<1-27> 「年季奴隷と護衛分隊 (前編)」
最新の本文修正日は2014年11月7日です。
この世界のゴーレムは特定の民族しか生成できない事を知った俺ですが、目の前で見たその光景は筆舌に尽くし難いものであった。
ただ、ガルボルテ工作長が描いたと思われる魔素陣が発動すると魔素陣が金色の輝いた事だけは忘れることは出来ない。
その後の崩れた土砂を土止めの用壁に作り直し、最後に定着させたあの羊皮紙に書かれた魔素陣も同様に発動する。すると、同じように金色に輝き周囲に広がる様を見て、俺はその光にただ驚くだけであった。
しかし、相変わらず、その光が見えるのは俺だけらしい。ジョルジョネ大尉が俺に何かを見たかと聞いて来たが、足元がふらついて驚いたと誤魔化してしまう。あの大尉のいやらしい表情を見て、俺は正直に頷く事はできなかった。
この奴隷旅団所属中隊にいる護衛隊は12人しか居ないそうだ。それに護衛隊ではなく、正式には護衛分隊と呼ぶらしい。
ジョルジョネ大尉は別にこだわっていないようで護衛隊と呼んでも構わないと言っていたが護衛分隊と呼ぶべきだろう。
その護衛分隊の一員であるラグフム護衛副分隊長と初めて会話をしたが、まじめさんの印象が強い。しかし、彼は俺に何か言いたそうであったが、途中で言葉を濁し自分達の趣味の作業に戻ってしまう。
その作業をただ眺めるだけの俺であった。
今日の野営地は少し狭いようで各馬車が密集してテントを広げていて、周囲は虫除けの「ジョチュウギク」を燻した煙が充満している。
野営の準備が出来た頃、晩飯の用意が出来たようだ。何時も思うが結構早く晩飯の用意が出来るよね? 仕込とか馬車の中でやっているのだろうか?
料理馬車の荷台に居た時はそんな事は気にならなかったが、ひょっとして女性の年季奴隷の馬車で下ごしらえ等をして、野営地に着いて直ぐ調理が出来るようにしているのかもね。
生ものは魔技箱で送れないそうだからそうかもしれない。あ、そういえば。冷蔵庫が有るから造り置きしてるのか? 何か次々疑問が浮かんで答えが出る暇がないが、俺って結構暇人だよね?
暇人なんで色々と細かい事に疑問を持ってしまう。その一つにプイホンさんは奴隷旅団所属中隊が森に入ってから暇を見つけては森の中に入りプイという鼠のような獣を追い掛け回している。
別にプイを追い掛け回している事についてはどうでもいいのだが、彼がその他の仕事をしている所を見た事が無いのだが‥‥‥。いったい何処をほっつき歩いているのだ?
まあ、プイホンさんには失礼だが猫がまじめに働いている所を想像する事は俺には出来ない。
そんな事を考え、晩飯と薬をお盆に載せ空いているテーブルに着くと、隣はプイホンさんであった。彼は美味しそうにご飯を食べている。
「プイホンさん? 今朝のプイをぜんぶ食べちゃったんですか?」
「もごもご、もごもご、ん~ん~」
彼はものを口に入れたままで話にならなかった。
プイホンさんの正面にゴナベル奴隷長が座っていて、その彼が言うには作業の休憩に1号車の14人で分けて、追加のプイと一緒に焼いてパンと共に食べたそうだ。
「ゴナベル奴隷長? プイホンさんは、一体どんな仕事してるのですか?
いや、皆さんと体格も違うし、ちょっと気になってしまって」
「あぁ、こいつは仕事している連中に水を配ったり、道具なんかを取りに行かせてぇ。後は、片付けなんかをやらせている。そうだなぁ~、今は仕事を覚える為に勉強する方が多いなぁ。あと、三年もすればぁ仕事を覚えてぇ、一人前になるかもなぁ」
「へぇ~、そうなんですか。そういえばプイホンさんは早朝の訓練はしないのですか?」
「あぁ、こいつは、っていうか。土猫に戦いは無理だぁ。まっ、精々、斥候兵として使えるかどうかだなぁ。こいつの村では農作業かプイ捕りしか、してねぇからなぁ」
「そうなんですか~。まあ、手に爪と言う武器持ってるから剣はいらないか~」
「あぁ、そうだなぁ」
晩飯が終わり、テーブルの片付けを済まして、寝床に入る。ここ二日、朝が早くて飯を食うと目蓋が重くなるのが早くなってきたようだ。
まあ、夜起きていてもテレビやネットが有る訳じゃないからいいけどね。そして、いつの間にか寝てしまう俺であった。
☆ ☆ ☆
ラグフムは歩哨の交代まで仮眠を取っていた。今、彼は悪夢にうなされている。交代の時間のようでメルディムが起こしに来て、彼の顔に浮かんだ大粒の汗を見て声を掛ける。
「またみたのかい? もう済んだ事なんだし‥‥‥。仕様が無いわね」
ラグフムはこのジョルジョネ大尉の奴隷旅団所属中隊に入る前はこの中隊と同じ仕様の中隊に所属していた。一番最初の召喚者を迎えに行った奴隷旅団所属中隊である。その時は護衛分隊の分隊長として迎えられていた。
そんな彼は仮眠から起きた後、悪夢を見るようになった前後の事を思い出す。
□ □ □
俺は傭兵組合に所属して37年の年月が経っていた。大森林のイナゲヘア氏族の集落を出たのは40年前だっただろうか?
俺の氏族はこの大森林では最下層の位置であった。その為、そんな集落が嫌いでそこを飛び出した。
大森林の外の世界はすばらしかった。集落の口うるさい長老も居ないし、仕来りもない。人族の町は見た事の無い程に多くの人々が共存していた。
しかし、その町に入る為には奴隷になるか、傭兵にならないと駄目であった。町の中を見てみたいし、奴隷は嫌なので仕方なく傭兵になった。幸い同族が多数居て、孤独になる事は無かった。
傭兵の仕事は人族の偉そうな奴の護衛や、良く分らんが奴隷旅団所属中隊の護衛任務など多岐に渡る仕事であったが、この奴隷旅団所属中隊は中々良い仕事であった。
無料で大陸中を見物できて、人族のお金が貰える。そのお金を大半は飛び出して来た集落の母親の元へ、送金したが受け取ってくれただろうか?
そんな奴隷旅団所属中隊にあの時も所属していた。その中隊の大尉は今回の任務は人族を迎えに行くという任務だと言っていた。
何時もと違うのはその奴隷旅団所属中隊の年季奴隷がほぼ全員傭兵という事だ。しかし、そういう事は偶に有る。確か、魔獣を狩る奴隷旅団所属中隊がそうだ。
俺はあんまり好きではなかったが、人族の村を襲う奴は排除しなければならない。それにそればかりではなかった。人族の盗賊も狩ったり、その他にも色々な事をやる何でも屋的な中隊であった。
今回もその時と同じような任務だと思っていたが、それは間違いだった事にあの時、俺は気が付いた。
そう、あの時も何時ものように斥候を出しながら日々野営をしたり、馬車村に寄って目的地に向っていた。多少、何時もよりは早めに移動している感じではあったが、目的地の手前の村で待機を命じられた。
その目的地の手前に小さな人族の村があり、そこを通り過ぎた所に目的の人族が来るという。
先に村を偵察して様子を窺っていたが、村は30家族が居るかどうか分らないほど小さな村で、街道沿いにあった。街道を挟んで両側に家々があり、周囲には畑が広がったごくありふれた人族の村である。
中隊長によると、俺達は村には入らないで手前の空き地で野営をして、その迎える人物が来るまで待つらしい。しかし、王国の奴隷旅団所属中隊を待たしてまで、迎える人物とはどんなお偉いさんなのだろうか?
また、王族の国内視察のお付き合いだろうか? そういえば一回そんな事があると仲間の同族に聞いた事があった。
なんでも、王族の王子は15歳で成人を迎えると、視察する為に5年程大陸を巡回するそうだ。それに付き合って、奴隷旅団所属中隊を動かす事があるという。
まったく持って人族の習慣は良く分からない。「そんな歳若い子供に何を見ろというのだろう」と、仲間に話す。
しかし「俺達と違って人族は俺達の10分の1しか生きる事が出来ない」と、笑いながら教えられた事を思い出す。
そういえば、回りを見ると最初の護衛分隊で一緒だった人族の傭兵が段々少なくなって見かけなくなり、代わりに歳若い人族の新入りが入ってくる事が目立つ事に気付かなかった。
人族は俺達より早く死ぬがその代わり俺達の何倍も多く居る事が自然の摂理だと改めて思い知らされた瞬間であった。
その村の家族も大体5人位の子供達がいて、子供の多さにも驚かされる。俺の家族は両親と俺だけで3人だからだ。
しかし、親父は俺が150歳で成人として認められた時、新たな家族を作る為に西の森のほうに消えて行った事を思い出す。母は家に親類を呼んで住んでいるらしいと仲間の同族から聞いた事がある。
我等の男は一箇所には住む事が出来ない性分だから仕様がない。皆、そんな生活をしているし、俺も不思議には思わなかった。しかし、人族は違っていて、彼らの急速な人生では一生連れ合いと住むらしい。
大森林でも、家族と一緒に住む種族はあるが、我等はそんな事には興味が無かった為、改めて人族を見て驚いた事を思い出しす。
あの時はそんな他愛もない事を思い出しながら、村の手前で二日ほど野営をしていた。ただの野営をしていただけではなく、年季奴隷の傭兵と護衛分隊が混じり訓練など、防御や攻撃の連携の確認などをしていた。
そして、あの時がやってくる。それは、今日の訓練は終わりにしようとしていた時であった。空が赤くなり、夕方位であろうか?
突然、村の方向から光の柱が立ち周囲を照らす。次第に地面も振動しだして、馬達が騒ぎ出す。
俺達は臨戦態勢に移行して周囲を警戒する。すると、その奴隷旅団所属中隊の隊長の大尉が先行させている別働の斥候兵からの連絡を貰って、これから現場に向うと、いう命令を出す。年季奴隷達には防御武装をして隊列を作って進む前に、俺達護衛分隊は先行して偵察せよと、命令が下る。
命令によって、俺は副分隊長の同族の奴を含め部下に、街道を挟んで左右に二手に分かれて先行する。後で思えばこの命令が間違いだと気付くが、今となってはどう仕様もない。
何時もの人族に聞えない笛の合図でお互い確認しながら先行すると、村の方から泣き叫ぶ声や悲鳴などが聞えて来る。その内、街道を挟んだ村の左手奥の方向から火の手が上がる。
周囲の逃げ惑う村人が居なくなったかと思うと、その場所には息をしない亡骸が数人転がっていた。すると、先程まで蜜に連絡しあっていた左方向の副分隊長からの連絡が途絶えてしまう。
俺は部下と共に副分隊長が進んでいたと思われる街道の左側の方向に、足を進め現状を把握しようとしていた。
屋根から火の粉が上がっている家の影を過ぎると、そこには6人居たはずの分隊の仲間が3人に減っている。彼らはそれなりに傭兵として仕事をしてきた為、こんな簡単にはやられるはずが無いと思っていた。
今も最後の3人が炎になぎ払われ周囲の建物の壁に火達磨になりながら叩き着けられてしまう。
俺は慌てて体制を立て直して残りの分隊員5名に、この現状を中隊長に知らせる為に彼らを向わせる。ここでも俺は小さな間違いをしたようだ。
俺は炎の中の未確認の物に、身に着けていたクナイで牽制の為の攻撃をする。多分奴は、火属性の魔素術か魔法術を使って攻撃しているのだろうと判断し、近接では奴の術に焼かれてしまい、不利だと悟ったからだ。
炎の中に投入したクナイに確かな手ごたえはあった。ゆらゆらと地面の炎の中から人と思われる人影が出て来る。クナイは手ごたえが有ったが人影の何処にも刺さっていなかった。
俺は自分の長剣を身構え、片手剣を空中に浮かせ臨戦態勢になる。炎の中から歩いてきた人物は俺のその様子を見てニヤッと笑ったように見える。
その表情が確認できたかと思っていたら、突然左手から火球を出して打ち放って来る。俺はそれを空中の剣で跳ね返し火球を粉砕する。
少し大きな爆炎を上げたが俺の剣は山人族が鍛えた業物だ、その程度では傷一つも付かないだろうと思っていた。しかし、剣は焼け爛れた状態で空に浮いていた。
こちらも、魔素術を使って防御や攻撃をしないと駄目らしいと気付き、左手で魔素術を準備する。再び、奴は火球を放って来る。
俺はその火球に合わせて水球を数発ぶつけ、空中の剣で相殺しようと思ったが無駄であった。相殺し切れなかった火球が俺を吹飛ばし建物の屋根まで吹飛ばされてしまう。
奴は倒れた俺には興味がなくなった様で俺が吹き飛んだ後は、俺に見向きもしないで街道の方へ歩いて行く。
炎に照らされた顔を見て、俺は首を傾げてしまう。それは獣人族の山蜥蜴種か岩蜥蜴種だからだ。
奴らは村を襲う事は有ったが火属性の魔素術は使えないはずで、火球なんかは撃てるはずも無いと思い出したからであった。
向うに見えるのは街道で奴は右側に曲がって、建物の影に隠れて見えなくなったと思うと、右側方向から青白い火球が数発飛んで左側に流れていく。
その外れた以外の数発が奴にに当たったのか、火球で奴がくの字になって建物の隙間を左方向に吹飛ばされて行く。その火球は温度が高い証拠の青白い火球で奴の胴に直撃したはずだ。
あれは多分中隊長の物であろう。彼は尉官では実力一位の猛者だと聞いている。今回の中隊を任せられたのも頷く戦闘力と指揮力で奴を止めたらしい。
その証拠に奴が吹飛ばされた後、奴が曲がった街道沿いの右側方向から、重歩兵が使う大盾を装備した年季奴隷が亀甲箱型陣形で進んで来たのが見える。
しかし、俺は先程の衝撃で体が思うように動けないし、あの中に護衛隊の仲間が居たようだが彼らにも加勢したいが無理であった。
屋根の上から下を覗くと部下の6人は黒焦げになっているようで動かない。涙が出てきて視界が見えにくくなってしまう。
多分あの大尉が彼らの敵を取ってくれるだろう。火属性の魔素術で対抗できるのは火属性しかない。奴より火力を上げた攻撃で奴の火球より高い温度の、あの大尉の青白い火球しか対抗策は無いと思う。
視線を大尉らが進んで来た右方向に向けると、亀甲箱型陣形から亀甲楔陣形に変えたようでいよいよ突撃するらしい。1段目の楔の後にあれは少尉か? 彼が後ろを進んで行く。
大尉も牽制の為の青白い火球を打っているようだ。丁度、違う建物の影で様子が見えなくなった頃、大きな火柱が立って回りを焼き尽くす。建物の影のお陰でこちらには熱風しかやってこない。
熱風が去った後、大尉の青白い火球が多数左側にいるだろうと思われる蜥蜴野郎の方向へ飛んで行き、その火球群があらぬ方向に弾かれる。
そして、大尉がいる右側方向から再び亀甲箱型陣形を作った集団が反対の左側方向に向って行くのが見える。その後ろには大尉らしい人物が見える。
どうやら最後の攻撃らしい。俺は悲鳴を上げている体を起こし彼らに加勢する為、建物の屋根を自分のクナイを空中に浮かせる。その上を歩き建物の上から援護をする為に大尉達が見える建物の屋根に上って、下の現状を見て驚愕してしまう。
大尉の青白い火球さえ防いだあの大盾を粉々に粉砕し、中に居た年季奴隷の傭兵達が黒焦げになって横たわっている。大尉達はそれを物ともせずに歩みを進めて行く。
俺を吹飛ばした奴の姿を見ると片腕が吹飛ばされていたが、まだ戦闘力は失われていないようだ。
そんな奴が突然大きな唸り声を上げたかと思うと、吹飛ばされていた右腕が生えてくるではないか。俺は自分の目を疑った。あんな芸当を出来る蜥蜴種は見た事も聞いた事も無かった。
腕が完全に生えきり、確認するように何度か手を握る奴は、再び大きな唸り声を上げたかと思うと、口から青白い炎を吐く。
それは大盾を装備した亀甲箱型陣形に防がれた。しかし、炎が止んだ後行き成り奴が疾走したかと思うと、左手の手套でその大盾の装甲を貫いてしまう。結果、その貫いた手から火球を出したようで、中の年季奴隷達を黒焦げにしてしまう。
先に亀甲楔陣形で突入した少尉達も同じ事をやられたのであろう。俺は大盾が破られる前にクナイを奴の目に刺そうと放っていたが、分厚い皮膚なのか奴は頭を動かして頭の皮膚で全て防いでしまう。続けて何度も放ったが全て防がれてしまい、その後は目を覆う惨状になってしまう。
最後に残った大尉は壮絶であった。彼は自慢の山人族に鍛えられたという真銀製のサーベルを右手に持ち左手からは青白い火球を打ち出しながら同士討ち覚悟で駆け出して行く。
咄嗟に俺も彼を援護する為にフラフラの体で自分の愛剣の長剣を空中に浮かし蜥蜴野郎に切りつける。
連携攻撃が旨くいったのか知らないが俺の長剣は奴の戻った右腕を再び切り落とし、大尉は左腕を切り落としている。
更に大尉は自分の左手で奴の口を塞ぎ、左手から止めの火球を奴の口の中に打ち放ったようで、奴は空中を縦に回転しながら後ろに吹き飛ぶ。その時、俺は止めが刺せたと思っていた。
やっとの事で大尉の側へ近寄ると、奴はまだ生きているようで体をピクピク動かしている。俺は最後の力を振り絞り長剣を空中に浮かし奴の心臓目掛けて長剣を放つ。
それが見事奴の体に突き刺さったが、奴は平気なようで俺の剣が刺さったままありえない光景で立ち上がる。
寝たままいきなり起き上がり、再び大きな唸り声を上げ出したのだ。大尉は起き上がった奴目掛けて再び止めを差す為に駆け出す。
俺は大尉が奴の首を刎ねるだろうと思っていたが、その前に奴の口からの青白い炎が放たれる。俺は何も出来ないまま、大尉がその青白い炎に包まれ火達磨になる姿を呆然として眺めるだけであった。
しかし、次の行動を起こそうにも、先程の衝撃で自分の体は上手く動かない。奴に刺さった剣を動かそうと、努力してみたが奴の筋肉に阻まれ中々動かない。
そんな次の行動を起こせない俺を他所に、突然奴の後ろに黒装束の集団が現れる。その黒装束の集団の一人が、見たことも無い魔素術を使って奴を赤黒い結界のような物に包む。
その赤黒い結界が次第に何十にも現れて奴を更に閉じ込める。その赤黒い結界が段々縮まって行き、光り輝いて突然爆風が起こる。その光景を呆然と眺めていた俺は、その爆風に踏ん張る事が出来ずにその場から吹き飛ばされてしまう。
どれ位経ったかわからないが、薄目を明け爆発した奴の様子を窺う。すると、その黒装束の集団が蜥蜴野郎の所に行って何か話しているようだ。声は聞えなかったが、そのうちの2人の黒装束が俺の側にやって来て何か言っている。
「あの召喚者は使えない、今回は失敗だ」
「こいつはどうします?」
「この怪我だ。捨て置いても、その内死んでしまうだろ。ほっとけばいい」
「では、我々は次の場所を探ります」
「近くに必ず奴隷組合の手下がいるから、気付かれるなよ。ワシが行くまでは絶対手を出すな! 良いな!」
「はっ、では手の物を連れて行きます」
はっきりとは覚えていないがそんな会話だったと思う。召喚者? いったい何なんだ? 俺の部下と大尉は召喚者に殺られたのか? 分らない。
それに黒装束の連中は何なんだ? 俺の疑問に答えてくれる奴は周りには誰もいなかった。そして、俺は気を失う。
どれだけ時間が経ったか分らないが人族の呼び声で俺は目が覚める。
「おい、しっかりしろ! いったい何があったんだ?」
「う、う、うう、み、みず、水が欲しい。それに体がガタガタで、言う事を聞いてくれない」
そういう会話だったと記憶している。そして、俺はまた気を失ってしまい、次に目を覚ましたのは村近くの馬車町で奴隷組合の宿泊所にある医務室の寝具の上であった。
□ □ □
そんな事を思い出すラグフムは自分の額に浮かんだ汗を拭う。その仕草を見たメルディムは、ただ黙って彼を見つめるだけであった。
そして、一体どんな悪夢であったのか再び考え込むラグフムであった。
中編へつづく
次話は11/7の夜に投稿します。




