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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
17/229

<1-16> 「年季奴隷で療養生活  (前編)」

最新の本文修正日は2014年10月22日です。

 人間、何かに秀でていると自慢したくなるもので、それが俺のような間抜けだと他人に旨く利用されて終わりのようです。


 しかし、この世界の人達はさらに特殊な能力を持っているのに、隠そうとしない人や隠そうとする人が居るようです。そんな後者の二人が私の身近に居た事に、今更驚く俺でした。






 ああ、その二人にひどい目に合わされたという事実は、忘れたくても忘れる事はできなかったですよ。






☆  ☆  ☆






 東の空が白んで回りが明るくなって来た頃、左手の手甲から伸びた真銀製の糸を編んだ組紐で縛った荒野蚯蚓(こうやみみずの亡骸3匹分を左肩に背負い、料理馬車の方に歩いてきたミリクナは荷台が綺麗になった馬車を見て頷いた。


 簡易寝具や寝袋も綺麗に洗ったようで、昨夜カルマイネが周りに撒いた白い粉の痕跡は綺麗に無くなっていた。



 肩に担いだ物を荷台に乗せ、荷台の奥に居たカルマイネに取ってきた物を見せる。しかし、彼女は首を傾げる。




 「あ、あ、あの~、こ、これ荒地蚯蚓あれちみみずです‥‥‥」




 そんな事を言われ、今度はミリクナが首を傾げてしまう。そこへ、丁度調味料が切れた為に、荷台の魔技箱から調味料を取りに来たギムネーヤ料理長が話をかけてくる。




 「おや、珍しいね~、荒地蚯蚓あれちみみずだね。どうしたの? そんなに集めて。あっ、彼氏にでも飲ますのかい? 


 ‥‥‥。そういえば。昔、旦那が生きてる頃‥‥‥。あっちの元気が無い旦那にあたしが、それと同じ荒地蚯蚓の乾燥させた物を買って来たわ。それを煎じて良く旦那の食べ物に入れてね、夜に頑張って貰ったわ! あははは」




 そう言って笑いながらギムネーヤ料理長は、目的の物を取って調理場の方に消えて行く。


 気まずい雰囲気にミリクナは耳が赤くなり、次第に顔も真っ赤になり出した。




 「で、で、でも、ミリクナ様? これはこれで強心作用もあるし、こ、こ、こんなにはいらないけど。う、う、売れば結構な値段で、と、と、取引されますよ?」




 そう話したカルマイネだが、すごすごと奥の方へ後ずさる。




 「カルマイネさん? 皆の前では『様』は無しですよと言いませんでしたか?」




 ミリクナは自分の失敗を隠すように彼女を睨む。




 「これは貴方の自由にしていいわ。但し、何処かに売るのであれば、そのお金は私の奴隷組合の口座に振り込んでくださいね!!」




 最後にそう言い放ち、冷たく微笑んでリョウジが居る馬車の方に歩いて行く。




 指揮車に向う途中、ミリクナは目眩がして足元の石に躓き前に転んでしまう。実際に目眩がしたのではなく、自分の早とちりの為に無駄な時間を過ごした事や自分の愚かさに目眩がして足元が疎かになって転んだのである。




 やはり彼女はドジッ属性を持っているようであった。




 女性達が朝食を作り始めた頃、何人かの男性の年季奴隷が起きて来て、ジョルジョネ大尉に呼ばれたようである。ゴナベル奴隷長は朝飯前に、この解体した肉の塊を部下達に指示して料理馬車の方へ運ばしていた。



 今朝、早くにジョルジョネ大尉がゴナベル奴隷長が起きた頃を見計らって、お願いしたからであった。しかし、食べ物に関した事であった為、部下に嫌がる奴は一人も居なかった。


 今日の夕食は岩猪を食べられる事が分り結局リョウジ以外全員が集まり、解体途中の肉の解体を手伝ったり、干し肉にする為に肉を切り刻んだりと、次第に熱を帯び出していた。そして、何時もの出発時間までにはほぼ解体し終わり料理馬車の方まで運び終えていた。



 そんなジョルジョネ大尉も今日は出発が遅れても文句は言わなかったし、馬車村以来、肉が沢山食える事が出来るので気にはしなかった。それにリョウジがまだ寝ていると思い、多少の誤差はかまわないとも思っていたようだ。



 「ようやく肉の解体が終わり下敷きになっていた岩猪の毛皮を運ぶ事ができる。


 これから、朝食を取り、毛皮をなめす作業をしなければならない」




 ジョルジョネ大尉は皆にそう話すと、年季奴隷数十人で皮を持ち上げ、指揮車の方へ持運んで行き、骨も残さず料理馬車の方へ運んで行く。頭部は牙や顔の皮を剥ぐ為に指揮車の前に持って行き、指揮車の横に置いた。




 そして、皆は朝飯にあり付く為に配膳の場所に列を作くるのであった。






☆  ☆  ☆






 外の活気ある雰囲気に、どうやら薬で眠らされていた俺は眼が覚めたようだ。その雰囲気というか騒音に「あ、ああ、外が五月蝿い! 今何時だ?」と文句を呟いてしまう。


 明り取りの窓からは光は入ってこない、まだ暗いのか? そんな問に誰も答えてくれないので寝袋から抜け出し、改めて指揮車に寝ていた事を思い出す俺であった。



 壁の連絡用の覗き窓の隙間から明かりが少し見えていたので、中は少し暗いが見えない事はない。体はまだ熱っぽいのか、やはり少しだるい感じがしたが、お腹が減って寝れそうもない。


 体を起こしてベットから立ち上がりサンダルを探すと、足元にはサンダルは無かったが、周囲を見渡すと端の方に置いてあった。


 それを履き外に出ようとドアを開けるが、途中で上の方が何かに引っかかり、なかなか開かない。勢いをつけてドアを押すと扉が開き、その勢いで、思わず転んでしまい立ち上がった俺は、目の前の衝撃的な光景に血の気が引いていく。




 「ああ、俺、まだ寝てるのかもしれない、これは夢なんだ‥‥‥」と、その場に尻餅を突いて、へたり込んでしまう。


 へたり込んだ俺の目の前には2m以上はある猪の頭が鎮座していて、俺を睨んでいた。ああ、なんか、これって何処かで見たような光景だよね。あえて言わないけど。


 それにしてもプイホンさんはその頭の目玉に手を突っ込み何かやっているよ!



 「あ、あ、ああ、あの~、プイホンさん? 貴方は何をやってらっしゃるのですか?」



 俺は彼に問い質すと、彼は嬉しそうに答える。




 「あ、兄ちゃん! 具合よくなったのか? まだ顔色悪いから薬飲んで寝てないと駄目だぞ~」




 「いや、そうではなくて。貴方はその右手で掴んで引っ張り出そうとしている物をどうするのかと、聞いているのですが?」




 「へっ? 食べるんだよ? これをゴダ芋と一緒に煮て食べると元気になるから、兄ちゃんに食わそうかと思って!!」




 そう教えてくれたプイホンさんは、口の髭が斜めに上がり尻尾はピンと立っている。あ~、意味が分らない。プイホンさん、その気持ちはありがたいが俺は遠慮するよ。あれを見て作った物を食うなんて、そんな肝っ玉の座った俺ではないのだよ。



 「俺の分はいいからプイホンさんが食べて下さい」



 俺は立ち上がってプイホンさんにそう言い残して、周囲を見渡す。すると、俺が寝ていた指揮車の上が何かの毛皮を剥がしたのか、毛皮の毛の部分を下にして馬車全体に掛かっていた。


 どうやら、それが引っかかって指揮車の扉が開かなかったようだ。俺が反対側に行くと数人の年季奴隷が革の裏に付いた何か白い物、脂肪? それをナイフでこそぎ取っていた。


 意味が分らない。何で俺が寝ている指揮車を使うんだ?


 俺はその場を去り、朝食を貰いに配膳の場所によろよろと歩いて行く。「あの毛皮はなんだ?」それと「何が起こっていたのだ?」と、次々に疑問が浮かんだが俺に分るはずも無かった。




 仮設食堂の方は片付けが始まって、テーブルの上に生肉らしいものを切り刻んでいたり、骨らしい大きな物を地面に置いて斧で叩き折っている男性の年季奴隷達が見える。俺は、フラフラしながら配膳を片付けている人に声を掛ける。


 「あの~、すいません。何か食べる物をください」


 俺はそう言って懇願したが、振り返って来た人物を見て、またここで驚いてしまう。そう、昨晩俺が驚いたと同時に驚いていた料理長補佐のカルさんであった。


 また声を出そうになり慌てて口を押さえる俺を見て、彼女はモジモジしながら昨夜の事を謝ってくる。




 「さ、さ、さく、昨夜は、ご、ご、ごめ、ごめんなさい」




 俺の命に別状は無かったし確かに驚いたが、その驚いた俺にも非があるような気もしてきて、何か俺が悪いような気がしてくる。


 「こちらこそ脅かしたようで、すいませんでした」


 そう言って、逆に俺の方がお辞儀をして謝ってしまう。



 その彼女はモジモジしながらお盆に木の大皿に一番最初に食べたスープらしき物を入れ、木のジョッキに入れた例の緑色した薬に、別のジョッキに入れた水を置いてくれて、最後に木製のスプーンを渡してくれる。 


 朝食を渡してきたカルさんはモジモジしながら俺に何か言ってくる。しかし、どもってよく聞き取れなかった。


 話の内容は多分こういうことだと思う。


 「テーブルは使えないから、この料理馬車の後ろの荷台でそれを食べてそこで休むと良い」


 その彼女の言う通りに、やっと朝飯にありついて薬を飲む。


 すると、また眠気がしてきて、そこにあった簡易ベットの寝袋に包まって横になり寝てしまう俺であった。






☆  ☆  ☆






 王宮の秘密部屋に居た少女も熱が下がり、10日程高熱でうなされていたのが嘘のように回復して周りを驚かせていた。


 国王は朝議の前にここに顔を出し、娘の顔を見に来ていた。丁度、朝食を食べるようで小さく切られた果物をぱく付く様子を見て目頭を押さえる。


 王后も一緒にその場所で朝食を食べていた。初めて、自分の娘と一緒の食事であり、時々嬉し涙を上等な手拭で拭いている。そして、彼女らに声を掛けるのではなく、黙ってその様子を見ていた国王である。



 その様子を見ながら国王は思う。


 「王宮の妃の中にも国王の娘も居たが、その妃の娘はもう既に王家八家門の一つに嫁いでいた。それに、正妻の娘はこの一人だけであって、一際感慨深いものがあり話は別である。


 今度も、自分の娘を手放す事を考えると胸が張り裂けそうになるが、公人の自分には私情は挟めない」



 最後にそんな事を自分に言い聞かせながら国王は今日の朝議に向う為、この部屋から出て朝議の間に足を運ぶ。






 やがて朝議が終わり、執務もさくさくと終わらした国王は、娘の部屋に来て寝具の隣に置かれた椅子に座り、娘の顔を眺めていた。


 すると、娘は目を明け、起き上がろうとする。慌てて手で押さえようとした国王であったが、彼女と何か会話をしようと話しかける。




 「もう起きて大丈夫なのかい? 我が娘よ。」




 彼女のおでこに手を当てて体温を確認する国王であったが、すっかり熱が下がり普通の温度になったおでこに安堵の表情を浮かべる。



 「うん、父上様、さっきも果物を頂きましたの。それに何日も寝ていたから飽きちゃって」



 そう言って、舌を出した娘にグッと来る国王である。あの事を今話そうかと悩む、その悩んだ父親の顔を察して娘の方から話を切り出してくる。




 「父上様~、私。何か、体の肌の色と髪の毛の色が変わりましたの。先程手鏡を見せて貰って驚きましたわ。だって、父上様と同じ瞳の色なんですもの!


 それに顔と髪とお肌は母上様の生き写しのようなんですもの。私。いったい、どうしちゃったのかしら? ‥‥‥。でも前の姿も好きでしたよ。


 あれは、四ヶ月ちょっと前かしら。双子月が両方満月になり夜空に上った時にね。私の頭の上のここからね、土兎のような耳が生えましたの。そして、なんだか体中が熱くなって着てる物を脱ぐと驚いたわ~。


 だって、胸の上から足の先までびっしり茶色い毛が生えて、尻尾まで生えたのよ父上様~。


 そしてね、なんだか浮き浮きしちゃって、お外に出たくなりましたの。窓を覗くと、ここは結構高い所なのは分っていたけど、なんだか大丈夫なような気がしてね父上様! ピョンと降りちゃった。そしたら、地面に落ちてもなんとも無いのよ! 本当に驚いちゃったわ!


 するとね。何処からか、誰かが私を呼んでいる声がして『行かなきゃ』って、何故かそんな気がしてね。でも、私はお城から出た事ないし、塀も高そうで飛び越える事が出来るか心配になっちゃってね。不安だったけど、しゃがんでピョン! と、跳ねて見たのよ父上様!


 そしたらね、ちょっとしか跳ねてなかったけど、あっという間にお城の塀が下のほうに見えてわ。私、楽しくなっちゃって何度もピョンピョン跳ねちゃってね、凄く楽しくて誰かが呼ぶ所まで跳ねて行ったのよ‥‥‥。凄いでしょ、父上様~」



 先程からうんうん頷いて話を聞いている国王の隣に、いつの間にか王后まで隣に椅子を持って来て娘の手を握り話の続きを聞く。そんな娘の目を見つめ、話を聞く二人であった。



 「それでね、今度は、誰かが、私に地面に絵を描いてごらんって言うから、ピョンピョン小さく跳ねながら棒切れで地面に絵を書いたのよ。


 出来上がって嬉しくなってその絵の周りをまたピョンピョン跳ね回るとね。棒切れで書いた線が光って。私ね、驚いちゃった。今度は上から見ようと思ってねピョンって跳ねたの。空の上から見下ろすと、とても綺麗だったわ~、父上様~!


 それでなんだか疲れちゃって、空からそのまま落ちたと思って目を瞑ってね、暫く経っても何とも無いし、不思議になって目を開けたらここのベットに寝ていたのよ。するとね、さっき生えてた耳や尻尾と体の毛が消えちゃって夢かと思って悲しくなっちゃったの。


 でもね、うふふふ、その後一月半ぐらい経ったかしら? またね、夜空に双子月が昇る頃ね、体がまた変わって同じ土兎のように変わったわ。そして同じようになんだか浮き浮きしちゃって、また窓から飛んじゃった。楽しかった~。


 だって、お外なんて出た事なかったし、お城の外になんか見た事もなかったもの。ここにある絵本や図鑑に有る世界が見れたわよ。


 二回目もね、同じように地面に絵を描いたのよ~。あれも綺麗だったわ~。最初は緑の色で、その時は赤色だった~。最後のは真っ白で凄く綺麗だったな~。


 でもね~、父上様。最後の綺麗な絵を見ていたらね、何処からかまた声がしてね『これで最後だよ。お疲れ様』って言われて、なんだか哀しくなっちゃたわ。だって、もうお外に出る事も出来ないと分かっちゃったから‥‥‥。


 それで哀しくなっちゃって、そこで眠ったの。すると、眼が覚めたら横に『母上様』って人がいてね。私、驚いちゃった。


 だって、父上様は私の母上様は亡くなったって言ってたから、私どうしていいかわからなかったの。でもね、私、自分の姿を手鏡で見せて貰って安心したわ。だって、母上様と私はそっくりなんですもの! だから、私は『母上様』って呼んだのよ!」




 そう言って娘はニコニコしながら父の顔を見る。そして、母親の手を握り返した。




 「母上様~!」




 突然、娘は母の胸に飛び込んだ。王后は驚いて彼女を抱きしめまた涙する。その抱き合った二人を包み込むように上から父親の国王が二人を抱き締めた。やがて、父である国王は決心したようでそっと話出す。




 「あのね、わが娘よ、良くお聞き。そなたは体がすっかり良くなり、立って歩けるようになったら外の世界で生活出来るのだよ!


 もう、この国にそなたを『王家の血の呪い』と呼ぶ者はいないし、これからは自由に生活出来る。でもね、この父はこの国の王でここからは出ては行けないのだよ。


 そなたは呪いが解け普通の娘になれて。これから、外の世界に出て。そうだな~、子供達の先生になるのはどうだい? 子供達にそなたがここの本で学んだ事を教えるのはどうであろうか? 子供達からは外の世界の事を教えてもらうのも良いと思うな~」




 すると、王后の顔が一瞬固まる。そして、泣き出しそうになり、その顔の口を国王が右手の人差し指で静止した。



 「それでね、偶にそなたの母がそこに慰問しに行くそうだよ。どうだろうか?


 この父は会いには行けぬが、そなたの様子を見守っているから安心して良いのだよ」




 国王がそう言うと王后は目じりを下げ、うれし涙を流し始めた。




 「その代わり、もう二度とこの王宮には足を踏み入れる事は出来ないかもしれないけど、許してくれるかな? わが娘よ!」




 その言葉を言い終わると父親の顔に戻った国王の眼から一筋の涙が流れて彼女の布団の上に落ちる。そして、娘の顔をじっと見つめる国王であった。




 娘はその父親の顔を見て、自分の手で彼の涙を拭い、こう切り出した。




 「私は、新しい人生を歩んでその子供達の先生に挑戦して見るわ父上様! まだ体は治りきっていないけど。治ったら私、そこに行って先生をやってみたい! でも、父上様! お別れの時は必ず見送りに来てくださいね!」




 そう言って、父親の国王を抱き締める娘であった。



 父親の顔になった国王はうんうん頷き、更に娘を抱き締め、国王は娘の頭を撫ぜてまた涙を流しだした。そんな一時ひとときが過ぎると思い出したように国王はこう話す。




 「ああ、そうだ、肝心な事を忘れる所だったよ。そなたに新しい名前を授けないとね。一応考えてはいるのだが。后にも、そなたにも聞かぬといけないと思ってね。どんな名前がいいか考えてみるかい?」




 父親の顔をした国王が二人を見て、様子を伺うと、二人は声をそろえて「「父上様の仰せのままに」」と、一言だけ言い、彼の眼を見る




 「では、出発の日に新たな名を送り旅立ちの餞と致すか。楽しみは最後にしないとね!」




 そういって国王は、はにかみながら片目を瞑る。そして、彼女らの手を握る父親の顔をした国王であった。




 「では、我は仕事があるからそなた達二人で、沢山話をすると良い。だけどあんまり遅くまでは体に障るから、様子を見てな!」




 最後にそう言い残し、いつの間にか3人の世界になっていた部屋を出る。




 部屋の外には、侍医長と医務官が廊下で待機していた。



 国王は彼らに「暫く、二人にしてやれ」と、命じこの場を離れ、自分の執務室に向って歩き出した。そして部屋に入り、自分の執務机に着くと直ぐに奴隷組合の組合長が入ってきて、国王に一礼して報告を始める。




 内容は、娘の行く孤児院の準備が整い、何時でも受け入れる事が出来ている事と、リョウジが熱病で倒れたが今は安静にして熱も下がり、順調に回復しているという事であった。


 その報告を聞いた国王はため息を付き「なかなか旨く、行かないものだね~」と、一言を組合長に漏らし机に突っ伏して両腕をバタバタする。


 そして、起き上がり、「さて、次の問題は何だっけ?!」と、組合長に問い掛ける国王であった。






☆  ☆  ☆






 そんな感動的な親子劇場とは無縁な俺は、また例の違和感で眼を覚ましてしまう。


 「あ、あああ! この感触は、またですか? 医務長!」


 思わず声に出して目を覚ました俺は、下腹部の違和感に嫌悪する。彼女は俺の大事な部分に指を突っ込み何かグリグリしているようで、その度に変な声が出そうで、苦しい。


 やがて、それが終わり開放感と共に俺の膝を押さえていた人物と目が合った。また、筋肉質の彼女であった。俺が目を覚ましたのを確認すると、ミリクナ医務長に俺が目を覚ました事を話しだす。




 「あの~、彼が目を覚ましましたよ?!」




 「ああ、分っているわ。だって私の事、言ってたもの。お目々が覚めましたかリョウジさん! まだお熱が冷めないのでお腹の中に直接お薬入れましたよ~。もう大丈夫ですからね~」




 そう言って、ミリクナ医務長は俺のおでこに手を当てるが、俺は気になってミリクナ医務長に聞き返してしまう。


 「あの~、その手は洗いましたよね?」




 「ああ、ごめんね~。まだだったわ。今洗うから動かないでね~」




 そんな事を言われてしまい、俺はげんなりしてしまう。そして、俺の膝を下ろして黙って身支度をしてくれる筋肉質の彼女にお礼を言う‥‥‥。




 「偶に可愛い物、見みないとね!」




 お礼を言った後に、そんな事をいって俺にウインクをする彼女は、最後に俺の寝袋を直して荷台から出て行ってしまう。


 俺の聞き間違いであろうか? 確かに再び聞いたような‥‥‥。



 その「可愛い物」という言葉にダブルショックを受け、その彼女の後姿をただ見守る事しか出来なかった俺であった。




 中編へつづく

次話は明後日10/18の夜に投稿します

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