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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第4章 振り回される年季奴隷 》
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<4-15> 「彷徨う年季奴隷  (前編)」

最新の修正日は2015年1月22日です。

 シャムネアお嬢様等に心の中を読まれないように瞑想をしているかのようなジョルジョネ大尉等の姿を見て同じように瞑想をする俺ですが、何故だかいつも夢で見る白い空間に来てしまったようです。


 しかも、その空間には建築資材のようなものまで置いてあり、敷地には建築告知板のようなものまで建ててあった。そんな状況に呆然とするが、根は建設関係者。なんだかやる気が起きる俺であった。






 先ずはラフスケッチを書いたがどう見ても資材が足りないし、それに描いた物を一人で作るには大変な気がしてくる。最初は建物のつもりでラフスケッチを書いたのだけど後半というかさまざま考えた挙句、心のファイアーウォールをこの場所に作るのだと考えに至る。


 しかし、これらの材料を見渡しレンガ壁ではたいしたものを防げないよう気がして困惑してしまう。ファイアーウォールならば一番最初に浮かんだのがどこかで見たアニメであった。確か、侵入者に対して攻撃をしかけたり排除。更には逆進入して相手の懐に潜り込んで侵入者を撃退したような‥‥‥。



 今見えている材料からはそんなものが作れるかは分からない。今ある材料からすると取り敢えずは敷地の中心を取り囲んでファースト防御壁を作成するくらい出来るか‥‥‥。


 当然、そこは俺の居城であり最終防衛ラインである。普通はそこを中心に壁を広げていくべきであろう。そして、まるで迷路のように壁を積んでいくのがセオリーだよね‥‥‥。しかし、そんな単純な作りでいいのであろうか?


 俺はチキンハート。その俺が安心できるとしたら‥‥‥。第二次大戦中、某地中海を睨んでいた要塞のようなものでないと安心できない。


 それにそんな要塞のようなものを先ず俺独りでは運用など出来ない気がしてくる。かと言って、まさか俺の中に潜んでいる人物の手を借りるわけにはいかないし‥‥‥。単純作業をするロボットのようなものがここでは作れないのかな?



 そこで、なんとなくプイホンさんのような立って歩くネコさんをイメージして足元の床を粘土の様に盛り上げて形作る事にする。驚く事に、最初は硬かった地面であったが、なんとなく柔らかくなって形作る分ぐらい集める事が出来てしまう。


 そして、集めたそれをなんとなく纏め形ができて来ると、今迄白い粘土であったものが急に色づいてプイホンさんと同じ赤茶虎模様が浮き上がって来るではないか。嗚呼、やれば出来るものだね‥‥‥。さて、これをどうやって動かすのであろうか?


 色づいたプイホンさんと同じ様なネコさんをつんつん人差し指で突いてみたり、周りを歩き回ってスイッチを探してみる。嗚呼、やはりここは尻尾を引っ張ると動くのがセオリーのような気がして尻尾を引っ張ると、閉じていた瞼がパチリと開いて瞳が俺のほうに向くではないか。どうやら動いたようだ。



 いざ、動いた後に考えるのだが‥‥‥。果たして、言う事を聞くのか? 鳥や猫の子なら刷り込み効果で親と認識しそうに思えるのだが‥‥‥。


 動いたそれは目を開け、瞳はじっと俺を見つめる。やがて、首を傾げ始めたので試しに安直な名前を付け、命令してみる事にする。


 「お前の名前はプイホン一号だ!! 俺の命令(・ ・ ・ ・)に忠実に従う下僕一号である!! お前の仕事は私の仕事の手伝いと、ここにやってくる侵入者の排除である。理解できたか?」




 「オ、オ、オイラ、プイホン1号!! オイラは俺の命令(・ ・ ・ ・)に忠実に従う」




 「いや、俺ではなくリョウジ、アサガ・リョウジの命令に忠実に従うのだ!!」




 「オイラ プイホン一号!! 俺でなくアサガ・リョウジの命令に忠実に従う!!」




 なんとなく前世紀に出てくるロボットアニメのようだが贅沢はいえない。最初の人工AIも赤ん坊のように大した事はできなかったような‥‥‥。たぶん、今このプイホン一号も大したことは出来ないと思う。一つ一つ行動をインプットして行く必要があるのかもしれない。


 「プイホン一号! 資材をあの場所に運べ!」


 そういってレンガのような資材を自らも抱えながら先ずは最初の壁を作る為に資材置き場から壁を立てる為の予定の場所へ運ぶ。


 最初は俺の行動を見ていた彼。う~ん、彼と呼んでいいのか分からないがその彼はものの見事にレンガ一個を抱えて運び出す。お約束の出来事に別に問題はないのだが‥‥‥。その姿が可愛かったので一先ずその光景を目に焼き付ける。


 その彼は一端運んでいたものを置くと今度は二個運んでくる。その次が3個というように折り返すごとに運んでくるレンガの数が増える。


 そんな状況にレンガ運びは彼に任せてもよさそうなので、俺は自分の仕事に取り掛かる。そんな俺はファースト防御壁を作る為にレンガのような大きさの白い何かを床に積んで行く。更に、互い違いに積んだりして壁厚を増すようにそれを置いて行く。


 不思議な事に先程まで白かったレンガ大の白い何かは、場所が定まると赤茶色のレンガに変わってしまうではないか。おまけに一度置いてしばらくすると動かなくなる。っというか、再び動かそうとしてもびくともしない。


 嗚呼、一発勝負かよ?! 慌てて、仮置きしたプイホン一号が運んだレンガを触ると無事に動いて支障がないようだ。



 俺はそんな事を確認して、再び壁を作って行く。まあ、直接レンガ同士をつなげて行くので墨出しは必要ないし、そのレンガの繋ぎモルタルがいらないのと骨組みというかレンガを補強するための鉄筋や鉄骨は要らなさそうなので便利といえば便利ではあるのだが‥‥‥。


 気がつくと4畳半ほどのなんとなく落ち着く空間が出来上がる。究極の心の落ち着く空間だよね。これで真ん中にコタツなんかがあれば最高であるのだが‥‥‥。


 ふと、部屋の外側を見ると、プイホン1号は十分すぎるほどの白いレンガが集めてある。更にはいつの間にかどこから持って来たのか分からないがコタツまで置いてある。そのコタツを部屋の中に入れて壁組の続きをする。



 部屋の外から壁のレンガを積んで行くと、高さは俺の身長を越えそうだ。普通ならば、一日目でこんな高さのレンガを積むことはできないのだがさすが俺の心の中。なんでもありだ。


 自分の身長より高くなる壁を作るには足場がいるのだが、果たしてそんなものがあるのかは分からない。俺がキョロキョロすると、キャスターが付いたローリングタワー、移動式足場をころころと押してくるプイホン一号を発見してしまう。


 彼はなかなか優秀で俺がほしい物をどこからか運んでくる。俺は何処から運んで来たかは分からないその移動式足場を使って壁を組んで行く。ある程度高くなると今度は二階の床を作る為に壁の上に彼が持ってきた梁のような資材を乗せて床板を乗せる準備をする。



 そこであほな俺は気づいてしまう‥‥‥。入り口がなかった。まさかと思うが壁に建具を取り付けると壁に穴があいたりして‥‥‥。そんな訳はなかった。


 仕方なく壁の外から地面を掘って地下から入れるようにする。穴掘りのスコップは気が付くと彼が持って来て俺に手渡すではないか。内心お前が掘れといいたかったが‥‥‥。思ったことは何でも聞いてくれるようで、穴掘りを始める彼を眺めながら頭の中でイメージして部屋のど真ん中に、まるで掘りごたつのような入り口を思い浮かべる。


 まさか掘りごたつの中が入り口とは誰も思い浮かべないと思う。そんなことを思い浮かべながら彼が地面を掘っていく風景を眺める。地面は別に補強しなくても崩れないようで真四角にきれいに掘れるようだ。


 念の為、綺麗に掘り上がった穴の壁を白いレンガで補強して行く。ただ壁に嵌めたり天井に嵌めたりしているだけなのだが、俺が固定したいと願うと勝手に固定されて崩れたりしないし外れたりもしなかった。


 やがて、順調に部屋の真ん中に入り口をつけることが出来る。部屋の中に上がる梯子も彼は用意してきてそれを貰って壁に嵌めると、固定されその梯子を上り部屋の中に入る。


 改めてコタツに着いてどういった建物というか防御壁? 防御陣地? どんな物にするか考える。その間も俺が必要と思われるものをどこから運んでくるか分からないがプイホン一号はそれを運んで来る。



 そこで、この場所に着てから結構時間が経っている事を思い出す。そろそろ起きないと皆が心配して、デウシー先生なんかは俺の様子を見にやってくるかもしれない。それにシャムネアお嬢様だって覗きにくるかもしれない。


 そんな事を考えながら今まで描いていたラフスケッチした紙のようなものをまとめる。そして、彼が持ってきたお茶をすすりながら考える。



 果たして、戻るのはどうしたらいいんだ? いつもなら誰かが邪魔しに来て腹を立てた俺が目を覚ますというのが今までだよね。その他にも怖い視線で目が覚めたり不幸な映像を見せられたりと、考えれば自主的に目が覚めた事がなかったような‥‥‥。


 何時の間にか、コタツの上にはみかんが入った籠があがっている。プイホン一号はというと、次に何をするのかと俺のほうを見てコタツに着いていた。俺は徐にみかんを取って皮を剥きながら彼を見る。


 まさかと思うが彼が知ってる訳はないと思うのだが‥‥‥。試しに「そろそろ現実の世界に戻りたいな~」と、いうような事を念じると、驚いた事に彼は徐にコタツの中で何かごそごそやり始める。そんな様子を見て、いやな予感がしてくるのだが‥‥‥。


 そのいやな予感は的中でお約束? お約束なのか? その彼はコタツの中からピコピコハンマーのようなものを出して、行き成り俺を殴りつける。思ったほど痛くはないのだがそれでもご主人様を殴りつけるとは‥‥‥。


 大して痛くは無いが何故だか意識が遠のいて行き、気が付くと何時ものように指揮車の簡易ベットに寝かしつけられていた。横にいたミリクナ医務長が起きた俺の顔を覗き込む。無事に合流できたのか、指揮車は移動していないようで止まっているようだ。


 「あの~、俺ってまた気を失っていましたか?」




 「そうね。半日ってとこかしら。またおかしな予兆のようなものでも見たの?」




 「いや~、そういうものではなく何というか説明しづらくて。その~、暫くこんな事が続くかもしれませんが心配はしなくても大丈夫かと‥‥‥。いや、説明できるようになったらきちんと話しますよ? 今はなんて言っていいか分からないのが正直な所でして‥‥‥」




 「そう、それじゃ仕方がないわね。だけど、一人で抱えきれなくなってからでは遅いから早めに教えてね」




 「はあ、了解しました。いや、本当になんていって説明していいか分からないだけで‥‥‥」



 俺はつい念を押してミリクナ医務長に言い訳じみたことを言ってしまう。体を起こして周りを見渡すとお嬢様達やプイホンさんは既に降りたのかマイネンスさんと視線が合ってしまう。


 彼女も俺が昏睡していた事を心配していたようで、画板の書類に目を通しながら俺の様子を見ていたようだ。俺が起き上がると近寄って来て俺の健康状態を確かめる為にいつものように先祖がえりをしたかと思うと、少し疲れた表情をして別に俺の体に異常がないことを確かめる。


 彼女の診察が終わると空いた席からお盆に載せた晩飯かそれとも朝飯かを出してくる。その飯を食べながら今は何時かきいてみる。やはり俺は半日以上気を失っていたらしい。


 あれぐらいの時間だと半日の時間が現実では流れるようだ。気持ち6時間ぐらいをあの空間で過ごしていたように思えるのだが、こちらでは倍以上の時間が流れていたようだ。


 今度行った時には時差時計でも出して貰うかな? 出された飯を食べ、立ち上がろうと簡易ベットから降りると、ふらついて床にしりもちを付いてしまう。適度に運動をしながらあの空間に行かないとだめなのか?



 外に出るとまだ夜明け前でうっすらと空が白けている程度で、皆はまだ起きていないようだ。体を伸ばして深呼吸すると生ぬるい空気が肺に入ってくる。若干塩のにおいがしたのでまだ海からは離れていないことが分かる。


 薄暗い中を動き回ると、また皆に迷惑かけるかもしれないので仮設便所まで往復して他の場所を探検するのを諦める。指揮車の扉をノックしようかと思うと、そろそろ起き出した年季奴隷の何人かが声をかけて来る。



 「おはよう」とか、「元気になったか?」とか。そこで俺は病弱で寝込んでいた事になっていたのを思い出す。ジョルジョネ大尉には俺は誘拐されたのではなく、病気で寝込んでいた事になっていたのだと。


 結構無理がある設定だがその設定で納得している人が大半であるのだから仕方がない。頭をかきながら挨拶を返したり、何とか立てますとか返事を返す。その内いつもの訓練が始まるようで、思わずというか久々にその訓練風景を覗いて見たくなる。



 一応、自分の分の盾と木剣を用意しながら考える。以前は個人の組み手から始まったり、集団行動の訓練で大盾をもった集団にジョルジョネ大尉が魔素術の火球をぶつけたりと実践に沿った訓練風景であった。


 組み手のほうはいつもと変わりなくまばらに組み合った年季奴隷のおっさんが丸盾に木剣を手に訓練しているのだが‥‥‥。皆が集まりだして大盾を抱えるまではいつもと同じ風景であった。


 しかし、今持っている大盾は今までの盾とはどこか違う。長い槍のようなものが盾から伸びていて持ち運びが不便そうで見ていられない。よく見ると組み立て式のようで3人一組で盾を支える人、槍のようなものを盾にと取り付ける人、最後にその槍の後ろから何かを取り付ける人?


 そんな3人一組を眺めていると別な方向から行き成り大きな音がする。そちらに視線を移すと、盾に取り付けていた槍の先端から煙が上がっているではないか。嗚呼、大砲らしきものだよね? それともバズーカ砲か? よく分からない。


 暫くすると、盾を構えた人達の遥か前方に土煙が立つ。そして、音が後になって響いてくる。大砲のように反動がないようなので無反動砲のようなものか、はたまた魔素術か陣を使った魔素道具なのかもしれない。あれならば魔素術が使えない平凡な人達でも魔素術と同等な攻撃が出来るのかもしれない。



 一組のおっさん達が一連の流れで砲撃訓練を始めると他の組のおっさんも同じように砲撃訓練を始める。次々に槍のような砲塔の先から煙と轟音が立ち始め、目標と思われる台地を耕し始める。


 そして、耕した地面を駆け抜ける少数の人物達を見て再び驚いてしまう。三人の赤服の上着を着た人達が弾幕の中を潜り抜け、あるいは飛んで来た砲弾を魔素術で破壊したり空中で爆発させたりと、久々にビックリ人間コンテストをお目にかかる。


 訓練の砲弾は潤沢というか魔技箱で送ってくるようで止め処なくあの3人を狙って打っている。砲弾を打っている人達にも偶にジョルジョネ大尉からと思われる火球が降り注ぐ。しかし、何時ものように大盾によってその火球は弾かれたり盾に当たって爆発しても例の仕掛けのお陰か盾の後ろにいる皆は無事のようだ。



 急激な進歩というか、暫く見ない内に新しい装備で訓練をしていたらしい。俺が攫われる前は何となく中世というか古代のローマ式亀甲隊形で敵を迎え撃つような素振りであった。それが今では時代が急激に進んで大砲のような装備で敵を迎え撃つらしい。


 今も盾を構えたおっさんの後ろのおっさんが砲弾をセットしたかと思うと照準を合わせた前の人間の肩を叩く。すると、槍の。いや、砲身の先から煙が発つ。砲弾は無限に有るように間断なく打っては周囲に煙が充満して来る。


 確かに補給の事を考えると、打つ砲弾に手心を加えようと考えてしまうのは俺だけらしい。こちらはあの便利な道具があるので補給に関しては考え無しでいいらしい。


 そういえば食事の件についても同様だった。補給が受けられなかった俺を攫った人達の食事風景は簡易的なものばかりであった。


 そうすると彼等に対して兵糧攻めは効かないよね? なぜだか戦争で領地を切り取りする風景が浮かんでこない。王国側に攻める側は兵糧攻めは効かないし、逆に守り側で相手の補給は永久的で話にならない。


 アラレスティ王国に攻めてくる勢力はその事を前提にして攻めてこなければならない。嗚呼、だから経済戦争しか道はなかったのかもしれない。


 しかし、経済戦争も物流が主役である。特に近世かそれ以前の年代のようなこの世界では画期的な物流システムがあるアラレスティ王国には経済戦争も敗れる訳である。その結果がこのアラレスティ大陸を統一したアラレスティ王国なのかと思い知る。


 その上でこの世界では異常と思われる武装に少し困惑してしまう。あの無線のような魔素道具もそうであるが‥‥‥。全ては凶事の為の供えか~‥‥‥。


 そんな事を呟きながらまだ体がいう事を利かないようなので、装備した盾や木剣を纏めて置いてある場所に戻す。


 そして、暫く彼等が地面を耕す風景を眺めていると、しかめっ面したお嬢様とお付の家庭教師が何処からかやって来る。若干土ぼこりと草が衣服に纏わりついていて何処かほっつき歩いていたらしい。




 「お、目覚めたようじゃな? それにしてもあいつ等は何に対して怯えているのやら‥‥‥」




 「貴方にも窺い知れないようなので過剰に反応しているだけですよ?


 それにあの温泉街の出来事や貴方に会いに行くまでの間に現れた魔獣なんかに対抗する為に考えたのでは有りませんか?」




 「ほうじゃの~、人族は昔から臆病だったからの! こんなものか?!」




 そうはき捨てるように言うと、お嬢様は指揮車の中に入ってしまう。ついでに自分も後に着いて行くと、その道すがら気を失った時何をやっていたかとか色々詮索されたが、言葉で説明できなかったので何となく頭をかいてごまかした。どうせ俺の考えて居る事はお見通しのようだし‥‥‥。


 指揮車の中に入り、席に着くといつの間にか、お嬢様の汚れていた服が綺麗になっているではないか。まるで着替えた風に新しい服装になっていた。先程は草色のワンピースであったが今は橙色のワンピースであった。


 それにしても、先程の言葉も気になるがこの人達は一体何処に行っていたのであろうか? まさか、一足先に馬車村か町に行っていたのであろうか? それとも自給自足よろしく自分で狩して食材集めたり、調理したりしていたのか?


 まあ、この人達は何でも有りなので考えるだけ無駄だよね。



 いつもなら、俺が考えている事に突っ込みを入れるお嬢様であるが今日に至っては何時もと勝手が違う。別段俺の考えている事に興味が無いのかそれとも他の人の心を覗いているのかは分からない。華麗にスルーされて若干困惑してしまったがその時は別段何も考えていなかったというのが正直な所であった。




 やがて、何時ものようにというか周りが騒がしくなって、訓練が終わって朝飯の時間らしい。指揮車の扉をノックする音がして扉をマイネンスさんが開ける。


 すると、お盆を持ったプイホンさんと外には女性の年季奴隷が立っていて、中に朝食を運び込むようだ。中に入るのはプイホンさんだけで、外の女性から食事が載ったお盆を受け取るプイホンさんが皆に食事を配り、貰った順に食事を始めだす。俺は先程頂いたので丁寧に持ってきた物を断り日記を出して皆の食事風景を横目に日記を書き始める。


 まあ、メニューは何時ものなので省くが、奴隷旅団所属中隊の食事には期待していないといっていた約一名は美味しそうに芋をスプーンで割ってはニコニコしてそれを口に運んでいた。芋は好きなのか? 分からない。



 そんな食事風景を見ながらも、心はあの白い空間の事で一杯であった。行程を考え、こちらとの時差や作業員。っというか、あのプイホン型作業員を増員しようかしないかなど、考える事は盛りだくさんである。しかし、こちら側、現実側の行程が分からないのでどうしようか腕を組んで考える。


 一応は馬車村や町に着いた時の晩飯は多分お嬢様の食べ歩きに付き合わないといけないはずである。だが、肝心のその馬車村や町に何時着くのが分からない。散々考えた挙句、考えるだけ無駄なので諦めた。


 なるべく移動している時にあの空間に行って、野営地に着いてから久々の紙製作を再開しないといけない。それにプイホンさんの算数問題の添削などやることは現実の世界でも盛りだくさんであった。



 気が付くと何時ものメンバーが勢ぞろいしてこの指揮車に乗り込んでいる。プイホンさんは最初は向うで過ごすらしい。彼も移動時には馬の世話をしないといけないので最後の馬の休憩にこの馬車に乗り込んでくるのが日課の一部である。


 朝出発してから夕方最後の馬の休憩までにこちら側、現実世界に戻らないと駄目という事である。大体4時間前後あの白い空間に滞在すると現実では8時間経つはずで、その時間で心のファイアーウォールを完成させる。


 そうすると思ったほど時間がかかるというか‥‥‥。嗚呼、そうか。別に俺が直に作らなくても良いのか? 先程考えたように、あのプイホン一号のような物を多数作って俺の居ない間も作り続けるようにすれば良いのか?


 などと、考えていると、また指揮車の扉をノックする音がする。またマイネンスさんが扉を開けると先程と同じようにプイホンさんと女性の年季奴隷がやって来て食器を片付ける。その後にジョルジョネ大尉がやって来てシャムネアお嬢様に向って今日の予定を話し始める。




 「おはようございます。本日も移動日となっております。昨日よりは早めに夕食をご用意できるかと思います」




 「ほうじゃの、昨夜は結構遅かったからの。で、次の村か町は明日着くのかや?」




 「はあ~、それが‥‥‥。この隊を追跡する者がいるらしく。今晩か、明日あたり別働隊が仕掛けるらしいので、成功すれば明後日には次の馬車村に着く予定なのですが。万が一失敗しますと‥‥‥」




 「なんじゃい!! はっきり言わんか?!


 追跡者を撒く為に内陸に入るというのか?」




 「はあ、そう命令されています‥‥‥。今のところはですが」




 そんな内容の会話であったが若干皆がうんざりしているような‥‥‥。


 ん? なんで?


 内陸になにか有るのか?




 そんな疑問が浮かんでくる俺であった。





 次話へつづく

次話は5/14水曜日の投稿予定になります。

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