役割
第145話 役割
赤。
白。
二つの魔力が空で激突する。
――ドォォォン!!
衝撃が僕たちまで届いた。
「近い!」
ベラに運ばれたまま、一気に戦場へ入る。
《紅煉獄》。
空も。
大地も。
赤い魔力に満たされている。
その中央。
アン。
そして。
白い翼を広げる天使。
《四熾》。
カシエル。
「……あれが」
カイルが槍を握る。
エリシアも細剣へ手を伸ばした。
でも。
ベラは二人を見ない。
戦場。
地形。
周囲。
一瞬で確認する。
『降りるぞ』
「え?」
次の瞬間。
身体が落ちた。
「うわっ!?」
地面が迫る。
ベラを中心に僕たち全員が降下。
――ドンッ!!
着地。
足が地面につく。
「……っ」
僕が顔を上げた時。
もう。
ベラだけが離れていた。
黒炎。
纏う。
アンとカシエル。
その戦場へ向かう。
「ベラ!」
『お主らは来るな!!』
声。
鋭い。
僕。
止まる。
『ソル!カイル!エリシア!』
「うん!」
『周囲を確認せよ!』
ベラは振り返らない。
『逃げ遅れた者が一人でもおらぬか探せ!』
「……!」
そうだ。
ここ。
戦場。
でも。
アステリア王国。
人が住んでる。
「分かった!」
『《黒翼》は住民の確認を最優先!戦闘は後じゃ!』
「おう!」
カイル。
すぐに槍を背負う。
エリシアも頷く。
「周辺集落まで確認しましょう」
「うん」
僕。
《心眼》。
開く。
でも。
戦場。
見ない。
アン。
見ない。
カシエル。
見ない。
必要なもの。
人。
生命反応。
それだけ。
「……」
広げる。
森。
街道。
旧監視塔。
家。
小さな集落。
「いる」
「どこだ?」
「南西。三人」
一拍。
さらに。
「東にも二人。動いてる」
エリシア。
「負傷しているか分かりますか?」
「そこまではまだ」
「十分です。行きましょう」
「うん!」
その時。
ベラ。
別の方向。
見る。
『レオンハルト!』
「はい!」
聖騎士たちが反応する。
『お主らはアルカディアの部隊へ向かえ!』
レオンハルト。
一瞬で意図を理解する。
「防御部隊との合流ですね」
『そうじゃ!』
空。
また。
赤と白。
衝突。
爆発。
ベラの髪。
風で揺れる。
『ここから先、戦場がどこまで広がるか分からぬ!』
「承知しました!」
『アルカディアの防御隊と合流し、結界を展開!負傷者の収容地点も作れ!』
「はい!」
『指揮はお主が執れ!』
レオンハルト。
剣。
握る。
「承知しました!」
後ろ。
聖騎士たち。
動く。
「全員、私に続け!」
「はい!!」
数人の聖騎士。
アルカディアの部隊が展開している方向へ走る。
戦うためじゃない。
守るため。
治すため。
そして。
ベラ。
最後。
シノブを見る。
『シノブ』
「ここに」
いつの間に。
シノブたち。
もう姿勢。
低くしてる。
『お主らは戦闘へ参加するな』
カイル。
少し驚く。
でも。
シノブ。
何も聞かない。
「任務を」
ベラ。
カシエルを見る。
『影へ潜め』
一拍。
『天使が撤退した場合』
赤。
白。
再び。
ぶつかる。
『追え』
シノブの目。
細くなる。
「承知」
『ただし見つかるな』
「分かっている」
『前と同じじゃ。討伐する必要はない』
ベラ。
声。
低い。
『どこへ逃げるのか』
一拍。
『どこへ帰るのか』
さらに。
『そして』
空。
見る。
『奴以外の天使が来ぬか』
「増援の確認」
『そうじゃ』
ベラが頷く。
『戦場だけを見るな。空も、地上も、魔力の流れも見ろ』
「承知」
『何か一つでも変化があれば即座に報告』
「了解」
シノブ。
後ろ。
四人へ。
指。
動かす。
それだけ。
全員。
散った。
「……」
本当に。
消えた。
木。
岩。
建物。
影。
そこへ溶けるように。
気配。
なくなる。
ベラ。
それを確認。
僕たちを見る。
『行け!』
「うん!」
僕。
走る。
カイル。
エリシア。
続く。
後ろ。
ベラ。
黒炎。
大きくなる。
「ソル!」
カイル。
「分かってる!」
今は。
見ない。
アンの戦い。
気になる。
ものすごく。
でも。
僕たちの役目。
違う。
「南西から!」
「おう!」
《彗星》。
使わない。
速すぎる。
住民。
怖がらせる。
普通に。
走る。
森。
抜ける。
街道。
見える。
「あそこ!」
三人。
老人。
女性。
子供。
道の脇。
立ち尽くしてる。
空。
見上げてる。
赤。
白。
爆発。
子供。
泣いてる。
「大丈夫です!」
エリシアが先に声をかける。
三人。
振り返る。
「世界連合軍です!」
僕も続く。
女性。
顔。
青い。
「て、天使が……」
「分かってます」
僕。
しゃがむ。
子供。
見る。
「ここから離れよう」
「でも……家が」
「今は家より」
一拍。
「命」
女性。
頷く。
エリシア。
三人。
確認。
「怪我は?」
「ありません」
「歩けますか?」
老人。
頷く。
「大丈夫じゃ」
カイル。
周り。
見る。
「俺が連れてく」
「一人で?」
「この三人なら大丈夫だ」
「でも」
「ソル」
カイル。
僕を見る。
「まだいるんだろ?」
「……うん」
「なら行け」
エリシアも頷く。
「私もカイルさんと一度避難地点へ向かいます」
「分かった」
「ソルさん」
「何?」
「一人で戦闘へ行かないでください」
「行かないよ」
じっと。
見られる。
「……本当に」
「本当!」
「分かりました」
信用。
薄い。
カイル。
三人。
連れていく。
エリシア。
一緒。
僕。
東。
向く。
二人。
動いてる。
でも。
その奥。
「……」
もう一つ。
反応。
小さい。
動かない。
「三人だ」
僕。
走る。
その頃。
戦場。
アンタレス。
《紅月》。
振る。
カシエル。
白い槍。
受ける。
――ガァン!!
『随分と』
カシエルが言う。
『急いで来たものだ』
アンタレス。
距離。
取る。
「当然です」
『この国は貴様の国ではない』
「だから何です?」
赤い魔力。
周囲。
集まる。
「世界連合軍最高指揮者として」
《紅槍》。
形成。
「どこの国でも同じです」
射出。
カシエル。
翼。
振る。
白い魔力。
《紅槍》。
逸らす。
その瞬間。
黒。
入る。
カシエル。
初めて。
視線。
動く。
黒炎。
真正面。
――ドォォン!!
カシエルの身体。
飛ぶ。
アンタレス。
横。
見る。
「遅かったですね」
『十数人運んできた者へ言う言葉か?』
ベラ。
空中。
止まる。
黒炎。
右手。
揺れる。
アン。
少し。
息。
吐く。
「みんなは?」
『役目を与えた』
「そうですか」
それだけ。
アンは聞かない。
ベラなら。
必要な配置。
してる。
カシエル。
空中。
止まる。
白い翼。
広げる。
黒炎。
消える。
傷。
ほとんど。
ない。
『……』
ベラ。
目。
細める。
『確かに』
「何がです?」
『雑兵ではない』
カシエル。
二人。
見る。
『もう一人の魔王』
ベラ。
笑う。
『初対面じゃな』
『……』
カシエルの視線。
ベラ。
止まる。
『貴様』
一拍。
『古いな』
「……」
アン。
ベラ。
見る。
ベラの笑み。
少し。
消える。
『何じゃと?』
『その魔力』
カシエル。
静か。
『この時代のものではない』
ベラ。
何も。
答えない。
カシエル。
続ける。
『五百年前』
一拍。
『地上にいた魔王か』
アン。
表情。
変わる。
ベラ。
赤い瞳。
鋭くなる。
『……妾を知っておるのか』
『知らぬ』
即答。
『だが』
カシエル。
翼。
広げる。
『記録にはある』
「記録?」
アン。
聞く。
カシエル。
答えない。
ベラ。
黒炎。
強くなる。
『なら』
一拍。
『直接聞くとしよう』
カシエル。
白い槍。
構える。
『二人』
「?」
『この時代の魔王』
アンタレス。
次。
『五百年前の魔王』
ベラ。
カシエル。
僅かに。
口元。
上がる。
『同時に相手をすることになるとは』
白い魔力。
爆発。
『悪くない』
アン。
《紅煉獄》。
さらに。
濃くなる。
「ベラ」
『何じゃ』
「勝手に壊しすぎないでください」
『お主に言われたくない』
「私は気をつけています」
『妾もじゃ』
「昨日の平原を見てから言ってください」
『今それを言うか?』
カシエル。
白い槍。
僅かに下がる。
『……』
一拍。
『貴様ら』
アンとベラ。
見る。
『戦闘中だぞ』
「分かっています」
『分かっておる』
同時。
カシエル。
少し。
黙る。
『そうか』
次の瞬間。
消える。
アン。
右。
ベラ。
左。
二人。
同時。
動く。
白い槍。
《紅月》。
黒炎。
三つ。
激突。
――ドォォォォォン!!
その衝撃。
離れた僕にも。
届いた。
「っ……!」
でも。
見ない。
今。
僕の前。
倒れてる人。
男性。
足。
血。
出てる。
その横。
若い女性。
必死に。
身体。
支えてる。
「世界連合軍です!」
二人。
僕を見る。
「助けに来ました!」
男性。
苦しそう。
「……天使は」
「戦ってます」
「魔王が……」
「二人います」
「……二人?」
「説明は後で」
僕。
男性。
背負う。
「行きます」
女性。
立つ。
「避難場所は?」
「今、作ってます」
遠く。
アルカディア。
魔法。
光る。
複数。
結界。
展開。
その中央。
レオンハルト。
聖騎士。
指示。
飛ばしてる。
「見えた」
あそこ。
防御隊。
治癒。
揃ってる。
僕。
走る。
背中。
男性。
女性。
隣。
その上空。
赤。
黒。
白。
三色。
ぶつかる。
でも。
僕は。
前。
見る。
今。
助ける。
それが。
僕たちの役目。
その頃。
森。
影。
一つ。
動く。
シノブ。
音。
ない。
気配。
ない。
戦場。
見ない。
カシエルの周囲。
空。
森。
遠方。
魔力。
流れ。
見る。
後ろ。
同じように。
四人。
散ってる。
「……」
今のところ。
増援。
なし。
撤退。
なし。
でも。
シノブ。
目。
細める。
遥か。
上空。
雲。
その向こう。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
何か。
揺れた。
「……?」
風。
違う。
鳥。
違う。
魔力。
僅か。
白。
シノブ。
指。
動かす。
一人。
先鋭。
さらに。
影。
奥。
消える。
戦場では。
誰も。
まだ。
気づいていない。
カシエル以外の。
何かが。
こちらを。
見ていた。




