<4-16> 「彷徨う年季奴隷 (中編)」
最新の修正日は2015年1月23日です。
瞑想していたつもりが何時ものように例のあの白い空間に来てしまい、そこにあった資材のようなもので何となく心のファイアーウォールを築き始めた俺ですが、色々と考えさせられる事がおおまかに三つ程あるようです。
最初の一つは、あの空間にいる時間の流れとこちらの現実に流れる時間との時差のようなものがあるようで、向うには余り長く居る事が出来ないという事である。
もう一つは、心のファイアーウォールのおおよその外観のようなものを描いてみたが、その作業工程や人員の把握など考える事が山ほどある。
最後に、その非現実空間の事だけではなく、現実世界の事も色々と連動して考えないといけないという事であった。
そんな私的な問題を含めて更に問題事が起きているようで、その現実世界で再び合流できた奴隷旅団所属中隊の後を追うように何者かがこの中隊を追跡しているという事であった。
しかし、その追跡者の排除は行われるようで、その排除が失敗すると何故だか皆が複雑な表情をする内陸部へと進路を一時変えないといけないということらしい。
そんな事で、一体内陸部に何があるのか気になる俺であった。
朝食後の片付けの後、この指揮車にやって来たジョルジョネ大尉がシャムネアお嬢様に話す内容を俺は日記を書きながら聞いていた。
その話を聞きながらもあの白い空間での心のファイアーウォールの作成行程を考えていた俺は嫌な雰囲気の彼等の会話を小耳に挟む。
皆一様に内陸部へと一時追跡者を撒く為に向うと話した後の嫌な雰囲気。一体何があるのか解らないがつい気になって彼等の会話に割り込んでしまう。
「あの~、内陸部に何かあるのでしょかね?
‥‥‥。いや、皆さんなんか嫌な雰囲気だったのでつい聞いてみただけなのですが」
「あ~、‥‥‥。ま~、その。なんだ。なんていっていいのか‥‥‥」
なんだかジョルジョネ大尉の歯切れが悪い。はっきり言えば良いのに‥‥‥。嗚呼、ひょっとして魔獣の巣窟とかそういうのか?
「まさか‥‥‥。魔獣がごっそりいるとかですか?」
「いや、魔獣は大したものはいないのだが。なんていうか、その。まあ心配するな、大した事じゃない。さ~っと、通り抜ければ問題ないし。運が良ければ問題ないはずだ!!」
なんとも答えにならないジョルジョネ大尉であるが、何時ものようにあのいやらしい顔つきで額に汗が浮いている。すると、ため息をするお嬢様。
「はあ、妾はあのごちゃごちゃ感が好きではないのだが‥‥‥。それはもう、うじゃうじゃも嫌いだし。第一あいつ等何考えているか解らないからの~‥‥‥」
そういって、両手を顔に向けてわしゃわしゃと掴むマネをするシャムネアお嬢様を見て、何となく嫌な予感がして来る。確か御者親子の親父が俺を脅してきた時のことを‥‥‥。出るのか? 出るのか?
虫系はまるで何処かの偉い人が呟いたように「戦は数だよ!! 兄貴!!」と、そんな台詞が浮かんでくる。虫系は数で襲ってくるのがセオリーだよね。俺がそんな事を考えているとジョルジョネ大尉が続けて話し出す。
「そんな心配そうな顔するな! あの煙を炊けば寄ってはこないし、それに街道は虫の巣から結構離れていて問題は無いぞ?
確かにあの街道を作る前は何百人も犠牲にはなったし、あの森人も避けて通るほどのものではあったがな!
今は虫除けの煙もあるし、何より気象結界や防御結界という装備が出来てからはあの街道は問題ないぞ?」
皆の不安そうな顔を払拭する為なのか自信を持って不安の払拭に努める彼であるが、その彼の努力に対して無駄だというが如くボソッと呟く声がする。
「でもね~、今回はリョウジがいるからね。虫がどんな反応を示すかは予測は出来ないわよ?!
例の魔石の件もあるし、追跡者が態とあの密林に私達を誘導しないとは限らないわよ?!」
そんな事を言ったのは前の席で腕を組んで座っていたミリクナ医務長であった。若干小声だったのでジョルジョネ大尉は苦笑いというか顔を引きつらせながらもその言葉は聞かなかったという風に受け流し、引き続き話し出して無理やりこの話を終わらすようだ。
「っと言う事でして、いや、何。この指揮車の中に入ってさえいれば問題は無いですよ?
それに西の密林地帯は通り抜けるだけでまた直ぐに海岸沿いの幹線道路に戻りますから。
いや~、なんでこの大陸の西側はこういった地形なのか分からないのですが‥‥‥」
最後にアラレスティ大陸の地形に文句をブツブツ行ってこの指揮車から出て行くジョルジョネ大尉であった。彼が出て行った後に皆がため息をする。
「なはは‥‥‥。大丈夫ですよねシャムネアお嬢様?
私が聞いた話ではこの拳大の大きさのものが跳んでくるといっていましたが‥‥‥」
そういって自分の拳を目の前に出して眺める。すると、怒鳴るような感じで俺の後頭部、前の席の方で声がする。
『馬鹿か、おめぇ?! 西の密林に出てくるのは人族よりでぇけぇぞ!! 二メト以上有るのがゴロゴロだぞ?! だから開拓は愚かあの森人でさえあの密林には住んではいない。若干奴隷から逃げた獣人の末裔が集落を作ってるだけだったような‥‥‥。そうだったよな、ペル?』
そういわれたので慌てて立ち上がり前の席に振り返ると、直ぐにペルジャーネ先生に変わった彼女が俺を見る為に振り返る。
「まあ、そんなのはごく稀でそこらじゅうにいる訳ではないわよ、リョウジ。一番厄介なのは数が多い虫系ね。運悪く彼等の縄張りに入ると酷い目に会うわよ。忘れたのデウシー? 確か何年か前に密林に魔素道具の材料を探しに分け入った時、貴方が踏み抜いた倒木の中に‥‥‥。今、思い出しただけでもゾッとするわ!!」
「はあ、そういえばジョルジョネ大尉が最後に文句めいた事を言っていたようなのですが。普通の地形と違うのですかね?」
「ああ、ここら辺は海岸付近は切り立った崖になっていてね。ゴルムディアから南に千メタほどこういった海岸線になっていて、その切り立った崖の上というか内陸側五百メタ以上に渡って密林地帯になっているの。
確か‥‥‥。大陸消失事件までは至って普通の森林地帯だったのだけど、あの回廊大陸が無くなってから何故だか生える木々の種類が代わっちゃって。それと雨の降る量が増えたのも有るかもね」
そんな話して前の席に振り向いてしまう。そんなペルジャーネ先生は一瞬俺の目の前の席に座っているシャムネアお嬢様を見たのは気のせいか?
その彼女の目線に、つい吊られて俺も振り返ってお嬢様の顔を見てしまう。
すると、お嬢様は若干目が泳いで視線をそらすではないか。横に座ってラシャネスさんは相変わらず済ました表情であるのだが‥‥‥。心当たりがあるのか?
そこで、代わりに詳しい話というか補足のような説明をミリクナ医務長がしてくれる。何でも回廊大陸が消えてから100年ほどは普通の森林地帯や草原だったのだが徐々に気候が変わって降雨量が増えたのと気温が上がり始めてからそれまで草原にあった開拓村が次々に密林に飲まれていくようになったそうだ。
まあ、何処かで聞いたことがあるような話ではあるが気象の変化によって植生が変わったらしい。多分あの回廊大陸が消えて海流が変わったのかもね。そのお陰で気象変化が起きたのかもしれない。
それにしても森人でさえ嫌う密林というか、そのジャングルを想像するとなんだか背筋が寒くなってくる。更に虫の親分みたいなのがわんさか沸いてくるのを想像してしまって、俺は身震いしてしまう。
続けてミリクナ医務長が言うにはその密林に飲まれた村の末裔、主に奴隷であった獣人の末裔が密林の中で集落を作っているらしく、密林を突き抜ける新しい道は主な集落、昔開拓村付近を通っているという事であった。
それに密林の奥地は前人未到の地でまだ調査が最近始まったばかりでその密林の中の動植物など詳しい事は分かっていないことが多いということであった。
密林の中に点在する集落の中には未だに人族を毛嫌いというか恐れて姿を現さない種族もいるらしく不用意に密林の中に入らないようにと、密林の中の幹線道路に入ったら決して外には出ないようにと、彼女から念を押されてしまう。
若干好奇心で馬鹿でかい虫を見てみたいと思った俺であるが‥‥‥。彼等は野生というか、本能のままに生きているよね。そんな虫によってか弱い俺なんかは真っ先に襲われそうでそんな考えを捨ててしまう。
それにシャムネアお嬢様が言っていた「彼等は何を考えているか分からん」と、いう事を思い出して絶対外には出ないと心に誓う。
心の中で誓った所で指揮車は静かに動き出す。やがて何かに乗り上げたかと思うと速度を上げて何時ものようにギシギシと揺れてその音だけが指揮車の中に木霊する。
早速指揮車が安定して動き出したので昨日と同じように瞑想する仕草をして五感を閉じる努力をする。最初に目を瞑りあの場所を思い浮かべて‥‥‥。気が付くとあの白い空間に佇んでいた。
まあ、慣れてくれば直ぐにこの空間というか、自分の脳内空間というかその場所にこれたようだ。いつもなら何も無く真っ白な空間であるのだが‥‥‥。若干心地よい風が何処かから流れて、更に水の流れるというか小波打った感じの波の音が聞えてくる。
確か目が覚めてから現実の時間では3時間も立っていなかったはずでこちらの時間では半分の一時間半も立っていないと思うのだが‥‥‥。佇んでいた場所は真っ白い何時もの空間であるが後ろを振り返って腰を抜かしてしまう。
振り向くと海が出来ていた。まさかと思うが波打ち際に足を運んでその水を漉くって舐めて見る。塩辛くなくいたって普通の水であった。何故ゆえに俺の脳内空間というか心の中というかこの場所に海? 意味が解らない。
その場所に唖然として佇み周囲を見回す。驚く事に波打ち際を境に真っ白な空間が続いている。そして、海というか湖というか、その水面の彼方に島のような大陸のような物を発見してしまう。砂浜はこち裏側からは見えないが、今見えているのは切り立った崖に櫓らしい建物がちらほら見える。
崖の上のほうに小さい人だかりも見えて何やら蠢いているのが窺い知れる。若干、昨日の事を思い出す。確か某地中海を睨む要塞の事だ。今見ている光景はその物であるが若干まだ工事が進んでいないようだ。
暫く蠢く点を見つめていたのだが‥‥‥。まさか泳いであそこまで行くのか?
嗚呼、自慢じゃないが俺はチキンでカナヅチ。泳げない事は無いが犬掻き程度でそれも5分と泳げる自信は無い。
そこで一応というか試しに水の中に入ろうとすると不思議な事が起きる。先程は水を漉くって味見できたのに今度は足が水に沈まないではないか。そのお陰で一歩、また一歩と足を進めるとブヨブヨしてまるでウォーターベットの上を歩いているようだ。
え~、偶々。以前の現場にあったモデルハウスに置いてあったウォーターベットに触っただけで、決してHなホテルに泊まって使ったわけではありません。
そのフワフワとした水の上をゆっくり歩いて行き、水際と島の中間地点にやっと辿り着いて小休止していると、突然ドラの音が響いてリズムに乗った太鼓の音がドンドンと鳴り始める。
一体何が起きたのか理解に苦しむ俺は周囲を見回し島のほうから何かがやって来る光景を目撃してしまう。どうやら太鼓の音はあの船というかガレー船から聞えてくるらしい。
太鼓のリズムに乗って舟の横から伸びている長い櫂が上下に動いて見える。その光景を唖然として眺めていると、段々その船がこちらに近付いて来ているようで嫌な予感がして来る。
そんな事なので、俺は慌てて船とは逆の方へ走って逃げることにする。とはいえ、足場がふにゃふにゃで思うように走れない。もがくようにその場から逃げる俺を嘲笑うかのように太鼓の音のテンポが若干早くなって段々音が大きくなって俺の方に近付いてくるではないか。
とうとう、追いつかれてしまい俺の方にやって来るガレー船の船先からヒョコリと猫が顔を出す。嗚呼、プイホン1号が船頭をやっているらしい。俺は思わずその顔を見てひと安心してしまう。
安心すると、現金な物で俺は思わず大きく手を振って舟が近付いてくるのを待つ事にする。船は俺の側に近付いて来ると速度を落とし始め、待つこと10分ほどで俺は無理やり手鉤で背中のジンベに引っ掛けられて舟に引き上げられる。
随分乱暴なやり方に段々腹が立ってくるのだが、何かがおかしい。周りのネコさんが「ニャー、ニャー」と、言って言葉が通じないばかりか、プイホン一号だと思っていた船頭も同様で俺をロープで縛り上げ「ニャー、ニャー」と、言って何を言っているのか分からない。
普通の状況であればこれはご褒美の部類に入るはずで、この世界というかアラレスティ王国に来てやっと立って歩くネコさん達から「ニャー」の言葉を貰う事ができたよ!!
いやいや、違うでしょ? 今は何故だか俺が縛り上げられて責め立てられているようなシチュエーションだろ?! と、そんな状況に突っ込みどころ満載である。
そんな訳も解らず困惑する俺を無視して船は進みだす。船頭の掛け声「ニャー」の声で俺を見る為に集まっていたネコさん達が自分の持ち場に戻る為なのか甲板から船底? その甲板下に戻って行くようだ。
暫くして準備が出来たようで再びドラの音が響き、リズムを取る為の太鼓の音が鳴り響く。俺は船の甲板らしき所に縛られ、放置されたまま船が進むようだ。
放置させられたのでその場を逃げようかと思ったが、しっかり監視がいたようで縛っていたロープを引張られて甲板を舐める事になってしまう。今度は俺が動かないように俺の背中の上に腰をかけて「ニャーニャー」と、先程のネコさんが何か言っているではないか。
なんともいえないその現状に諦めてなすがままにしていると、どうやら陸地に着いたようで何かに乗り上げたように船が揺れる。暫くして止まるとワラワラと甲板下からネコさん達が上がって来て俺を担ぎ上げて船から降ろすようだ。
そのまま担ぎ上げられて何処かへ連れて行かれるようで。嗚呼、こんな風景何処かで見たことあるような‥‥‥。嗚呼、奴隷旅団所属中隊に連れてこられた時に見た風景だよね。
そんな事で運ばれる俺は頭を地面の方に下げながら周りの風景を確認する。逆さで見える風景は何処かの建物の中に連れて行かれる風景で、建物の中に入り長い廊下の先、牢屋のような所に投げ入れられると体を縛っているロープを解かれてワラワラと俺を担いできた猫さん達が牢屋から出て行く。
一人取り残されて俺は慌てて扉が閉まる前に外に出ようとしたが無駄であった。外に出る寸前で扉が閉まってしこたま額を打つ。通常であれば刺激的な苦痛なんかがこの世界で起きると目が覚める気がしたが、いつまで立ってもそんな事は起きなかった。おでこを撫でながら少し考える。
嗚呼、確かに要塞を作る為に人員を増やそうと考えてはいたが‥‥‥。それに周辺を海のように水面にして真ん中に要塞を作るように考えてはいた。あの水面は侵入者の発見の為に探査術の事を思い出して考えていた。
その他、色々と考え‥‥‥。確か、そう。現実の世界に戻る時にコタツの上にラフスケッチとして考えていた物を置いて戻ったのは事実である。
まさかプイホン1号が俺のラフスケッチを参考にここまで要塞化するとは思っていなかった。それも短時間にである。人員は一体どれだけ増やしたのかは気になるが‥‥‥。
後から作ったネコさん達は俺の顔を見た事無いから、きっと侵入者として今の待遇の結果なんだよね? 顔写真でも作って置けばよかったのか、ご主人様として‥‥‥。
そんなあほな事を考えていると、誰かが牢屋の外の廊下を歩く気配がする。ガチャという音がして牢屋の扉が開くと、先程のネコさんがワラワラと入ってくる。
良く見ると、どいつもこいつもチョッキのような物を着て、ズボンに革靴の出で立ちに腰には小剣らしき物を下げている。それに頭にバンダナを巻いた奴や若干数名偉そうに三角帽を被ったネコさんが他のネコさんをかき分けてやってくる。
周りのネコさんは相変わらず「ニャー、ニャー」と、言って話にならないがその海賊映画に出てくる提督が被っているような三角帽を被ったネコさんはどうやら違うようだ。俺の尋問が始まるようでそのネコさんが口を開く。
「侵入者め!! 何処からやって来た?! 何の為にやって来た?!
ここは神聖なるアサガ・リョウジ様の領域ぞ?!」
やはり、下っ端のネコさんは俺の顔を知らないのか、本人を目の前にしても分からないようだ。
「いや~、そのですね。一応、私の名前もアサガ・リョウジと言いましてね。
プイホン1号さんは何処にいるのでしょうね?
彼に聞けば分かると思うのですが‥‥‥」
俺の言葉を聞いた三角帽のネコさんが一瞬たじろぐ。小声で下っ端のネコさんに耳打ちして急いで何処かに駆けて行ったのはその下っ端のネコさんであった。そのネコさんを目で追いながらも油断はしないようでしっかりと牢屋の入り口を塞ぐネコさん達は俺を見る。
どれだけ待ったか分からないが、廊下のほうが騒々しくなり始めてネコさんをかき分けて見た事の有るプイホン一号が同じような三角帽を被ってチョッキには金刺繍なんかしてあって一番偉そうな格好でやって来るではないか。
じっと彼の服装を眺めやがて顔へ、俺と目線が合うと僅かにハッとなってその偉そうな格好をしたプイホン1号は目が泳ぐ。なかなか高機能な仕組みで俺がこいつを作った時はこんなお茶目な機能はなかったような‥‥‥。そんなプイホン1号は行き成り咳払いをしたかと思うと徐に皆に説明するように演説を始める。
「この方こそ我らが主人アサガ・リョウジ様で在られる。
皆の者、頭が高い~‥‥‥」
その言葉で牢屋にいたネコさん達だけではなく廊下で牢屋の様子を窺っていたネコさん達も一斉に平伏する。若干野暮ったいというかテレが入って頭をかきながらプイホン一号の腕を引張り小声で事情を聞きたいと話しかける。
「では、ご主人様。お部屋へとご案内致します」
プイホン1号がそういうと皆が壁際に寄って道を明け始める。小声で「あれがご主人様?」と、疑問系で囁く声が聞える。ああ、確かに威厳の様な物は無いのは明らかである。ええ、確かに威厳は在りませんよ。
声で囁くのはどうも指揮官クラスで三角帽を被ったネコさんが主に囁いて、他のネコさんは「ニャー、ニャー」と、訳の分からない事を囁いていた。
そのネコだかりの廊下を歩いていく途中、こんな牢屋なんか書いた記憶が無いのだがと自分の書いたラフスケッチの事を思い出す。すると、前を歩いていたプイホン1号が話し出す。
「ご主人様が侵入者を排除せよと仰せになったではありませんか? それにご主人様がお残しになった絵図面を参考に致した次第でして。後はおいら、じゃなくて私めが考えた次第であります」
嗚呼、考えれば分かる事だが、ここは俺の心のどこかである。俺が考えている事なんかは丸分かりという事らしい。その答えに彼は頷く。
それにしても廊下をくねくねと歩かされ、階段を上ったり降りたりと何処をどうやって歩いたのかは自分でも分からなくなる。
やがて見た事のある梯子の前にやって来たかと思うと「先に上がって下さい」と、お願いされる。その梯子を上がると一番最初に作ったあの四畳半の部屋であった。
コタツの中から体を出してコタツに着くとコタツの上に図面が多数広げてあるではないか。その中の図面の一枚に視線が釘付けになってしまう。
おおまかなこの島の図面のようで島の形は六芒星で何処かで見たことがあるような要塞の形で、その周りに海のような堀が円状に広がっている。
正確な大きさは書いては無いが結構大きな広さなのは間違いない。縮尺が描いていないのと比べる物差しが何処にも無いので大きさは分からないが、外観というか外から見た大きさからは相当大きい事だけは分かる。
よくもまあ、これだけのものを短時間に。それにあの「ニャー」しか話せないネコさんも気にはなるのだが‥‥‥。別にネコさんでなくても良かったのだが自分の趣味には抗えない。
それにしても下っ端のネコさん達をどれだけ作ったのか気になるし、制御出来るのか分からない。嗚呼、自立型なのかもしれないね。複雑な会話が出来ない代わりに兵隊としては優秀なのかもしれない。それに一応は烏合の衆を纏める下士官のような人語を話せる奴は居るようなので俺との意思疎通は問題ないかもしれない。
等と考えているのだが‥‥‥。一向にプイホン一号はこの部屋に入ってこない。何処行ったのか気になるがコタツの上の図面の方が気になってそれどころではないのだが、気にはなるよね?
しかし、今はこっちのほうが気になるので、再び図面をざ~っと読み解く。この要塞の構造を見ると結構な階層があってこれは所謂一つのダンジョン的な構造のように思える。階層を数えると100階近くあり一度迷うと出られるのかは俺には分からない。
計画的なものもあって階層の中段ぐらいに要塞砲と書かれたスペースに視線が行ってしまう。一体何を考えているのか分からないが要塞砲とは‥‥‥。まるであの映画のようだ。
上部構造は指令所や見張り所それに対空砲(計画中)と書かれた文字が見える。下部は兵舎だったり食堂? そんな意味が分からないものや、地下迷宮といったお約束のものまで多種多様で見ていて飽きない。
海岸線には各種トラップに地雷や機関銃座(計画中)など外部からの侵入者に対しての供えは万全なようだ。終いには常備艦隊駐留所(計画中)まであってこれはあれか?、あれなのか?
そうすると、敵に東洋系の策士がいて‥‥‥、以下省略。
次から次へと図面を捲って行くと唖然としてしまう。しかし、一向にプイホン1号が戻ってこないので思わず気になってしまい、コタツの中の出入り口から外の様子を見に廊下に出てしまう。
コタツ下の梯子付近には彼は居なかった。廊下を余り徘徊すると迷った時は大変だが、俺は思わず一歩踏み出し廊下に出てキョロキョロしてしまう。
すると、何処かと奥のほうで半鐘のような鐘の音が鳴り響いて、廊下を走り抜ける音も何処かから聞えてくるではないか。
その物音に一体何が起きたのか気になる俺であった。
次話へつづく
もう少しの間、週一になりそうです。
次話は5/21水曜日の投稿予定になります。




