達は無事だった」




 そうか、結局あの戦闘で生き残ったのは俺だけか。しかし、後方にいた奴らが生き残っただけでも俺があそこで死に損なったせめての救いとなるのであろうか?




 「それで、そこにいるのが君の体を治療した彼女でミリクナという名じゃ。今度の奴隷旅団所属中隊で、一緒になるからこれからは彼女と顔を付き合わせて君が覚えている事を話してくれるとありがたいのじゃが」




 「はあ、有った事は先程の話だけで、それ以上の事は分りません」



 どうやら、それしか方法がないようだ。彼女は医者という事だが俺の監視も含まれているのであろう。家族が人質にとられているというのに人族とは良く分らない。




 「じゃあ、そこの彼女の治療を受ける間、彼女の話し相手になってくれ。君の傭兵の報酬に内の組合の方からもその見舞金っていうか、あの場所で起きた惨事を治めた功労者として報奨金が出る。


 あそこで起きたのは魔獣が暴れて、そこに居た奴隷旅団所属中隊が全滅しながらも護衛分隊長の君がその『チク級の魔獣』を退治したと、いう事になっているからな。余計な事は話さないほうがいい。


 その為の次の就職口だ。少し利口になって懐が暖かくなった方が良いと思うがね。そういう事で君の傭兵組合の口座に王国金貨が100枚程振り込まれた。それを無にするのは賢い選択とは言えないと思うがね?」




 最後に奴隷組合の関係者といった人族はそういって俺の前から姿を消した。残ったミリクナという少女は俺を治療して共に一月半後に新たな奴隷旅団所属中隊に配属される為に王都に向ったのだ。




□ □ □




 そんなごく最近の事まで思い出しラグフムはため息をつく。色々な事を思い出して傍らに立つメルディムになんと言っていいのか分からない様子であった。彼は内心で呟く。



 「俺はそんな最近の事を悪夢と一緒に見ていたようだ」



 ラグフムは自分を気遣うメルディムを見て一言だけ話すと、再び額の汗を拭う。



 「心配ないです、メルディム()



 その言葉にメルディムは自分の肩をすくませ、そこに置いてあった酒瓶とお猪口を手に取り一人で酒を飲みだす。


 ラグフムはその様子を背に今度は自分が交代の歩哨の任務に立って悪夢の事を忘れようと、辺りの様子を窺いながら歩き出す。



 歩きながら、あのメルディムお嬢様。彼がそう呼ぶ彼女に出会った時の事を思い出す。ラグフムは違う事を思い出せばあの事を忘れる訳ではないが、あの事を思い出すよりはいいと自分に言い聞かせる。そんなラグフムは歩きながら、その事を思い出す。




□ □ □




 「なんだい! 今回の奴は何か辛気臭いね~。何があったか知らないけど、そんなんじゃ私とやっていけるのかい? 名前は?」




 「はあ、ラグフム‥‥‥。イナゲヘアのラグフムといいます」




 「はっ! 一応氏族の出かい。ったく。どいつもこいつも氏族、氏族って、私は嫌いでね。私は名前を聞いたのだけど」




 何処かで見たことがある風貌の彼女はそう吐き捨てるように氏族を馬鹿にしていた。まあ、俺のイナゲヘアという名の氏族は底辺で吐き捨てられる存在なのは否定できないが、おかしな事を言う女だと思った。まあ、あの時は体は癒えてはいたが心にわだかまりがあった為、何かその事に引っかかり思わず聞き返したものだ。




 「そういう貴方はなんと言う氏族の名なのですか?! 私の氏族は確かに底辺で蔑まれていますが、他人に蔑まれるのは容認できません!!」




 「ったく。そんな事は言っていないよ‥‥‥。私の氏族の名かい?」




 あれだけ威勢が良かった彼女がなんだか自分の氏族の名を話す段階になって押し黙ってしまう。すると、横の黒い森猫が生意気に俺の方に文句を言ってくる。




 「ムキッ~!! 姫様に向ってなんていう態度だ!!」




 「姫様って? 思い当たるのはそんなに無いが‥‥‥。あっ、俺と同じ頃、行方不明になったって騒がれたあの氏族の娘か?」




 「娘とはなんだ!! こちらにおわすお方をどなたと心得る!! ‥‥‥」




 そう何かを話そうとしていた黒い森猫の頭を後ろからポカンと叩く灰色の森狼が何かおかしくて、つい目じりが緩んでしまう。こんなに面白い事が有ったのは何時の事だったか、そんな事を思い浮かべてつい昔の事を思い出す。


 ああ、あいつが居た時か。あいつは火達磨になって逝ってしまった。ついその事を思い出し、暗い顔になった俺を見て彼女達が何かを言っている。




 「ほら~、ボグフム姉さまが私を叩くからこの人、辛気臭くなっちゃったじゃない?」




 「いいえ、貴方の馬鹿さ加減に呆れただけですよ」




 「はあ、お前達!! 少しお黙り!! 私はイルソルのメルディム。メルディムでもいいし、メルディム護衛分隊長でもいいし好きなようにお呼び!!


 私もこの氏族の名が嫌いでね。まあ、他人に馬鹿にされると貴方と同じように腹が立つけどね!! これからよろしく頼むよ副分隊長!!」




 ああ、やはり。太古の昔にあの大森林に来て聖地を造り、それを脈々と守護する20氏族の一端の氏族である。俺の氏族とは遥かに違い、とても大森林では近付く事さえ許されない身分で、今は確か13か、14氏族まで減ったと聞く。


 その内の筆頭の守護氏族ではないか。そんなお方がこんな所で傭兵をやっているのか?


 俺は血のなせる業なのか分らないが思わず彼女に対して跪く。なんていって分らないが俺の意思とは関係なく跪いてしまった。



 それを見たメルディム姫は何か、何時もの事かと呆れて俺を見て、慌てて文句を言ってくる。




 「ちょっと、こんな所で跪かないでおくれよ!! 皆が不思議がるじゃないか! ったく、だから氏族の名は言いたかなかったんだよ!」




 「はっ! しかし、私は大森林では貴方様を直視できる身分ではないです。それに、同族を見殺した者で、恐れ多くて貴方様の顔を見ることが出来ません」




 「ったく。少しは人族の世界に出て頭が柔らかくなった同族だと思っていたのに。行く先々でこんなんだから嫌だったのよね~。では、命令します!! 跪くのはおよし!! 立って私の目を見て話をしなさい。これは命令よ!!」




 「はっ! 分りましたメルディム姫!」




 そう言って俺は立ち上がり彼女の顔を見る。




 「あのね、ここは大森林じゃないのよ?! あの胡散臭い長老もいないし、貴方の氏族を蔑む同族もいないのよ。今迄、外の世界で貴方を蔑んだ同族は居たかしら? ‥‥‥。居なかったでしょ!


 もうここは大森林ではないの! 人族の領域なの、ここでは私達は一傭兵なのよ。私は分隊長、貴方は副隊長! それでいいのでわ?」




 「はあ、しかし、なんとお呼びすればよろしいのでしょうか?」




 「はあ? 自由に呼んでいいけど、姫は止めてよね! こいつらに呼ばれて辟易するわ。違う呼び名で頼むよ! なんだったらメルディムって呼び捨てでいいわよ!」




 何かを期待した目で俺を見るメルディム姫であるが呼び捨てになんか出きる筈も無い。




 「では、メルディムお嬢様と呼ばしてください‥‥‥」




 メルディム護衛分隊長は何か言いたげな表情だったので少し言い換える。




 「せめてお嬢様と!!」




 「好きにするがいいわ!」




 その言葉にあきれ果てたようで、最後にそんな投げやりな言葉を言ってそれ以降その関係は続いている。


 俺も気付けばよかったが獣僕を二人連れているのは高位の氏族だけで、迂闊であった。たいていは1人だけだからな。俺の氏族はそれすら持てる身分ではなかったが‥‥‥。




□ □ □




 そんな事を思い出しながら夜空の月に照らされた野営地を歩いていたラグフムであった。






☆  ☆  ☆






 そんな、ラグフムさんと対照的な瑞夢ずいむなのか、反対の同じ悪夢か分らない夢を俺も見ていた。



 ああ~、またこの夢か~。森に入ってから二回目だろうか、何回目か何故か思い出せない。そんな俺は、真っ白い空間で何度か目のその映像を見せられていた。


 しかし、今日は少し進むようで、馬に跨った人物が何か言った後、視線が前の方に戻り暫くして周りがしらじむ。


 視界の映像ががたがた震えて奈落のそこに落ちていくような映像が流れる。その映像に穴のように丸い光が見え、徐々に遠ざかっていき周りが暗くなってしまい、衝撃を受けたような感じで俺も目が覚める。


 あれは多分何処かに落ちていく夢ではないだろうか?


 しかし、何時ものように何で落ちる夢を見たのか分らない。って言うかそもそもの夢の内容が思い出せないでいる。



 現実には簡易ベットから寝袋ごと転げ落ちたようで、目を開くとテントの床の生地が薄っすら見える。まだ回りは夜中のようで暗い。


 寝袋から這い出てサンダルを履き便所に向い、用を足して空を見上げると二つの月が俺を照らしている。一つは三日月より少しかけているもう一つは満月の七割がたの大きさである。なので結構回りが月明かりに照らされて良く見える。


 野営地の横の草むらが風に揺られて、急に寒気がして体を震わせて俺は寝床に向おうとする。しかし、風だと思ったその草むらに大きな影を見つけてしまう。



 身長は2m位はあると思うその黒い影はのそのそ歩いて俺のほうに向ってくる。その黒い影が月明かりに照らされて見えると、熊だ。ああ、熊だ!


 慌てた俺はそういえば熊に会った人は死んだふりをすればいいと何処かの噂で聞いたような気がして。思わず死んだふりをしてしまう。




 「あで~、な~んだ~。おでを見て倒れちまっだぁ~。バ~ル~ト~、どうしたぁら~いいがなぁ?」




 「ああ、ラグ、おめぇはでけぇから驚いたんじゃねぇかな?」




 そんな会話が聞えてきて薄目を開けると、熊が俺の顔を覗いて横にいる覆面の謎の人物に話しかけているではないか。


 熊がしゃべったぞ?! ああ、獣人けものびと? 獣人族なのか? 俺は上半身を起こして彼らに言い訳をする。


 「いや、暗がりで驚いたので、足元が何かにつまずいちゃって‥‥‥。いえ、貴方の姿を見て私の国の風習で死んだ真似をしてました」


 俺は誤魔化しきれず、正直に彼らに言い訳してしまう。



 彼らは俺が無事な事に安心したようで自己紹介をしてくれる。




 「あ~あ、よがっだぁ~。おでがなにぃがしだぁがとぉおもっだぁ~。おではラグル~ト、みぃなぁがらはラグってよばれでんだぁ~」




 「おめぇのなまった言葉じゃなんだから、俺が説明する。驚かしてすまねぇな~。こいつと俺は護衛分隊の一員でな、今は周りの歩哨に立ってたんだ。ああ、俺はバールート、皆からはバルってよばれているぜぇ。


 こいつは大森林の田舎から出てきたもんで訛りがひどくてぇなぁ。森熊種と人族からは呼ばれているぜぇ。俺の顔は訳あって晒せねぇが勘弁してくれ。そういう事で俺らは仕事に戻るからリョウジ殿は心配しないで寝てくだせぇ」




 そういって彼らは草むらに消えて行く。いやいや、貴方もそれなりにへんな訛りって言うか語尾がおかしいですよとはいえない。もしかしたらこの翻訳首輪の翻訳の仕方がおかしいかもしれないからだ。


 ラグっていった人物は見た姿は熊でズボンを履いていたが鎧らしい物は身に着けていなかった。背中の大きな斧は革のベルトで背負っているように見えた。


 バルといった人物は顔を覆面で覆い、体もポンチョみたいなローブ?


 あっ、バーゼナっていうのだったかなあれ。それで全身を隠していて何族なのか良く分らなかった。




 それにしてもそうだよね~。猫や狼の獣人がいるのだから熊も居るよね?


 ああ、これからこの大陸を旅するのも悪くないなと、改めて思う能天気な俺であった。





 次話へつづく

次話は11/9の夜に投稿します。

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