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156/159

奪い取りに来なさい

第156話 奪い取りに来なさい

数日後。

セレフィア神聖国郊外。

僕たちは。

見覚えのある場所へ来ていた。

広大な実験場。

周囲。

何重にも張られた結界。

以前。

アンとベラが模擬戦をした場所。

大規模結界の実験場。

「……またここ?」

僕。

周り。

見る。

「嫌な思い出でもあるのか?」

カイル。

「僕はないけど」

一拍。

「結界作った人たちはありそう」

「確かにな」

あの時。

アンとベラ。

二人。

戦った。

結界。

耐えた。

一応。

でも。

薄く。

ひび。

入った。

今日。

その場所に。

たくさんの人。

集まっている。

僕。

カイル。

エリシア。

ガレス。

レオンハルト。

そして。

アン。

ベラ。

それだけじゃない。

アステリア王国軍。

セレフィア聖騎士団。

ヴァルガルド防衛軍。

アルカディア魔法部隊。

カグラ皇国。

魔王軍。

冒険者。

世界連合軍。

各実戦部隊。

そこから。

選ばれた者たち。

「多いね」

僕。

言う。

「各部隊から三名だからな」

ガレス。

答える。

「選ぶの大変だった?」

「かなりな」

「強い人三人でしょ?」

「単純に殴り合いが強い奴を選べばいいわけじゃない」

ガレス。

腕。

組む。

「天使と戦うんだ」

「攻撃だけじゃ意味がない」

「生き残れるか」

「周囲を見られるか」

「他の部隊と連携できるか」

「そういうところも見た」

「なるほど」

アン。

前。

出る。

「では」

声。

大きくない。

でも。

全員。

静かになる。

世界連合軍最高指揮者。

魔王アンタレス。

その隣。

ベラ。

「本日から、対天使戦を想定した強化訓練を開始します」

一拍。

「ここにいる皆さんは、各部隊から選抜された者たちです」

アン。

全員。

見る。

「まずは互いを知ってください」

「所属」

「名前」

「得意とする戦い方」

「簡潔にお願いします」

最初。

アステリア王国軍。

三人。

前。

出る。

「アステリア王国軍所属」

一人目。

剣。

腰。

「前衛を担当しています」

二人目。

盾。

背負っている。

「同じく王国軍。防御を中心に戦います」

三人目。

杖。

「魔法支援を担当します」

次。

セレフィア。

白銀。

鎧。

三人。

「セレフィア神聖国、聖騎士団所属」

剣。

「近接戦闘を」

次。

盾。

「防御及び結界補助」

最後。

女性。

杖。

「治癒魔法を得意としています」

エリシア。

少し。

頭。

下げる。

向こうも。

返す。

次。

ヴァルガルド。

三人。

全員。

大きい。

「……強そう」

僕。

小声。

「見た目だけで判断するな」

カイル。

「カイルが言う?」

「どういう意味だ」

一人。

巨大な盾。

「ヴァルガルド防衛軍」

二人目。

重い鎧。

「前線維持」

三人目。

長槍。

「防衛線の構築及び迎撃を担当する」

短い。

なんか。

ヴァルガルドっぽい。

次。

アルカディア。

三人。

全員。

魔法使い。

攻撃。

結界。

魔力解析。

役割。

違う。

次。

カグラ皇国。

刀。

槍。

弓。

三人。

一礼。

必要なことだけ。

話す。

次。

魔王軍。

三人。

近接。

魔法。

防御。

ガレス。

自分で。

選んだらしい。

最後。

冒険者。

三人。

武器。

戦い方。

全員。

違う。

一通り。

終わる。

アン。

頷く。

「ありがとうございます」

一拍。

「皆さんがここへ呼ばれた理由は一つです」

風。

吹く。

「強くなってもらうためです」

誰も。

動かない。

「先日」

アン。

続ける。

「我々は、大天使ゼファリエル直属《四熾》が一柱、カシエルを討伐しました」

一拍。

「しかし」

「一柱を討つために、多くの上位戦力を一ヶ所へ集中させています」

選抜された人たち。

聞く。

「次も同じとは限りません」

「《四熾》が複数同時に現れる可能性」

「通常の天使が各地へ出現する可能性」

「全てを想定します」

アン。

赤い瞳。

全員。

見る。

「皆さんに、今すぐ《四熾》を倒せとは言いません」

一拍。

「ですが」

「《四熾》が現れた瞬間」

「何もできずに戦線が崩壊する」

「それだけは許されません」

空気。

変わる。

「生き残る」

「守る」

「戦線を維持する」

「そして」

「我々が到着するまで、敵をその場に留める」

アン。

静か。

「その水準まで、皆さんを引き上げます」

一人。

選抜された兵。

手。

上げる。

「質問をよろしいでしょうか」

「どうぞ」

「指導は、どなたが?」

アン。

答える。

「私と」

隣。

見る。

「ベラです」

「妾じゃ」

ベラ。

笑う。

選抜組。

空気。

止まる。

僕。

小声。

「かわいそう」

「聞こえておるぞ」

「何も言ってない」

「言ったじゃろ」

そして。

アン。

少し。

前。

出る。

「ただ」

一拍。

「訓練を始める前に」

視線。

動く。

「確認しておきたいことがあります」

ガレス。

止まる。

嫌な。

予感。

したのか。

少し。

眉。

寄せる。

「ガレス」

「はい」

「前へ」

「……俺ですか」

「はい」

ガレス。

前。

出る。

実験場。

中央。

アン。

向かい。

立つ。

「何をするんです?」

「模擬戦です」

即答。

「俺と?」

「私が」

「……」

ガレス。

一度。

ベラ。

見る。

ベラ。

楽しそう。

笑ってる。

「なるほど」

ガレス。

肩。

回す。

「実力確認ってことですか」

「それもあります」

「それも?」

アン。

少し。

黙る。

そして。

「ガレス」

「はい」

「一つ、伝えておきます」

空気。

変わる。

アン。

ガレス。

真っ直ぐ。

見る。

「私の次の魔王は」

一拍。

「あなたです」

「……」

ガレス。

止まる。

僕も。

「え?」

カイル。

「マジか」

選抜された魔王軍。

三人。

目。

見開く。

ガレス。

ゆっくり。

口。

開く。

「……初耳なんですが」

「今、伝えましたから」

「そういう問題ですか?」

「そういう問題です」

ベラ。

小さく。

笑う。

アン。

続ける。

「魔王軍軍隊長としての実績」

「戦闘能力」

「指揮能力」

「そして」

「世界連合軍総隊長として、人間も魔族も関係なく率いる姿」

ガレス。

黙って。

聞く。

「現時点で」

一拍。

「私は、あなた以上に次代の魔王に相応しい者を知りません」

ガレス。

少し。

困ったように。

頭。

掻く。

「……それは」

一拍。

「光栄です」

「ですが」

アン。

言う。

ガレス。

顔。

上げる。

「私は」

一拍。

「ベラのように」

ベラ。

眉。

動く。

「五百年で魔王の座を譲るつもりはありません」

「おい」

ベラ。

すぐ。

反応。

「妾を引き合いに出すでない」

アン。

無視。

「聞いておるか?」

無視。

「アンタレス」

無視。

僕。

ちょっと。

笑う。

「待っていれば、いつか魔王になれる」

アン。

ガレス。

見る。

「そう思わないでください」

赤い魔力。

ゆっくり。

身体。

包む。

空気。

震える。

選抜された人たち。

表情。

変わる。

ガレス。

目。

細める。

「欲しいのであれば」

アン。

右手。

上げる。

赤。

溢れる。

「私から」

一拍。

「奪い取りに来なさい」

魔力。

爆発。

結界。

震える。

僕。

思わず。

一歩。

下がる。

「……すご」

カイル。

笑う。

「やる気だな」

ベラ。

腕。

組む。

「当然じゃ」

ガレス。

しばらく。

アン。

見る。

そして。

笑った。

「それは」

魔力。

ガレス。

身体。

溢れる。

「魔王の座を?」

「はい」

「力ずくで?」

アン。

少し。

笑う。

「魔族らしくて分かりやすいでしょう?」

「……なるほど」

ガレス。

構える。

「なら」

一拍。

「遠慮はしません」

アン。

赤い瞳。

細める。

「来なさい」

次の瞬間。

ガレス。

消えた。

「速っ」

僕。

目。

見開く。

地面。

爆ぜる。

真正面。

一瞬。

ガレス。

アン。

懐。

拳。

振るう。

アン。

半歩。

ずれる。

拳。

頬。

横。

通過。

ガレス。

そのまま。

身体。

回す。

蹴り。

アン。

腕。

上げる。

受ける。

ドンッ!!

空気。

弾ける。

「……!」

選抜組。

ざわめく。

ガレス。

止まらない。

拳。

蹴り。

踏み込み。

連続。

速い。

重い。

一発。

一発。

地面。

揺れる。

アン。

避ける。

受ける。

流す。

「総隊長……」

誰か。

呟く。

「強い」

そう。

強い。

僕も。

何度か。

ガレス。

戦うところ。

見た。

でも。

改めて。

本気に近い動き。

見ると。

分かる。

世界連合軍。

総隊長。

任されるだけ。

ある。

ガレス。

低く。

入る。

右。

拳。

アン。

避ける。

そこ。

狙って。

左。

「もらった!」

アン。

顔。

前。

拳。

迫る。

次の瞬間。

アン。

消える。

「なっ」

ガレス。

後ろ。

赤。

「遅いです」

ドンッ!!

「ぐっ!?」

ガレス。

身体。

吹き飛ぶ。

地面。

何度も。

跳ねる。

最後。

止まる。

「……」

静か。

僕。

カイル。

見る。

「今の見えた?」

「途中まで」

「僕も」

エリシア。

「喋っている場合ですか」

「だって」

ガレス。

地面。

手。

つく。

立つ。

「……なるほど」

口元。

少し。

血。

拭う。

「これが魔王か」

アン。

首。

横。

振る。

「違います」

「?」

「これでは」

一拍。

「《四熾》は倒せません」

ガレス。

表情。

変わる。

アン。

踏み込む。

赤。

一瞬。

ガレス。

反応。

腕。

交差。

防御。

ドンッ!!

また。

吹き飛ぶ。

「ガレス!」

僕。

思わず。

声。

出る。

でも。

ガレス。

空中。

身体。

捻る。

着地。

滑る。

止まる。

すぐ。

前。

出る。

「おお!」

カイル。

声。

上げる。

ガレス。

拳。

魔力。

集める。

正面。

アン。

ぶつける。

アン。

片手。

「……え」

止めた。

ガレス。

目。

見開く。

アン。

拳。

掴んでる。

片手。

「力はあります」

一拍。

「ですが」

ガレス。

身体。

引く。

動かない。

「届かない力では」

アン。

足。

払う。

体勢。

崩す。

「意味がありません」

そのまま。

掌。

ガレス。

腹。

「っ」

赤。

弾ける。

ドンッ!!

ガレス。

一直線。

飛ぶ。

地面。

転がる。

「……」

僕。

呟く。

「ボコボコだ」

「言うな」

カイル。

「でもボコボコだよ」

「言うなって」

ベラ。

鼻。

鳴らす。

「まだ優しい方じゃ」

僕。

ベラ。

見る。

「え?」

選抜組。

何人か。

同じ顔。

してる。

ベラ。

笑う。

「今のアンタレスは、かなり手加減しておる」

「……」

僕。

実験場。

見る。

ガレス。

また。

立ってる。

「あれで?」

「当たり前じゃ」

「……僕たちもやるの?」

「当然じゃ」

「帰っていい?」

「駄目じゃ」

「だよね」

エリシア。

前。

見たまま。

「目を逸らさないでください」

「見てるよ」

「私たちも、いずれ同じことをされます」

「言わないで」

ガレス。

息。

荒い。

でも。

構える。

アン。

ほとんど。

息。

乱れてない。

「ガレス」

「……はい」

「立ってください」

「立ってますよ」

「では」

赤い魔力。

また。

増える。

「来なさい」

ガレス。

苦笑。

「まだやるんですか」

「当然です」

即答。

「あなたは」

一拍。

「一人で《四熾》を倒すのでしょう?」

ガレス。

黙る。

昼。

会議。

夜。

執務室。

アン。

命令。

した。

一人で。

《四熾》を。

討てるほど。

強くなれ。

ガレス。

ゆっくり。

身体。

起こす。

「……言ってくれる」

アン。

静か。

見る。

「私の次の魔王になるのであれば」

一拍。

「この程度で倒れていては困ります」

ガレス。

笑う。

「だったら」

拳。

構える。

「さっさと、その席を空けてくださいよ」

アン。

即答。

「嫌です」

「……」

「言ったでしょう」

赤い魔力。

広がる。

「譲るつもりはありません」

一拍。

「欲しいなら」

アン。

手。

向ける。

「奪いなさい」

ガレス。

地面。

蹴る。

「なら!!」

一直線。

アン。

向かう。

「奪ってやりますよ!!」

拳。

振るう。

アン。

避ける。

ガレス。

追う。

二撃。

三撃。

四撃。

さっきより。

速い。

アン。

目。

細める。

「そうです」

ガレス。

踏み込む。

「もっと」

拳。

アン。

受ける。

衝撃。

広がる。

「もっと来なさい」

ガレス。

吠える。

魔力。

上がる。

僕。

見てる。

さっき。

一方的。

だった。

今も。

差。

大きい。

でも。

ガレス。

止まらない。

何度。

飛ばされても。

立つ。

何度。

防がれても。

前。

出る。

魔王。

アンタレス。

その座。

いつか。

継ぐ者。

じゃない。

奪う者。

アン。

それ。

求めてる。

ガレス。

拳。

再び。

迫る。

アン。

今度。

避けない。

真正面。

受け止める。

地面。

大きく。

ひび。

「……!」

初めて。

アン。

身体。

少し。

後ろ。

動く。

ガレス。

目。

見開く。

「動いた」

僕。

声。

出る。

ベラ。

少し。

笑う。

「ようやくじゃな」

ガレス。

笑う。

「今」

一拍。

「動きましたね」

アン。

自分。

足元。

見る。

ほんの。

少し。

下がってる。

そして。

ガレス。

見る。

「はい」

僅かに。

笑う。

「一歩」

ガレス。

構える。

「なら」

一拍。

「次は二歩だ」

「いいでしょう」

アン。

赤。

魔力。

さらに。

強くなる。

「やってみなさい」

「後悔しますよ」

「しません」

ガレス。

突っ込む。

次の瞬間。

赤。

閃く。

ドンッ!!

ガレス。

また。

吹き飛ぶ。

僕。

思わず。

目。

閉じる。

「……やっぱりボコボコだ」

カイル。

「言うなって」

でも。

ガレス。

また。

立つ。

何度でも。

立つ。

アン。

待つ。

ベラ。

楽しそう。

笑う。

そして。

周り。

選ばれた。

世界連合軍。

精鋭たち。

誰一人。

もう。

目。

逸らしていなかった。

これが。

始まり。

《四熾》と戦うため。

世界。

もっと。

強くなるための。

最初の訓練。

その一人目。

ガレスは。

魔王アンタレスに。

徹底的に。

叩きのめされていた。


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