↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
142/159

崩れる盾

第142話 崩れる盾

――バキッ。

大結界に走った亀裂が、止まらない。

一本。

二本。

三本。

黒炎が触れている一点から、巨大な蜘蛛の巣みたいに広がっていく。

『局所損傷拡大!!』

『魔力を回せ!!』

『駄目です!《黒蝕》に接触した部分から術式そのものが侵食されています!!』

アルカディアの研究者たちの声が飛ぶ。

ベラは右手を大結界へ当てたまま動かない。

『なるほど』

「何がなるほどなの!」

僕たちは走る。

ガレス。

レオンハルト。

シノブ。

カイル。

エリシア。

各国の部隊も一斉に動いた。

ベラを結界から引き剥がす。

それだけ。

『遠距離部隊!!撃て!!』

ガレスの命令。

アステリア王国軍。

魔法と矢が飛ぶ。

上空から魔王軍。

左右からカグラ。

ベラの背中へ集中する。

でも。

『《黒纏》』

黒炎が身体を包む。

攻撃が次々と弾かれる。

それでもベラは大結界から手を離さない。

「カイル!」

「おう!!」

星。

右脚。

《星律》。

加速。

カイルが最初に届く。

槍。

横薙ぎ。

ベラの脇腹へ。

『ふん』

ベラが左腕だけで受ける。

「まだだ!!」

星を右腕へ。

カイルの槍が押し込む。

僅か。

ベラの身体が動く。

「エリシア!」

「はい!」

左から細剣。

ベラの手首。

狙う。

大結界へ触れている右手。

ベラが初めて反応する。

右手。

離れた。

「離した!」

《黒蝕》が途切れる。

『侵食停止!!』

『修復開始!!』

「今!」

ガレスの大剣。

レオンハルトの剣。

同時。

ベラへ。

――ガァン!!

黒炎が受ける。

その瞬間。

シノブ。

背後。

刀。

ベラが避ける。

僕。

正面。

《彗星》。

一気に距離を詰める。

《明星》。

振る。

ベラの黒炎とぶつかる。

「押して!!」

全員。

一気に。

ベラを大結界から離す。

一メートル。

三メートル。

五メートル。

十メートル。

『よし!!』

ガレス。

叫ぶ。

『そのまま押し返せ!!』

ヴァルガルド防衛軍が前進。

巨大な盾。

一列。

二列。

三列。

防衛線そのものが前へ出る。

聖騎士団も続く。

「いける!」

僕も思った。

今度こそ。

ベラを結界から離せる。

その時。

ベラが笑った。

『随分と』

黒炎。

足元。

広がる。

『必死じゃの』

「そりゃそうでしょ!」

『では』

ベラが僕を見る。

『次じゃ』

「次?」

嫌な予感。

ベラ。

右手。

上げる。

でも。

大結界へ向けない。

空。

「……何する気?」

黒炎。

上空へ。

飛ぶ。

一つ。

二つ。

十。

二十。

さらに。

「え」

黒い火球が空を埋める。

カイル。

顔。

上げる。

「おいおい……」

ベラ。

指。

下ろす。

全部。

別方向へ飛んだ。

「っ!?」

大結界。

一か所じゃない。

東。

西。

北。

上空。

黒炎が散る。

『多方向攻撃!!』

研究者が叫ぶ。

『着弾予測、十四か所!!』

十四。

「そんなのあり!?」

『実戦ならばあるじゃろ』

正論。

腹立つ。

『全隊!!』

ガレスが即座に切り替える。

『攻撃を止めろ!!結界防御へ回れ!!』

また。

ベラから離れる。

守るために。

戦力が散る。

それが狙い。

「カイル!エリシア!」

「分かってる!」

「はい!」

僕。

《星域》。

広げる。

全部。

追わない。

十四か所。

着弾点。

そこだけ。

見る。

《心眼》。

一。

二。

三。

四。

「東側三発!」

ヴァルガルド。

盾。

動く。

「西側二発!」

聖騎士団。

結界。

「上から四発!」

魔王軍。

飛ぶ。

残り。

五。

「エリシア!」

「《聖壁》!!」

巨大な壁。

二発。

受ける。

あと三つ。

「カイル!」

「どれだ!」

「右上!」

星。

右脚。

カイル。

跳ぶ。

槍。

一発。

弾く。

あと二つ。

遠い。

間に合わない。

その時。

魔法陣。

二つ。

空中。

展開。

アルカディア。

『迎撃術式、発動!!』

光。

二発。

黒炎と衝突。

爆発。

十四。

全部。

止まった。

「……!」

僕。

周り。

見る。

誰か一人じゃない。

国ごと。

役割。

違う。

だから。

全部。

止められた。

『成功!!』

声が上がる。

でも。

ベラ。

いない。

「また!?」

《心眼》。

探す。

大結界。

違う。

上。

違う。

後ろ。

「……後ろ?」

振り返る。

第二防衛線。

さらに後方。

避難区域へ続く道。

そこに。

ベラ。

立ってる。

「いつ抜けたの!?」

カイル。

叫ぶ。

『お主らが空を見ておる間じゃ』

「またそれ!?」

やられた。

さっきと同じ。

守らせる。

視線を散らす。

その隙に抜ける。

でも。

今度は。

大結界じゃない。

内側。

「……」

僕。

止まる。

ベラの前。

道。

その先。

街。

避難している住民。

もちろん大結界の中。

訓練。

でも。

もし。

本物なら。

「内部侵入……」

エリシアの顔が変わる。

アンの通信。

入る。

『全隊、状況を更新します』

静か。

『最終想定敵』

一拍。

『防衛線を突破』

『大結界内部への侵入を確認』

空気が変わる。

大結界。

壊されるだけじゃない。

中に入られた。

『これより』

アン。

続ける。

『市街地防衛へ移行します』

ガレス。

即座。

『全部隊!!』

『敵と住民の間へ入れ!!』

世界連合軍。

動く。

ベラを囲む。

でも。

今までと違う。

広い平原じゃない。

後ろ。

街。

避難所。

住民役。

建物。

壊せない。

大規模魔法。

使いづらい。

ベラ。

周りを見る。

『さて』

「ベラ」

僕。

《明星》。

握る。

「これ以上は行かせない」

『ほう』

「街には」

一拍。

「父さんと母さんもいる」

ベラ。

少しだけ。

目。

細める。

『ならば』

黒炎。

消える。

「……?」

消した?

違う。

魔力はある。

でも。

炎。

出さない。

ベラ。

拳。

握る。

『守ってみせよ』

地面。

蹴る。

「っ!」

速い。

僕。

正面。

《明星》。

受ける。

――ガンッ!!

「ぐっ!」

魔法。

使わない。

近接。

建物を壊さないため。

訓練。

ちゃんと考えてる。

でも。

強い!

ベラ。

僕の刀。

押す。

カイル。

横。

槍。

ベラ。

僕から離れる。

避ける。

エリシア。

前。

細剣。

連続。

ベラ。

全部。

躱す。

ガレス。

大剣。

来る。

ベラ。

手。

添える。

軌道。

逸らす。

レオンハルト。

反対。

剣。

ベラ。

身体を沈める。

避ける。

五人。

同時。

それでも。

抜ける。

「速い……!」

シノブ。

前。

現れる。

刀。

交差。

ベラ。

初めて。

止まる。

『よい位置じゃ』

「通しません」

『ならば退かしてみせよう』

拳。

シノブ。

受けない。

後ろ。

消える。

その瞬間。

カグラ先鋭部隊。

左右。

出る。

ベラ。

進路。

変える。

そこ。

ヴァルガルド。

盾。

もう。

来てる。

「早っ」

『市街地防衛陣!!』

盾。

道。

塞ぐ。

大きな魔法。

使えない。

だから。

狭い道。

盾。

相性。

いい。

ベラ。

止まる。

ガレス。

叫ぶ。

『聖騎士団は避難誘導!!』

『ヴァルガルドは道路封鎖!!』

『カグラは裏道を潰せ!!』

『魔王軍飛行部隊は屋根上を警戒!!』

『アステリアは遠距離攻撃禁止!!住民保護へ回れ!!』

『アルカディア!!』

『はい!』

『結界を小分けにしろ!!建物単位で守れ!!』

『了解!!』

次々。

変わる。

さっきまで。

ベラを倒すため。

今。

住民を守るため。

軍。

形。

変える。

僕。

息。

吐く。

「これ……」

エリシア。

頷く。

「本当の防衛戦です」

そうだ。

広い場所で。

全員。

一人を囲んで。

大技。

撃つ。

それだけじゃない。

街。

人。

守るもの。

ある。

その状態で。

強い敵。

止める。

ベラが一歩。

進む。

盾。

止める。

別の道。

カグラ。

塞ぐ。

上。

魔王軍。

塞ぐ。

建物。

アルカディア。

結界。

張る。

「……」

ベラ。

周り。

見る。

『なるほど』

今度。

少し。

違う声。

『悪くない』

ガレス。

大剣。

肩。

乗せる。

『ありがとうございます』

『じゃが』

ベラ。

見る。

一点。

道。

そこ。

まだ。

塞がってない。

「っ!」

僕。

気づく。

同時。

ベラ。

動く。

「左の路地!!」

速い。

誰も。

いない。

いや。

一人。

エリシア。

「……!」

一番。

近い。

でも。

ベラ。

エリシア。

真正面。

「エリシア下がって!!」

僕。

叫ぶ。

エリシア。

下がらない。

細剣。

構える。

「通しません」

『一人でか?』

「一人ではありません」

ベラ。

一瞬。

止まる。

エリシア。

僕を見る。

「ソルさん」

分かる。

星。

右脚。

右腕。

付与。

《星律》。

「任せて」

エリシア。

小さく。

頷く。

ベラ。

踏む。

拳。

エリシア。

避ける。

星。

右脚。

切り替える。

加速。

細剣。

突く。

ベラ。

首。

傾ける。

避ける。

次。

左脚。

星。

エリシア。

回る。

二撃目。

ベラ。

腕。

受ける。

右腕。

星。

移す。

押す。

ベラ。

一歩。

下がる。

『……ほう』

エリシア。

止まらない。

僕。

エリシアだけ。

見る。

呼吸。

足。

肩。

視線。

二か月。

一緒。

戦った。

依頼。

受けた。

訓練。

した。

分かる。

次。

どこ。

動きたいか。

「左!」

星。

先に。

移す。

エリシア。

そこへ。

動く。

「……!」

エリシア自身が一瞬。

驚く。

でも。

そのまま。

細剣。

振る。

ベラ。

避ける。

右。

「次!」

星。

動く。

エリシア。

追う。

僕が。

動かしてるんじゃない。

エリシアが動く場所。

そこへ。

星を置く。

前より。

ずっと。

自然。

ベラ。

目。

細める。

『なるほど』

「何です?」

エリシア。

攻撃。

続ける。

『ソルの星に』

一拍。

『随分と慣れたようじゃな』

「はい」

エリシア。

即答。

「私も」

突く。

「ソルさんの星を」

もう一撃。

「知りましたから」

ベラ。

初めて。

大きく。

後ろ。

跳ぶ。

その先。

カイル。

待ってる。

「よくやった!!」

「カイルさん!」

槍。

振る。

ベラ。

受ける。

僕も。

入る。

《明星》。

ガレス。

レオンハルト。

シノブ。

左右。

完全。

囲んだ。

今度。

ベラ。

抜け道。

ない。

ガレス。

笑う。

『ようやく捕まえましたよ』

ベラ。

周囲。

見る。

『そうじゃな』

「……?」

素直。

嫌。

僕。

《心眼》。

ベラ。

見る。

魔力。

上がってない。

黒炎。

ない。

でも。

ベラ。

笑ってる。

『ならば』

一拍。

『ここまでじゃ』

「え?」

カイル。

槍。

止まる。

「何が?」

ベラ。

腕。

下ろす。

『訓練じゃ』

「……」

全員。

止まる。

ガレス。

『どういう意味です?』

『妾の役目は、大天使級個体が侵攻した場合に世界連合軍がどう動くかを見ること』

一拍。

『大結界へ到達した』

『結界も破壊しかけた』

『内部へ侵入した』

『そして市街地へ入った』

ベラ。

周囲。

見る。

『その全てに対し』

人間。

魔族。

聖騎士。

冒険者。

カグラ。

ヴァルガルド。

アステリア。

アルカディア。

『お主らは形を変えた』

ガレス。

黙る。

『最初の防衛線に固執せず』

『結界に固執せず』

『敵を倒すことにも固執せず』

一拍。

『最後には、守るべき者を中心に軍を動かした』

僕。

ベラを見る。

昨日まで。

ただ。

暴れて。

楽しんでる。

そう思ってた。

いや。

多分。

半分くらい。

楽しんでた。

でも。

ちゃんと。

見てた。

世界連合軍。

ベラ。

少し。

笑う。

『五百年前には』

一拍。

『なかったものじゃ』

静かになる。

『妾たちは』

『僅かな者だけで戦った』

五英雄。

ベラ。

六人。

世界。

守った。

『じゃが今は』

ベラ。

僕たちの後ろ。

見る。

『これだけおる』

誰も。

喋らない。

ベラ。

ガレスを見る。

『総隊長』

『はい』

『悪くない軍じゃ』

ガレス。

一瞬。

目。

見開く。

それから。

笑う。

『……ありがとうございます』

その時。

通信。

アン。

『終わった雰囲気を出さないでください』

「え」

ベラ。

眉。

動く。

『何じゃ』

『訓練終了を決めるのは最高指揮者です』

『……』

「怒られた」

カイル。

小声。

『聞こえておるぞ』

「すみません」

アン。

少し。

間。

置く。

『ですが』

声。

柔らかくなる。

『私も十分だと思います』

一拍。

『大規模防衛訓練』

『終了します』

静寂。

次。

歓声。

『終わったぁぁぁ!!』

『勝ったのか!?』

『途中負けたぞ!!』

『どっちでもいい!!』

『生きてる!!』

「訓練だって!」

僕。

思わず。

笑う。

兵士。

座り込む。

盾。

下ろす。

魔王軍。

空。

降りる。

聖騎士。

息。

吐く。

カグラ。

ようやく。

姿。

見せる。

ガレス。

大剣。

地面。

置く。

『疲れた……』

レオンハルト。

笑う。

『総隊長、お疲れ様でした』

『お前もな』

カイル。

その場。

座る。

「もう無理」

「早」

「お前ずっと星で楽してただろ」

「僕が動かしてたんだけど!?」

「じゃあ俺の疲労も持ってけ」

「無理!」

エリシア。

僕を見る。

「ソルさん」

「何?」

「《星域》」

「あ」

まだ。

出てる。

消す。

黄金。

空。

消える。

「忘れてましたね?」

「……はい」

「後で休んでください」

「はい」

ベラ。

僕を見る。

『相変わらずじゃな』

「今日は倒れてないから」

『基準が低い』

「うるさい」

その時。

アン。

通信。

『全隊』

まだ。

続き?

全員。

少し。

緊張。

戻る。

アン。

静か。

『本日の訓練結果については』

『明日、正式に検証します』

一拍。

『今日は』

少し。

間。

『休んでください』

一気。

空気。

抜ける。

「アンもね」

僕。

言う。

通信。

向こう。

アン。

少し。

止まる。

『私は報告があります』

「休んでないじゃん」

『最高指揮者なので』

「じゃあ終わったら休んで」

『……分かりました』

ベラ。

笑う。

『素直じゃの』

『ベラは後で話があります』

『何故じゃ』

『予定外の第四段階を勝手に提案した件です』

『許可したのはお主じゃろ』

『提案したのはあなたです』

『結果的に有意義であった』

『それとこれとは別です』

「逃げた方がいいよ」

僕。

言う。

ベラ。

僕を見る。

『ソル』

「何?」

『お主も一緒に来い』

「何で!?」

カイル。

笑う。

「仲良く怒られてこい」

「僕何もしてない!」

エリシア。

小さく。

笑う。

「頑張ってください」

「エリシアまで!?」

訓練。

終わった。

第一防衛線。

突破された。

大結界。

破壊されかけた。

市街地。

侵入された。

決して。

完璧じゃない。

むしろ。

失敗。

いっぱい。

あった。

でも。

最後まで。

誰も。

一つの形に固執しなかった。

守るものに合わせて。

軍が変わった。

五百年前にはなかったもの。

世界連合軍。

ようやく。

形になった。

――そのはずだった。

『……アンタレス様!!』

突然。

通信。

別の声。

割り込む。

「……?」

全員。

止まる。

アンの表情。

変わる。

『どうしました?』

『緊急報告です!!』

訓練。

終わった直後。

嫌な。

言葉。

『アルカディア観測部より!!』

一拍。

『異常魔力反応を確認!!』

「……え?」

空気。

一瞬。

凍る。

ベラ。

笑み。

消える。

アン。

静か。

でも。

完全に。

最高指揮者の顔へ戻る。

『場所は?』

『――アステリア王国北部』

一拍。

『反応数』

声。

震える。

『一』

僕。

《明星》。

握る。

まさか。

『天使と思われる反応です!!』

訓練は。

終わった。

そして。

本物が。

現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。