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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第4章 振り回される年季奴隷 》
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<4-14> 「愚痴と年季奴隷  (後編)」

最新の修正日は2015年1月17日です。

 何も分からず連れまわされて困惑するより愚痴や文句めいた事を言いたくなる俺ですが、どうやら悟りの境地に至りそうです。年季奴隷になった時点で連れまわされたり、色んな出来事に会う事は決められていたようです。


 ようはなるようにしかならないという事で諦めに似た境地か、全て受け入れる懐を広く持つことがこの地で生きて行くには必要なようです。


 そんな事は他の人にも言えるようで、俺を連れまわしてる本人や関係者もその上司や組織に引っ掻き回されているようでジョルジョネ大尉なんかは最近俺に小言を言って憂さを晴らしている節がある。


 まあ、大尉は中間管理職であるから下から突き上げられ、上からは理不尽な命令を受け大変な事だとは理解できる。他の皆も同様であるのは推察できる。



 そんな中、皆が目を瞑って精神を統一しているような仕草を見てシャムネアお嬢様に対する心の中を読まれない為の対策のヒントが見えたように思えたのは気のせいであろうか? 


 ‥‥‥。分からない。


 そんな何時ものように何も分からない俺であった。






 一番前の席に戻ったジョルジョネ大尉がまるで精神統一をする様な仕草を見て考える。この前の仮説の事だ。


 あの探査術でパッシブな方で水面を浮かべるイメージの場合、あの水面の成分は何かである。基本的に自分としては水のイメージだが、どちらかというと空気の流れのように思える。特に最近はアクティブのほうも結構使っているので空気の波紋のようなイメージをすることが多い。


 空気の波動で思考まで分かってしまうものなのかは分からないが。今、前の席の二人を見ると体がパッシブに引っかからないように動作を留める感じに、精神も同様なことが出来るのかと考えてしまう。


 そういう事で瞑想的な何かで取り合えず思考を留めているのかもしれないし‥‥‥。


 そんな悟りの境地のような事が一般人である俺に出来るのかは分からない。幾ら瞑想的な事をしても心の奥底では何かを考えている訳だし、何も考えないという事は果たして出来るのか?


 それが答えという訳ではないように思えるのは出来ないと頭から信じてしまっているからであろうか?


 まるで禅問答を自分自身でやっているような‥‥‥。試しに心を無にする為に瞑想のようなものに挑戦してみる。なんだかお釈迦様の手の平の上でもがいているお猿さんのようだが時間はたっぷりあるし、プイホンさんが俺の問題を解くまでの時間もまだ十分にありそうだ。



 そんな事で何も無い、あの夢で見る白い空間に自分が居るイメージをして外部から入ってくる情報を順に遮断して行く。


 最初は目を瞑り視覚を遮断する。最初はただの真っ暗闇で白い空間というよりは真っ暗な空間で耳から入ってくるギシギシという指揮車の音が妙に響く。そのままその音が耳から離れない。それに一行に暗闇の中、何も考えないようにしているのだがあの白い空間にはいける気がしない。


 その内、音が聞えなくなってきたかと思うと意識まで飛んでしまう俺であった。






☆  ☆  ☆






 そこには先程の実験に満足する人物が一人、椅子に座りお茶を楽しんでいた。




 その人物の構想は色々とあるようで、今も何か妄想を掻き立てるハルーツンである。その妄想は続く、複数に散らばった部隊がまるで手足のように連携する風景を思い浮かべてついにやけてしまうハルーツン。


 慌てて平静さを取り戻しその表情を誰かに見られなかったかと周りを一瞥する。だが、皆は次々上がってくる情報に右往左往していたので問題ないようだと彼は考えていた。


 その彼が先程から上がってくる斥候の報告書に目を通すと、穏健派のアーベ神教の神職、彼等が言う教徒の上部組織でアラレスティ王国寄りでかつ危険思想は持たないとされていた人物ばかり死体となって発見されたようでその他にも書かれてあることが有るようだ。


 それは消えた人物も多数いるようで、危険を察知して消えたのかそれとも軍の動きを察知して地下に潜ったのかはその報告書では相変わらず分からない。



 そんな報告書の内容を見たハルーツンは「部下に彼等の館を探らせているが物証は見つかる事はあるまい」と呟く。その証拠に次々上がってくる部下からの報告書は今消火作業に向っている守備軍は全て消されたか消えた人物の館ばかりと書いてあったようだ。



 事件が起きた場所は一応アラレスティ大陸における本山の一つである。その本山の一つを何者かが急襲したとなると急進派の神職の何人かが新たに本拠地を整備したことになると、ハルーツンは考える。


 今になって動いた動機は分からないが要因の一つとして新たな本拠地作った以外に考えられないとも彼は考えたようだ。


 そんなハルーツンは自分の記憶の紐を解くように一度読んだ資料を思い出す。



 古い文献ではあそこと同じようなアーベ神教の聖地はアラレスティ大陸に2箇所ほどある。


 アラレスティ大陸南部学園都市近くの南本山、東の大森林を越え7年前に併合された旧ガライアス王国領地に根付いていた東本山である。


 南本山に関しては奴隷王事件後、この地にある西本山同様に粛清の嵐によって実質壊滅したが最近西本山と同様に復興し始めたという話は聞いている。西本山の現状から考えると南も自らの粛清を行っているかもしれない。


 東本山に到ってはガライアス王国併合時に自らの潔癖さを証明するが如く旧家臣達の手によって破壊されてと聞き及んでいる。しかし、その後の状況はその土地に赴任している新公爵からの報告は上がってきていなかったような‥‥‥。


 ああ、まだ監査猶予期間の10年で王都には赴任する身内は居なかったか? 連絡事務所というか王都での役宅は下賜されているがそこまで手は回らないのかもしれない。


 ぼちぼちと、色々な伝により余り良い噂は聞えてこない。何れ、リョウジ殿一行がその土地に着けば分かる事か? ‥‥‥。



 後、残るは中央か北になるが、流石に王都近くに本山を築くのは考えにくい。軍が許さないし奴隷組合が本山を計画した時点で潰すのは言うまでも無い。



 暫く思考を巡らしたハルーツンは可能性を見つけて行くが再び考え出して立止まってしまう。



 しかし、現状を確認しないまま動くのは危険である。アーベ神教の神職に関しては監視対象なので面は割れている。アーベ神教の教徒に関しても同様である。


 調べれば分かる事だが教徒の方も何人か姿を消したはずでそちらの方は奴隷組合が率先して洗っているはず。この際、縄張り意識は捨てて共闘するべきで二の足踏むのは今回限りにしたい。


 一応は軍の管轄である傭兵組合を通して全土には網を張っているが奴隷組合ほど精密ではない。それにそのような事に長けた奴隷組合には敵わないのは分かっているので主にこちら側の知っている事を晒すだけであるが‥‥‥。



 さて、どうした物か‥‥‥。未だに縄張り意識で凝り固まった同僚を行き成り飛び越えて奴隷組合に話を着けるのも吝かではないが、内部に新たな敵を作るのは面倒だ。ここは一応上司であるあの方にお願いして頭同士でやって貰うか‥‥‥。



 最後にそんな事を考えたハルーツンは周りの様子に意識を持って行く。



 その間も次々に被害状況や先程のアーベ神教の教徒や神主の状況が飛び交う。



 その状況を見て手始めに子飼いの部隊を先行させてまずは南に東にどちらに送るか迷うハルーツンであった。






 そのハルーツンの様子を横目で見ながらこれからの事を考えているのはザルツベ大佐であった。



 彼はジョルジョネ大尉の直接の上司であり、各地に散らばっている奴隷旅団所属中隊の現時点の長である。普段であれば王都の奴隷旅団本部の執務机に着いているはずなのだが、今は移動する臨時司令部と奴隷旅団所属中隊の仲介のような事をやらされているようだ。


 そんなザルツベ大佐も色々と思考を巡らしているようだ。




 最近ジョルジョネ大尉の部隊の全容が外部に漏れ出したという話や中隊に合流した人物達によって頭痛の種は尽きない。しかし、その他の中隊の管理をおろそかには出来ない。ジョルジョネ大尉周辺の中隊に着いては直に指揮しているが流石に全部は指揮できない。報告のみ受け取ってそれに目を通す作業に没頭する。



 それにジョルジョネ大尉の中隊に最新式の装備を配備する手続きが最近ではより面倒な事になっていて、煩雑な作業が山済みになり始める。しかし、ハルーツン閣下の手の者が応援に配置されたので数日前よりは幾分マシである。


 それよりもあの亡き王女である「王家の血の呪い」が誕生してから急速に奴隷旅団所属中隊の新装備開発に拍車を掛けた張本人である自分はようやく実ってきた技術を見て満足している。



 先程も手紙ハトゥーに代わる新たな伝達方法に目を細めて眺めていた。自分が中隊長であった時には考えられない装備が今では稼動している。これからも続々と新たな装備を目にする事になるのでその運用方法も考えなければならない。


 しかし、実状はその装備を使う中隊長のジョルジョネ大尉に一任するしかない。今回の中隊の前身である実験中隊での運用試験は上々であり、これからも彼は自分の期待に答えてくれると疑わない。


 それにあのリョウジ殿が参考意見を述べてくれるとその作業に拍車が掛かる。今の所、彼とジョルジョネ大尉は上手くいっている問題は無いはずだが、油断は出来ない。




 最後に自分を戒めるような事を考えるザルツベ大佐の手元にジョルジョネ大尉からと思われる手紙ハトゥーが舞い降りる。手元に降りたそれを広げると早速参考意見を聞きだしたようだとザルツベ大佐はほそくえむ。



 それを見て唸ってしまう自分に苦笑いしてしまう。技術とは追いつ追われつで、際限ないものだとは自分で理解していたが実際に目の当たりにするとは思わなかった。


 そんな事を考え流石に見なかったことには出来ないと立ち上がったザルツベ大佐であったが手紙ハトゥーの内容をもう一度確認すると間近で考え事をしているハルーツン閣下の机の前に歩みを進める。



 彼の机にそれを置くと、片眉を上げたハルーツン閣下は珍しく唸って手紙を何度も読み返す。そして、徐に言葉を発する。




 「参ったね~。先程まで天にも昇る気持ちだったのに、今は行き成り突き落とされて気分だよ。直ぐに対策を内の連中に考えさせるのと、奴隷組合と意見を擦り合わせる必要があるね~。あ~、困った、困った」




 そんな言葉の様子にザルツベ大佐は彼の机を離れたが、内心表面上は本当に困った感じではないように見受けられると思っていた。更に自分より年下の上司は珍しくも無いが貫禄はこの部屋にいる誰よりも十分に有る彼であるとも思っていた。


 そんなザルツベ大佐はハルーツン閣下ならば何とかしてくれると心の中で彼に預けると新たに来た報告書に目を通すハルーツンの様子に彼の側を離れる。そんな様子にザルツベ大佐はため息をして自分の席に戻る途中、不意にあの出来事を思い出して苦笑いをしてしまう。


 「また、ハルーツン閣下が失踪しないようにジョルジョネ大尉を通してお願いしなければ‥‥‥。初めて彼の青い顔を拝む事ができたのは良かったのだがその後が怖い」


 そんな事を心の中で呟くザルツベ大佐はハルーツンのそういった迫力があの若さだが備えている事は理解しているようで、今はあの時の事は見なかったことにしているし、絶対口外しない事を帰りの馬車の中で約束したようだ。



 そんな事を思い出したザルツベ大佐は、その前の指揮車での出来事を遡って思い出す。



 あの時もそうだったが不満顔のジョルジョネ大尉を見て昔の自分を思い出す。奴隷旅団所属中隊を経験すると、どうしても上司に不満を持つ風潮が出来てしまう。


 奴隷旅団所属中隊とはそんな部隊である。中隊長一人一人が独立した存在で自分の裁量によって収益を上げたり、魔獣退治の功績を上げる事が出来る。だからどうしても一癖も二癖もある連中が集まる。


 かつて自分もそうであったように彼等についてはその事をとやかく言う気持ちは今更無い。そういった中の一人であるジョルジョネ大尉であるからあの不満顔に対しては文句は言えない。


 まあ、彼も更に上に上がれば理解してくれるに違いない。今の自分のように‥‥‥。



 そんな事を思って何処か遠い目をして自分の席に座るザルツベ大佐であった。






 愚痴や文句を言いたくなるのは何も彼等ばかりではない。この国の長である国王も部下に対して愚痴や文句を言いたくなるのは常である。今も誰かに対して文句を言っていたかと思うと何か思い出し笑いをして執務机の椅子に寄りかかり奴隷組合の組合長の報告に耳を傾ける。




 「あの~、陛下? 何か心動かす出来事でも起こったのでしょうか? 私の耳に入らなかったことでしょうか?」




 「いや、なに。仮であるが我の直属にした宮廷魔素術使い共に対してだが、やはり直属でよかったわい。今もあれが頭を掻き毟って我を呪っている頃であろう!! その事を考えると笑みがこみ上げてきてな‥‥‥」




 「これは陛下もお人が悪うございます。しかし、あの彼女達は陛下自らではないと動きません。あの直属の話は正解だったようです」




 「どうも、創世大陸の連中が紛れ込んでかき回している節がある。それに根絶やしとは行かなかったが例の宗教やつらが何か動き出した節もあるようだな?


 まあ、それらは問題ではない。問題はあれの事よ‥‥‥。後、1年半ぐらいであったかな?」




 「はあ、その事に措きましても手は打っておりますので問題は無いかと」




 「ふむ。そうか? それにしても、軍は振り回されている節がある。一体何がいけないのであろうな? この際問題点を洗い出すのに丁度良い。ハル坊は中々やっているがそろそろ君に何か言って来る頃だろう?」




 「はあ、それは仕方がありません。あくまでも表の王国の盾であり武器でありますから。彼等はあくまでも外敵に対しての武器であり盾であります。相手が軍隊、外国の騎士団のようなものに対しては絶大な成果を上げるように仕組まれた組織です。


 こういった水面下の対応にはどうしても齟齬が起きてしまうのは仕方がありません。ものには向き不向きがあり奴隷組合も外国の軍隊には非力な物です。そういった事で長い目で見ていただくのと適度に手を入れていくのが宜しいかと‥‥‥」




 「まあ、愚痴を言っても仕方が無い事だからね。それに我のはけ口の彼女には苦労して貰う事になるのだから文句は無い」




 そういって国王は組合長にいやらしいにやけた顔を晒すと、今度は違う案件に目を向けるらしい。しかし、若干遠い目をして娘の事を思い出しては止まっていた筆を再び動かし始めるこのアラレスティ王国の国王であった。






 そんな彼の姿にお辞儀をして彼の執務室から立去る組合長であった。


 しかし、彼は自分の部屋に向って歩きながらも、近寄っては耳打ちする部下の話を立ち止まっては裁可する。


 裁可を貰った部下は人知れず廊下から消える。消えたと思ったらまた別な人物が現れ結局自分の部屋に着くまで2時間ほど時間を費やしてしまう。


 主に最近起きた不審な出来事に関してであり最近起きたゴルムディア地方の出来事も含まれる。なぜ人伝えなのかは窺い知る事はできないが部屋に入ってからは他の人物と変わりなく手紙ハトゥーの山に埋もれる事になる。



 全ての案件に目を通す事は無いが重要な事については信頼できて有能な部下が選別しているようで問題は無いようだ。


 今も実質奴隷組合の実力者であり部下である副組合長の報告書を読んで眉をひそめる。彼は自分の代わりに目として耳としてこの大陸を縦横無尽に動いて貰う存在である。


 その報告書に対していよいよ何かが動き出したと実感しだした組合長は他の似たような報告書を探し出して確かめる様に読みふける。



 そこで自分は一体誰に文句を言えば良いのか分からなくなってつい愚痴めいた事呟いて、秘書に熱いお茶を持ってくるように命じるとため息をする。


 直ぐに持ってきたお茶を口にして一言「ぬるい!!」と、文句を言う。そう、部下にしか当たる事しか出来ない。しかし、部下もその事は理解しているようで態とぬるいお茶を出してお叱りを受ける役に徹する。


 そんな優秀な秘書がいる事を分かっていながらも文句を言ってしまう組合長に自制するように文句を言ってしまうのは負の連鎖のお陰だけではないようだ。






 こうして、部下は上司を呪い、上司はそのまた上司を‥‥‥、以下省略。逆も叱りでそれぞれ、これから何かが起きる前兆に不安を覚えながらも邁進するしかない様だ。そんな事など思いも因らないリョウジに何かが起きる様である。






☆  ☆  ☆






 意識が遠くなって何時もの白い空間に佇んでいるのは文句は無いのだが困惑してしまう。これって意識が遠くなって気を失ったか寝てしまったということだよね?


 いつもなら周りには何も無い空間で辛うじて今立っている床に対して認識は出来る。それに何時ものようにスクリーンが出るわけでもないし、お邪魔虫もいない。


 ただ、何故だか白い空間に建設資材のようなものが山積みになっていて、一体何がしたいのか理解できない。一つ一つ手にとって首を傾げる。ブロックのようなレンガのような長方体にレンガ積みの建物なんかに使うガ梁のようなものまで有る。俺に建物でも作れということか? 


 ‥‥‥。分からない。



 資材があるなら設計図がほしい所であるが、そういったものは見当たらない。これは自分で図面を引いてやれということか?


 周りを見渡し資材があるのなら道具はあるのかと気になって周囲を歩くと看板のような物が立っている。ごく普通の建築基準法に基づく告知看板のような物であった。



 当然、この敷地は俺の意識の中に有るので文字を読んでいくと建築主から設計事務所の名前まで全て俺の名前が書いてある。


 まあ、確かに自分の意識の中なので他人の名前があること自体おかしなことなので妙に感心してしまい納得してしまう。


 告知看板が立ててある敷地を見渡すと、これまたまっさらな敷地で全て真っ白。光の加減で立体的に見えることも無く何処までが敷地なのか分からない。さてさて、どうした物かと考える。



 初心に帰り先ずは現地敷地の確認をしなければならないよね? そうそう、境界線なんか‥‥‥。考えれば境界線なんかある訳無い。


 だって、自分の意識の中の敷地であって逆に境界線が見つかると困ってしまう。


 ため息を付いて看板の所に戻ると空白になった部分が多数あるのを確認してしまう。


 そもそも、一体何を建てるのか書かれていないし敷地面積から建蔽率まで‥‥‥。やはりあほな自分だったと思い直す。ここって建築基準法は適用されないよ?



 そうすると趣旨は良く分からないが好きな建築物を建てて良いという事かもしれない。これは建築関係者にとって夢のような話で設計が法律の規制に関係なく行える事はありえない。


 俄然やる気が出てくる。何故だかいつの間にか現れた製図台に一生懸命ラフスケッチを描いてこんな家に住みたかった見たいな絵を描きつつ、ある事が心に引っかかる。ペルジャーネ先生の過去の話であった。


 先生も最初は何も無い空間に椅子に座って普段の生活を体験していたという話である。その内、突然扉が開いて誰かが覗いた話まで思い出す。



 このまま行くと俺のこの空間にもそれが現れるのか? しかし、俺の場合現れたのは建築資材に告知板でこっちのほうが意味が分からない。扉なら話は簡単でその扉を塞ぐように建築資材で塞ぐ自信はある。


 しかし、構造材は見当たるが仕上げ材は今のところ周辺には見当たらない。建具も同様である。だけど、全部真っ白なので見えにくいだけなのかもしれない。



 ある程度ラフスケッチを描きながらそんな事を考え、いざ図面に起こそうとして立止まってしまう。考えれば分かる事だが俺一人で全部やら無ければならない事を思い出したからであった。


 木造住宅でさえ何十人の手を借りて何日もかけて作るのに俺が書いたラフスケッチを見てため息が出てしまう。要塞みたいな住処を書いたがこれを俺独りで作るとなると何日かかるのか分からない。



 そこで何となく思い当たる事が急激に湧き上がる。これって、ひょっとして心のファイアーウォールを作れということか?


 それなら何となく見える資材の種類に合点が行くよね。確かにレンガを積めば見かけは壁になるし、そのまま四方を囲めば出来上がりだが‥‥‥。


 そこで何となく技術者魂がふつふつと芽生えてくる。一体誰が用意してくれたのか分からないが少し侵入者が頭を抱えるものにしてやろうと。


 多分、分厚い城壁のような物を作ってもそれを壊したり乗越えたりしてくるやつは五万と居るに違いない。それにこのまま作り続ける訳にも行かないので、先ずはどんな仕掛けを作るか考え、それを纏めてこれから毎日作る計画を立てなければいけない。


 このまま作っても良いが多分俺が起きたら一騒動ありそうだよね。またリョウジが夢にうなされているとか何とか‥‥‥。そこら辺を探られると面倒になることは間違いない。居眠りをしている程度の短時間を積み重ねて心の壁というかファイアーウォールを作ろう。




 何となく次の目標のような物が出来て、周囲の資材を眺める俺であった。





 次話へつづく

まだ体調が完全ではなく次話まで時間が空きます。

次話は5/7の投稿予定になります。

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