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153/159

残る3柱

第153話 残る三柱

大天使ゼファリエル直属《四熾》が一柱。

カシエル。

その姿は。

もう。

どこにもなかった。

ベラの《黒天終焉》。

黒炎に呑まれ。

魔力も。

肉体も。

何も残さず。

消えた。

僕は。

地面。

座り込んでいる。

「……終わった」

「終わりましたね」

隣。

エリシア。

「勝ったね」

「はい」

「……」

「……」

「エリシア」

「何ですか」

「立てない」

「知っています」

冷たい。

「手、貸して」

「嫌です」

「なんで?」

「反省してください」

「今?」

「今です」

「カシエル倒した直後だよ?」

「だから何ですか」

「もうちょっと優しくしても」

「三つの星を重ねて《星渡》を使った人が何か言っていますね」

「……」

見られてた。

少し離れた場所。

カイル。

槍。

杖代わり。

立っている。

「俺は止めた方がいいと思ってたぞ」

「嘘」

「嘘だ」

即答。

「面白そうだった」

「カイル」

エリシア。

見る。

「悪かった」

早い。

その時。

「まったく」

ベラ。

歩いてくる。

「お主は本当に」

「何?」

「何? ではないわ」

額。

小突かれる。

「痛っ」

「当然じゃ」

「怪我人だよ?」

「重傷ではなかろう」

「たぶん」

「たぶん?」

エリシア。

反応。

「ソル」

「大丈夫」

「今の返事で信用できなくなりました」

アン。

こっち。

歩いてくる。

「エリシア」

「はい」

「一度診てください」

「分かりました」

「アンまで」

「あなたの場合、大丈夫という自己申告が最も信用できません」

「ひどくない?」

「実績があります」

何も。

言い返せない。

エリシア。

僕の前。

しゃがむ。

手。

胸元。

当てる。

淡い光。

身体。

包む。

「魔力の枯渇が大きいです」

「うん」

「筋肉にもかなり負担がかかっています」

「うん」

「右腕」

「うん」

「脚」

「うん」

「全部ですね」

「……うん」

エリシア。

ため息。

「ですが」

少し。

表情。

緩む。

「重傷ではありません」

「ほら」

「黙ってください」

「はい」

カイル。

笑う。

ベラも。

少し。

笑ってる。

アン。

周囲。

見渡す。

戦場。

木々。

地面。

抉れている。

白い羽根。

いくつか。

残っている。

十体の天使。

その残骸も。

別地点。

回収。

始まっている。

アン。

息。

吐く。

「被害状況を確認します」

声。

変わる。

世界連合軍。

最高指揮者。

「シノブ」

「はっ」

いつから。

いたんだろう。

少し離れた場所。

シノブ。

立っている。

「周辺警戒は」

「継続中です」

「新たな亀裂は?」

「確認されておりません」

「分かりました」

シノブ。

一度。

周囲。

見る。

そして。

「サスケ」

「はっ」

木々。

影。

一人。

現れる。

黒装束。

カグラ皇国。

先鋭部隊。

サスケ。

シノブ。

聞く。

「記録は」

「残しております」

「どこからだ」

「可能な限り全て」

アン。

視線。

向ける。

サスケ。

頭。

下げる。

「我々が観測を開始して以降、魔道記録具を継続して作動させておりました」

「十体の天使との戦闘も?」

僕。

思わず。

聞く。

「はい」

「僕たちも映ってる?」

「かなり」

「……」

なんか。

急に。

恥ずかしい。

カイル。

横。

「お前の無茶、証拠残ったな」

「カイルもだからね」

「俺は普通だ」

「どこが」

エリシア。

「二人ともです」

「はい」

「はい」

シノブ。

続ける。

「カシエルとの戦闘についても記録されています」

アン。

僅かに。

目。

細める。

「第二形態もですか」

「はい」

機械のような。

白い装甲。

それが。

内側から。

弾け飛んだ。

人に近い。

姿。

頭上。

白い輪。

高密度の魔力で作られた。

翼。

羽根。

攻撃。

防御。

再生。

そして。

カシエルの戦い方。

全部。

「重要な記録になります」

アン。

言う。

「複製してください」

「承知しました」

「後日、世界連合軍を通じて各国へ提供します」

シノブ。

頷く。

「解析用としてアルカディアにも?」

「もちろんです」

アン。

残された白い羽根。

見る。

「《四熾》との戦闘記録は、今後の対策に必要です」

一拍。

「我々は」

カシエル。

消えた場所。

見る。

「まだ三柱を知りません」

空気。

少し。

変わる。

そう。

カシエル。

倒した。

でも。

《四熾》。

四柱。

そのうち。

一柱。

倒しただけ。

あと。

三柱。

さらに。

その上。

大天使。

ゼファリエル。

「記録は全て保全します」

シノブ。

答える。

「お願いします」

その時。

空。

複数。

影。

「来た」

カイル。

見上げる。

魔族。

飛行部隊。

何人もの。

魔族。

空。

降りてくる。

その背。

人。

乗っている。

聖職者。

防御。

治癒。

得意とする者たち。

地面。

降りる。

「世界連合軍支援部隊です!」

「負傷者は!?」

「こちらへ!」

一気。

動き出す。

アン。

指示。

飛ばす。

「戦闘員より一般市民を優先してください」

「はい!」

「歩ける者は後です。重傷者を最優先」

「承知しました!」

僕たち。

周囲。

人。

増える。

治癒。

始まる。

負傷者。

運ばれる。

しばらく。

現地確認。

続いた。

そして。

被害。

まとまる。

「報告します」

シノブ。

手元。

記録。

見る。

全員。

集まる。

アン。

ベラ。

僕。

カイル。

エリシア。

レオンハルト。

そして。

各部隊。

責任者。

「まず戦闘員」

一拍。

「重傷者、無し」

「おお……」

小さく。

声。

上がる。

「ただし」

シノブ。

僕。

見る。

「何?」

「ソル殿については、継続して経過観察が必要とのことです」

「重傷じゃないよ」

「重傷ではありません」

エリシア。

横。

「ですが、限りなく怪しいです」

「怪しいって何」

カイル。

笑う。

「重傷者候補」

「嫌な候補だな」

ベラ。

腕。

組む。

「自業自得じゃ」

「ベラまで」

アン。

少し。

息。

吐く。

「続けてください」

「はい」

シノブ。

表情。

戻る。

「一般市民」

空気。

変わる。

「重傷者、二名」

全員。

黙る。

「一名は避難中、頭部を強く打ち、出血」

「意識は?」

アン。

すぐ。

聞く。

「あります。先ほど治癒術師による応急処置が完了しました」

「もう一名は」

「避難中に転倒。脚部を骨折しております」

レオンハルト。

聞く。

「命に関わる状態では?」

「現時点では、どちらも命に別状はないとの報告です」

「……そうですか」

レオンハルト。

少し。

息。

吐く。

でも。

続き。

ある。

「軽傷者、複数」

「家屋被害」

シノブ。

一拍。

「大」

僕。

顔。

上げる。

「先ほど十体の天使が出現した周辺集落を中心に、複数の家屋が全壊、または居住不可能」

一拍。

「家を失った住民は、およそ二十名」

「……」

あの。

村。

僕たちが。

戦った場所。

家。

少なかった。

だからこそ。

被害。

大きい。

命。

守れた。

でも。

生活。

失った。

「二十人……」

僕。

呟く。

その時。

「でしたら」

レオンハルト。

前。

出る。

「セレフィアで受け入れましょう」

「え?」

僕。

見る。

レオンハルト。

迷い。

ない。

「住居を失った方々を、セレフィア神聖国へ招きます」

「レオンハルト」

アン。

見る。

「教皇猊下への確認は」

「後ほど私から正式にお伝えします」

一拍。

「ですが」

レオンハルト。

村人たち。

いる方向。

見る。

「今夜眠る場所すら失った方々を前に、確認が取れるまで待てとは言えません」

アン。

少し。

微笑む。

「分かりました」

「ありがとうございます」

「世界連合軍としても支援します」

レオンハルト。

頭。

下げる。

「感謝いたします」

僕。

ちょっと。

笑う。

「レオンハルト」

「何でしょう」

「かっこいいね」

「……急に何ですか」

「思っただけ」

「あなたはまず休んでください」

「そればっかり」

その後。

別地点。

報告。

届く。

アルカディア。

被害。

「アルカディア市街への被害、無し!」

僕。

目。

見開く。

「本当?」

「はい」

聖騎士。

答える。

「天使の出現後、聖騎士長の指示通り防御結界を展開。戦闘による余波、飛来物、全て防ぎ切りました」

レオンハルト。

静か。

頷く。

僕。

見る。

「やっぱりかっこいい」

「二度言わなくて結構です」

でも。

ちょっと。

嬉しそう。

「聖騎士団の負傷者は?」

「軽傷者のみです」

「分かりました」

レオンハルト。

ようやく。

肩。

力。

抜く。

カシエル。

十体。

突然。

現れた。

それでも。

アステリア本体。

被害。

無し。

村。

死者。

無し。

戦闘員。

重傷者。

無し。

一般市民。

重傷者。

二名。

奇跡。

そう言っても。

いいのかもしれない。

でも。

奇跡だけじゃない。

みんな。

動いた。

守った。

戦った。

だから。

この結果。

ある。

「重傷者二名について」

アン。

言う。

「セレフィアへ搬送します」

レオンハルト。

頷く。

「私も同意します。教皇猊下の《治癒》であれば、より確実です」

「家族も同行させましょう」

「はい」

魔族。

飛行部隊。

前。

出る。

「我々が運びます」

「お願いします」

アン。

周囲。

見る。

「護衛は私が」

「アンが?」

僕。

聞く。

「はい。最高指揮者として教皇への直接報告も必要です」

「じゃあ僕も行く」

「駄目です」

エリシア。

即答。

「なんで?」

「なんで、ではありません」

「でも護衛」

「今のあなたが?」

「動けるよ」

立つ。

「ほら」

一歩。

「……」

二歩。

「……」

少し。

ふらつく。

エリシア。

腕。

掴む。

「護衛される側ですね」

「今のは地面が」

「揺れていません」

「……」

アン。

少し。

笑う。

「ソルも来てください」

「ほら」

「ただし」

「?」

「無理はしないこと」

「うん」

「そしてエリシア」

「はい」

「ソルをお願いします」

「承知しました」

「僕の護衛になってない?」

「なっています」

「……」

ベラ。

笑う。

「ちょうどよかろう」

「ベラは?」

「妾は残る」

「ここに?」

「カシエルの痕跡も残っておる。十体の残骸もじゃ」

ベラ。

シノブ。

見る。

「こやつらと確認しておく」

シノブ。

頷く。

「我々も記録と残骸の回収を続けます」

カイル。

槍。

肩。

乗せる。

「俺も残る」

「大丈夫?」

「お前よりはな」

「それは否定できない」

決まる。

重傷者。

二名。

その家族。

魔族。

飛行部隊。

そして。

アン。

僕。

エリシア。

セレフィア。

向かう。

空。

飛ぶ。

速い。

下。

森。

街道。

流れていく。

僕。

重傷者。

見る。

頭。

包帯。

巻かれた人。

意識。

ある。

でも。

顔色。

よくない。

もう一人。

脚。

固定。

されている。

その隣。

家族。

手。

握っている。

「大丈夫」

僕。

言う。

「セレフィアには」

一拍。

「すごい人がいるから」

家族。

僕。

見る。

「教皇が」

エリシア。

横。

付け足す。

「直接、治療してくださる予定です」

「教皇……様が?」

「はい」

驚く。

当然。

国。

一番上。

その人。

自分たち。

治療。

する。

「そんな……」

「大丈夫です」

アン。

静か。

言う。

「立場より、命が先です」

その言葉。

家族。

目。

伏せる。

「……ありがとうございます」

しばらく。

飛ぶ。

そして。

セレフィア。

見える。

城壁。

大聖堂。

世界連合軍。

本部。

僕。

小さく。

息。

吐く。

「帰ってきた」

エリシア。

横。

「まだ降りていません」

「細かい」

「大事です」

魔族。

飛行部隊。

高度。

落とす。

下。

人。

集まっている。

着地。

その瞬間。

「負傷者を!」

待機。

していた。

聖職者。

一斉。

動く。

でも。

その先。

一人。

歩いてくる。

白。

法衣。

「教皇」

僕。

言う。

教皇。

僕たち。

見る。

アン。

前。

出ようとする。

「教皇、報告を――」

「後です」

即答。

アン。

止まる。

教皇。

重傷者。

向かう。

「まず、この方々を」

「はい」

聖職者。

頭部。

負傷者。

運ぶ。

教皇。

隣。

膝。

つく。

「聞こえますか?」

「……はい」

「少し触れます」

手。

頭。

近づける。

光。

溢れる。

優しい。

でも。

強い。

《治癒》。

傷。

包む。

血。

止まる。

腫れ。

少しずつ。

引いていく。

次。

脚。

骨折。

した人。

固定。

外す。

教皇。

手。

添える。

また。

光。

「少し時間がかかります」

「はい……」

「痛みがあれば、すぐに言ってください」

「……はい」

僕。

少し離れた場所。

見る。

「……教皇って」

「はい」

エリシア。

隣。

「やっぱりすごいね」

「今さらですか」

「いや、偉い人なのは知ってたけど」

「そういう意味ではありません」

「分かってる」

アン。

静か。

治療。

見守る。

しばらく。

教皇。

立つ。

「頭部の傷は問題ありません」

家族。

顔。

上げる。

「骨折についても、しばらく安静は必要ですが、後遺症が残る可能性は低いでしょう」

「……ありがとうございます」

家族。

何度も。

頭。

下げる。

教皇。

首。

振る。

「生きて戻られたことが何よりです」

その後。

家を失った。

約二十人。

セレフィア。

受け入れること。

正式。

決まる。

教皇。

レオンハルトから。

届いた報告。

見る。

一言。

「もちろんです」

それだけ。

だった。

住居。

食事。

衣服。

必要なもの。

すぐ。

手配。

始まる。

そして。

ようやく。

教皇。

僕たち。

見る。

アン。

エリシア。

僕。

「おかえりなさい」

アン。

頭。

下げる。

「ただいま戻りました」

エリシアも。

「戻りました」

僕。

「ただいま」

教皇。

微笑む。

「本当に」

一拍。

「よく戻ってきてくれました」

「うん」

「《四熾》の討伐については、後ほど詳しく聞かせてください」

アン。

頷く。

「もちろんです」

「記録もあります」

「記録?」

「カグラ皇国の先鋭部隊が戦闘を記録していました」

教皇。

目。

見開く。

「それは……非常に重要ですね」

「後日、各国へ共有します」

「分かりました」

教皇。

頷く。

そして。

僕。

見る。

「……ソル?」

「何?」

「あなた」

「うん」

「顔色が悪いですよ」

「そう?」

エリシア。

即答。

「悪いです」

「裏切った」

「事実です」

教皇。

僕。

近づく。

「こちらへ」

「僕は大丈夫」

「ソル」

「本当に重傷じゃないよ」

「こちらへ」

笑顔。

なのに。

断れない。

「……はい」

エリシア。

少し。

笑う。

アンも。

「しっかり診てもらってください」

「アンまで」

教皇。

僕。

座らせる。

手。

伸ばす。

光。

身体。

包む。

「……」

教皇。

眉。

少し。

動く。

「ソル」

「何?」

「何をしたのですか?」

「ちょっと星を三つ重ねて」

「ソル」

エリシア。

「説明しなくていいです」

「なんで?」

「長くなります」

「そんなに?」

アン。

小さく。

笑う。

でも。

すぐ。

窓。

外。

見る。

勝った。

大天使ゼファリエル直属《四熾》。

カシエル。

討伐。

十体。

天使。

討伐。

死者。

無し。

世界連合軍にとって。

大きな。

勝利。

それでも。

終わっていない。

《四熾》。

残り。

三柱。

そして。

その上。

大天使。

ゼファリエル。

今日。

僕たちは。

知った。

《四熾》が。

どれだけ。

強いのか。

同時に。

知った。

倒せる。

世界。

みんな。

力。

合わせれば。

届く。

僕は。

教皇の《治癒》。

受けながら。

目。

閉じる。

次。

誰が。

来るのか。

分からない。

でも。

一つだけ。

分かる。

カシエルは。

最初の一柱。

残る《四熾》は。

――三柱。


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