<4-13> 「愚痴と年季奴隷 (前編)」
最新の本文修正日は2015年1月17日です。
新しい魔素道具の無線機のような装備を見てつい意見しようか、しないか迷ってしまう俺ですが、彼等の言い分ではその事が問題では無くその意見を聞いた側に因るそうです。
俺が意見した事が問題ではなく、意見を聞いた側に問題があるという話はとても魅惑的な言葉で、つい何でも話してしまいそうになるのは彼等の罠であるのかは俺には分からない。
確かに俺の知識は先進的な部分が多々あり彼等にとっては有益な話に違いないのだが、その情報によって誰かが死んでしまったり苦しめられるのは寝覚めが悪すぎる。
一応、俺にも良心はあるので、一々彼らに話していいのか躊躇してしまうのは俺に勇気が無いチキンな性格だけではないはずでだよね?
結果、言葉を選びながらまるで迷路に迷うように彼等に話す事になる。その無線についてもオブラートに包んで危険な事や危惧される話をしてしまう。その後味はなんともいえない味でお嬢様が楽しみにしていたシュークリームのようなお菓子とは比べ物にはならなかった。
当然、危惧した事はもしかしたら彼等が先に使用して誰かが犠牲になるかもしれない。そんな言ってしまってから後悔する話の一つに心のどこかに何かが引っかかる俺であった。
先程馬車が出発してから皆さん何かと忙しいようで手紙ハトゥーを飛ばしたかと思うと、今度は何かを考えるように皆同じように腕を組んでいる。
無線観測での砲撃や銃撃、それに無線爆弾の話をついしてしまって、これでよかったのか後悔したが、もう考えるのは辞めた。
便利な魔素術にもそんな攻撃があるのかもしれないし、先程皆が口をそろえて話していた事を反芻すると、俺が悪いというよりは聞き手側に責任があると言われたからだ。
人の運命については懐疑的な考えは一応持っているつもりである。俺の情報によって死ぬ人が本当にそうなのかは分からない。その情報によって死ななくて偶々死ぬ事はこの世界ではありえる事である。
良く考えればちっぽけな俺の一言で歴史が動くとは到底考える事は出来ない。偶々技術が俺の情報に追いついて偶然に人が亡くなることだって考えられるよね?
そう考えると心持何かが軽くなってくる。再び日記を出して今まで遭った事の続きを書き始める俺であった。
日記を書きながら、そういえばこの新しい大型の指揮車はどこに向っているのか気になるが、予想は出来る。多分遅れるといっていたジョルジョネ大尉の馬車列は実はゴルムディアに向っているのではなく途中で南下する道筋に進路を変えたに違いない。
これはあの温泉街で起きた出来事に関係しているのは間違いないと思う。ジョルジョネ大尉あたりの予定とは違う動きになってしまったのだよね?
きっと、最初とは‥‥‥。
☆ ☆ ☆
新型の指揮車の中でリョウジだけでなく愚痴や文句めいた事を言いたい人物は星の数いるようで、今もリョウジが何か考えてるふうに指を折っている風景を眺めている人物が二人。一人はジョルジョネ大尉であり、ミリクナであった。
特に今ブツブツ言っているのはジョルジョネ大尉であった。
中隊を任されて色々と文句を言いたかったが、誰に言えば良いか分からなかった。実験中隊の時は装備や運営に関して任されてある程度自由が利いた。
今の中隊を任されてからは四六時中監視されているようで心が休まる日は少なかった。そんな自由が利かなくなる状況が顕著になり始めるのはリョウジを見世物にし始めた頃からだっただろうか?
この国の公爵閣下を筆頭に次々に現れる貴族にリョウジが嫌気をした頃、不審な貴族が紛れ込んでいる事に気が付いた時に始まる。
軍に問い合わせしても明確な返事は来ないし、あの三人の中尉は貴族共を裁くのが精一杯の様で当てにならない。日にちを置いてまた怪しい貴族が来て確信が持てた。リョウジの話が確実に悪い方に洩れていると気付いたからだ。
近々あいつに何かが起きるかと思ったのだが周辺の中隊は至って平和だし、周辺やこれから向う馬車村や町も至って平和で怪しい人物が闊歩する話は聞えなかった。
そこで油断が出たのかもしれない。まさかあと一月も無い所で仕掛けてくるとは思っても見なかった。それについて、上層部や上司はなしのつぶてでこちらが自由に動いていいのかと思いきや、いざ動こうとすると手綱を引いてくる。
まあリョウジの命の心配をすれば、攫われた時点での奪還は危険であったのは事実である。ゴルムディアに向う間も奪還できる時間は多数有ったが、その許可は何故だか下りなかった。
何で軍の動きが遅いのかは分からなかったがリョウジが攫われてその軍の動きで何となく理解できた。軍の内部に裏切り者がいたのだ。それで動きが鈍かったのかもしれない。
ハルーツン閣下からの返事は無いしザルツベ大佐も同様であり、彼等が動くと悟られる可能性があったに違いない。その証拠にリョウジの居所を示す首輪の反応が無いというのがあげられる。あれは首輪が組合施設に近付くと反応する仕掛けである。
それを逆手に取られて組合施設を反れて移動していたに違いない。それに宮廷魔素術使いが使う強力な探査術を受け流したり、無効化させるのは軍の装備以外考えられない。
奴隷組合の先生の動きは感づかれなかったようで、攫ったやつ等の内情が掴めたのだが組合の動きも軍同様に鈍かった事で内部の粛清を行ったに違いない。
その上層部の許可が下りないまま、念のため人攫い共を追い越してゴルムディアの門番に成りすました時も彼等を急襲する準備は出来ていた。
しかし、あそこで躊躇って良かった。一応は演習の形を取ったのだがやはり、あれは完全に内部のあぶり出し作戦であったに違いない。その証拠にあれ以降、俺等の中隊の前後にいた数名の中隊長の名前に異変があった。
それに仮の司令部も何か異様な雰囲気だったのは見逃さなかった。相変わらずハルーツン閣下は命令書を渡すまでは本当のことは話さない。一応は進言をしても彼の予定に嵌らなければ無視らしい。尽く却下されてしまったな~‥‥‥。
今も俺等の予定は知らされていない。とりあえず西海岸街道を南下せよとしか言われていない。まだ内部を洗っているのかも知れない。あの襲撃がその理由なのか?
粛清したにも変わらずの襲撃に疑心暗鬼になっているのか? しかし、あれは上の連中に原因があると思うがな。何もアーベ神教の本山で王女殿下を連れ回す事は無かった。
表側では土着の神を容認している最近のアーベ神教であるが、本質は他の神は敵であるはず。そんな分かり切った事なのにアーベ神教を揺さぶるために彼女を連れて行ったり、その中に黒髪のリョウジを連れて行くとは彼等の逆鱗に触れた可能性がある。
黒髪であった救国の勇者はあの400年前のアーベ神教を追い落とした影の功労者でもある。奴隷王事件後、主な危険な思想を持ったアーベ神教の教徒を闇に葬った話は表には出せないが知る人ぞ知る衆目の事実である。
それが無ければ急速にあの混乱した状況を収束に導く事は出来なかったはずである。闇に葬らなかったら第二、第三の奴隷王が各地に出現したに違いない。
どうも軍は波風を立てて敵を探しているのか、敵になりえる者共を炙り出しているのか? それともその気が無かった者まで、行動を起すように導き、事前に雑草を刈っている節がある。
何も事を起しそうに無い者まで刈る必要性があるのだろうか? これは危険な臭いがしてならない。返って反発を買って敵が増えるのではなかろうか?
その事にザルツベ大佐は気付いているのだろうか? それともザルツベ大佐の意見であのハルーツン閣下がそれに乗っかりよからぬ事を考えているのだろうか?
国王陛下に楯突く事を諦めてといっていたが本当に諦めたのか? 自分では敵わないとして自分に代わる者が出てくるように誘導しているのか?
‥‥‥。分からない。
一度ザルツベ大佐に直接聞きたいが、ハルーツン閣下の目が光っている内はそれも叶わないかもしれない。
そんな事で今は味方を見極めなければいけない時期に来ているのかもしれない。先程の意見は早計であったのか? いや、急に奴隷組合の先生の報告と俺の報告に時間差があると疑われる可能性がある。
ここは慎重に行動しなければならない‥‥‥。
そう考えるジョルジョネ大尉は眉間にしわを寄せてチラチラとミリクナを見たり、ペルジャーネを見たり、周囲の人物の顔を見る。つい、ミリクナと視線が合って気まずそうに視線をそらす。
そんなミリクナも横に座っている大尉の顔を見て同じように文句が言いたそうな顔をしていた。
文句を言いたい事は誰にも負けないほど沢山あった。親方様からは手紙ハトゥーは短文だけでしか寄越さない。最近はそれも慣れたのだが、貴族がリョウジに会いに来る行事が始まってからは特に短くなってくる。
最近は「見極めよ」だけで何を見極めるのか分からない。リョウジに関してはつぶさに観察して報告しているし、軍の所属であるジョルジョネ大尉にいたっては十分すぎるほど人となりを報告している。
それに部隊の年季奴隷や護衛分隊の者共に関しても同様だわ。私以外に存在していると思われる組合の関係者に関してはある程度めぼしはついている。
そうだ、その事についても文句は言いたいわ。組合関係者なら私と連携して仕事をしたほうが何倍も効率が良いのに、親方様はこの私にも明かしてはくれない。
確かに12年程しか共に仕事はしていないが、親代わりだったし、親方様の言われた仕事は全てこなしてきた自負はあるのに。確かに本格的に仕事を始めてのはここ5年程であるが‥‥‥。まだ信用されていないという事なのかな? 分からない。
その他にも文句はあった。リョウジのことだ。あれは一体なんなのよ? こちらが喜ぶ事があると思ったら突き落とされる事実が発覚する。使える奴なのか使えない奴なのか分からない。
探査術が出来たかと思いきや、その距離が短く短時間しか使えないとか、魔素術は使えないのに手紙ハトゥーの魔素陣は扱えるなど私達の常識が全て覆る。
それにヒノモトの出身の癖に武芸が出来ないとか。嗚呼、それは最近改善して来たから良いけど。それでも仮にも勇者と同じ出身なのだから期待に答えてよね!!
それにしてもあの集団は一体なんだったのかしら? 私と同じような同僚がいるのは分かっていたのだけどあいつはしっかり証拠品を届けたのかしら? 一応は危なさそうなものは調べておいたけど‥‥‥。大丈夫かしら?
あいつはあれを捕まえる時もただ私を観察して手伝いもしなかった。証拠品を受け取りに来たと一言言っただけでその他の言葉は無いし。嗚呼、考えれば考えるほどムシャクシャしてくるわ!!
しかし、感情は表情に出さないミリクナである。その内、一番後ろの人物の事を思い出して何時もの平静さを取り戻すと目を瞑る。
そんな平静さを装っているミリクナを見て羨ましく思う人物がいる。彼女の前に座っているペルジャーネであった。デウシーは後ろの席の人物が気になって今は表に表れる事は無い。
ペルジャーネの彼女がそ~っと目蓋を下ろすと、中に居るデウシーは交代は嫌だといって駄々をこねている。デウシーが恐ろしいようにペルジャーネも気が気ではないのだがデウシーほどではないようだ。
目蓋を下ろして心の中のデウシーに話しかけるペルジャーネであった。
「デウシー、どうしようか? これからずっとこの馬車に乗らなければいけないそうよ? 先程貴方も見たでしょ? 国王陛下の手紙。命令だって。従わない場合は王宮で一生、国王陛下の護衛をしなければならないって」
『そっ、そ、それは分かってるが。だってあれだぞ? 少し慣れないと無理!!
一応は俺等に興味ないようなので問題は無いよな?』
「それはどうかしら? 昔、夢に出てきて散々からかわれたからもう興味がなくなったかもね? 今はリョウジにご執心のようだから目立つ事さえしなければ大丈夫かな?」
『でも、ペル? やっぱり、最初に耐心魔素術を掛けたのはまずかったよな?
きっと怒ってるぜ? 初物好きのようだからな!!』
「あら、でもね、デウシー。一応は初物の接吻を王女様は奪ったよね? あれはデウシーに見せ付けたのよ? 気付かなかったの?」
『そうなのか? 接吻ってそんなに重要か? 俺は今度して貰えば別にそれでいいし、初めてがどうとかこだわりは無いぜ?』
「それは‥‥‥。私はやったこと無いからわからないけど」
『それにリョウジとは王女様より先に添い寝したからこっちのほうが進んでいるとは思わないか? ‥‥‥。
ぎゃああああああああああ、王女様が睨んだ!! 俺は隠れる。あとは任したぞペル!!』
「あっ、ちょっと、デウシー? もう、挑発するなら最後まで責任取りなさいよ!
睨まれるのは私なんですよ? え~、王女様? 勘違いしないでくださいね?
私の席の後ろのマイネンスという人物が私の体を解して気が付いたら寝てまして、そのただ単に横に寝ていただけで何もしてないですから‥‥‥」
そういって心の中で王女様に謝るペルジャーネは目蓋を開けるとチラ見する程度後ろを振り返りシャムネアの様子を窺う。見た目の彼女は我関せずで本を読んでいたのでペルジャーネは胸を撫で下ろす。
再び前を向き直すと背筋が凍る視線を感じてまた後ろを振り返る。しかし、何事も無く先程と同じ様子のシャムネアの様子を見て首を傾げる。そんな出来事を二、三回繰り返したあと、諦めると視線が感じられなくなる。
そんな様子にため息を付くペルジャーネはこれから一体どうなるのか不安な表情を浮べるが、正面のジョルジョネ大尉の難しそうな表情をみてぶっと噴出す。自分より難題を抱えた他人を見てほっとしたようだ。
そんなペルジャーネの素振りを見て首を傾げるボフボーニャは先程読んだ新たな命令書を読んで不満爆発寸前であった。
なんで? 国王陛下の命令通りあの王女殿下に親書を届ければそれで終わりと言っていたのに~~~~!!
私の計画ではあの後、良い師匠と二人で旅を続けて色々と良い師匠から師事を仰ぐ予定だったのに!!
これもあいつのせいだ!!
座席の二つ後ろのリョウジの後頭部を見てお前なんかいなくなれ視線を送るボフボーニャは今迄本に視線が行っていたシャムネアと視線が合ってしまい慌てて前を向く。
心の中では「王女殿下のことではありません」と、念仏のように何度も叫びこちらに敵意が向かない様に祈る。その間も別な所では「リョウジのせいだ!!」と、文句を囁く。
そんな人達と対照的に3列目の二人はマイペースに‥‥‥。その内の一人、マイネンスは諦めて狸ね入りして何も考えないようにしていた。
先程までは色々と考えを巡らしていたのだが、身近に王女殿下が居る事が分かってしまい考えるのを諦めたマイネンスであった。
この指揮車に合流する前はまさかこのまま旅を続けるとは思わなかった。その証拠に皆とは別行動であったし、組合に顔を出した時も何も言われなかった。
今までのリョウジの体調管理に関しての報告書を纏めて、若干研究対象と別れてしまうのは後ろ髪惹かれる思いであった。
そこにあの手紙ハトゥーである。送り主はジョルジョネ大尉であった。何でも急いで港の近くの料理屋の名物のお菓子を仕入れて軍に出頭してくれという話であった。
意味が分からず躊躇したが、また研究対象と旅が出来るという事実がウムを言わさず自分を突き動かす。急いでいわれた店に着くと既に準備してあり出前用の箱に入ったお菓子を渡される。
それを持って急いで軍に出頭すると馬が準備してあり、その箱が載せられる馬具が付いた馬に跨り軍人が私を先導してくれる。そこまでは良かった‥‥‥。一時、傭兵組合に所属していたので馬を駆るのは問題ない。
しかし、馬が進むに連れてその先のなんともいえない雰囲気に嫌な予感がして来る。例えようも無いこの雰囲気はあの魔人国の領事館で感じた雰囲気であった。
一瞬戻ってしまおうかと思ったのだが、今運んでいる物を待っている人物を想像すると、その考えは諦めるしかないと‥‥‥。そんな状況の中、とうとう追いついてしまう。
仕方なく「待って!!」と、御者に声を掛けるが体と心が一致していないのは内緒だわ。結局、研究対象への好奇心に負けたのかもしれない。ペルもそうだが、ああいった珍しい検体は100年に一度拝めるかどうかであり滅多に無いことだ。
運んでいたお菓子と同様に研究者たる私には甘美なものであるのは間違いない。だから、今は考えるのを止めてその事に満足してあの後ろの人物達の事を考えるのを止めた。
それぞれ誰かに恨み言を言ったり周囲を見たりと見ていて飽きないのだが、最後の一人、プイホンだけは通常運転で絵日記を書いたり文字の練習をしていたようだ。
彼に付いては何も言う事は無い。だって猫だもの。今は文字の事で頭が一杯のようでその他の事は何も考えていなかったようだ。
☆ ☆ ☆
自分の日記を書き終わり、プイホンさんの算術の問題を書き始める。日記を書いている間も刺す様な視線や文句を言いたそうな感じの視線などこの指揮車にいる皆それぞれの不満があるような雰囲気になぜかほっとしてしまう。
それはなんとなくではあるが今の状況を不満に思っているのは自分だけではなく皆一様にあるようだと雰囲気で分かったからである。
約一名は除外されるが‥‥‥。だって、猫だもの。
プイホンさんの問題を書き上げて座席越しに彼に渡すと彼は文字の練習をしていたようだ。彼は俺から問題を受け取ると、文字の練習は中断するようで貰った問題を必死に考える。
何時もというか、ペルジャーネ先生が書いてくれた報告書のようなものを参考に二桁の問題を出したのだけど相変わらず指を折って考えている状況である。まあ、彼には慌てずゆっくりペースで教えるしかない。本人もあと十枚で100枚と言った時も次は200枚と言っていたのを思い出す。
プイホンさんに問題を出し終わるとやる事が無くなる。先程推察した事を反芻する。この指揮車が向っている場所も知らないし目的も分からない。
まあ、目的は早く奴隷旅団所属中隊に合流する事だとは思うのだが。窓があれば外の景色など眺める事はできるのだろうけど、先程降りた所は崖のような所で眼下に見える海を見て海岸線を進んでいるのは分かる。見えた海が進行方向に対して右側という所からゴルムディアから南下しているのは間違いない。
と、いう事で推察できる事は馬車村に向っているという事で‥‥‥。一日70kmぐらい進む事を考慮すると、大体三日圏内に馬車村があることから、ゴルムディアから200km圏内の馬車村に立ち寄る可能性があるよね?
大尉の中隊が途中で進路を変えてゴルムディアの南部の方に進路を変えたと考えると今日の夕方か明日の朝方には中隊と合流する可能性がある。
そうすると、一晩中移動するのか? 夕方に合流するのなら晩飯は当たるけど一晩中移動ならまともな飯は当たらないかもしれない。
まともな飯が当たらないと、不平を言いそうな人物が約一名。そんな約一名の様子を探る為に目の前の座席を見ると、お嬢様と視線が合ってしまう。
「なんじゃ? 妾は奴隷旅団所属中隊の晩飯には余り期待しておらん。それよりは馬車村や町に寄った時の食堂が楽しみであるからそれまでは我慢する」
我慢するといったお嬢様の表情は少し膨れていたが、この人も我慢する事があるのか? と、そっちの方が気になってくる。余り突っ込むと怒りそうなので、素早くその事を水に流す。そこで、この人ならばどこら辺で奴隷旅団所属中隊と合流するのか分かるよね?
「どうじゃろ。この感じで行けば、夜遅くに合流できるかじゃぞ?」
そんな俺とシャムネアお嬢様のやり取りに聞き耳を傾けていたジョルジョネ大尉がそんな事は知らなかったというふうに驚く。
「そうか、夜遅くにやっと自分の中隊と合流か。あいつ等二人で上手くやっているのだろうか?
‥‥‥。やっていると思うかリョウジ?」
いやいや、俺にそんな事を聞かれても困るだけなのだが‥‥‥。
「一応、算術もバッチリのようだし、大尉の苦労も理解してくれていると思いますよ? 今頃、事務仕事でひぃひぃ言っているかも知れませんよ?!」
「そうかな? それだと合流してから少しは尊敬してくれるかな?」
嗚呼、それじゃ今迄尊敬してくれていなかったような口ぶりだよね。自分で落としてしまっては元も子もないですよと彼には言えない。そんな彼に対して哀れみを感じてしまって励ますような言葉しか見つからない。そんな大尉に対して止めを刺す一撃が‥‥‥。
「なんじゃ、部下に蔑まれておるのかジョネは」
「なっ、なんていう事を言うのですかお嬢様! 私が中隊に戻れば分かる事ですが、武道に関しては彼女達は私に一目置いているのですよ?!」
嗚呼、怒らせてしまったようだ。大尉はこれ以上この場にいると、ろくな事が無いといったふに少し怒った表情をして前の席に戻ると目を瞑って腕を組む。
そんな状況を目の当たりにして、ふと思う事が浮上してくる。それは、ああやって心情を詠まれないようにガードしているのか? でも、無駄のように感じるのだけどシャムネアお嬢様の前では‥‥‥。
ん?
ガード可能なのか?
そんな疑問が浮かんでくる俺であった。
次話へつづく
退院後の体調が悪く、次話は1週間ほどあけます。
予定は4/30水曜日に投稿したいと思います。




