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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第4章 振り回される年季奴隷 》
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<4-12> 「混乱と年季奴隷  (後編)」

最新の本文修正日は2015年1月17日です。

 何でも見通せる神様のようなシャムネアお嬢様に俺を含めて監視する組織が六つあるといわれて指折り数えて考えた俺ですが、どうも俺の知らない組織がまだまだあるようです。それが一体どんな組織であるのかは分からないが想像は出来る。


 しかし、考える内に数が多くなって、まるでスパイ小説のような状態に。果たしてこれからどんな事が起こり得るのか分からなくなる。


 そんな混乱してくる俺の頭を嘲け笑うか如くハルーツン閣下は新たな局面を俺に用意する。何でも新しい装備が出来たようであのシャムネアお嬢様が見ていた本の挿絵でハルーツン閣下の感情露な様子の原因がこの装備の事だったと気付いたからであった。


 ハルーツン閣下はその新しい魔素道具の無線機の試験的な運用を俺等に任せて模索するようだ。その事について自分が意見して良いのか分からなくなる俺であった。






 色々と考えるのだが人の生き死に係わるとなれば躊躇するのは人間だよね?


 そんな事に社会人二年目だった時の建築現場での先輩から怒鳴られた時の事を思い出す。




 「阿佐賀! てめぇの考えた仮設計画でその場で働く作業員が死ぬんだぞ?! そこを考えて仮設計画を考えろ! 今のままでは今朝見たあの足場を組む鳶の何人かの顔をお前は今日の夕方には見る事が出来なくなるぞ、いいのか?!」




 嗚呼、確かそんなふうに怒られたような‥‥‥。内心、だったら貴方が押した判子の意味は何だったのでしょうと聞き返したかったのだが。


 事前に足場を組む業者の担当者にその図面を渡して不具合が無いか確かめ、仮設足場の図面を書いてその上司である先輩の判子を貰って‥‥‥。


 それまでは良かったのだが朝になって「これじゃ足場が組めない」と、鳶の親方が事務所に文句を言いに来た時にいわれた言葉であった。


 その鳶の親方にも文句は言いたかった。「おめぇ、前日の昼頃に俺の昼飯の時間を邪魔してまで現場を見に来たのはなんだったんだ?」と、言いたかった。俺の飯の時間を削ってまで現地で説明したのは無駄に終わってこの図面じゃ足場を組めないと来たもんだ。


 まあ、愚痴であるがそんな建設現場での出来事でさえ計画的に行かないのに常時命が係わってくる戦闘や紛争にこれから係わるかもしれない俺が、そういった彼等の技術に対して意見しても良いのであろうか?



 悩めば悩むほど答えは出ない。


 一瞬、「責任」という言葉が出てくるのだが、その責任を俺は追わなければならないのか?


 「いや、責任を取らなければならないでしょ? それが発言するという事だ!! 」と、誰かが俺の心の中で自分に突っ込んでくる。


 そんな苦悶している俺を嘲笑うような声が後部座席から聞える。一瞬、皆の視線が後ろに向いて何事かと注目しているとシャムネアお嬢様であった。




 「リョウジ!! その答えは一生考えても出ぬぞ!! 妾もその事については考えたことはあるのだが、ご多分に漏れず悩む事になる。


 しかし、その一言が無かった為に悩む事になるというのも心に留める必要がある。ようは匙加減であるがそれが中々難しい。それが気になるならば参考意見として述べればよかろう?!


 ‥‥‥。違うか?」




 彼女はこれまた俺の苦悶する心の中を覗いてくれたようだ。他の皆は一体何のことなのか首をかしげているのだが、ジョルジョネ大尉は何かを察したように俺の顔を見る。




 「まあ、言いたくなければいいのだが、思った事を心の中に貯めるのは精神状よくないぞ? 多分この道具の利点と欠点のことだろう? 想像はつく。魔素道具であるから魔素の流れによっては探査術で声の発する場所や道具を使っている場所などが、敵というか第三者に見つかってしまうということか?


 手紙ハトゥーもそうだが、あれが飛び立つ際に見つかって合図をした事を分かってしまう欠点も同じものだろ。ようはどういった局面で使うのが良い方法なのかであって、使う側の問題だろ? これは道具だぞ? 判断するのは人であって君の意見を採用するのも人である。


 一々、その事で悩むのはいい加減辞めろと言いたいのだが、逆にそれは君の良い所でもあるから私は直せとは言わない。


 思いついた事を話せば良いじゃないか? 話さないで後悔するよりは話して後悔する方が百倍ましだぞ?!」




 そのジョルジョネ大尉の意見に同感だといった表情をするシャムネアお嬢様に、ペルジャーネ先生も恐る恐る意見する。




 「確かに貴方の技術は私達より進歩しているかもしれないけど、ジョネが言った通りその技術を扱うのは人よ。道具が進歩していても人が進歩していなければ意味無い事ね。その技術のお陰で人が滅ぶ結果になっても伝えた貴方が悪いのかしら?


 違うよね? その技術を使った我々側の責任ではなくて? 誰も貴方が技術を伝えたから我等が滅びかけたなんて、心無い一部の人はいうかもしれないけど大部分はそんな事口にもしないわ! それに、何年か経つと貴方の技術を追い抜くかもよ? その事に貴方が貢献したという事実の方が大事だと思わない?」




 嗚呼、次々に説得されていきそうで、このまま俺は拷問を受ける罪人のように知っている知識を吐き出させられてしまうのか?


 そんなことまで頭の中をぎる。なんだか責められる俺のこの場の雰囲気に最後に止めを刺すのか、ミリクナ医務長が口を開く。




 「今のままでいいのよ。誰も進んで貴方にすがろうとは思っていない。我々の命運は自分達で切り開くわ!! リョウジの意見は聞く耳を持っているという程度の事よ。あなたが思い悩んで意見を躊躇とまどうというのなら、それはそれで良いという程度。話したくないというのならそれでいい。


 だけど思い悩むなら話して気分爽快になった方が私は貴方の健康を考えるとそう言いたくなるわね」




 「はあ、皆様の意見を参考にしたいと思います‥‥‥。いや、意見という程度のものじゃなくて、この前話した火縄銃の話に連なる事だった物で、この場で話していいものかと躊躇しました。そのなんていうか、俺の一言で戦場において誰かが死ぬ事になった時の事を考えると、さすがに気軽に話せないものでして」




 ついそんなことを口走ってしまい、後悔し始めるのだが。先程皆がいった事を反芻する。参考意見として彼等は俺の話を聞くといっていた。まあ、参考程度に留めてくれれば良いのだが‥‥‥。




 「その魔素道具は私の国では「無線」といいまして読んで字の如く、最初は「有線」、線が繫がった状態で遠くの人と会話する道具が始まりでして。「有線」は「デンワ」と言いました。まあ似たようなものですが。どちらも第三者が盗み聞きしようと思えば出来るものでして「無線」なんかは三角測量で発信地点を特定する事まで出来ます。有線は線を辿れば良いので分かりきったことですが。


 嗚呼、何が言いたいのかと言いますと、例の大筒での攻撃の際、直に測定出来ない距離の修正に無線が使われるという事です。攻撃側にとっては画期的な連絡方法ですが防御側からいうとその無線が発するまでは感知不可能といっていいと思います。


 同様に火縄銃も改良されて攻撃距離が伸びれば同じです。王国の一大事を考えれば、先ずは恐れ多い事ですが国王陛下、次に王族をいづれかの方法で決着がつくという事です。攻撃距離が10メタ((km))以上になる可能性は無しではないですよ?


 なんだか皆さんの不安を煽るようで申し訳なかったので話すか話さないか悩んだのですが、無線の事を思い出してつい話してしまいました。あと‥‥‥」




 「まだあるのか?!」




 「はあ、これは可能性なのですが。魔素道具の無線がどういった仕組みかは分かりませんが、その道具と火薬を組み合わせますと‥‥‥」




 「それ以上は言わなくてもいい。君の言いたい事が分かった。何処に耳があるか分かったものじゃない」




 そういって俺が無線爆弾の話をしようとしたところでジョルジョネ大尉が俺の話を中断させる。


 だから言いたくはなかったのだが、最後の無線爆弾で命を狙われる事だけは勘弁してほしい。いや、狙撃の方が怖いかな爆殺であれば一瞬であるし、狙撃は当たり所が悪かったら苦しむと聞いたことがある。


 特にマスケット銃や初期のライフル弾なんかは体の中に入るとアバレまくったと聞く。どうせならファンタジーな世界であるならそのままのほうが良かった。


 中途半端な科学知識がある異世界だとその科学知識は敵、人をいかに大量に殺すかを考える事が多くなって残虐になるというのがセオリーであるからね。俺がその敵にならないとは言いきれない。



 今頃、ジョルジョネ大尉なんかはパンドラの箱を開けてしまったと後悔しているに違いない。あっ、そもそも。そのパンドラの箱がこの世界にあるのかは分からないが‥‥‥。そのパンドラの箱を開けて後悔しているのはジョルジョネ大尉だけではなく、この俺自身も当てはまるのではないか?



 そんな後悔をしても後の祭りだと自分に言い聞かせる。すると、何か慌ててジョルジョネ大尉がこの馬車から外に出て行ってしまう。外に居たたぶんハルーツン閣下の特務隊員の用を思い出したのか?


 それとも俺が話したことを報告して貰うのか? 何れにしても分からないが大尉は外に、ミリクナ医務長やペルジャーネ先生、それにボフボーニャさんは必死に俺が話した言葉を纏めて上司にでも送るのだろう。



 それにしても、なんで火縄銃の事を思い出したのだろう? っていうか何でその事が忘れていた記憶だと認識できた方が気になってくる。


 確か、ジョルジョネ大尉と対談してミリクナ医務長が指揮車に乱入した時に記憶をそう‥‥‥。操作されて強制的に消去されたような。


 ああ、あの時は首輪が作用していたからか? 今は後ろのお嬢様にキッ、キ、キスをされて首輪が取られたから記憶の一部が戻ってきたのか? 分からない。


 そもそもあの首輪の仕組みすら分からないのに、その首輪の機能なんか分かるはずも無い。



 それにしてもプイホンさんがこの馬車に居る事は皆さん無視ですか? まあ、確かに俺達の会話には興味が無いといった感じに本を読んでいたのだが、耳だけは会話していた人物の方向に向いていた。


 疑えばきりが無いのだが、まさかプイホンさんがスパイという話は無いよね? そんなまさかの出来事に疑心暗鬼になって行く自分がいる。


 つい確認するかのように後ろの座席のシャムネアお嬢様を見てしまう。しかし、お嬢様は無視するように自分の本を読んでいる最中で返事は聞く事は出来なかった。


 そういえばあのハルーツン閣下の特務部隊にプイホンさんと同じような土猫がいたよね? いかにも間抜けそうな素振りであったがあのハルーツン閣下の部下である。ただの間抜けが勤まるはずは無い。



 もうこうなったら何が虚実で何が真実か分からなくなってしまう。頭をかきながら後ろの席に戻るとお嬢様の隣に座って考えを巡らす。


 横の人は暇人、万が一プイホンさんがスパイであったならばきっとこの場を引っ掻き回す為に真実を話してくれるであろうか? 今度はこのお嬢様を疑ってしまう。そこできりが無くなりますますこの場にいる人達を疑いだす事になって混乱してくる。


 しばらくして、堂々巡りをしていた思考に疲れどうでもよくなる。もうこうなったらどうにでもなれだ。なるようにしかならない。それだけはハッキリしているし、命の危険があるのはこの地にいる時点で変わりの無い事だよね。


 そんな結論が出てくると後は受け入れるだけだ。万が一プイホンさんがスパイで俺の情報を調べられても、たかが俺である。大した事じゃないし、彼の手引きで俺が攫われても命を狙うことは無いよね?


 命を狙うならもう既に何回死んでいる事か? そんな状況は何回も遭ったし誘拐もそれ以上にあった。少し冷静になれ俺!!




 「答えは出たようじゃな、リョウジ? 詰まらぬ事を考えても疲れるだけじゃ。同じ疲れるなら楽しんで疲れたほうがお得じゃ!!」




 正論であった。最近というか一時はポジティブな考え方になっていた俺であったが、ゴルムディアに着てからいろんな事がありすぎてまた元の自分に戻る所であった。ポジティブ思考で行かないと、この地ではやっていけない事を忘れていた。



 そんな答えが出たところで、外に居たジョルジョネ大尉が馬車の中に戻ってくる。平静を装っているが額には汗が浮かんでいた。戻ってきた大尉は俺達に「出発します」と、一言言って前の席に座るとミリクナ医務長達と同じように一心不乱に何か書類に書き記すとそれを折り畳む。


 どうやら報告書を誰か、上司に手紙ハトゥーで送るらしい。馬車が動き出して安定してからは自分の道具袋を漁って日記を出すと今までの出来事を書き記すことに集中する。


 ついでに今の心境やその心境に至った経緯を書き記す。また、後ろ向きに陥った時にこの日記を読み返してポジティブに戻る場合があるかも知れないからね。


 そんな気持ちが切り替わった俺の様子を覗くように書いていた日記を覗き見ようとしたお嬢様に一瞬困った顔をしてしまう俺であるが「そんなたいそうな事は書いていませんよ」と、お嬢様にいって前の席に移ると彼女に見えないように続きを書き記す。




 「そのパンドラという箱から、最後に出てきた希望をそなたは忘れておる。まあ甘美な言葉ではあるが‥‥‥」




 そんな言葉を囁いたお嬢様の顔を見ると視線が合ってしまう。視線が合ってしまうと僅かに俺に微笑んでまた自分の本を見る。一瞬何を言ったのか理解できなかったのだが、先程の俺が考えていた事を察しての事らしい。


 「だけどお嬢様、その希望のお陰で苦しむ話は五万とあるのですよ?」とはいえない。そんな考えを一瞬考えたが直ぐに打ち消す。今さっき、ポジティブになるといったばかりじゃないか。



 日記を書いていく内に、攫われていた時の事を思い出す。その事もついでに書き始める。あの時は本当にどうなる事かと考えていたが後半は諦めもあったがそれはそれで貴重な体験ではあった。


 人生であんな体験を出来るのはそんなに多くは無い。どちらかといえば体験したくない部類に入るのだが‥‥‥。今も対して変わらない。相変わらずどこへ向っているのかさえ分からないし、この後どうなるのかも分からない。



 半分また元の木阿弥になりかけた頃、突然お嬢様が声を上げる。その声に驚く一同、一体何があったのかとお嬢様に注目すると何か思い出したようだ。




 「あ~~~~~!! ジョネ!! あれは? あれ、あれだよ、あれ!! 妾はあれがあるからと言ったからこうして我慢して座っていたのじゃぞ?!」




 嗚呼、あの港近くの料理屋のデザートのことらしい。当初の予定ではそこに行くはずであったのだが、夜明け前の騒動のお陰か知らないが予定が変更になってゴルムディアを発ったのだよね?


 そんなお嬢様の言葉に反応したジョルジョネ大尉の態度がおかしい。あれ? ひょっとして先程慌てて外に出て行ったのは頼んでいたものが着ていなかったので慌てて確認しに行ったのか?


 すると、微かに「待って~」と、誰かが外で呼ぶ声がする。何回そんな声が聞えたかと思うと馬車が横道にそれたのか、若干振動して速度が落ちると止まってしまう。


 馬車が完全に止まると外の音がはっきり聞えてくる。馬のいななきが聞えて、かすれた声まで聞えてきて行き成り扉を叩く音がする。


 先程まで額から汗を浮べていたジョルジョネ大尉が安堵というかそんな表情が緩んだ状態になる。何かが間に合ったといった感じになり、慌てて扉を開けると何かの大きな箱を抱えたマイネンスさんが顔を出す。




 「嗚呼、待っていた。マイネンス先生!! すまんかったね‥‥‥。


 え~、お嬢様頼んでいたものがやっと到着しました。多少急いでいたので形が変わっているのかもしれませんが味は変わらないでしょう?」




 「え~!! 見た目の第一印象は大事なんですけど!!」




 そういって彼女は今か今かとその箱を開けるのを待っている。若干俺も一体どんなデザートが出てくるのかと気になってくる。まあ、俺等の分は無いと思うけど‥‥‥。


 箱は結構な大きさで出前の岡持の箱のようで横の板を上に持ち上げると多重構造になっているようで上段には氷入っていて下のデザートを冷やす構造になっていた。


 中段と下段を見ると皿の上に山盛りに乗っかった茶色い物にお嬢様の目が点になる。中段の皿を岡持から出すとお嬢様の目の前にその皿を置くジョルジョネ大尉がさあ召し上がれといっているようだ。




 「なんじゃこれは?! ポディラムか?」




 そんなパンと見間違えるほどの見栄えであり、拳大の食べ物のようだ。匂いは流石に俺のほうまでは匂って来ない。しかし、何処かで見たことがあるよな形に首を傾げてしまう。


 恐る恐るというか、若干ガッカリ感5割り増しのお嬢様は皿に載ったそのパンの様な物を掴むとその柔らかさに慌てて掴み損なってしまう。




 「あわわ!! 柔らかいぞこれ?!」




 そんな言葉に大尉は早く召し上がれといったように下段の皿をテーブルに置くと岡持を外で待っている誰かに渡すようだ。マイネンスさんは一人で来たかと思ったが俺達がどこにいるのか知らないのに一人で来るはずが無い。多分、特務隊員の一人が先導して来たに違いない。



 どうやら俺達もご相伴に預かれるようで下段の皿を皆に回して一個ずつ皆が摘んでその柔らかさに驚く。プイホンさんが恐る恐る鼻を近づけてクンクン匂いを嗅ぐ。


 そして、これまた恐る恐る口をつけると、一気にかぶり付いて上手いうまいといって食べてしまう。まるでそれが合図であるかのように皆が一斉に食べ始める。


 シュークリームであった。外観は薄いシューに包まれていて中にホイップクリームとカスタードクリームが入っていた。今のお嬢様は天にも昇るような心地に違いない。


 5個ほど残った皿ごと外に持っていった大尉は戻ってきた時には空の皿であった。外に居るメルディム護衛分隊長や御者親子に渡してきたのであろう。一方お嬢様の前に出した山盛りのシュークリームは瞬く間に消えてしまう。


 皿の山盛りのシュークリームを食べて満足したのか、ラシャネスさんに口の周りを拭かれて口を開く。




 「う~ん、実に美味で‥‥‥。フワフワして‥‥‥。甘くて‥‥‥。美味かったなジョネ!! で、これは何て名前?」




 聞かれたジョルジョネ大尉はそんな彼女の言葉を予想していなかったようで、一瞬考えたようだがマイネンスさんの顔を見てこれは何ていうのという感じ見つめているではないか。


 当の見つめられたマイネンスさんも何か困った表情になってキョロキョロするのだが‥‥‥。皆さん急いでいたので、多分あれとかこれとかそういた抽象的な物言いで正式名を聞き忘れたに違いない。


 「私の国では『シュークリーム』と呼ばれていましたが。まあ、王都に本店があるようなのでその時にまた食べに行けば良いですよね?」




 「なんと、『シューク・リーム』とな。けったいな名前じゃな。直訳すると泥団子か。確かどこかの種族の言葉にあったな‥‥‥。その名前は却下」




 助け舟を出したつもりが失笑の対象になってしまう。まあ、こちらの言葉は分からないので仕方がない。確か、クリームの入ったキャベツが語源であったような‥‥‥。


 合コンで仕込もうとして身に着けた知識じゃないですよ? ‥‥‥。いや嘘です。仕込む為に覚えた知識です。実際は忙しすぎてそんな場所に顔すら出した事は無かったのだが、使う事無く無駄になった知識であった。




 そんな泥団子という直訳のお陰でお嬢様の興味はそれてしまって、半笑いのジョルジョネ大尉らはほっとしたのかため息を付いていた。


 テーブルの上の皿を魔技箱にしまうと天井を叩いてどうやら出発らしい。マイネンスさんはさんざん迷った挙句プイホンさんの隣、三列目の席に座りお嬢様に相対しないようにそうっと椅子に腰掛ける。


 当然だよね。中身が王女殿下というのは、見た目に関係なく感じることが出来るようだ。もしかすると聞いているのかもしれない。



 どうやらメンバーが揃ったのか先程よりは速度を上げたように感じて馬車は進む。この先はどこへ向うのかは知らないが行き先は多分南。その南に何があるのか知らないが俺はただ載せてもらう身なので文句は言えない。




 これからどんな事があるのか想像することも出来ない俺であった。




 次話へつづく

次話は4/23水曜日の投稿予定になります。

なんとか退院しました。

2週間ぶりで忘れられたかもしれませんが‥‥‥。

完治はしていないのでぼちぼち右肩の様子を見ながらの投稿となります。

病状や入院生活の愚痴などこれからの事は活動報告に書いてあります。

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