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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
18/229

<1-17> 「年季奴隷で療養生活  (中編)」

最新の本文修正日は2014年10月30日です。

 薬で眠らされていた俺ですが、その間に何かあったようです。外の喧騒で起きた俺は指揮車の外に出て驚愕して尻餅をついてしまう。


 驚愕する視線の先にはプイホンさんが巨大な猪のような頭の目玉を取り出し俺に食えと言い、俺の寝ていた指揮車には巨大な毛皮が掛けてあった。


 その後は空腹を満たす為、ご飯を貰いに食堂の方に歩いていくと、そこの世界はサバトのような光景であった。ある者はテーブルの上で肉を切断したり、またある者は何かの巨大な骨を地面で切断している。そんな光景を仮設食堂周辺のあちこちで目の当たりにする。


 しかし、そんな事より驚いたのは、朝飯を頼んだ人影が振り向いた瞬間であった。それは昨晩の毒物テロの犯人で、料理長補佐のカルさんであった。



 それとは別に王宮の方でなんか感動的な事があった事など知らない俺は、貰った食事を済まし、薬を飲んで再び眠気に襲われ深い眠りに就いた。


 そして、昨日と同じに下腹部の違和感で目が覚め、それが終わると昨日の看護婦さんに「偶に、可愛い物を見ないとね!」と言われてしまう。そんな昨日と同じショックを受けてしまう俺であった。






 あの看護婦さんは昨日も俺のを見たはずなのに、なんで「偶には」なんだ? あれ? 違う人? 分らない。


 こちらの人は俺の居た場所と違い東洋人顔の人を見かけない。周りは、ヨーロッパ系の顔立ちの人ばかりでどれも同じに見える。


 俺ののっぺりとした顔とは違い、顔の造りは凹凸がハッキリしていて瞳の色も沢山種類があるようだ。そう考えると、昨日の看護婦と今日の人は違うのかもしれない。



 そんな事を考えていた俺のおでこを手洗いが終わり手拭でふき取るミリクナ医務長に聞いてみる。


 「あの~、医務長? 『カンゴフ』って沢山居るのですか?」


 そう言ってから気付いてしまう。


 「あ、医者の手伝いする人? って、いうか。病人を『カイゴ』あ、『介抱』する人? って、いうかそんな人が一杯いるのかと思いまして」




 「へっ? 『カンゴフ』? なにそれ‥‥‥。医者見習いは居ないわよ。私の補佐をしてくれる人は三人程いるけど専属でもないし、このぐらいの世話はここにいる女性の年季奴隷なら誰でも出来るわよ」




 え~~~~~っ。っていう事は手の空いている人が交互に病人の介抱をするのか?


 ‥‥‥。ひょっとして早く俺の病気が治らないと、ここの女性の年季奴隷全員に大事なものを見られるのか俺?!


 「あの~、俺の病気ってここ特有の物で。その、なんていうか。治りますよね?


 死んじゃうとか、長期の『ニュウイン』あ、いえ‥‥‥。『療養』? あ、その療養生活になるのでしょうか?」




 「う~ん、どうしようかな~‥‥‥。病名は言い辛いけど、そんなに長くはならないと思うわ」




 「え~~~~っ、その言い辛い病名って?! いったいなんですか? 勿体つけないで教えてください!


 決して落ち込んだり、自暴自棄になったりしませんから、どうかお願いします」



 そう言いながら体を起こし、俺は彼女に懇願してしまう。


 そんな俺の仕草に彼女は仕様がないといった様にしぶしぶ言い放つ。




 「知恵熱よ」




 呆然とする俺に彼女は病状の説明をしてくれる。




 「『知恵熱』は幼少の子供が、初めて魔素術を見た後に発祥する事がある熱病の事ですわ。俗説の子供が掛かる事が多いので偶に大人が慣れない事をした時に熱が出ると、そういって揶揄する事では無いですから! 


 気を確かに持ってくださいね!


 貴方の場合はこの大陸に来てから初めての魔素術を目の当たりにして。そう、特に石切り場での強い魔素術に接したのが原因かも知れません。『知恵熱』と馬鹿にすると大変な病気に発展しますので、今は私の処方した薬を飲んでゆっくり休んでくださいね」




 その彼女の説明にただうんうん頷く俺である。俺は横になり、寝袋を治してくれたミリクナ医務長に感謝の言葉を言って暫く考える。


 「知恵熱」って俺は子供か?! と、思ったがそういえばジョルジョネ大尉におかしな問題を見せられ、久々に頭をフル回転したのがいけなかったのかと自問自答してしまう。


 ミリクナ医務長が荷台から出て行ったと思ったら、今度はプイホンさんがまた氷嚢を抱えて来ると、俺の頭にその氷嚢を乗せる。彼の表情は分からないが、心配なのか髭は下がり、尻尾も下がっている。


 「プイホンさん、毎回氷嚢を持って来て貰って悪いね~。俺の病気が治ったら何かお礼をしないとね。何がいいかな?」


 俺は内心、お礼をモフモフでしようか? ナデネデでしようか? と、そんなあほな事を考えてしまう。




 「そんな事は気にしなくていいよ~、兄ちゃん。早く良くなって、おいらまたプイ捕まえて沢山食わせてやるからね! 兄ちゃん岩猪は嫌いみたいだし、あの肉はプイと替わらない程、美味しいのに‥‥‥」




 「ああ、気を使わしたようで、悪いね。プイホンさんのその気持ちだけで、お腹一杯になったよ‥‥‥。ところでプイホンさん? 今日は馬車が動いていないようなんですが、どうしてですか?」




 「ん? あっ、そういえばそうだね。あっ、隊長が今日はここでもう一泊するっていってた。肉祭りするって。ああ~、楽しみだな~。おいら一度でいいからこのぐらいの肉にかぶり付きたいな~。じゃあな、兄ちゃん!」




 あれ? あいつ、肉の話になって急に出て行った。そうか、今日はここに泊まるのか。しかし、「おいら一度でいいからこのぐらいの肉にかぶり付きたいな~」と、言った時のプイホンさんは最高でした。


 なんというか小さい子供が両手を広げて物の大きさの表現をする姿に似ていて、おまけに髭も斜め上に上がり、尻尾もピンッと上がっていて思わず久々にその光景を目に焼き付けたよ。



 肉祭りは話半分として今夜は肉なのか~。そういえば、あの馬車村以外、まともに肉を食って無いな~‥‥‥。でも、あの顔見ちゃったしな~。


 しかし、あんな化け物級の猪がこの荒野に居たなんて、よく俺が荒野に居た時に出会わなかったな。あんなのが生きている時に俺と鉢合わせになったら、俺はどうなっていたんだろ? きっと、今頃は腹の中か‥‥‥。あ~、よかった~、会わなくて。



 暫くそんな事を考えていたが、トイレに行きたくなり荷台から降りて外に出る。荷台から出ると左側で話し声がしたので料理馬車の横を覗くと、木のお盆に載せた大量の肉を魔技箱の中に入れているようだ。


 俺はちょっと好奇心に駆られてその様子を見ていると、切り刻んだ肉が乗ったお盆ごと入れるのはいいのだが、その魔技箱から冷たい冷気が漂って来るではないか。


 へっ? 冷蔵庫? と、首を傾げそこに居た料理長のギムネーヤさんに思わず聞いてしまう。


 「あっ、あの~。それって『冷蔵庫』あ、いえ。それって『冷蔵庫』なんですか? 

 それも魔技箱なんですか?」




 「おや、リョウジじゃないか、もういいのかい? ‥‥‥。ああ、そうだよ。見ておくれよ、これは最新式の魔技箱でね! だいぶ前に壊れていたんだけどこの前の馬車村で治ってね。今朝、メルディムさんがこの肉を獲ってくれて、今収納しているところさ!」




 「へっ? なんで? だって魔技箱で送って貰えば良いのでは?」




 「ああ、そういえばリョウジは他所の国の人だったわね。この便利な道具も欠点があってね。特に移送できる魔技箱はなま物は駄目なんだよ。


 だから、生きた人間も送れないし。その、なんていうか生肉とか生卵、生乳も駄目だったかな。でもね、穀物や野菜とか同じなま物でも植物は大丈夫なんだよね。おかしな道具だよね~」




 「へぇ~、そうなんですか。じゃあ、ひょっとすると『冷凍庫』あ、いや『冷凍庫』もありますか? ちょっと気になっちゃって」




 「ああ、あるけど、いまは壊れちゃってね。修理はまだなんだよ」




 「えっ? じゃあプイホンさんは何処から氷嚢の氷を持ってきているんですか?」




 「ああ、プイホンちゃんは自分でこのぐらいのを作れちゃうよ」




 料理長のギムネーヤさんは握り拳を作って、そう示しながら教えてくれる。



 へ~、プイホンさんもなかなか出来る奴なのかな。俺は感心して彼女に仕事の邪魔をした事を謝って、トイレに急いで駆け込む。


 便座に座りながら考えていたが、俺は何時になったらあの「魔素術」と、いうものが使えるようになるのかな? 魔素陣を使えば誰でも使えるって言っていたけど。


 ジョルジョネ大尉は教えてくれそうもないし、だからと言ってプイホンさんは先生になれないよな~。心の中で俺はプイホンさんを馬鹿にしていてごめんなさいと謝ったが、どうしても使ってみたくなってくる。



 あの魔素陣の陣形はこの前は遠くてよく見えなかったし、なんかの法則のようなものがあるのかな? 


 ‥‥‥。用を足し、例の葉っぱで拭いたが、これもどうにかしたいと思っていた。そう、トイレットペーパーである。それか、お尻の洗浄機でも作った方が早いのかな‥‥‥。両方あったほうが良いよね。体が完治したら工作長に相談してみるか。


 そんな事を考え、支度を整え料理馬車の荷台に戻ろうかと思っていた所、思わぬ光景を目撃してしまう。



 それは先程の巨大な猪の頭の切り口である。その光景を目撃して血の気がサッと引いてしまう。何時もの1号馬車に帰る道を通ってしまい、俺が朝まで寝ていた指揮車の少し前の方を通ってしまったのだ。


 つまり、朝のビックリした猪の首の裏であり、グロイ首の輪切り部分を目撃してしまったのであった。


 しかし、そこに二人の人影を見つけてしまう。その二人とは二人共獣人(けものびと)で、一人はプイホンさんでもう一人は黒猫ちゃんのクワビムさんである。俺はテントの陰に隠れ彼らの会話を聞きながら様子を窺ってしまう。




 「いいかい、ここのお肉が一番美味しいのさ。そう、ここ、ここよ。そう、そこの肉がこいつの一番美味しい所なの。ほれ、食べてみなさい」




 「うひゃ~、凄い美味しいよ使徒・ ・さま~。おいらこんなの食べたの初めて~」




 「じゃあ。お前も、こそぎ取ってごらん‥‥‥。あら、上手ね。巧いもんだわ」




 そんな会話を聞いていると、凄くなんかいやらしいく感じる。思わず鼻血が出そうになる。悪いお姉さんの毒牙に掛かるいたいけな少年との危ない会話に聞えてくる。


 ああ、俺は熱に犯され頭が少しおかしくなったらしい。良く記憶を思い出すと勝手に脳内変換して、危ない会話に聞えてしまったようだ。



 すると、一人妄想していた俺は向うの指揮車の影にも彼らを観察している人影を見つけてしまう。金髪が見え隠れしていて、多分アミュネス少尉だと思う。


 彼と彼女らの尻尾にずっと見とれている。ああ、どうやら同じ事を考えていたのではなく、彼女の尻尾しゅみに興味があったようだ。




 そうやって見ていると突然、指揮車を飛び越えてプイホンさんとクワビムさんの前に大狼に跨った狼姉さんのボグフムさんがやって来る。




 「あらら、クワビムさん、貴方はここで何をやっているのかしら?


 確かこいつの牙を外して、革も剥がせって、私が言ってなかったかしら?


 それを忘れてつまみ食いですか?」




 そう言いながら、大狼の上から彼女らを見下ろしている。




 「い、いや、いやね。このが物欲しそうに見ていたから。つい、出来心で。その、つまみ食いしたのは、このです!」




 あ~あ、プイホンさんのせいにしちゃったよ、あの黒猫ちゃん。プイホンさんの尻尾毛が逆立ち倍以上に膨れる。段々下の方に垂れ、耳も下の方に垂れだす。そして、体が若干震え始めて可愛そうだ。その隣の黒猫ちゃんも同じ姿であった。




 「それは、本当ですかそことそこに隠れているお二方?」




 ボグフムさんは俺とアミュネス少尉の方を指差し、聞いてくる。仕方なく俺は馬車の陰から姿を現すと、同じようにばつが悪そうにアミュネス少尉も顔を出してくる。




 「あの~、俺は今ここで見てただけで、どんな会話だったか聞えなかったです」




 俺はそう言って誤魔化すが、あっちの方は何かモゴモゴ言って聞き取れない。




 「そうですか、証人が居なければ仕様が無いわね~‥‥‥。と、言うとでも思った、クワビム?! さて、どんなお仕置きしようかしら?」




 何か考え出したボグフムさん。「貴方って結構サドなんですね」と、俺の心の中で囁く。




 「それで、そこの子猫ちゃんは美味しかったかい? その岩猪の頬肉は格別に美味しいからね~」




 「う、う、うん、凄く美味しかった! おいら、初めて、こんな美味しいお肉食べたよ!


 うちの母ちゃんに食べさせてあげたかった」




 「えっ? お母様は亡くなったの? 


 『食べさせてあげたかった』って、なんて可愛そうな子猫ちゃん。貴方はもういって良いわよ。今度はつまみ食いしちゃ駄目だからね」




 そんな事を言ったかと思うと、涙を流しだしたように右手で目を擦り始めるボグフムさん。そして、プイホンさんは何故解放されたか分らない風で、トボトボ俺の方にやって来くる。



 俺はテントの陰に彼を引き寄せると、こっそり聞いてみる。


「ねえ、プイホンのお母さんは亡くなったの?」


 すると、プイホンさんは周りをキョロキョロして一言。




 「内緒だよ」




 俺はその様子で察してしまう。なかなかやるねプイホンさん。そうである、彼は恐怖のあまり、泣き落としでこの局面を打破したのである。


 中々策士なプイホンさんの一面を見ることが出来た。彼は母親が死んだとは言ってない。ただ「食べさせてあげたかった」と過去形にして、多分あそこで目をうるうるさせたに違いない。


 俺は改めて「こいつ、中々悪よのお~」と、感心してしまう。やはり、この世界は厳しく彼は10歳から働いているのだから、色々と世間の風に揉まれているのだろう。



 一方、クワビムさんの方は後ろからでも、きっと顔から脂汗が大量に流れている情景が目に浮かぶ雰囲気である。どうするか気になり見ているとボグフムさんが大狼から飛び降り拳骨でクワビムさんの頭を上から「ゴツン」と叩いて首根っこを捕まえ彼らの休憩所のほうに引きずって行ってしまう。


 「ねえねえ、プイホンさん、本当はどうだったの?」




 「あのね~、おいら。朝方、目玉を引張っていた所に兄ちゃん起きて来て、あれは要らないって言ったでしょ?


 だから、取るの止めたんだ。そのあと、色々仕事して。おいら、あそこに小刀忘れちゃって。思い出して、探しに来たんだ。


 すると、あの黒い使徒様が美味しそうなお肉を小刀でそぎ取っていたから。おいら、そ、その、『うまそう~』って、言っちゃって。


 そしたら、あの使徒様が、『おまえの分は無いぞ』とか言ちゃってさ、おいらに意地悪したんだ。だから、おいら、『そんな事言わないで少しで良いからください』って、お願いしたんだ。


 だけど『あっちへ行け!』って言われたから、おいら『ボグフムさんに言いつけてやる』って、言ったらね。急に優しくなって、お肉くれたんだ。兄ちゃん、美味しかったよ!」




 すると、俺に説明してくれたプイホンさんの様子がおかしい。なぜか、俺の後ろを見て耳が垂れている。俺が振り向くとボグフムさんが立っているではないか。




 「まあ、正直に話したからいいわよ。でもね子猫ちゃん。私を担ぐなんて百年早いわよ」




 すると、頭の上に拳骨で「ゴツン」と音がして「フギャ」と、言うプイホンさん。




 「私ね~、鼻も利くけど耳も利くから。今度内緒話する時は一メタ(・ ・ ・)以上離れてからすることね!」




 そんな言葉を言い残し去って行く。何時の間に背後に回ったんだ? それに1メタって1km以上? 恐ろしい、やっぱり犬関係とは仲良くなれない。



 ああ、なんだか目眩がしてきた。早く馬車の戻って寝よ。プイホンさんに「つまみ食いは駄目だよ」と、言い残し、彼と別れ料理馬車までフラフラ歩いて行く。


 すると、今度はミリクナ医務長が両腕を組んで料理馬車の荷台の前で仁王立ちで待っているではないか。




 「あら、リョウジさん? 私は貴方が大人しく荷台の寝床で寝ているのとばかり思っていたのですけど、何処ほっつき歩いていたのかしら? さあ、荷台に上がってそこに寝なさい!」




 そう言いながら、その華奢な体なのに信じられない力で俺の腕を引張り簡易ベットに寝かしつけ、俺のおでこに手を当てる。




 「あらあら~、お熱が上がってきたみたいですね~」




 彼女はそう言うとニヤッと微笑み、出入り口の方に行き誰かの名前を呼んだ。すると、筋肉質のお姉さんがやってきて俺のズボンを脱がし始め、俺は慌ててズボンを上げようと抵抗したが所詮病人。おまけにその筋肉質のお姉さんは俺よりはるかにパワフルで、抵抗むなしくズボンを下げられ、足を持ち上げられる。




 「さて、お薬の時間ですよ~、リョウジちゃん(・ ・ ・)は私の言う事を聞かないで寝床から出て何処に行ってたのかしらね?」




 彼女はそう言いながら俺に座薬みたいな薬を摘んで見せて、俺のあそこに指を突っ込み薬を入れる為にグリグリしだす。




 「悪い子には御仕置きが必要かしら?」




 更に、そう言い放つ。



 「勘弁してください、ただ、便所に行ってただけです」


 俺は涙目で情けない声で言い訳をするのが精一杯である。




 「なんだ、お便所に行ってたのか~。でもあちこち寄り道してたよね?


 私を担ぐなんて百年早いわ!」




 そんな、何処かで聞いたような台詞を言って勢いよく指を抜く。




 「はい、お仕舞い」




 そう言って、手を洗う束子でゴシゴシ洗う音が聞える。


 その格好から解放された俺は、また筋肉質の女性に社交辞令を言われる。




 「今日も可愛いものありがとう」




 彼女は俺の支度を直し、そう言って去って行ってしまう。


 そして、枕元に戻ってきたミリクナ医務長が冷たい表情で俺を見下ろし恐ろしい事を言ってくる。




 「リョウジちゃん? 今度大人しく寝てなかったら、永遠に寝てみる?」




 彼女は最後に脅し文句を言って、俺の寝袋をポンと叩いて去って行く。恐ろしい16歳だ。確かに電車で女子高生に汚物を見るような目で見られた事があったが、まるでそれのようだ。


 言い訳じゃないが、あの時は三日徹夜でやっと帰れた状態でぼろぼろであった俺だと。


 やがて、お腹の薬が効いてきたのか眠くなり寝てしまう俺であった。






 外の空が赤くなる頃、荷台の周囲の賑わう音で目が覚め、お腹も空きだし目を開けると氷嚢がいつの間にかおでこに乗せてあり冷たく心地よい。俺は寝袋から出ようと思い、起き上がって荷台の出口に居た人と目が合ってしまう。




 「あら、何処に行くのかしら? 先程の事はお忘れになったの?」




 「いえ、外が騒がしく目が覚めてしまって、それにお腹が空いたので何か貰おうと思いまして」




 「ああ、そうね。夕食とお薬用意するからそこに座って待ってなさい」




 そういってミリクナ医務長は姿を消す。やがて、お盆に今朝のメニューと同じ様な物を持って来る。薄暗い中それらを食べ、木のジョッキを持ち中身をみて躊躇してしまう。


 「あの~、今日のは何が入っているんでしょう? この何かが動いた気がしたのですが」




 「あ、間違った、それ生だったわ。ちょっと返して、今すぐ作って持ってくるわ」




 彼女はそう言い残して出て行ってしまう。ああ、俺はあの得体の知れないもの飲まされていたのか? せめて、乾燥したものとか使って欲しいよ。


 どう見てもあれってミミズ(・ ・ ・)だよね。俺は池の鯉か‥‥‥。でも飲まないと後が怖い。



 その後、持ってきた物は何時もの謎の白い液体で無味無臭の物である。俺はそれを一気に飲み干し、水で流し込む。すると、例の如く凄い眠気が俺を襲い、寝袋に包まれ寝てしまう。






 次に目覚めたのは朝ではなく、胸の辺りが激しい熱さに何か焦げ臭い匂いと痛みがして目を覚ましてしまう。


 多分夜中だと思うがその熱さと痛みで目が覚める俺であった。





 後編へつづく

次話は10/20夜に投稿します

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