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158/159

怖いまま進め

第158話 怖いまま進め

教皇の治癒魔法。

淡い光。

その中心。

ガレス。

まだ。

意識。

戻ってない。

「……」

僕。

見てる。

さっきまで。

立ってた。

何度。

吹き飛ばされても。

立って。

最後。

今まで使ったこともない。

巨大な大剣。

作り出して。

アンを。

三歩。

下がらせた。

その結果。

今。

教皇じゃないと。

治しきれない状態。

「……訓練って何だっけ」

僕。

呟く。

カイル。

「俺に聞くな」

アン。

聞こえたのか。

少し。

こっち。

見る。

「必要な訓練です」

エリシア。

即答。

「次は加減してください」

「……はい」

アン。

また。

負けた。

その時。

「さて」

ベラ。

声。

全員。

見る。

さっきまで。

ずっと。

ニヤニヤ。

ガレス。

半殺し。

されても。

限界。

越えても。

ずっと。

楽しそうだった。

そのベラが。

前。

出る。

「アンタレスばかり楽しんでずるいのう」

アン。

眉。

寄せる。

「楽しんでいたわけではありません」

「似たようなものじゃ」

「違います」

「どちらでもよい」

ベラ。

実験場。

中央。

歩く。

教皇。

治療中。

ガレス。

その横。

通り過ぎる。

そして。

止まる。

選抜された。

世界連合軍。

精鋭たち。

見る。

「次じゃ」

一拍。

「誰が妾と戦う?」

「……」

誰も。

動かない。

僕。

選抜組。

見る。

さっきまで。

それぞれ。

自信。

あった。

各部隊。

三人。

選ばれた。

実力者。

でも。

今。

違う。

視線。

逸らす者。

武器。

握る者。

一歩。

出ようとして。

止まる者。

無理もない。

目の前。

ガレス。

倒れてる。

世界連合軍。

総隊長。

アンに。

徹底的。

叩きのめされて。

教皇。

治療。

受けてる。

そして。

次。

相手。

ベラ。

五百年前の魔王。

《四熾》カシエル。

最後。

消した。

黒炎。

持つ。

人。

「……」

誰も。

出ない。

ベラ。

笑ってる。

「なんじゃ?」

一人。

見る。

次。

別。

見る。

「先ほどまで」

一拍。

「随分と立派な顔をしておったではないか」

返事。

ない。

「世界連合軍の精鋭」

ベラ。

ゆっくり。

歩く。

「各部隊から選ばれた」

一歩。

「上位三名」

一歩。

「その者たちが」

止まる。

「誰一人」

赤い瞳。

細くなる。

「前へ出ぬのか?」

「……」

空気。

重い。

さっきまで。

笑ってた。

ベラ。

笑み。

少しずつ。

消える。

「妾が」

一拍。

「怖いか?」

ゾクッ。

身体。

勝手に。

反応。

した。

黒。

ベラ。

足元。

炎。

上がる。

少し。

それだけ。

なのに。

圧。

違う。

「っ……」

選抜組。

何人か。

一歩。

下がる。

ベラ。

それ。

見る。

「そうか」

黒炎。

増える。

地面。

這う。

「怖いか」

結界。

震える。

空気。

重く。

なる。

息。

吸いづらい。

僕。

何度も。

ベラの魔力。

感じた。

それでも。

身体。

固まる。

カイル。

槍。

握る。

エリシア。

表情。

変えない。

でも。

手。

剣。

触れてる。

「ならば」

ベラ。

一歩。

「聞こう」

黒炎。

広がる。

「目の前で」

一拍。

「仲間が殺されようとしていても」

一歩。

「家族が蹂躙されようとしていても」

さらに。

黒炎。

増える。

「己が生まれた国が」

一拍。

「焼かれようとしていても」

炎。

空。

伸びる。

「敵が怖いというだけで」

ベラ。

選抜組。

真正面。

立つ。

「そこで立ち尽くすのか?」

「……」

誰も。

答えない。

ベラ。

魔力。

さらに。

解放。

ドンッ!!

地面。

揺れる。

「っ!」

誰か。

膝。

つく。

別。

一人。

剣。

地面。

突いて。

耐える。

「答えよ」

低い。

声。

「お主らは」

一拍。

「何のためにここへ来た?」

「……」

「強くなるためか?」

誰も。

答えない。

「違う」

ベラ。

言う。

「守るためじゃ」

黒炎。

揺れる。

「己より弱き者を」

「戦えぬ者を」

「帰りを待つ者を」

「大切な者を」

一人。

兵士。

唇。

噛む。

一人。

聖騎士。

拳。

握る。

一人。

魔法使い。

俯く。

「では」

ベラ。

全員。

見る。

「誰のために強くなる?」

「……」

沈黙。

「答えられぬか」

ベラ。

目。

閉じる。

少し。

黒炎。

揺れ。

変わる。

さっきまで。

押し潰す。

魔力。

でも。

一瞬。

何か。

違う。

「……そうか」

ベラ。

呟く。

「お主らには」

一拍。

「まだ分からぬのかもしれぬな」

目。

開く。

「経験したことがないのじゃから」

誰も。

動かない。

「大切な者を」

ベラ。

自分。

胸。

手。

置く。

「奪われるということを」

一拍。

「妾はあるぞ」

空気。

変わった。

僕。

ベラ。

見る。

いつもの。

偉そう。

ベラ。

違う。

五百年前。

魔王だった。

ベラトリクス。

もっと。

前。

一人だった頃。

その声。

みたい。

「妾は」

一拍。

「師を殺された」

「……」

誰も。

声。

出さない。

「母のように慕っていた者には」

ベラ。

僅か。

目。

伏せる。

「妾自身を殺されかけた」

「……」

僕。

初めて。

聞く。

カイルも。

エリシアも。

何も。

言わない。

アンだけ。

ベラ。

見てる。

「それでも」

ベラ。

続ける。

「ようやく」

一拍。

「仲間ができた」

黒炎。

静か。

揺れる。

「勇者」

レグルス。

「剣聖」

シリウス。

「守護騎士」

アルデバラン。

「聖女」

ルナ。

「賢者」

アークトゥルス。

五人。

五百年前。

最後。

ベラ。

一緒に。

戦った。

仲間。

「敵だった者もおった」

ベラ。

少し。

笑う。

「気に食わぬ者もおった」

僕。

シリウス。

思い出す。

なんとなく。

分かる。

「喧嘩もした」

「言い争いもした」

一拍。

「じゃが」

ベラ。

空。

見る。

「仲間じゃった」

風。

吹く。

長い髪。

揺れる。

「やっと」

一拍。

「できた仲間じゃった」

誰も。

動かない。

「そして」

ベラ。

目。

細める。

「五百年」

一拍。

「経った」

静か。

「誰一人」

一拍。

「生きてはおらぬ」

胸。

少し。

痛くなる。

僕は。

知ってる。

アークトゥルス。

残された記憶。

一度だけ。

ベラ。

話した。

でも。

あれは。

今を生きている。

アークトゥルス。

じゃない。

五百年。

長い。

僕には。

想像。

できない。

ベラだけ。

残った。

「失うというのはな」

ベラ。

選抜組。

見る。

「怖いぞ」

黒炎。

また。

少し。

強くなる。

「敵よりも」

一歩。

「己が死ぬことよりも」

一歩。

「大切な者が消え」

一拍。

「己だけが残されることの方が」

赤い瞳。

揺れる。

「よほど怖い」

「……」

僕。

何も。

言えない。

ベラ。

いつも。

笑ってる。

偉そう。

食べる。

怒る。

僕。

殴る。

でも。

五百年。

僕たち。

知らない。

時間。

背負ってる。

「じゃから」

ベラ。

言う。

「妾は聞いておる」

黒炎。

膨れ上がる。

「妾が怖いか?」

選抜組。

何人か。

身体。

震える。

「構わぬ」

一拍。

「怖がれ」

「……!」

「震えてもよい」

「逃げたいと思ってもよい」

黒炎。

さらに。

高く。

「妾は」

一拍。

「恐怖を捨てろなどとは言わぬ」

ベラ。

手。

上げる。

炎。

空。

覆う。

「じゃが」

ドンッ!!

魔力。

爆発。

「その恐怖を理由に!!」

声。

響く。

「大切な者が奪われるのを黙って見ておるのか!?」

結界。

軋む。

「目の前で仲間が殺されるのを!!」

一歩。

「家族が殺されるのを!!」

一歩。

「国が!!」

さらに。

「世界が!!」

黒炎。

荒れる。

「天使どもに蹂躙されるのを!!」

ベラ。

赤い瞳。

全員。

射抜く。

「怖いからという理由だけで!!」

一拍。

「見ておるつもりか!!」

「……っ」

誰も。

答えられない。

ベラ。

さらに。

魔力。

解放。

僕。

足。

踏ん張る。

「妾にはもう」

一拍。

「五百年前の仲間を守ることはできぬ」

声。

少し。

落ちる。

「あやつらは」

「もうおらぬ」

一拍。

「じゃが」

選抜組。

見る。

「お主らには」

一歩。

「まだおるじゃろう」

誰か。

顔。

上げる。

「帰れば」

一拍。

「会える者がおるじゃろう」

また。

一人。

顔。

上げる。

「名を呼べば」

一拍。

「振り向く者がおるじゃろう」

聖騎士。

剣。

握る。

「お主の帰りを」

一拍。

「待っておる者がおるじゃろう」

魔法使い。

杖。

握り直す。

「守れる命が」

ベラ。

胸。

指す。

「まだ」

一拍。

「そこにあるじゃろう!!」

ドンッ!!

黒炎。

天。

昇る。

「ならば!!」

ベラ。

叫ぶ。

「何故動かぬ!!」

誰も。

目。

逸らさない。

「何のためにここへ来た!!」

一拍。

「誰のために強くなる!!」

魔力。

さらに。

増える。

「妾が怖い程度で足を止めるなら!!」

ベラ。

両腕。

広げる。

黒炎。

巨大。

「《四熾》の前に立つ資格などない!!」

静寂。

炎。

燃える。

魔力。

圧。

凄い。

怖い。

僕だって。

怖い。

今。

ベラ。

真正面。

戦え。

言われたら。

一瞬。

躊躇う。

カシエル。

思い出す。

白い翼。

光輪。

あれより。

強い。

可能性。

残り。

三柱。

その上。

ゼファリエル。

怖くない。

わけ。

ない。

「……勘違いするな」

ベラ。

静か。

言う。

「怖くなくなれと言っておるのではない」

黒炎。

少し。

揺れる。

「恐怖は消えぬ」

一拍。

「大切なものが増えれば」

「むしろ」

「失うことが怖くなる」

ベラ。

目。

閉じる。

そして。

開く。

「それでよい」

一拍。

「怖いまま」

赤い瞳。

真っ直ぐ。

「進め」

「……」

「妾も」

一拍。

「そうしてきた」

カチャ。

音。

全員。

見る。

剣。

鞘。

抜かれた。

白銀。

刃。

持ってる。

レオンハルト。

「……」

僕。

名前。

呼ぶ。

「レオンハルト」

レオンハルト。

一歩。

前。

出る。

ベラ。

見る。

「ほう」

また。

一歩。

「私は」

レオンハルト。

言う。

「怖いです」

選抜組。

少し。

目。

見開く。

聖騎士長。

世界連合軍。

副隊長。

その人。

自分から。

言った。

「あなたも」

ベラ。

見る。

「《四熾》も」

一歩。

「そして」

「大天使ゼファリエルも」

剣。

握る。

「恐ろしくないと言えば」

一拍。

「嘘になります」

ベラ。

黙って。

聞く。

「ですが」

レオンハルト。

ガレス。

見る。

教皇。

治療。

続けてる。

まだ。

起きない。

「総隊長が」

一拍。

「あそこまで戦った」

「己の限界を越え」

「次へ進もうとした」

視線。

ベラ。

戻す。

「ならば」

一拍。

「副隊長である私が」

剣。

構える。

「ここで下がるわけにはいきません」

魔力。

レオンハルト。

身体。

包む。

「それに」

一拍。

「私にも」

少し。

笑う。

「守りたい者がいます」

ベラ。

口元。

上がる。

「よい」

黒炎。

揺れる。

「名乗れ」

レオンハルト。

剣。

正面。

構える。

「世界連合軍副隊長」

一拍。

「セレフィア神聖国」

魔力。

高まる。

「聖騎士長」

一拍。

「レオンハルト」

ベラ。

笑う。

「お相手いたします」

「……」

ベラ。

一瞬。

黙る。

そして。

「それは」

一拍。

「妾に言っておるのか?」

「はい」

「五百年前の魔王に?」

「はい」

「カシエルを消し飛ばした妾に?」

「……はい」

レオンハルト。

少し。

間。

空いた。

僕。

小声。

「怖いんだ」

カイル。

「そりゃ怖いだろ」

ベラ。

笑う。

「よい」

黒炎。

再び。

広がる。

「では来い」

レオンハルト。

息。

吐く。

「胸をお借りします」

「嫌じゃ」

「……はい?」

即答。

レオンハルト。

止まる。

ベラ。

顔。

少し。

不機嫌。

「その言葉は嫌いじゃ」

「……」

「胸を借りる?」

一歩。

「訓練だから?」

一歩。

「負けてもよいと?」

「そのような意味では」

「ならば」

ベラ。

目。

細める。

「借りるな」

黒炎。

爆発。

レオンハルト。

外套。

大きく。

揺れる。

「奪え」

「……!」

アン。

少し。

反応。

する。

さっき。

ガレス。

言った。

言葉。

ベラ。

アン。

ちら。

見る。

「何じゃ」

「いえ」

「真似ではないぞ」

「何も言っていません」

「顔に書いておる」

「書いていません」

「集中してください!」

教皇。

治療。

しながら。

怒る。

「……はい」

二人。

黙る。

僕。

ちょっと。

笑いそう。

なる。

でも。

ベラ。

レオンハルト。

見る。

すぐ。

空気。

変わる。

黒炎。

濃く。

なる。

「レオンハルト」

「はい」

「妾は」

一拍。

「五百年前」

黒炎。

腕。

纏う。

「勇者とも」

一歩。

「剣聖とも」

一歩。

「守護騎士とも」

さらに。

「聖女とも」

一拍。

「賢者とも」

目。

細める。

「肩を並べて戦った」

レオンハルト。

剣。

握る。

「そして今」

ベラ。

笑う。

「五百年後の聖騎士長が」

一拍。

「妾の前に立っておる」

黒炎。

一気。

広がる。

「見せてみよ」

レオンハルト。

魔力。

上がる。

「お主が」

ベラ。

手。

向ける。

「何を守り」

一拍。

「何のために剣を振るうのか」

レオンハルト。

腰。

落とす。

「はい」

「胸を借りるな」

ベラ。

笑う。

「妾を倒せ」

「……」

「いや」

黒炎。

空。

染める。

赤い瞳。

光る。

「妾を」

一拍。

「殺すつもりで来い」

レオンハルト。

一瞬。

目。

見開く。

そして。

剣。

強く。

握る。

「承知しました」

一拍。

「ベラトリクス殿」

地面。

蹴る。

「参ります!!」

白銀。

一直線。

黒炎。

向かう。

ベラ。

笑う。

「来い!!」

聖騎士長。

レオンハルト。

五百年前の魔王。

ベラトリクス。

二人。

激突。

する。

その瞬間。

僕は。

気づいた。

怖くないから。

前へ出るんじゃない。

怖くても。

守りたいものがあるから。

前へ出る。

五百年前。

全て。

失った。

ベラ。

その言葉。

選抜された。

全員。

胸。

届いていた。

もう。

誰も。

目を逸らしていなかった。


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