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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
27/229

<1-26> 「年季奴隷と人型重機  (後編)」

最新の本文修正日は2014年11月5日です。

 早朝の何処かのブートキャンプのような軍事訓練の喧騒に目を覚ました俺ですが、何故かそのブートキャンプに参加させられてしまう。


 しかし、これから帰るまで生き抜かなければならない。いや、何時帰れるか分らないが、むざむざと殺られてしまうのもあれなので、いかに戦闘を回避してその場から逃げ切るか。


 そんな事を思いながらこれから自分を鍛える為に、彼らの訓練に参加する決意みたいな物を思い始める。



 そんな俺とは違い、プイホンさんはその訓練に参加しないで、サバイバル訓練を自主的にやっていたようです。


 彼の袋の中のねずみのようなプイを見せて、俺に食えと言われてしまう。彼はなかなかのサバイバル教官のようだ。



 何時もの日課の後、ジョルジョネ大尉の話に改めてガルボルテ工作長の事を聞けた俺は、彼が鉄製の岩人形を操る姿を想像して、改めてのようなものだと認識してしまうのであった。






 アミュネス少尉が指揮していた製材した材木の積み込み作業は終わったようで、周りの木材の切れ端や鋸屑などを麻袋のような大きな袋に入れて片付けを始める。


 その様子を見て、俺も竹箒たけほうきのような箒で彼らと共に片づけを手伝う。この鋸屑や切れ端は護衛隊の皆さんの薪などに使われるようで袋の口は皮の紐で結ばれ、料理馬車の物入れの魔技箱の方まで持って行く。


 結局、100袋以上有ったものが全部収納されてしまう。相変わらず凄い性能を見せ付けられる。


 しかし、綺麗に片付ける事もそうだが、ごみを無駄にしないエコ的な考えにちょっと共感を覚えてしまう俺であった。



 そんな事をやっていたら何時の間にか空が赤くなり、晩飯の匂いと虫除けの煙の匂いが混じりお腹が鳴って来る。


 そういえば、プイホンさんは見かけなかったけど、プイを料理して食べたのだろうか?


 ふと、気になり回りを見渡すと、何かの小骨のような物が野営地と草むらの境界の所に散らばっていて、その横には焚き火をした後があった。


 どうやらお腹の中に納まったようで、五匹も食ったのかあいつ? そのプイホンさんは配膳の列に並んで居るのを発見した俺は呆れてしまう。




 やがて、晩飯が終わると、何時ものようにテーブルや椅子を片付けだしてロープで固定をする。そして、各々自分の寝床に向かい就寝するようだ。


 俺も、今朝は早く目が覚めてしまった為、眠くなり欠伸を数回してしまう。そして、俺も寝床に向かい、寝袋に包まれていつの間にか寝てしまう。




 どれ位経ったか定かではないが、石切り場の馬車村の宿泊施設で寝た時に見た夢と、同じような夢を見てしまう。


 始めに真っ白い空間に佇む俺、目の前に森を走り抜けるような景色。その森が開けて広がるのは土肌の人工的に作られたような小山。それを眺めていると、不意に景色が横にスライドして、その場には馬に乗っている人が俺の方に話をかけてくる。


 しかし、音は最初から聞えない。その光景を俺ははっきり見ようとすると何故だか目が覚めてしまって、何の夢を見たのだかはっきり思い出せなくなってしまう。


 見た事がある夢なのに起きると記憶があいまいになり、思い出せないでいるこのモヤモヤ感がなんとももどかしい。しかし、現実のもどかしさは、どうやら尿意の為らしい。



 何時ものように周りを警戒しながら便所に入り用を足す。そこから出る時も用心をしなければならない、昨日の晩の事を思い出しキョロキョロしながら周囲を窺う。


 しかし、今日は何も無い様でホッとして安心するが、周囲に誰もいない事を確認して、今度は魔素術の練習のような事を始める。しかし、何時ものように無反応っぷりを披露してため息を付いてしまう。


 そして、とぼとぼと自分の寝床に入り寝袋に包まり寝てしまう。




 東の空が白んで来た頃、昨日と同じ掛け声で目が覚め飛び起きてしまう。寝坊をしたかと思い急いで外に出るが、まだ外には疎らに年季奴隷の人達が居るだけで、何人かの人が組み手をやっていたようだ。


 俺は外に出してあった昨日の木製の剣と盾を装備して昨日の事を思い出しながら素振りを始める。ああ、やっぱり筋肉痛で痛い、余り無理をしてこの前のような事になるのを避ける為に一旦それらをはずして、ストレッチを始める。


 筋肉などを解し体を温めて再び装備を付けて剣を振るが、その様子は剣を振るのではなく、剣に振るわれて足元がグラ付く情けない男のように見えると我ながら思う。


 片手剣よりはナイフやフェンシングでやるような細身の剣の方が、俺には扱い易いのかもしれないね。周囲の年季奴隷の人達の肉付きを見てそう思う俺であった。




 そんなブートキャンプが終わり周りのテントを片付け、洗顔と歯磨きを昨日のように他の人に便乗して済まし、テーブルをセットして朝飯が始まる。


 やがて、食事が終わり、回りを片付けいよいよ次の目的地に向う為、移動を始めるようだ。俺はテーブル等を仕舞うのを手伝い、自分の魔技箱から道具を取ってきて指揮車に向う。


 何時ものように指揮車の中に入れて貰うと、後ろの席に座り昨日の出来事や大尉に聞いた事を思い出しながら日記に記入する。それが終わるといつの間にか馬車が動いている。


 しかし、何時もと違うのは道が石畳ではない為か、何時までもゆれが収まらない。しかし、算盤が出来ないほどではない為、何時ものように20枚ほどの計算を終わらし、今日は何を聞こうか馬の休憩時間を利用して考えていた。



 すると、外は土砂降りの雨が降ってきたようで、傘に雨が当たるような弾かれた音に気付く。あれ? 箱馬車に雨が跳ね返る音ではないように感じる。それに覗き穴からも雨はにじみ出てこない。俺が不思議そうな顔をしているとやがて馬車は動き出し大尉がニコニコして俺の前の席に座る。




 「どうやら、今日は雨のようだな。馬車の外の結界・ ・に雨が弾かれちょっと五月蝿いけど、今日もお話をしよう」




 「はあ? 結界って? 結界っていったい何ですか?」




 「ああ、今日はその話をしようか。魔素道具の一種でね、気象用結界と呼ばれているけど、不思議な結界でな。俺も良くわからないけど、空から降ってくる雨や雪、それに偶に拳大の雹などから馬車や野営用の天幕などを守る為に例の賢者が考えたようだ。


 その結界なんだけどな。強い風をも受け流したり防いでくれるのだが、そよ風みたいな遅い速さの風は通してくれるから、結果内は悪い空気が充満する事は無い。


 この中隊の馬車は全てその気象用結界の他に後二種類の結界が装備されていて、常時発動していて安全に移動している。その他の結界は魔素術を防ぐ物だったり、物理攻撃を防ぐ物だったりそういうものが装備されている。


 その二つの性能や何処に装備されているか、それにどうやって発動するとか細かい事は軍機で教えられないけど。ああ、その結界に自由に出入りできるのはあらかじめ登録したこの指輪の魔素結晶の欠片や君がしている翻訳首輪の魔素結晶の欠片など、他の人が見に着けている魔素結晶の欠片とその左手の紋章のお陰だから心配しなくても大丈夫だ。その他にも色々あるけどそれは軍機だ」




 ああ、またまた便利な道具の名前を聞いてしまう。そんな物があるからガラスが普及しないのかもと俺は考えてしまう。すると、まだ話し始めて間もないのに急に馬車が止まってしまう。覗き穴が開いてメルディムさんが顔を出してくる。




 「前の道が土砂崩れで塞がれちまった」




 ジョルジョネ大尉は壁の魔技箱からポンチョみたいな大きな外套?


 そのような物を二着出して来て、一着を俺に渡して着る様に言ってくる。ああ、雨具の代わりかな? 俺はそれを羽織り、ジョルジョネ大尉と共に外に出る。



 外に出ると箱馬車から1m程の空間に何か透明な膜があるのか、その幕に水滴が付いていて上からの雨によって粒が大きくなり流れていく。


 指揮車の上も高さは2m位であろうか、同じように水滴がガラスに付いているように見える。壁の部分を手で触るが抵抗は無く、水滴だけが俺の手の平に垂れてくる。実に不思議な光景と感触だ。


 指揮車から離れる時もなんていうか、くもの巣が顔に纏わり付く感じで水滴が顔や体に纏わり付いてくる。



 顔に付いた水滴を振り払い視線を前方に戻し前の先頭の馬車の方に歩いていくと、道路沿いの左側の山から土砂崩れで前方100m先の道路が塞がれていた。


 良く観察すると、大量の土砂とその斜面に生えていたと思われる樹木で、とてもその道路を通れるような様子ではない。


 馬車列の前を先行していた獣僕達は無事なようで、その土砂の山から聖獣に乗ってこちらの方に向って来る。そして、俺達の方に大狼に乗ったボグフムさんが来て、今の状況の説明を始める。




 「ジョルジョネ大尉、メルディム。土砂崩れの幅は100メト((m))程で、今は先の方の山肌を探りにクワビムを向わしております。一つ時もすれば先の次の休憩場当たりまで確認できると思います。周囲には魔獣の匂いはしませんので安心して作業が出来るかと思います。私も先行して周囲の崩れそうな所を探して行きますが宜しいでしょうか?」




 「どうする、大尉? 先程の雨で山が愚図ったね。今は小降りだからそろそろ止むと思うけど。先行させて見させたほうが良いよ。クロだけじゃあ荷が重いかも」




 「ああ、それではそうしてくれ。ゴナベル奴隷長! こちらに来てくれないか。それにアミュネス少尉! ガルボルテ工作長を呼んできてくれ!」




 次々に指示を飛ばすジョルジョネ大尉はさすが隊長である。ボグフムさんは大尉の話を聞いて直ぐに左斜面に聖獣に跨りながら消えて行ってしまう。


 直ぐにゴナベル奴隷長がやって来て、その後にガルボルテ工作長がアミュネス少尉に呼ばれてやって来る。




 「ああ、ゴナベル奴隷長。見ての通りの状況で後片付けで木材と道路の土を避けて欲しいので、二班に分かれて道具を用意してくれるか」




 へっ? 戦力を二手に分散したら終わるものが終わらないような気がするけどね。その俺の考えを見透かしたようにジョルジョネ大尉はガルボルテ工作長に話し始める。




 「ああ、ガルボルテ工作長。見ての通りだ久々にあれを見せてくれないかな?


 リョウジも見たいって言ってるし。お礼は、この山の下りて暫く行った所に有る町の酒を一樽、いや二樽出そう! どうだろうか? 引き受けてくれるだろうか?」




 「相変わらず、回りくどい奴じゃのぉ。お主はここの隊長なんだからワシに命令すれば済むのに。もう、お主は洟垂れ小僧の少尉じゃ無いじゃないか。


 まあ、いい。その取引に乗るから少し離れていてくれよ。それと馬車の前の方にあの樹木をかためて置くから土山の手前に枕木でも置いてくれるかのぉ、ゴナベル奴隷長」




 「はい、分りましたガルボルテ工作長! 直ちにそのようにします」




 そう言うとゴナベル奴隷長の周りに集まっていた各馬車の車長と思われる人達に次々に指示を出して行き、アミュネス少尉に切り出した木材をどの馬車に積むか指示を待って話をする。


 そして、女性年季奴隷以外の男達は馬車からぞろぞろ出てきて、木材処理班と土砂の片付け班に分かれ準備を始める。その準備をしている横をノシノシと歩いていくガルボルテ工作長は、土砂崩れの山の上に上って行き頂上に立つ。そして、周りの土を足でならして例の魔素陣を書いているようであった。



 やがて、陣が出来たのかガルボルテ工作長は、自分の左親指を口に入れ噛んだ様な仕草をする。その後の様子はその指を陣に向け、血を垂らしたように見える。


 すると、魔素陣の周りが金色に光り、ガルボルテ工作長がズブズブと下半身が埋まっていく。あれ? そのまま埋まっていくかと思っていたが上半身と腕が少し埋まった所で急に沈むのが止んで、今度はガルボルテ工作長の下半身が埋まったまま周りの土砂の山が急に盛上り始める。


 俺はその場所から50mほど離れていた所で見ていたが、ガルボルテ工作長のオレンジ色の瞳が赤く輝いていた様に見えた。



 あれよあれよという間に全長10m程の泥人形が立ち上がる。そして、体に刺さっている樹木や残りの土山に刺さっている樹木を引き抜き枕木を置いている場所にかためて行く。大小の材木が枕木の上に並べられ、100本は無いと思うがそれぐらい量であった。


 次に、泥人形が両手で土砂を掴み道路から土砂を除けて行き、大きな3m大はある岩を抱えて道の脇に寄せて行く。あらかた、片付くと山の沢の方では無く山の斜面のほうに歩いて行き、立止まったかと思うと徐々に崩れていく。



 ああ、そんな所で崩すとまた道を塞ぐかもと、声に出そうとする。しかし、崩れた泥人形が今度は土砂止めの用壁のような高さ5m程の壁に変わっていくではないか。


 先程斜面の方に避けた土砂も同様に土の壁になって行き、長さ100m程の土砂止めの壁に変わってしまう。


 そして、いつの間にかガルボルテ工作長が泥だらけになって背中の方からその土砂壁から抜け出して来る。最後に両手をその土砂壁に当てて何かしている風に見える。


 ひょっとして最後の仕上げでその土砂壁をかためて安定させているのかもしれない。そこへ、昨日の話しで出ていた弟子らしき山人族の少年?


 いや、もう大人に見えるその山人族の弟子がなにやら羊皮紙みたいな物を壁に張り付け師匠の様子を窺っているようだ。



 準備が出来たのか、その羊皮紙に向ってガルボルテ工作長が両手を当ててなにかブツブツ行っているように見える。


 すると、先程出来上がった土砂止めの土壁の表面がガルボルテ工作長を中心に広がるように金色に光りだす。


 俺は思わず眩しくなり目を塞いだが、回りもそうだろうと思っていたがどうやら違ったようだ。なぜか俺だけ一人、間抜けなそぶりをしてしまい、アミュネス少尉はその様子を見たのか噴出して笑っている。


 俺は「今、金色に光りましたよね」と、聞こうかと思ったが石切り場の事を思い出し押し黙ってしまう。


 すると、大尉が横に来て俺の耳にそっと囁く。




 「何かの光が見えたかね? 見えたなら頷くだけでいいよ」




 彼は小声で言ってきたが、俺は首を横に振り、足元にふらついただけと誤魔化したてしまう。大尉はニヤニヤしていたが、それ以上は追及してこなかった。ああ、何か寒気がする眼差しだったが深く追求されなかったから良しとしよう。



 そういったやり取りをしている間にガルボルテ工作長とその弟子はこちらに向って歩いてくる。ジョルジョネ大尉の前まで来ると彼に話し出す。




 「こんなもので、いいか? ワシは余り小さな事は出来んので、あれで勘弁してくれ!」




 「いえいえ~、あれで十分です。町に着いたら酒を二樽届けますので楽しみにしていてください。それではお疲れ様でした。後は休んでください」




 「ああ、そうするか。久々にあれをやるとこたえるわい」




 そういってガルボルテ工作長と弟子は後ろの方の工作馬車の方に消えてしまう。



 彼らが馬車に向う途中で、待機していた土砂除去班は既に残りの土砂を排除し始めていた。実際、ちょこちょこと土が残っているが1時間も掛からないで終わってしまい、残りは木材の加工の方に回ってきたようだ。


 加工と言っても樹木を枝打ちして幹を4m程の長さに切断して、10人程で持ち上げ近くに寄せた1号馬車と2号馬車の魔技箱に収納している。



 そこで、不思議な様子が目に入ってくる。樹木の一番先端っていうか上部の枝が付いた所、大体2mぐらいの高さだろうか。その枝先を別に選り分けて置いてある。


 それを何人かの年季奴隷の人達が抱えて先程の土壁の裏の方に持って行くではないか。俺は不思議に思い、彼らと同じように何本かの枝先を抱えて後を付いて行く。



 そこには‥‥‥。あ~、なんか見てはいけないものを見た気がする。なんか一人張り切った人物が何かやっている。それはメルディムさんである。彼女はなんかハイテンションで山の斜面に先程の枝先を立てた物に手を当てて何かやっていた。



 俺が居た所の植林は、種から育てた樹木の苗を山の斜面などに植えていくのが一般であるが、ここでは生木を地面に刺すらしい。そんな事をしても根が張らないで枯れちゃうよね?


 そう、彼女に話そうとすると、土に刺した枝先に彼女の左手を当てて、何かブツブツ呟く。


 すると、左手と枝先全体が光りだしてその枝先がわずか成長したように見える。そのハイテンションな彼女はその作業をスキップしながら次々やるではないか。


 その様子を見ていると少し離れた所に、この前のラグフムさん?


 だったか、その人も同じように地面に刺した枝先に左手を当てて同じような事をやっている。彼の左手とその枝先全体も光りだしたかと思うと、同じ様に手を当てた枝先が少し成長したように見える。



 俺は彼らが作業した所の枝先の根元をちょっと掘ってみて驚いてしまう。なんと、根が張っているではないか。「凄いぞ森人族!」と、思わず声に出してしまう。すると、その俺が気になったのか、ラグフムさんがこちらの方に来て話しかけてくるではないか。




 「やあ、リョウジ殿。そんなに珍しいかね? 森人族なら誰でもできる事だよ。あ、あの、あのお嬢様の姿は見なかった事してくれ。偶に植林作業するとなんていうか気分が高まっちゃって、ああやって舞い上がってしまうので。ああ、他の多くの森人は違うから勘違いしないでくれよ」




 「はあ。あっ、そういえばこの前は助けて頂きありがとうございました。お礼を言わずにあの大きな猪を見てしまい、気絶してしまってお礼を言ってませんでした。それに殿は要らないですよ、リョウジで呼び捨てで良いです」




 「ふむ、君はなかなか優しい人のようだ、お嬢様が言ってた通りのようだ。まるで‥‥‥。いや、この事は話さないで置こう。では我々の使命が待っているので失礼するよ」




 何か最後に言い出せない事があるような感じで、彼は植林作業に戻っていってしまう。しかし、心なしか彼も何か浮き浮きしてる風に見えたのは気のせいかもしれない。




 俺が土壁の裏側の斜面から道路の方に出てくると、先程偵察に行っていたボグフムさん達が帰ってきたようで色々とジョルジョネ大尉に報告をしている。




 「ジョルジョネ大尉、次の休憩場までは安全です。今日はそこで野営になるかと思いますが、予定通り先の所迄行くのでしょうか?」




 「いや、山の夜道は危険だから休憩場で一泊しよう。それに土砂を除くのと、木材の切断と積み込みにちょっと時間が掛かるからな。


 後は、ちょっと言い難いが君達の上司の気が納まらないと、無理ではないかと思うが様子を見てくるとありがたい。切りの良い所で説得してくれると嬉しいな~‥‥‥」




 「あ、ああ、はい、分りました。けど、期待しないでくださいね。あれを邪魔すると後での機嫌を伺うのが‥‥‥。でわ、見てきます」




 そういって、ボグフムさんは大狼に跨り斜面に消えていってしまう。



 「あの~、大尉? 分隊長って?」




 「ああ、護衛隊と言っても十二人しか居ないからね。軍では分隊という単位なんだ。だから、正式にはメルディム護衛()隊長、その部下はラグフム護衛副()隊長と呼ぶけど俺は別に護衛隊長って呼んでも構わないけどな」




 「はあ、そうなんですか。あ、そのラグフム護衛副()隊長から聞いたのですが森人族って木を植えるのが使命なのですか?」




 「ああ、あれは昔、森を切り開く王国人に対して使命で木を植えていた。しかし、今は使命って言うか、彼らの趣味だと思うよ? 今の王国は森を乱開発してないし、森や林の管理は森人族がしていて、偶に間伐して自分達で仕事を作って植林しているからな~。人族はその間伐した物を分けて貰っているからな、この前見た樹木がそうだ。あれは彼らが余分に酒を手に入れる為の現金収入になっている」




 「へ~、そういう訳だったんですね。じゃあ森人族もお酒は嫌いじゃないという訳ですか。ああ、そういえばそんな事この前聞きましたよね」




 「そろそろ、雨も止むようだし切断した丸太を積んだら出発するから君も準備しなさい。それにその『バーゼナ』は君にあげるよ。それはこの間の荒野で取れた岩猪の毛皮で出来ていて少し重いが雨や雪を弾くし、その割には保温性や通気性が良くて使い勝手が良いから君の魔技箱に仕舞うと良い。普段から着ていてもいいし、君の好きにするといい」




 ジョルジョネ大尉がそういったが、俺はその『バーゼナ』なるものの意味が分らずポカンとしていると、先程の外套? ポンチョを指で示してくる。


 それに頷きお礼を言ってお辞儀をすると俺と一緒に指揮車に向かい、中から俺の道具袋出して渡してくれる。そして、ジョルジョネ大尉は指揮車の中に入ってしまう。



 へ~、このポンチョ見たいのが『バーゼナ』って言うのか~。後ろから見るとテルテル坊主だよね。


 そういえば周り年季奴隷の人達もそれらしい物を被ったり頭を出して纏っていた事に今更気付いたよ。


 その、バーゼナは一枚の革で出来ているようでフード部分と一体になったローブのようであった。胸の所にボタンのような物が付いていてなんと、内側にリョウジと刺繍がしてある。そのバーゼナの丈は膝下辺りまであり、雨が降って肌寒い山の気温が遮られ実に暖かい。


 それに、中は雨が浸透して来ないので快適であった。毛並みは4cm程の毛が生えていて毛が結構細く革も少し厚いが柔らかい。「弓矢の矢なんかも通さないかも」と、そんな事を思いながら先程の土壁を見に歩いて近付く。



 その土壁の所に来ると先程ガルボルテ工作長が最後に手を当てた羊皮紙がなぜか土の壁と同化していた。色は違うのだが切れ目って言うか境目が混ざっているようで、その羊皮紙部分には魔素陣? っていうか二重の円に中心には三角形が描いてある。


 良く目を凝らして見ると文字のような物が書いてあるが、俺がしているこの翻訳首輪では読めないようでミミズが張ったような文字が各所に描いてあるだけであった。


 う~ん、もしかしたら、基本の魔素陣は二重丸を描いて中に三角を書くのが標準なのかも知れないと一人頷く。


 そして、周りの壁を触ってみるとまるでコンクリート製の壁のようで均一でなだらかな物であった。それが道路沿いに緩やかにカーブしていてまるで昔からあるような雰囲気だ。



 その土壁には、所々水抜きだと思うが2m間隔で3cm程の穴が2段に綺麗にあいている。ああ、完璧な工事ですね。まるで公共工事の見本のような感じである。おまけに、10m毎に縦にスリット迄入っている。


 これは地震や地殻変動で地盤が動いても大丈夫なようになっていて万が一崩れても全部が崩れないように内部は分かれているのだと思う。さすがガルボルテ工作長、凄すぎだ。大量の土砂を片付けたり、埋まった樹木を引き抜く様は人型ショベルカーだよね?



 俺はため息を付いてれの呪文を唱えて心を落ち着かせる。



 「ここは異世界、ここは異世界!」



 そんな事をやっていると樹木の処理が終わり馬車の魔技箱にも樹木を収納したようで、俺の事を呼んでいる声がする。俺は走って自分の馬車に戻ると、途中で用壁の影からメルディム護衛分隊長達がやって来る。彼女は凄く満足したようで少し疲れた表情をしている。


 俺は思わず「お疲れ様でした~」と、声を掛けてしまい、彼女のほうもにこやかに微笑みで返してくれる。



 馬車に戻ると、皆もバーゼナを脱いで馬車の天井の部材からそれを吊るしていた。俺は雨をさっと払って座席に座り温まる。プイホンさんはバーゼナは必要ないようで濡れた毛を自分で舐めていた。



 「プイホンさん? 寒くないのですか? 寒かったらこっちに来てこのバーゼナに入りませんか?」




 「あ、兄ちゃんも貰ったのか。おいらも有るけど、おいらにはこれがあるから大丈夫だよ」




 内心、こっちにこなかった事を舌打ちをする。しかし、そんな事を言って自分の毛を引張って俺に見せた姿を見て「ああ、その姿もばっちりです!!」と、また訳の分からない事を心の中で叫ぶ。



 やがて、多分一つ時、約2時間程して馬車は少し広めの場所に止まり、今日はここで一夜を明かすとドルバン車長は皆に話す。その話を黙って聞き入る俺であった。





 次話へつづく

次話は11/5の夜に投稿します。

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