半分の力
第85話 半分の力
王城の中庭。
そこには、城内でもかなり広い訓練場が設けられていた。
石造りの壁に囲まれ、中央には何度も修復された跡のある地面。
武器を立てる棚。
訓練用の人形。
そして、その中央に。
一人の男が立っていた。
「こやつじゃ」
ベラが言う。
「現魔王軍軍隊長、ガレス」
僕は目の前の男を見上げる。
大きい。
身長は僕より頭一つ以上高く、肩幅も広い。
黒い軽鎧。
短い灰色の髪。
右のこめかみから伸びる一本の黒い角。
立っているだけなのに。
圧がある。
「ガレス」
ベラが呼ぶ。
「はい」
ガレスがベラへ向き直る。
「妾はこれからアンタレスたちと会議じゃ」
「承知しております」
「その間」
ベラが僕を見る。
「ソルに稽古をつけよ」
「この少年に?」
ガレスの視線が僕へ向く。
鋭い。
「そうじゃ」
「理由を伺っても?」
「戦えば分かる」
それだけ。
ガレスの眉が僅かに動く。
僕はベラを見る。
「それだけ?」
「十分じゃろう」
「いや、もう少し説明とか」
「必要ない」
「ベラ」
「何じゃ」
「僕が負けたら?」
「負ければよい」
「軽い!」
ベラが笑う。
「そのための稽古じゃ」
「それはそうだけど」
「死ぬなよ」
「急に怖いこと言わないで!」
「ガレス」
「はい」
「殺すでないぞ」
「承知しております」
「ソル」
「何?」
「全部使え」
ベラの目が少しだけ鋭くなる。
「ここまで覚えたもの」
「……」
「全てじゃ」
僕は腰の《明星》へ手を置く。
「分かった」
ベラは満足そうに頷く。
「では妾は行く」
「もう?」
「会議じゃ」
「終わったら見に来てよ」
「間に合えばな」
「それまで生き残れってこと?」
「そうじゃ」
「やっぱり怖い!」
ベラは笑いながら訓練場を出ていった。
そのまま。
王城の奥へ。
会議室へ向かう。
残されたのは。
僕と。
ガレス。
ガレスが腰の剣を抜く。
大剣。
刃が厚い。
どう見ても重そうなのに。
片手で持っている。
「ソル」
「はい」
「一つだけ先に言っておく」
「何ですか?」
「今の俺は」
ガレスが剣を肩へ乗せる。
「全盛期の半分程度しか力がない」
「……半分?」
「ああ」
「それで軍隊長?」
「不満か?」
「いや」
むしろ。
嫌な予感しかない。
「五百年前」
ガレスが続ける。
「魔王軍主力の多くは、自ら魔力の半分以上を封じた」
「アンと同じように?」
「似ている」
「ガレスも?」
「ああ」
「じゃあ今は」
「本来の半分」
「……」
立っているだけで。
この圧。
これで半分。
「ベラ」
思わず。
もういない相手へ呟く。
「とんでもない人を置いていったな……」
「始めるぞ」
ガレスが構える。
「はい」
僕も《明星》を抜く。
一度。
息を吐く。
レグルス。
シリウス。
アルデバラン。
ルナ。
アークトゥルス。
全部。
使う。
*
その頃。
王城内の会議室。
アンタレス。
ベラトリクス。
セラ。
そして。
魔王軍の主要幹部たちが席についていた。
机の上には。
古い記録。
封印に関する術式。
現在の魔族領の戦力記録。
その全てが広げられている。
「第二封印」
セラが言う。
「本当に解放するおつもりなのですね」
「そのために集まった」
アンが答える。
ベラは。
アンの隣。
少し離れた席で腕を組んでいた。
今の魔王は。
アンタレス。
だから。
ベラは。
最初から口を挟まない。
「第一封印は」
セラが続ける。
「陛下ご自身の判断で解放できる」
「そう決めた」
「はい」
「でも第二封印以降は違う」
「分かってる」
セラが一枚の記録へ手を置く。
「約四百五十年前」
「……」
「第二封印を解放する際は」
「……」
「当時、力を封じた者たち全員で協議する」
「……」
「そう決めました」
アンが頷く。
「理由は」
一人の幹部が口を開く。
「陛下だけの問題ではないからだ」
「そうです」
セラが答える。
「第二封印を解けば」
「……」
「魔王軍主力も」
「……」
「同じ段階へ戻る」
ベラの目が。
僅かに細くなる。
「主力も?」
「はい」
セラがベラを見る。
「当時」
「……」
「陛下だけでなく」
「……」
「魔王軍主力十二名も」
「……」
「本来の魔力の半分以上を封じました」
「ほう」
「理由は」
「分かっておる」
ベラが答える。
戦争の後。
力が残りすぎれば。
また争いが起きる。
人間と。
魔族。
あるいは。
魔族同士で。
「力は」
ベラが言う。
「持っておるだけで争いを生むこともある」
「はい」
「それで」
アンが口を開く。
「私は第二封印を解放したい」
空気が変わる。
「理由は?」
セラが聞く。
アンは迷わない。
「天使が戻ってきた」
一つ。
「ゼファリエルも」
一つ。
「裂け目も」
一つ。
「五百年前より広がってる」
誰も。
何も言わない。
「今のままで」
アンが続ける。
「様子を見る段階じゃない」
「……」
「力を戻す」
その言葉に。
何人かが頷く。
でも。
セラだけは。
まだ黙っていた。
*
「始め!」
ガレスの声。
次の瞬間。
姿が消えた。
「っ!」
速い。
反射的に《明星》を上げる。
ガンッ!
衝撃。
腕。
肩。
全身へ。
「ぐっ……!」
押し込まれる。
重い。
「受けるな」
ガレスの声。
「え?」
次の瞬間。
力が増す。
「うわっ!」
身体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
すぐに。
立つ。
「……これで半分?」
「そうだ」
「冗談じゃない」
「冗談を言う場面か?」
「ないです」
僕は。
呼吸を整える。
金色の魔力。
全身へ。
「《星装》」
光が。
身体を包む。
ガレスの目が。
僅かに動く。
「それが」
「レグルスから受け継いだ力です」
「勇者の」
「はい」
「なら」
ガレスが一歩踏み込む。
「見せろ」
また。
来る。
今度は見える。
右。
大剣。
横薙ぎ。
僕は。
半歩。
後ろ。
避ける。
シリウスに叩き込まれた足運び。
最小限。
刃が。
胸元を通る。
そのまま。
踏み込む。
「《無拍》」
《明星》が。
音もなく走る。
ガレスが。
大剣で受ける。
キンッ!
火花。
「今のは?」
「シリウス」
「剣聖か」
「はい」
僕は止まらない。
二撃目。
三撃目。
刀。
肩。
脚。
全身。
星装を循環。
部位集中。
踏み込み。
でも。
ガレスは。
全部。
受ける。
「軽い」
「まだ!」
さらに。
刀身へ金色の光。
集束。
「《彗星》!」
一閃。
ガレスが。
大剣を立てる。
ドォン!
衝撃。
地面が。
抉れる。
ガレスが。
初めて。
一歩。
後ろへ下がった。
「……」
「効いた?」
「少しな」
「少し!?」
ガレスが笑う。
「だが」
魔力。
膨らむ。
赤黒い。
濃い。
重い。
空気が。
沈む。
「今度は俺だ」
大剣。
振り下ろし。
正面。
受けるな。
アルデバラン。
僕は。
《明星》を斜めに立てる。
「《流転》」
刃と刃。
触れる。
力。
そのまま受けない。
横へ。
逃がす。
ガレスの大剣が。
僕の横を。
地面へ。
叩きつける。
ドゴォン!
地面。
大きく砕ける。
「……ほう」
ガレスの目が。
変わる。
「今の」
「アルデバランです」
「守護騎士」
「はい」
「面白い」
ガレスの口元が。
初めて。
大きく上がった。
*
「第二封印を解けば」
セラが言う。
「陛下の力だけではありません」
「分かってる」
「魔王軍主力も」
「……」
「封じていた魔力を戻すことになる」
「そう」
「それは」
一拍。
「軍そのものの性質を変える」
「分かってる」
「五百年近く」
セラの声が少し低くなる。
「私たちは」
「……」
「戦争をしないために」
「……」
「力を眠らせてきました」
「……」
「それを」
「……」
「今」
セラが。
アンを見る。
「起こす」
アンは。
黙って。
セラを見る。
「怖い?」
「はい」
即答。
「また」
セラが続ける。
「五百年前のようになるのではないかと」
「……」
「この国が」
「……」
「戦場になるのではないかと」
ベラは。
黙って聞いている。
まだ。
何も言わない。
これは。
今の魔王と。
今の魔族が決めること。
だから。
*
ガレスの攻撃が。
速くなる。
一撃。
二撃。
三撃。
全部。
重い。
避ける。
流す。
受ける。
間に合わない。
「遅い!」
「っ!」
蹴り。
腕で受ける。
吹き飛ぶ。
空中。
身体を捻る。
着地。
「まだ!」
星装。
脚へ集中。
踏み込み。
一気に。
距離を詰める。
《明星》。
抜刀。
「《無拍》!」
ガレスが。
身体を反らす。
刃が。
鎧を掠める。
そこから。
もう一歩。
星装。
全身。
循環。
重心。
前。
「《流星》!」
連撃。
一閃。
二閃。
三閃。
止まらない。
流れるように。
刀を繋ぐ。
ガレスが。
大剣で受ける。
受ける。
受ける。
「ほう!」
四撃目。
五撃目。
六撃目。
《流星》。
一撃で倒す技じゃない。
流れを切らず。
相手を押し続ける。
シリウスの剣。
僕自身の星装。
その二つを。
今。
繋げる。
ガレスが。
少しずつ。
下がる。
「いい」
笑っている。
「もっと来い!」
「言われなくても!」
僕は。
さらに踏み込む。
《流星》。
最後の一撃。
ガレスの大剣と。
正面からぶつかる。
ガンッ!
互いに。
弾かれる。
僕は。
すぐに。
距離を取る。
息。
乱れる。
「はぁ……はぁ……」
でも。
まだ。
ある。
《天曜》。
僕は。
目を閉じる。
聞く。
届ける。
繋がる。
借りる。
昼。
星は見えない。
でも。
いる。
僕は。
意識を向ける。
『――いる』
小さな声。
聞こえる。
「力を」
言葉じゃない。
意思。
借りたい。
届く。
そして。
返る。
身体へ。
細かな光。
星装とは。
違う。
もっと。
静かな光。
「……」
ガレスの目が。
鋭くなる。
「それが」
「《天曜》」
僕は。
《明星》を構える。
「アークトゥルスから教わりました」
「賢者まで」
「はい」
ガレスが。
笑う。
「なら」
大剣を。
両手で握る。
「全部」
「……」
「見せろ!」
来る。
魔力。
さらに。
膨らむ。
でも。
まだ。
半分。
ガレスは。
抑えている。
僕は。
星装。
《天曜》。
重ねる。
身体。
軽い。
視界。
広い。
ガレス。
踏み込み。
大剣。
横。
僕は。
受けない。
「《流転》!」
滑らせる。
流す。
そのまま。
懐へ。
「《無拍》!」
一閃。
ガレス。
肩を引く。
避ける。
僕は。
止めない。
「《流星》!」
連撃。
一。
二。
三。
ガレスが。
受ける。
四。
五。
六。
追い込む。
そして。
最後。
全ての光を。
《明星》へ。
「《彗星》!」
金色の一閃。
ガレスの大剣へ。
ぶつかる。
ドォォォン!
衝撃。
訓練場の壁まで。
震える。
ガレスが。
大きく。
後ろへ。
一歩。
二歩。
三歩。
「……」
僕も。
止まる。
腕が。
痺れている。
でも。
立っている。
ガレスが。
自分の大剣を見る。
刃。
僅かに。
欠けている。
「……」
次の瞬間。
ガレスが。
笑った。
大きく。
「いい」
「え?」
「いいぞ!」
魔力が。
一気に。
膨らんだ。
「っ!?」
空気が。
変わる。
さっきまでとは。
比べものにならない。
赤黒い魔力。
訓練場全体を。
飲み込む。
「ガレス?」
僕は。
一歩下がる。
「待って」
聞いていた。
今は。
半分。
それ以上は。
封じている。
なのに。
今。
何か。
外れた。
「……っ」
ガレス自身も。
目を見開く。
「しまった」
「え?」
「熱くなりすぎた」
「ちょっと待って」
魔力。
まだ。
上がる。
「ガレス!」
「ソル!」
ガレスが。
叫ぶ。
「避けろ!」
「急に言われても!」
大剣。
振られる。
速い。
今まで。
見えていた。
でも。
今度は。
見えない。
「っ――!」
反射。
《流転》。
《明星》を。
斜めに。
触れる。
でも。
重い。
重すぎる。
流せない。
「ぐっ……!」
腕。
肩。
全身。
魔力。
ぶつかる。
「うわああああっ!」
耐えきれない。
身体が。
浮く。
そして。
吹き飛んだ。
訓練場の壁へ。
違う。
壁じゃない。
その先。
建物。
窓。
「え」
ガシャンッ!!
*
「私は」
アンが。
静かに言う。
「第二封印を解く」
セラ。
幹部たち。
全員が。
アンを見る。
「理由は」
一拍。
「戦争を始めるためじゃない」
「……」
「戦争を」
「……」
「終わらせるためでもない」
「……」
「守るため」
アンが。
言う。
「今ある」
「……」
「五百年続いた平穏を」
セラの目が。
少しだけ。
揺れる。
「力を眠らせたまま」
アンは続ける。
「天使に奪われるくらいなら」
「……」
「私は」
「……」
「使う」
一人の幹部が。
頷く。
「賛成だ」
別の者も。
「私も」
「異論はない」
セラが。
最後まで。
黙っている。
ベラは。
アンを見る。
そして。
ようやく。
口を開く。
「アンタレス」
「はい」
「妾なら」
一拍。
「解く」
「……」
「じゃが」
ベラは。
アンを。
真っ直ぐ見る。
「今の魔王は」
「……」
「妾ではない」
「……」
「決めるのは」
「……」
「お主じゃ」
アンが。
少しだけ。
目を見開く。
「五百年前」
ベラが続ける。
「妾が決めたことを」
「……」
「今のお主が」
「……」
「そのまま守る必要はない」
「……」
「今を見て」
一拍。
「決めよ」
アンが。
静かに。
頷く。
そして。
口を開こうとした。
その瞬間。
ガシャァァァン!!
「っ!?」
窓。
いや。
壁際の大きな硝子が。
派手に砕けた。
「何事!?」
セラが立ち上がる。
次の瞬間。
何かが。
部屋へ。
飛び込んできた。
「うわああああっ!」
ドガァン!
長机の端。
椅子。
資料。
全部。
巻き込んで。
床を転がる。
「……」
「……」
「……」
静寂。
全員。
固まる。
煙。
埃。
そして。
その中から。
「……痛い」
声。
「ソル!?」
アンが立ち上がる。
「何をしておる!」
ベラも。
思わず立つ。
僕は。
床の上。
仰向け。
「いや……」
身体。
痛い。
でも。
生きてる。
「僕も」
一度。
咳。
「聞きたい」
入口。
いや。
僕が飛んできた。
割れた窓の向こう。
「申し訳ありません!」
大声。
ガレス。
「……」
全員の視線が。
そちらへ。
ガレスが。
訓練場側から。
ものすごく気まずそうな顔で立っている。
「ガレス」
セラの声。
低い。
「はい」
「何を」
一拍。
「したのですか?」
「……少し」
「少し?」
「熱くなりまして」
「……」
セラの眉が。
動く。
ガレスが。
視線を逸らす。
「抑えていた魔力が」
「……」
「少し」
「……」
「漏れました」
「漏れた?」
僕は。
床から言う。
「漏れたって量じゃなかったよ!」
「すまん」
「僕、飛んだんだけど!」
「見れば分かる」
「そこじゃない!」
ベラが。
僕を見る。
「怪我は?」
「多分ない」
「本当か?」
「星装でなんとか」
アンが。
僕のところまで来る。
しゃがむ。
「太陽は?」
「使ってない」
「そこ確認するんだ」
「大事」
「いや今それどころじゃ」
アンが。
僕の身体を見る。
大きな怪我がないのを確認して。
小さく息を吐く。
「よかった」
「うん」
その時。
一人の幹部が。
ガレスを見る。
「今」
「……」
「封印を」
「……」
「一瞬」
「……」
「越えたのか?」
ガレスが。
黙る。
「……」
「答えろ」
「……はい」
部屋の空気が。
変わった。
セラも。
アンも。
ベラも。
ガレスを見る。
「どの程度」
セラが聞く。
「正確には」
ガレスが答える。
「分かりません」
「……」
「ただ」
自分の手を見る。
「抑えが」
「……」
「一瞬」
「……」
「外れました」
「……」
沈黙。
ベラが。
小さく。
笑った。
「なるほどの」
「ベラ?」
僕が聞く。
「何?」
ベラは。
ガレスを見る。
「身体が」
一拍。
「戻ろうとしておる」
「戻る?」
「封じた力を」
「……」
「もう」
「……」
「必要としておる」
アンが。
ベラを見る。
セラも。
何も言わない。
「五百年」
ベラが続ける。
「力を眠らせておった」
「……」
「じゃが」
「……」
「敵が戻った」
一拍。
「なら」
「……」
「身体も」
「……」
「戦う準備を始める」
ガレスが。
拳を握る。
アンが。
しばらく。
何も言わない。
そして。
ゆっくり。
立ち上がる。
「セラ」
「はい」
「会議は」
一拍。
「終わり」
「……」
「結論は」
全員が。
アンを見る。
現魔王。
アンタレス。
「第二封印を」
一拍。
「解放する」
セラが。
目を閉じる。
そして。
静かに。
頭を下げた。
「承知いたしました」
幹部たちも。
次々と。
立ち上がる。
「異論なし」
「同意する」
「準備に入る」
ガレスも。
割れた窓の向こうで。
静かに。
頷いた。
僕は。
床に座ったまま。
アンを見る。
「決まったんだ」
「うん」
「僕が飛んできたから?」
「それだけじゃない」
「だよね」
「でも」
アンが。
ガレスを見る。
「最後の一押しにはなった」
「……」
「じゃあ僕」
「何?」
「役に立った?」
アンが。
少し考える。
「窓を壊した」
「僕じゃない!」
ベラが。
笑う。
セラは。
割れた窓を見る。
「修理費は」
一拍。
「ガレスへ請求します」
「承知しました」
「あと訓練場の修繕も」
「……承知しました」
「よかったね」
僕が言う。
「ソル」
「何?」
「元はと言えば」
「……」
「お前が」
「ちょっと待って!」
「強すぎたから」
「それ褒めてる!?」
ガレスが。
初めて。
笑った。
「褒めている」
「ならいいです」
「よくない」
セラが言う。
「二人とも反省してください」
「僕も!?」
「当然です」
「理不尽!」
アンが。
小さく笑う。
ベラも。
肩を揺らしている。
でも。
その空気の中で。
一つだけ。
確実に。
決まったことがある。
約四百五十年前。
平和のために。
自ら封じた。
魔族たちの力。
その第二封印が。
今。
解かれる。
現魔王。
アンタレス。
そして。
魔王軍主力。
五百年近く。
眠らせていた力が。
再び。
目を覚ます。
戦争を始めるためじゃない。
今あるものを。
守るために。




