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155/159

強くなれ

第155話 強くなれ

その日の夜。

セレフィア神聖国。

世界連合軍本部。

僕たちは。

アンの執務室に呼ばれていた。

僕。

カイル。

エリシア。

ベラ。

《黒翼》。

そして。

ガレス。

レオンハルト。

「……全員?」

僕が部屋を見る。

「みたいだな」

カイル。

壁際。

立っている。

ガレス。

腕。

組んでいる。

レオンハルト。

いつも通り。

姿勢。

綺麗。

ベラだけ。

勝手に椅子。

座ってる。

「アン」

「何でしょう」

「何かあった?」

「ありました」

即答。

机。

大量の資料。

その前。

アン。

座っている。

昼間。

会議。

終わったばかり。

なのに。

また。

仕事。

「先ほどの会議を受けて、決めたことがあります」

ガレス。

少し。

表情。

変える。

「《四熾》についてですか」

「はい」

アン。

立ち上がる。

机。

回る。

僕たち。

正面。

来る。

「今回」

「我々はカシエルを討伐しました」

静か。

「ですが」

一拍。

「戦力を集中させすぎました」

誰も。

喋らない。

「私」

「ベラ」

「ソル」

「カイル」

「エリシア」

「さらにシノブたちによる情報支援」

一拍。

「一柱を確実に討伐するために、これだけの戦力を必要とした」

ガレス。

頷く。

「……確かにな」

「結果だけを見れば大勝です」

アン。

続ける。

「死者は無し」

「カシエルを討伐」

「同時に出現した十体の天使も全て討伐」

一拍。

「ですが、次も同じ状況になる保証はありません」

レオンハルト。

口。

開く。

「《四熾》が複数同時に出現する可能性」

「はい」

アン。

頷く。

「例えば」

机。

地図。

広げる。

セレフィア。

アステリア。

ヴァルガルド。

アルカディア。

カグラ。

魔族領。

「セレフィアに一柱」

指。

置く。

「同時に」

離れた場所。

「魔族領に一柱」

さらに。

「アステリアに一柱」

三ヶ所。

「……」

僕。

地図。

見る。

無理だ。

今回みたいに。

全員。

集まれない。

「さらに通常の天使が別地点へ出現した場合」

アン。

指。

増やす。

「世界連合軍の戦力は分散します」

ガレス。

低い声。

「だから戦力の底上げか」

「その通りです」

アン。

一枚。

資料。

ガレス。

渡す。

「ガレス」

「はい」

「世界連合軍の各実戦部隊から、戦闘能力の高い者を三名ずつ選抜してください」

ガレス。

資料。

見る。

「三名ずつ?」

「はい」

「階級は?」

「問いません」

即答。

「年齢」

「問いません」

「所属」

「世界連合軍に参加している部隊であれば問いません」

ガレス。

目。

細める。

「選考基準は」

アン。

少し。

間。

「強い者」

「……随分と単純ですね」

レオンハルト。

言う。

「今回は、それで構いません」

アン。

続ける。

「ただし」

「単純な攻撃力だけで選ばないでください」

「天使との戦闘に耐えられる者」

「判断力」

「防御」

「機動力」

「治癒」

「支援」

「それぞれの部隊において、実戦で最も高い能力を持つ者を選抜してください」

ガレス。

頷く。

「分かりました」

レオンハルト。

アン。

見る。

「選抜した者たちは、何を?」

アン。

答える。

「鍛えます」

「……」

ガレス。

一度。

資料。

見る。

もう一度。

アン。

見る。

「誰が?」

「私と」

一拍。

「ベラです」

沈黙。

僕。

ゆっくり。

ベラ。

見る。

ベラ。

笑ってる。

嫌な。

笑い。

「ほう」

楽しそう。

「面白そうではないか」

ガレス。

少し。

顔。

引きつる。

レオンハルト。

珍しく。

黙った。

「アン」

僕。

手。

上げる。

「何でしょう」

「それ、訓練?」

「はい」

「ベラが?」

「はい」

「人、死なない?」

「失礼じゃな、お主」

ベラ。

僕。

睨む。

「妾とて加減くらいできるわ」

「ほんと?」

「お主から試してやろうか」

「遠慮します」

「遠慮するでない」

「します」

カイル。

横。

笑う。

「大変そうだな」

「だね」

僕。

頷く。

「選ばれた人」

「頑張ってほしいな」

「そうだな」

アン。

僕たち。

見る。

「何を他人事のように話しているんですか?」

「え?」

「え?」

僕。

カイル。

同時。

アン。

今度。

三人。

見る。

僕。

カイル。

エリシア。

「ソル」

「うん」

「カイル」

「おう」

「エリシア」

「はい」

一拍。

「あなた方三人も対象です」

「……」

僕。

カイル。

顔。

見合わせる。

「僕たちも?」

「当然でしょう」

「でも《黒翼》だよ?」

「だからです」

即答。

逃げ道。

なかった。

エリシア。

静か。

頷く。

「承知しました」

「早い」

僕。

見る。

「何がですか」

「受け入れるの」

「必要なことでしょう」

「そうだけど」

カイル。

槍。

持ってないのに。

なんか。

楽しそう。

「いいじゃねえか」

「カイルは楽しそうだね」

「強くなれるんだろ?」

「まあ」

それは。

僕も。

思う。

アン。

僕たち。

見る。

「今回」

「あなた方三人は、十体の天使を倒しました」

一拍。

「さらにカシエルとの戦闘にも参加した」

「ソルは光輪を損傷させ」

「カイルとエリシアも、カシエルに対して有効な支援と攻撃を行った」

少し。

胸。

熱くなる。

「ですが」

アン。

声。

変わる。

「次は」

一拍。

「カシエル以上を想定してください」

僕。

アン。

見る。

「以上?」

「はい」

「残る三柱が、カシエルと同程度とは限りません」

「より強い可能性もある」

「異なる能力を持つ可能性もある」

「そして」

僕たち。

見る。

「ゼファリエルもいます」

空気。

重くなる。

大天使。

ゼファリエル。

《四熾》。

その上。

「あなた方三人に、今すぐ《四熾》の単独討伐を求めるつもりはありません」

アン。

続ける。

「ですが」

「《黒翼》は通常部隊で対処できない敵と戦うための部隊です」

「今の強さで満足してもらっては困ります」

エリシア。

「はい」

カイル。

「当然だ」

僕も。

頷く。

「分かった」

ベラ。

椅子。

背もたれ。

寄りかかる。

「ちょうどよい」

赤い瞳。

僕たち。

見る。

「お主ら三人」

一拍。

「まだまだ伸びる」

僕。

少し。

笑う。

「ベラが言うなら」

「何じゃ」

「ちょっと安心した」

「ほう?」

「強くなれるってことでしょ」

ベラ。

少し。

笑う。

「そういうことじゃ」

アン。

頷く。

「ソルは、星の制御」

「特に《星装》第二段階と《星渡》」

「実戦で思いついた使い方を、その場限りにせず、確実に扱えるようにしてください」

「はい」

「そして」

少し。

目。

細くなる。

「訓練で試してください」

「……はい」

カイル。

吹き出す。

エリシア。

僕。

見る。

「本当にお願いします」

「分かってるって」

「信用できません」

「なんで?」

「今までを思い出してください」

「……」

何も。

言えない。

アン。

カイル。

見る。

「カイル」

「おう」

「あなたは突破力をさらに上げてください」

「任せろ」

「ですが、力任せだけでは駄目です」

「分かってる」

「ソルの速度に対応し、エリシアの支援を利用しながら、自分で攻撃の起点を作れるように」

カイル。

少し。

真面目な顔。

「……了解」

次。

エリシア。

「エリシア」

「はい」

「あなたは最も役割が多い」

「攻撃」

「防御」

「治癒」

「そして二人の支援」

「はい」

「全てを一人で行おうとしないこと」

エリシア。

少し。

目。

見開く。

「必要な瞬間に、必要な役割を選んでください」

「……承知しました」

アン。

三人。

見る。

「《黒翼》として」

一拍。

「さらに強くなってください」

僕。

カイル。

エリシア。

頷く。

その時。

「さて」

アン。

声。

変わる。

視線。

二人。

向く。

ガレス。

レオンハルト。

「そして」

一拍。

「あなた方二人は別です」

ガレス。

眉。

動く。

「別?」

「はい」

アン。

二人。

正面。

立つ。

世界連合軍。

総隊長。

ガレス。

副隊長。

レオンハルト。

「二人には」

静か。

「別の目標を設定します」

レオンハルト。

「目標とは?」

アン。

迷わない。

「《四熾》」

一拍。

「単独討伐」

沈黙。

僕。

アン。

見る。

ガレス。

何も。

言わない。

レオンハルトも。

「……単独」

ガレス。

確認。

「俺一人で、という意味ですか」

「はい」

即答。

レオンハルト。

「カシエルと同等の相手を」

「いいえ」

アン。

首。

振る。

「それ以上を想定してください」

「……」

ガレス。

息。

吐く。

「無茶言いますね」

「そうでしょうか」

「そうでしょう」

即答。

アン。

少し。

首。

傾ける。

「ですが、必要です」

ガレス。

黙る。

「今回」

アン。

続ける。

「カシエルに対し、我々は複数人で戦いました」

「ですが次は」

地図。

見る。

「私も」

「ベラも」

「《黒翼》も」

一拍。

「その場にいない可能性があります」

ガレス。

表情。

変わる。

「あなた方は世界連合軍の総隊長と副隊長です」

「各地の戦線を任される立場」

「そこで《四熾》と遭遇した時」

一拍。

「増援が来るまで耐える」

アン。

首。

横。

振る。

「それだけでは足りません」

レオンハルト。

アン。

真っ直ぐ。

見る。

「その場で」

アン。

言う。

「一柱」

一拍。

「落とせる戦力になってください」

静か。

誰も。

喋らない。

僕も。

カイルも。

エリシアも。

ベラすら。

黙っている。

ガレス。

しばらく。

アン。

見て。

少し。

笑う。

「最高指揮者は無茶を言う」

アン。

表情。

変えない。

「必要な命令です」

「分かってますよ」

ガレス。

腕。

組み直す。

「俺が総隊長で」

レオンハルト。

見る。

「こいつが副隊長なら」

「こいつとは何ですか」

「細かいな」

「あなたが雑なのです」

「……」

僕。

小さく。

笑う。

いつもの。

二人。

でも。

すぐ。

ガレス。

前。

向く。

「俺たちが強くならないと」

一拍。

「下の連中に強くなれとは言えないな」

レオンハルト。

頷く。

「同感です」

アン。

二人。

見る。

「できますか」

一瞬。

静か。

でも。

アン。

すぐ。

首。

振る。

「いえ」

言い直す。

「違いますね」

赤い瞳。

二人。

捉える。

「ガレス」

「はい」

「レオンハルト」

「はい」

一拍。

「強くなってください」

静か。

でも。

命令。

「一人で《四熾》を討てるほどに」

ガレス。

目。

閉じる。

一度。

そして。

開く。

「承知しました」

レオンハルト。

胸。

手。

当てる。

「拝命いたします」

アン。

頷く。

「お願いします」

ベラ。

そこで。

立ち上がる。

「話は終わりか?」

アン。

ベラ。

見る。

「だいたいは」

「なら」

ベラ。

笑う。

「妾からも一つ」

全員。

見る。

嫌な。

予感。

「選抜された者も」

ガレス。

レオンハルト。

僕。

カイル。

エリシア。

順番。

見る。

「覚悟しておけ」

一拍。

「妾とアンタレスが直々に鍛えるのじゃ」

カイル。

笑う。

「面白そうだ」

エリシア。

真面目。

「よろしくお願いします」

僕。

「……」

ベラ。

僕。

見る。

「何じゃ」

「アン」

「はい?」

「アンもちゃんといるんだよね?」

「もちろんです」

「よかった」

ベラ。

眉。

動く。

「何がじゃ?」

「いや」

一拍。

「ベラだけより生存率上がりそう」

沈黙。

「あ」

言った後。

気づく。

ベラ。

笑う。

ものすごく。

笑う。

「ほう」

「待って」

「ソル」

「違う」

「何が違うのじゃ?」

「言い方」

「言ったのはお主じゃ」

「そうだけど」

ベラ。

僕。

肩。

掴む。

「安心せい」

「何を?」

「最初はお主から鍛えてやる」

「嫌だ」

「遠慮するでない」

「遠慮じゃない」

カイル。

腹。

抱える。

笑ってる。

エリシア。

ため息。

ガレス。

少し。

笑う。

レオンハルトまで。

口元。

緩んでる。

アン。

額。

押さえる。

「……話を戻します」

「はい」

僕。

ベラ。

離れる。

アン。

ガレス。

見る。

「選抜は三日以内に」

「早いですね」

「時間は待ってくれません」

「了解しました」

「レオンハルト」

「はい」

「聖騎士団については、あなた自身が選んでください」

「承知しました」

「その他の部隊についてはガレスと各部隊長で協議を」

「分かりました」

アン。

最後。

全員。

見る。

「カシエルを倒した」

一拍。

「だからこそ」

「次は、同じ戦い方をしない」

「一柱に全戦力を集めなければ勝てない軍では」

静か。

「世界全てを守ることはできません」

誰も。

声。

出さない。

「一人一人を」

一拍。

「一部隊一部隊を」

「今より強くします」

アン。

僕たち。

見る。

「次に《四熾》が現れた時」

一拍。

「どこに現れても」

「誰がそこにいても」

「戦えるように」

ガレス。

頷く。

レオンハルト。

頷く。

僕。

カイル。

エリシア。

頷く。

ベラ。

楽しそう。

笑う。

「よかろう」

一拍。

「鍛えてやる」

僕。

その笑顔。

見て。

少し。

後悔。

した。

でも。

強くなる。

もっと。

カイルも。

エリシアも。

ガレスも。

レオンハルトも。

世界連合軍。

全体が。

次。

来る時。

カシエルの時より。

もっと。

強く。

戦えるように。

その日の夜。

世界連合軍の。

新しい強化計画が。

静かに。

動き始めた。


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