魔族の痕跡
第13話 魔族の痕跡
「……痛っ」
朝。
目を開けた瞬間。
全身。
痛い。
「……何これ」
腕。
痛い。
脚。
痛い。
肩。
痛い。
腹。
何故か。
痛い。
僕は。
ゆっくり。
身体を起こす。
「っ……!」
やっぱり。
痛い。
「最悪……」
昨日。
鉄爪狼。
星装。
初めての実戦。
夜。
さらに練習。
結果。
全身。
筋肉痛。
「ソル」
外。
声。
「起きておるか」
「起きてる……」
「なら出てこい」
「ちょっと待って」
「何を待つ」
「身体が動かない」
「知らぬ」
「昨日僕に練習させた人が言う!?」
天幕。
入り口。
開く。
ベラトリクス。
覗く。
「何じゃ」
「何じゃじゃないよ」
「死にそうな顔をしておるな」
「誰のせいだと思ってるの」
「お主」
「半分はベラトリクスでしょ!」
「妾は星装を使っておらぬ」
「練習させたじゃん!」
「三十二粒だけじゃ」
「その前に戦ってるんだよ!」
ベラトリクスが。
僕。
見る。
「大袈裟じゃのう」
「大袈裟じゃない」
「立て」
「無理」
「立て」
「嫌」
「立て」
「アンタレス呼ぶよ」
「何故じゃ」
「ベラトリクスより優しそうだから」
「……」
一瞬。
黙る。
「それはどうじゃろうな」
「え?」
後ろ。
「おはようございます、ソル」
「アンタレス」
助かった。
そう思った。
「身体が痛くて」
「そうでしょうね」
「休んでいい?」
「いいえ」
「……」
「朝食の後」
アンタレスが。
普通の顔。
「星装の練習をしましょう」
「そっち!?」
「昨夜は粒子生成まででした」
「僕、筋肉痛なんだけど」
「だからこそです」
「どういう理屈!?」
ベラトリクスが。
鼻を鳴らす。
「甘えるな」
「二人とも厳しくない!?」
「陛下」
「何じゃ」
「昨日は陛下が三十二粒で止めたのでしょう?」
「うむ」
「珍しく適切な判断です」
「珍しくとは何じゃ!」
「ですが」
アンタレスが。
僕。
見る。
「今日の練習は、出力ではなく制御です」
「制御」
「身体への負担は少ない」
「本当に?」
「無茶をしなければ」
「……」
「陛下が無茶をさせなければ」
「何故妾を見る」
「念のためです」
「妾を何だと思っておる」
僕とアンタレス。
一瞬。
目が合う。
「……」
「……」
「何じゃその顔は!」
朝食。
パン。
干し肉。
温かいスープ。
「美味い」
ベラトリクスが。
普通に言う。
もう。
最初の。
「悪くない」
は。
完全になくなった。
「昨日より素直だね」
「何がじゃ」
「美味しいって」
「美味いものを美味いと言って何が悪い」
「何も」
「なら言うな」
アンタレスが。
スープ。
飲む。
「陛下」
「何じゃ」
「食べすぎです」
「まだ二杯目じゃ」
「朝です」
「妾は五百年」
「その理屈はもう聞きました」
「……」
ベラトリクスが。
不満そう。
僕は笑う。
少し離れた場所。
《蒼鷹》。
ガイル。
地図。
見ている。
セラ。
弓。
手入れ。
ノア。
本。
読んでる。
ミラ。
朝食。
黙々。
食べてる。
商人たちも。
馬車。
出発準備。
「ソル」
「ん?」
ノア。
本。
持ったまま。
来る。
「身体大丈夫?」
「痛い」
「昨日のやつの反動?」
「多分」
「やっぱり特殊な身体強化なんだな」
「そうみたい」
「名前は?」
「……」
一瞬。
迷う。
ベラトリクス。
見る。
「言ってよい」
「いいの?」
「技の名くらいならな」
「昨日は隠してたじゃん」
「レグルスが使っておったと申さなければよい」
「なるほど」
ノア。
期待。
目。
「何?」
「星装」
「……」
止まる。
「星装?」
「うん」
「漢字は?」
「星に装う」
「……」
目。
さらに。
輝く。
「格好いい!」
「そう?」
「めちゃくちゃ!」
ベラトリクス。
横。
「レグルスが名付けた」
「陛下」
アンタレス。
すぐ。
「それは」
「あ」
ベラトリクス。
口。
閉じる。
ノア。
首。
傾げる。
「レグルス?」
「……」
僕。
考える。
「村に来た旅人の名前」
「へえ」
「レグルスって名前だったの?」
「そう」
「勇者と同じ?」
「偶然」
「すごい偶然だな」
「ね」
危ない。
本当に。
危ない。
ベラトリクス。
普通に。
言う。
「陛下」
アンタレスが。
小声。
「もう少し気をつけてください」
「分かっておる」
「今言いました」
「気のせいじゃ」
「便利ですね、その言葉」
ノアは。
気づいてない。
「星装かあ……」
呟く。
「金色の光」
「うん」
「勇者レグルスの伝承でも」
「ノア」
ガイル。
呼ぶ。
「出発準備」
「あ、はい!」
ノア。
走る。
僕。
少し。
息。
吐く。
「危なかった」
「何がじゃ」
「ベラトリクス!」
「妾は名前しか」
「本人の名前出してるじゃん!」
「同名で押し通せ」
「毎回それ無理あるよ!」
アンタレス。
ため息。
「この旅」
「何じゃ」
「陛下を隠すことが一番難しいかもしれません」
「妾に隠れる趣味はない」
「お願いだから持って!」
出発。
商隊。
再び。
東。
朝。
空気。
冷たい。
森。
街道。
僕たちは。
昨日と同じ。
馬車。
周囲。
歩く。
「では」
ベラトリクス。
僕。
見る。
「練習じゃ」
「歩きながら?」
「当然」
「転ばない?」
「転ぶな」
「雑!」
アンタレスが。
横。
歩く。
「今日は粒子を増やしません」
「よかった」
「今出せる三十前後で構いません」
「うん」
「それを」
僕。
身体。
指す。
「均等に纏ってください」
「均等」
「はい」
「どうやって?」
「感覚じゃ」
ベラトリクス。
「ベラトリクスには聞いてない」
「何じゃと」
アンタレス。
少し。
笑う。
「昨夜」
「うん」
「手の周囲へ粒子を出しましたね」
「うん」
「それを肩」
「うん」
「胸」
「うん」
「腹」
「うん」
「脚」
「うん」
「全身へ」
「……」
「一つの場所に集めないように」
「なるほど」
分かりやすい。
「ベラトリクス」
「何じゃ」
「アンタレスの方が教えるの上手い」
「ならばアンタレスに習え!」
「今そうしてる」
「貴様!」
目。
閉じない。
歩きながら。
胸。
意識。
レグルス。
預かった。
金色。
「……」
手。
光。
一粒。
二粒。
三粒。
身体。
周り。
少しずつ。
金色。
粒。
浮かぶ。
「出た」
「そのまま」
アンタレス。
「右腕へ寄りすぎています」
「分かる?」
「見れば」
「僕には分からない」
「慣れです」
「胸へ回せ」
ベラトリクス。
「胸」
意識。
光。
三粒。
胸。
移動。
「次、左腕」
「はい」
「脚」
「……」
右脚。
光。
集まる。
「多い」
「え」
「多いです」
アンタレス。
「散らせ」
ベラトリクス。
「だからどうやって」
「散らすのじゃ」
「説明になってない!」
「左脚へ半分」
アンタレス。
「……」
移す。
二粒。
三粒。
「できた?」
「まだ右が多いです」
「難しい」
「レグルスは」
ベラトリクス。
「歩きながらどころか」
「うん」
「戦いながらやっておった」
「それ昨日聞いた」
「なら早くやれ」
「同じ人間だからって出来ると思わないでよ!」
「奴も最初は人間じゃった」
「最後まで人間でしょ?」
「……まあな」
少し。
妙な間。
「何?」
「何でもない」
「また?」
「集中せよ」
「はいはい」
光。
全身。
少し。
行き渡る。
「……」
身体。
軽い。
でも。
昨日みたいに。
右脚だけ。
爆発的。
じゃない。
全身。
ほんの少し。
「これ」
「分かりますか?」
アンタレス。
「うん」
「身体全体が軽い」
「それが基本です」
「星装の?」
「はい」
ベラトリクス。
「レグルスは、それを切らさぬ」
「ずっと?」
「ああ」
「戦闘中ずっと?」
「ああ」
「魔力なくならない?」
「だから効率がよかった」
「……」
「常に全力で纏っておったわけではない」
「薄く?」
「そうじゃ」
アンタレス。
「必要な時だけ、必要な場所へ集める」
「分散と収束」
「覚えていましたか」
「昨日聞いたから」
「良いですね」
ベラトリクス。
「妾も説明した」
「うん」
「何故アンタレスにだけ褒められた顔をする」
「分かりやすいから」
「……」
ベラトリクス。
そっぽ。
向く。
しばらく。
練習。
歩く。
光。
出す。
散らす。
集まりすぎる。
また散らす。
何回か。
頭。
上。
光。
溜まる。
「ソル」
「何?」
ベラトリクス。
僕。
見る。
「頭が光っておるぞ」
「え?」
アンタレスも。
見る。
「確かに」
「何で!?」
頭。
意識。
光。
三粒。
髪。
周囲。
ふわふわ。
「意味ある?」
「ない」
ベラトリクス。
即答。
「じゃあ早く言ってよ!」
「面白かった」
「見世物じゃない!」
少し離れ。
ノア。
振り返る。
「おお!また光ってる!」
「見ないで!」
「頭だけ!」
「言わないで!」
セラまで。
口元。
少し。
笑う。
「新人」
「はい?」
「目立ってるわよ」
「僕もそう思います」
「ベラトリクス」
僕。
睨む。
「何じゃ」
「絶対わざと黙ってたでしょ」
「さあのう」
「覚えてろ」
「その台詞は妾のじゃ」
昼。
商隊。
止まる。
街道。
分かれ道。
ガイル。
地図。
見る。
「この先」
商隊長。
話す。
「夕方にはローデ村へ着くはずだ」
「ローデ村?」
僕。
聞く。
「東部街道沿いの小さな村だ」
「泊まるんですか?」
「予定ではな」
ガイル。
「馬を休ませたい」
「なるほど」
「村に宿は?」
「小さいがある」
商隊。
再出発。
午後。
空。
少し。
曇る。
風。
冷たくなる。
「雨?」
僕。
空。
見る。
「夜には降るかもしれません」
アンタレス。
「分かるの?」
「匂いで」
「すご」
「五百年生きれば」
「年齢」
「ソル」
「聞いてない!」
ベラトリクス。
警戒。
早い。
「アンタレスは何歳」
「聞くでない」
「自分から話しかけてないよ」
「予防じゃ」
「何それ」
夕方。
森。
抜ける。
少し。
開ける。
「見えた」
商隊長。
前。
指す。
村。
木。
石。
小さい家。
畑。
柵。
「ローデ村」
僕。
少し。
安心。
初日。
野営。
二日目。
村。
ちゃんとした。
宿。
ベッド。
期待。
した。
でも。
近づく。
「……」
何か。
変。
ガイル。
足。
止まる。
「全員」
声。
低い。
「警戒」
「え?」
僕。
前。
見る。
村。
門。
木製。
片側。
壊れている。
地面。
焦げ跡。
柵。
折れてる。
「何これ……」
セラ。
弓。
構える。
「人影はある」
「敵?」
「分からない」
ミラ。
盾。
前。
ノア。
杖。
持つ。
ベラトリクス。
目。
細く。
「……」
アンタレスも。
表情。
変わる。
「何か分かる?」
僕。
小声。
「まだ」
村。
入口。
男。
出てくる。
手。
包帯。
「止まれ!」
叫ぶ。
「誰だ!」
ガイル。
両手。
少し。
見せる。
「冒険者だ」
「冒険者?」
「王都からリュネへ向かう商隊護衛」
男。
少し。
警戒。
緩む。
「……ギルド証を」
「分かった」
ガイル。
見せる。
男。
確認。
「C級……」
「何があった?」
男。
顔。
暗くなる。
「昨夜」
「うん」
「襲われた」
「魔物か?」
「……」
男。
一瞬。
黙る。
「魔族だ」
「……」
僕。
止まる。
隣。
アンタレス。
ほんの少し。
動く。
ベラトリクス。
表情。
消える。
「魔族?」
ガイル。
聞き返す。
「ああ」
「見たのか?」
「俺は」
男。
唇。
噛む。
「影だけだ」
「影?」
「人の形」
「……」
「黒い魔力」
「……」
「それに」
男。
村。
奥。
見る。
「魔物を連れていた」
「被害は?」
「死人が二人」
「……」
「怪我人は十人以上」
空気。
重くなる。
「子供は?」
セラ。
聞く。
「無事だ」
「そう」
ほんの少し。
息。
吐く。
ガイル。
「中へ入っても?」
「ああ」
「商隊は?」
「広場へ」
「分かった」
村。
入る。
「……」
酷い。
家。
一軒。
屋根。
焼けてる。
壁。
黒い。
地面。
爪。
跡。
広場。
怪我人。
包帯。
教会。
人。
集まっている。
泣いてる。
子供。
母親。
抱く。
僕。
無意識。
拳。
握る。
「ソル」
ベラトリクス。
「何?」
「見るなとは言わぬ」
「……」
「じゃが」
「うん」
「飲まれるな」
「……分かった」
ガイルたち。
村長らしい。
老人。
話す。
僕たちは。
商隊。
荷物。
整理。
補助。
でも。
耳。
自然。
向く。
「昨夜、日が落ちてしばらくしてからだ」
村長。
「森から魔物が」
「種類は?」
ガイル。
「見たことがない」
「狼?」
「いや」
「人型?」
「四足もいた」
「何体?」
「十ほど」
「魔族本人は?」
「一人」
「姿」
「黒い外套」
「顔は?」
「見ていない」
「何故魔族だと?」
村長。
怒り。
声。
「魔力だ」
「魔力?」
「真っ黒だった」
「……」
「それに」
教会。
神官。
前。
出る。
若い。
男。
「東部では最近、魔族の目撃が増えています」
「増えている?」
ガイル。
「はい」
「どこで?」
「この一月」
「……」
「街道沿いの村」
「うん」
「森」
「うん」
「数件」
「被害も?」
「あります」
「王都には?」
「報告済みです」
「兵は?」
「調査隊が出る予定だと」
ベラトリクス。
横。
小さく。
「遅いのう」
僕。
見る。
「声」
「分かっておる」
アンタレス。
何も。
言わない。
ただ。
焼けた家。
ずっと。
見てる。
「アンタレス」
僕。
小声。
「……」
返事。
ない。
「アンタレス?」
「はい」
「大丈夫?」
「何がでしょう」
「いや」
僕。
少し。
迷う。
「魔族って」
金色。
目。
僕。
見る。
「私の同胞かと?」
「……うん」
「分かりません」
「見れば分かる?」
「痕跡が残っていれば」
「……」
「ただ」
アンタレス。
焼け跡。
見る。
「違和感があります」
「何?」
「まだ」
首。
横。
「確かめます」
その後。
ガイル。
決める。
「今日はここで止まる」
「予定通り?」
商隊長。
「ああ。ただし見張りを増やす」
「襲撃の可能性?」
「ある」
「分かった」
《蒼鷹》。
村。
周囲。
調査。
僕たち。
商隊。
手伝い。
荷物。
降ろす。
馬。
水。
「ソル」
ガイル。
呼ぶ。
「はい」
「今日は勝手に動くなよ」
「昨日のこと?」
「それもある」
「はい」
「村の外へ出るな」
「分かりました」
「ベラトリクス」
「何じゃ」
「お前も」
「妾は」
アンタレス。
肩。
手。
「承知しました」
「何故毎回お主が答える!」
「陛下が余計なことを言うからです」
ガイル。
少し。
笑う。
「アンタレスがいると助かる」
「でしょう」
「妾の方が」
「ベラトリクス」
僕。
「今は我慢」
「……」
夕方。
空。
暗い。
雨。
まだ。
降らない。
村。
静か。
不自然。
僕。
広場。
水桶。
運ぶ。
「……」
昨日。
僕たち。
普通に。
笑ってた。
同じ時間。
この村。
襲われてた。
そう考えると。
妙な。
気持ち。
「ソル」
「ん?」
トーマ。
助けた。
商人。
「そっち頼む」
「あ、うん」
運ぶ。
一段落。
「疲れた」
僕。
腰。
伸ばす。
ベラトリクス。
近く。
椅子。
座る。
「妾は腹が減った」
「働いてないのに?」
「警戒しておる」
「座って?」
「重要な仕事じゃ」
アンタレス。
「陛下」
「何じゃ」
「少し」
「?」
「来てください」
声。
違う。
真面目。
ベラトリクス。
立つ。
僕も。
見る。
「僕も?」
アンタレス。
少し。
考える。
「来ますか」
「うん」
「村の外は駄目って」
「村内です」
「なら」
三人。
村。
端。
壊れた家。
誰も。
いない。
「ここ」
アンタレス。
壁。
見る。
黒い。
焼け跡。
爪。
大きい。
「……」
ベラトリクス。
近づく。
指。
少し。
翳す。
「魔力」
「残ってる?」
僕。
聞く。
「ああ」
「魔族?」
アンタレス。
しゃがむ。
地面。
黒い跡。
触れない。
近く。
手。
翳す。
目。
閉じる。
「……」
長い。
数秒。
「違います」
「え?」
僕。
「違う?」
「はい」
「魔族じゃない?」
「少なくとも」
アンタレス。
目。
開く。
「この魔力は」
一拍。
「魔族のものではありません」
「分かるの?」
「私は」
立つ。
真紅。
髪。
風。
揺れる。
「五百年以上」
「……」
「魔族を率いていました」
「……」
「魔族の魔力を見間違えるほど」
金色。
目。
冷たい。
「耄碌してはいません」
「……」
説得力。
すごい。
ベラトリクス。
壁。
見る。
「妾も同意見じゃ」
「ベラトリクスも?」
「ああ」
「じゃあ」
僕。
村。
見る。
「みんな間違えてる?」
「見せられたものを信じておるだけじゃ」
「黒い魔力だったから?」
「人間は」
ベラトリクス。
鼻。
鳴らす。
「黒ければ魔族と思うらしい」
「実際違うの?」
「魔力の色など個体差じゃ」
「そうなんだ」
アンタレス。
「人間にも黒系統の魔力を持つ者はいます」
「じゃあ」
僕。
焼け跡。
見る。
「誰かが」
「……」
「魔族の仕業に見せてる?」
アンタレス。
答えない。
ベラトリクスも。
「ソル」
「何?」
「触れてみよ」
「これに?」
「ああ」
黒い。
壁。
昨日。
塔。
灰色の術式。
思い出す。
「危なくない?」
「妾がおる」
「今魔力ほぼないよね」
「……」
「アンタレスがいます」
アンタレス。
言う。
「そっちの方が安心」
「何じゃと!?」
「冗談」
半分。
本当。
僕。
壁。
近づく。
「じゃあ」
手。
伸ばす。
黒い。
焦げ跡。
指。
触れる。
瞬間。
「……」
冷たい。
「……?」
待つ。
記憶。
来る。
はず。
昨日。
鉄爪狼。
残響。
人。
感情。
場所。
何か。
でも。
「……」
来ない。
「ソル?」
アンタレス。
「待って」
目。
閉じる。
魔力。
ある。
確か。
黒い。
残り。
強い。
なのに。
「……いない」
ベラトリクス。
表情。
変わる。
「何?」
「誰も」
「詳しく申せ」
「塔と同じ」
「……」
アンタレス。
ベラトリクス。
見る。
「第一塔の?」
「ああ」
僕。
手。
離す。
「魔力は残ってる」
「うん」
「でも」
自分。
手。
見る。
「何もない」
「感情も?」
アンタレス。
「ない」
「記憶」
「ない」
「意思」
「……ない」
「空っぽ?」
「うん」
僕。
壁。
見る。
「魔力だけ」
静か。
風。
「……」
ベラトリクス。
赤い目。
焼け跡。
「やはり」
「何?」
僕。
すぐ。
「今やはりって言ったよね」
「言っておらぬ」
「言った」
「気のせいじゃ」
「絶対聞いた!」
アンタレス。
「私も聞きました」
「アンタレス!」
「事実です」
「二人とも」
僕。
見る。
「何か知ってる?」
「……」
ベラトリクス。
黙る。
アンタレスも。
少し。
目。
逸らす。
「なんで二人とも黙るの」
「確証がない」
アンタレス。
先。
答える。
「確証?」
「はい」
「何の?」
「それは」
ベラトリクス。
口。
挟む。
「まだ申さぬ方がよい」
「また?」
「またじゃ」
「僕だけ知らないの多くない?」
「知らぬ方が幸せなこともある」
「その言い方一番気になるんだけど!」
ベラトリクス。
焼け跡。
見る。
「ソル」
「何?」
「五百年前」
声。
低い。
「妾たちが戦った災厄」
「……」
「覚えておるな」
「空から来た」
「ああ」
「白い翼」
「……」
ほんの。
少し。
間。
「それ以上」
「うん」
「今は聞くな」
「……」
「何故?」
「妾が」
一瞬。
表情。
変わる。
「まだ判断できぬ」
「……」
いつもの。
誤魔化し。
違う。
本当に。
分からない。
そんな顔。
「分かった」
僕。
頷く。
ベラトリクス。
少し。
驚く。
「何じゃ」
「何が」
「もっと聞くと思った」
「聞きたいよ」
「なら」
「でも」
僕。
黒い跡。
見る。
「分からないなら仕方ない」
「……」
「分かったら教えて」
「……気が向いたらな」
「そこは約束してよ」
アンタレス。
小さく。
笑う。
「陛下」
「何じゃ」
「教えてあげてください」
「何故じゃ」
「仲間でしょう」
「……」
ベラトリクス。
僕。
見る。
「……」
「何?」
「その言葉」
「うん」
「お主ら便利に使いすぎじゃ」
「ベラトリクスが最初にお金の時使ったんだよ」
「忘れよ」
「無理」
その時。
「ソル!」
遠く。
ノア。
声。
「どこいるー?」
「ここ!」
「ガイルが呼んでる!」
「今行く!」
僕。
二人。
見る。
「戻ろう」
「ああ」
アンタレス。
でも。
一歩。
止まる。
「……」
「何?」
「陛下」
「何じゃ」
「こちら」
家。
裏。
指す。
草。
地面。
何か。
白い。
「……」
僕。
近づく。
「羽根?」
落ちてる。
一枚。
白い。
大きい。
手。
掌より。
長い。
「鳥?」
ベラトリクス。
表情。
一瞬。
凍る。
「触るな!」
「え」
もう。
遅い。
僕。
指。
羽根。
触れた。
――白。
視界。
消える。
「っ……!」
暗闇。
違う。
夜。
空。
村。
燃えてる。
誰か。
立つ。
人。
形。
細い。
白い。
背中。
何か。
広がる。
翼。
一枚。
二枚。
大きい。
真っ白。
『――汚染を確認』
声。
冷たい。
男?
女?
分からない。
『対象地域』
何か。
聞こえる。
『浄化』
光。
次。
黒。
「っ!」
現実。
戻る。
膝。
落ちる。
「ソル!」
アンタレス。
支える。
「はぁ……っ」
息。
苦しい。
「何を見た!」
ベラトリクス。
肩。
掴む。
「白い」
「……」
「翼」
ベラトリクス。
赤い目。
大きく。
「何と申しておった」
「汚染」
「……」
「汚染を確認って」
アンタレス。
顔。
変わる。
「他には」
「対象地域」
「……」
「それから」
喉。
乾く。
「浄化」
静か。
本当に。
何も。
聞こえない。
ベラトリクス。
羽根。
見る。
いつもの。
軽い顔。
ない。
アンタレス。
同じ。
「……」
僕。
二人。
見る。
「知ってるんでしょ」
「……」
ベラトリクス。
唇。
噛む。
「五百年前」
声。
低い。
「妾は」
一拍。
「この言葉を聞いた」
「……」
「どこで?」
「戦場じゃ」
「誰から」
「災厄」
「……」
風。
吹く。
白い羽根。
地面。
揺れる。
「ベラトリクス」
「何じゃ」
「これ」
「……」
「五百年前の災厄と」
僕。
羽根。
見る。
「同じなの?」
長い。
沈黙。
ベラトリクス。
答えない。
アンタレスも。
でも。
それだけで。
十分だった。
「……まさか」
僕。
呟く。
「まだ」
喉。
乾く。
「残ってる?」
「分からぬ」
ベラトリクス。
今度は。
はっきり。
言う。
「じゃが」
赤い瞳。
白い羽根。
睨む。
「もし」
「……」
「同じものなら」
空。
見る。
「五百年」
「……」
「何も終わっておらぬ」
その言葉。
胸。
重い。
五百年前。
六人。
世界。
救った。
はず。
災厄。
ベラトリクス。
中。
封じた。
五つ。
塔。
支えた。
なのに。
今。
村。
襲った。
何か。
魔族。
仕業。
見せかけた。
空っぽ。
魔力。
そして。
白い翼。
「陛下」
アンタレス。
「はい」
「この羽根」
「持って行くぞ」
「危険では?」
「だからこそじゃ」
「……」
ベラトリクス。
僕。
見る。
「お主は触るな」
「もう触った」
「次からじゃ!」
「はい」
アンタレス。
布。
取り出す。
羽根。
直接。
触れず。
包む。
「何故」
僕。
聞く。
「魔族の仕業に?」
「分からぬ」
ベラトリクス。
「でも」
「うん」
「もし意図的なら」
アンタレス。
続ける。
「人間と魔族を」
「……」
「再び争わせたい者がいる」
「……」
五百年前。
人間。
魔族。
戦った。
災厄。
来た。
一緒。
戦った。
その後。
歴史。
ベラトリクス。
悪。
五英雄。
倒した。
今。
また。
魔族。
悪。
「……嫌だな」
僕。
呟く。
「何がじゃ」
「同じこと」
「?」
「五百年前と」
村。
見る。
怪我人。
焼けた家。
「また繰り返すの」
ベラトリクス。
少し。
僕。
見る。
「ソル」
「何?」
「人間というのは」
空。
見る。
「同じことを繰り返す生き物じゃ」
「……」
「魔族もな」
「……」
「妾も」
「ベラトリクスも?」
「ああ」
少し。
笑う。
「何度レグルスと喧嘩したと思っておる」
「それと同じ?」
「大体同じじゃ」
「絶対違う」
アンタレス。
小さく。
笑う。
少し。
空気。
戻る。
でも。
ベラトリクス。
すぐ。
真面目。
「じゃが」
「うん」
「繰り返すからといって」
「……」
「止めてはならぬ理由にはならぬ」
「……」
「間違えるなら」
赤い目。
僕。
見る。
「その度に選び直せばよい」
「……」
昨日。
星装。
選ぶため。
技。
同じ。
「レグルスも」
「何じゃ」
「そうだった?」
ベラトリクス。
少し。
笑う。
「最も面倒なほどにな」
遠く。
「ソルー!」
ノア。
また。
「本当にどこー!?」
「今行く!」
僕。
返す。
「戻ろう」
三人。
広場。
戻る。
ガイル。
腕。
組む。
「遅い」
「すみません」
「何してた?」
「ちょっと」
僕。
ベラトリクス。
見る。
「痕跡を」
「痕跡?」
アンタレス。
布。
包んだ。
羽根。
見せない。
「村内を確認していました」
ガイル。
僕たち。
見る。
「勝手に調査するな」
「すみません」
僕。
頭。
下げる。
「何か見つけた?」
「……」
迷う。
ベラトリクス。
先。
「妙な魔力が残っておった」
「魔族?」
「違う」
「……」
ガイル。
表情。
変わる。
「分かるのか?」
「妾にはな」
「理由は?」
「経験じゃ」
「……」
怪しい。
でも。
ガイル。
少し。
考える。
「アンタレス」
「はい」
「あなたも?」
「同意見です」
「……」
「魔族の魔力ではないと思います」
「根拠」
「魔力の性質」
「どこで覚えた?」
一瞬。
「故郷で」
アンタレス。
答える。
嘘。
ではない。
「……」
ガイル。
腕。
組む。
「分かった」
「信じるの?」
僕。
聞く。
「全部じゃない」
「……」
「でも」
焼けた家。
見る。
「情報は多い方がいい」
「……」
「今夜は俺たちで周囲を調べる」
「僕たちは?」
「村の中」
「はい」
「絶対外へ出るな」
「はい」
ベラトリクス。
何も。
言わない。
珍しい。
夜。
雨。
降る。
ぽつ。
ぽつ。
村。
屋根。
音。
商隊。
宿。
足りない。
僕たち。
村。
集会所。
泊まる。
怪我人。
教会。
商人。
交代。
見張り。
僕たち。
焚き火。
「今日は」
僕。
ベラトリクス。
見る。
「星装の練習なし?」
「する」
「え」
「何故驚く」
「今日くらい」
「関係ない」
「筋肉痛」
「朝よりマシじゃろ」
「確かに」
「ならやる」
アンタレス。
「ただし」
「うん」
「今日は十五分」
「短い」
「怪我を悪化させないためです」
「アンタレス優しい」
「妾も十五分にしようと思っておった」
「嘘」
「何故分かる」
「顔」
「またか」
僕。
立つ。
雨。
当たらない。
屋根。
下。
「じゃあ」
胸。
意識。
金。
光。
一つ。
二つ。
周囲。
粒。
「全身」
アンタレス。
「はい」
「右脚へ寄せない」
「はい」
「頭にも」
ベラトリクス。
「それはもう分かってる!」
少しずつ。
光。
身体。
囲む。
昨日。
三十二。
今日。
数。
数えない。
増やす。
目的。
違う。
均等。
腕。
胸。
脚。
肩。
背中。
「……」
身体。
軽い。
右。
左。
同じ。
「これ?」
アンタレス。
目。
細く。
「まだ右が少し多い」
「分かる?」
「はい」
「妾から見てもな」
ベラトリクス。
「じゃあ」
左。
意識。
二粒。
移す。
「今」
「近いです」
「おお」
少し。
嬉しい。
「では歩け」
「歩く」
一歩。
普通。
「走れ」
「走る」
短い。
距離。
ゆっくり。
「もっと」
「これ以上だと」
「集中するな」
「え?」
ベラトリクス。
「全身に散らしたまま」
「うん」
「普通に走れ」
「普通に」
「星装を使っておることを意識しすぎじゃ」
「……」
「呼吸と同じ」
「レグルスみたいに?」
「そうじゃ」
「難しい」
「だから練習じゃ」
走る。
少し。
速い。
でも。
昨日みたい。
飛ばない。
止まる。
普通。
「止まれた」
「当然です」
アンタレス。
「昨日より良い」
「やった」
「まだ遅い」
ベラトリクス。
「褒めてよ!」
「調子に乗る」
「少しくらい」
「駄目じゃ」
雨。
音。
焚き火。
金色。
粒。
小さく。
浮く。
僕。
昨日より。
少し。
扱える。
「ソル」
アンタレス。
「はい」
「右腕へ五粒」
「五」
「集めて」
「……」
右腕。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
「できた」
「では戻して」
「戻す」
全身。
「今度は左脚へ三」
「はい」
移す。
戻す。
「次は胸へ四」
「はい」
「良いですね」
ベラトリクス。
腕。
組む。
「遅い」
「初日二日目だよ!」
「レグルスなら」
「比較禁止!」
「まだ申しておらぬ」
「言おうとした!」
「はは」
アンタレス。
笑う。
「何じゃ」
「いえ」
「お主最近よく笑うな」
「陛下がいますので」
「妾が面白いと?」
「かなり」
「何じゃと」
僕も。
笑う。
でも。
ふと。
視線。
白い羽根。
布。
包む。
アンタレス。
荷物。
中。
思い出す。
汚染。
浄化。
白い翼。
「……」
光。
一粒。
消える。
「ソル」
ベラトリクス。
「集中」
「うん」
「今は今じゃ」
「……」
「考えるのは後にせよ」
「分かった」
また。
光。
出す。
今。
出来ること。
星装。
制御。
目の前。
一つ。
その夜。
十五分。
本当に。
十五分。
アンタレス。
止めた。
ベラトリクス。
「もう少し」
「駄目です」
「あと五分」
「ソルの身体です」
「本人は」
「僕は休みたい」
「裏切り者!」
「僕の身体だから!」
眠る。
前。
僕。
床。
毛布。
横。
ベラトリクス。
壁。
寄る。
アンタレス。
座る。
「アンタレス」
「何でしょう」
「白い羽根」
「はい」
「五百年前も見た?」
「……」
少し。
間。
「はい」
「いっぱい?」
「戦場では」
金色。
目。
少し。
遠く。
「雪のように」
「……」
「降っていました」
「雪」
「白い羽根が」
「……」
「空を埋めるほど」
想像。
したくない。
「怖かった?」
「私が?」
「うん」
アンタレス。
少し。
笑う。
「怖かったですよ」
「……」
「意外?」
「ちょっと」
「魔人も恐怖はあります」
「そっか」
「ですが」
ベラトリクス。
見る。
「陛下の方が」
「何じゃ」
「ずっと無茶をしていました」
「昔話はよい」
「一人で空へ飛んで行ったことも」
「アンタレス」
「何でしょう」
「寝ろ」
「まだ話して」
「寝ろ」
僕。
笑う。
「やっぱ昔から」
「何じゃ」
「一人でやろうとしてたんだ」
「……」
レグルス。
言葉。
五百年前と同じこと。
するな。
誰か。
頼れ。
ベラトリクス。
少し。
顔。
逸らす。
「昔は昔じゃ」
「今は?」
「……」
僕。
アンタレス。
見る。
「二人もおる」
「……」
「足手まとい一人」
「僕?」
「有能な一人」
「私ですね」
「ちょっと」
アンタレス。
笑う。
「まあ」
ベラトリクス。
少し。
笑う。
「悪くはない」
その言葉。
聞いて。
少し。
安心。
外。
雨。
降り続ける。
村。
静か。
でも。
その夜。
何も。
起きなかった。
翌朝。
ガイルたち。
村外。
戻る。
「痕跡は?」
僕。
聞く。
ガイル。
顔。
険しい。
「ある」
「魔族?」
「……」
「何か見つけた?」
セラ。
小さな。
袋。
出す。
中。
白。
一枚。
羽根。
「これ」
僕。
息。
止まる。
ベラトリクス。
アンタレス。
同時。
見る。
「森の奥」
セラ。
「何枚か落ちてた」
「鳥の?」
ノア。
聞く。
「分からない」
「こんな大きい鳥、この辺いた?」
「いない」
ガイル。
僕たち。
見る。
「昨日」
声。
低い。
「お前たちが見つけた妙な魔力」
「……」
「森にも残ってた」
「同じ?」
「多分」
「……」
ガイル。
地図。
広げる。
「村を襲った連中」
「うん」
「東へ向かってる」
「東」
僕。
地図。
見る。
街道。
港。
リュネ。
その先。
海。
カグラ皇国。
「僕たちと」
「同じ方向だ」
ベラトリクス。
目。
細く。
「……」
東。
シリウスの塔。
弱く。
明滅。
していた。
「偶然」
僕。
呟く。
「かな」
誰も。
答えない。
アンタレス。
真紅の髪。
揺れる。
「陛下」
「ああ」
ベラトリクス。
頷く。
「嫌な予感がするのう」
「僕も」
「お主の予感は当てにならぬ」
「今いいところだったのに!」
少し。
笑う。
でも。
胸。
重い。
五百年前。
終わった。
はず。
災厄。
白い翼。
魔族。
濡れ衣。
そして。
東。
僕たち。
次。
向かう場所。
同じ。
「ソル」
ガイル。
呼ぶ。
「はい」
「今日も予定通り進む」
「分かりました」
「ただし」
「?」
「ここから先」
剣。
腰。
確認。
「警戒を一段上げる」
「……はい」
商隊。
準備。
始まる。
村人。
見送る。
怪我。
顔。
疲れ。
「気をつけて」
昨日。
男。
言う。
「東は」
「うん」
「何かおかしい」
「……」
僕。
頷く。
「分かりました」
馬車。
動く。
村。
離れる。
僕。
振り返る。
壊れた門。
焼けた家。
小さく。
なっていく。
右手。
握る。
胸。
金色。
光。
微か。
脈打つ。
僕は。
まだ。
弱い。
星装も。
全然。
使えない。
昨日。
一人。
助けられた。
でも。
この村。
僕が来る前。
二人。
死んだ。
何も。
できない。
当たり前。
分かってる。
それでも。
「……」
次。
もし。
目の前で。
同じこと。
起きたら。
「ソル」
「何?」
ベラトリクス。
横。
「また難しい顔をしておる」
「そう?」
「ああ」
「考えてた」
「何を」
「星装」
「嘘じゃな」
「半分本当」
「残り」
僕。
前。
東。
見る。
「間に合いたいなって」
「……」
ベラトリクス。
少し。
黙る。
「なら」
「?」
「強くなれ」
「簡単に言うなあ」
「簡単ではない」
「え?」
ベラトリクス。
僕。
見る。
「じゃから」
少し。
笑う。
「妾が教える」
「……」
「文句はあるか?」
「教え方が分かりにくい」
「ソル!」
アンタレス。
横。
「私も手伝います」
「助かる」
「何故妾より先に礼を言う!」
「アンタレスの方が分かりやすいから!」
「貴様ぁ!」
少し。
笑い。
商隊。
東。
進む。
その先。
まだ。
僕たちは知らない。
村を襲ったものが。
もう一度。
僕たちの前へ。
姿を現すことを。
そして。
その時。
僕が初めて。
星装を。
自分の意思で。
戦いの中。
使うことになることを。




