開戦
第137話 開戦
朝。
目が覚めた。
「……」
静か。
窓。
見る。
いつもの。
セレフィア。
空。
晴れてる。
人。
歩いてる。
馬車。
走ってる。
何も。
起きてない。
「今日なんだよね……」
訓練。
開始時間。
知らされてない。
ベラ。
どこにいるか。
知らない。
侵攻経路。
知らない。
分かってるのは。
今日。
どこかで。
警報。
鳴る。
僕。
着替える。
一階。
降りる。
「おはよう」
母さん。
いつも通り。
「おはよう」
父さん。
新聞。
読んでる。
「カイルとエリシアちゃんはもう起きてるわよ」
「早」
食卓。
カイル。
朝食。
食べてる。
エリシア。
その隣。
「おせえぞ」
「まだ朝だよ」
「今日だぞ?」
「だからって寝ないわけにいかないでしょ」
エリシア。
僕を見る。
「よく眠れましたか?」
「普通に」
「……」
「何?」
「意外です」
「どういう意味?」
カイル。
笑う。
「お前こういう時、夜中まで考えてそうじゃん」
「昨日は考えないようにした」
「成長したな」
「何で上からなの?」
母さん。
料理。
置く。
「はい」
「ありがと」
「ちゃんと食べて」
「うん」
「今日はいつ帰るの?」
「分かんない」
「そう」
普通。
母さん。
普通。
だけど。
少し。
違う。
玄関。
荷物。
置いてある。
避難用。
昨日。
用意したもの。
父さんも。
新聞。
読んでるけど。
何度か。
外。
見てる。
みんな。
分かってる。
今日。
警報。
鳴る。
その時。
住民も。
動く。
僕たち。
食べる。
その時。
――ゴォォォォン。
「……!」
鐘。
一回。
二回。
三回。
違う。
大聖堂。
いつもの鐘じゃない。
長い。
低い。
警報。
「来た」
カイル。
立つ。
同時。
街。
外。
別の音。
――カンッ!!
――カンッ!!
――カンッ!!
警鐘。
鳴る。
声。
響く。
『緊急警報!!』
魔道具。
街全体。
『セレフィア神聖国北西部!!』
『敵性存在を確認!!』
『天使による侵攻と想定!!』
始まった。
父さん。
新聞。
置く。
母さん。
僕を見る。
僕。
立つ。
「行ってくる」
母さん。
頷く。
「行ってらっしゃい」
一拍。
「ちゃんと帰ってきなさい」
「うん」
カイル。
槍。
取る。
エリシア。
細剣。
腰。
「行きましょう」
三人。
玄関。
飛び出す。
外。
もう。
動いてる。
「避難を開始してください!!」
聖騎士。
走る。
「第一避難区域はこちらです!!」
住民。
昨日。
確認した道。
向かう。
子供。
手。
引かれる。
老人。
聖職者。
支える。
馬車。
道。
空ける。
冒険者。
武器。
持って。
ギルド。
向かう。
「本当に……」
カイル。
走りながら。
周り。
見る。
「戦争みてえだな」
「うん」
エリシア。
「集中してください」
「分かってる」
僕。
走る。
大聖堂。
前。
既に。
聖騎士団。
集結。
「第三隊!西門へ!」
「第五隊は避難路の護衛!」
「結界部隊を中央へ!」
「治癒部隊、指定位置へ移動!」
レオンハルト。
指示。
飛ばしてる。
「レオンハルト!」
僕たち。
到着。
レオンハルト。
振り返る。
「《黒翼》ですね」
「うん!」
「最高指揮者がお待ちです」
指。
向こう。
アン。
いる。
教皇。
アルヴィス。
地図。
魔道通信。
いくつも。
既に。
動いてる。
「アン!」
アン。
僕たちを見る。
「来ましたね」
静か。
いつも。
同じ。
でも。
目。
違う。
最高指揮者。
「状況は?」
僕。
聞く。
「北西部」
地図。
指す。
「セレフィア国境から侵攻」
一拍。
「最終想定敵」
僕たち。
見る。
「ベラトリクス」
「もう?」
カイル。
「最初からベラなのかよ」
「はい」
「通常の敵役は?」
「ありません」
「え?」
アン。
普通。
「変更しました」
「聞いてない!」
「知らせれば訓練になりません」
「そういう問題!?」
エリシア。
「合理的だと思います」
「エリシア!?」
アン。
地図。
戻る。
「今回の目的は」
「用意された順番をこなすことではありません」
一拍。
「突然」
「強大な敵が現れた時」
「世界連合軍がどう動けるか」
「それを確認します」
カイル。
口元。
上がる。
「いいじゃねえか」
僕。
ため息。
「本当に本番みたい……」
「そのつもりでと言ったはずです」
はい。
その時。
魔道通信。
光る。
『北西監視隊より報告!!』
全員。
見る。
『敵性存在、一名!!』
一名。
分かってる。
でも。
言葉。
重い。
『徒歩で国境を越えました!!』
「徒歩?」
僕。
『はい!』
一拍。
『ベラトリクス様です!!』
カイル。
「様ついてるぞ」
「仕方ないでしょ」
魔族からしたら。
元魔王。
『現在、北西防衛線へ接近中!!』
アン。
即座。
「交戦は?」
『まだです!』
「監視を継続」
『はい!』
「接触部隊は独断で攻撃しないでください」
『承知!』
アン。
次。
魔道通信。
起動。
複数。
一斉。
繋がる。
世界。
「全員、聞いてください」
声。
変わる。
『こちらアステリア』
『ヴァルガルド、受信』
『アルカディア、問題ありません』
『カグラ皇国、受信』
『魔王軍、聞こえております!』
ガレス。
声。
アン。
静か。
「セレフィア神聖国への侵攻を確認しました」
一拍。
「これより」
「大規模防衛訓練を開始します」
世界。
動く。
「各国」
「予定通り」
「実際の有事と同じ手順で行動してください」
『了解!』
通信。
切り替わる。
アステリア王国。
待機していた軍。
「第一報確認!!」
「敵、セレフィア北西部より侵攻!!」
王国軍責任者。
立つ。
「派遣部隊!!」
「出撃準備!!」
『はい!!』
「国内防衛部隊は配置を維持!!」
「派遣部隊のみ動かす!!」
兵。
走る。
馬。
動く。
冒険者。
集合。
「世界連合軍協定に基づき!!」
一拍。
「セレフィア神聖国へ援軍を送る!!」
ヴァルガルド。
巨大な門。
開く。
「防衛軍第一派!!」
『はい!!』
「セレフィアへ向かう!!」
「到着後、直ちに防衛線構築へ移行!!」
『はい!!』
「第二部隊は国内残留!!」
「要塞防衛を維持しろ!!」
『了解!!』
アルカディア。
魔法部隊。
動く。
魔道具。
浮く。
研究者。
軍師。
地図。
囲む。
「侵攻位置確認」
「北西」
「到着後の展開地点を計算」
「魔力消費を考慮」
「移動開始」
カグラ皇国。
「先行部隊」
「出る」
黒装束。
動く。
「本隊へ進路を送れ」
「承知」
「単独交戦は禁止」
「承知」
「敵は」
一拍。
「ベラトリクスだ」
「……承知」
魔族領。
魔王城。
ガレス。
前。
立つ。
「聞いたな!!」
『はい!!』
「第一派!!」
「出撃!!」
『はい!!』
魔王軍。
動く。
翼。
持つ者。
空。
上がる。
地上部隊。
門。
向かう。
「残留部隊!!」
「魔族領防衛を継続!!」
『はい!!』
「本物の天使が出た時に動けねえなんて間抜けは許さん!!」
『はい!!』
「行け!!」
世界。
本当に。
動き始めた。
セレフィアへ。
でも。
まだ。
来ない。
距離。
ある。
時間。
かかる。
それまで。
守るのは。
ここにいる。
僕たち。
「第一防衛線、展開完了!」
報告。
「第二防衛線、配置中!」
「住民避難、開始しています!」
「大聖堂周辺、結界部隊配置完了!」
「治癒部隊、準備完了!」
次々。
アン。
聞く。
「大結界は?」
研究者。
「展開可能です!」
「まだです」
「……まだ?」
僕。
聞く。
アン。
頷く。
「最初から大結界に頼りません」
「通常防衛線がどこまで機能するか確認します」
一拍。
「必要になった時」
「展開します」
なるほど。
結界。
ある。
でも。
それだけ。
頼らない。
その時。
『接敵!!』
通信。
響く。
全員。
止まる。
『北西第一防衛線!!』
『最終想定敵と接触!!』
僕。
拳。
握る。
来た。
アン。
「映像を」
アルヴィス。
魔道具。
操作。
光。
広がる。
映像。
映る。
平原。
その向こう。
一人。
歩いてる。
ベラ。
「……」
普通。
歩いてる。
黒炎。
ない。
魔力。
抑えてる。
なのに。
第一防衛線。
兵士たち。
明らか。
緊張。
してる。
『止まれ!!』
指揮官。
声。
『これより先はセレフィア神聖国防衛区域!!』
ベラ。
止まる。
『訓練規定に基づき!!』
一拍。
『あなたを敵性存在として迎撃します!!』
ベラ。
少し。
笑う。
『よかろう』
声。
魔道具。
拾う。
『では』
一拍。
『始めるか』
ぞわ。
僕。
腕。
鳥肌。
立つ。
知ってる。
ベラ。
一緒。
旅。
した。
ご飯。
食べた。
怒られた。
笑った。
何度も。
助けられた。
でも。
今。
映像。
向こう。
立ってるのは。
違う。
五百年前。
魔王。
ベラトリクス。
『第一防衛線!!』
指揮官。
剣。
上げる。
『構え!!』
盾。
並ぶ。
槍。
出る。
後方。
魔法。
展開。
弓。
引く。
『攻撃準備!!』
ベラ。
見てる。
動かない。
『放て!!』
一斉。
魔法。
矢。
飛ぶ。
火。
風。
光。
地面。
揺れる。
全部。
ベラへ。
「……」
僕。
映像。
見る。
着弾。
爆発。
土煙。
広がる。
カイル。
「どうだ?」
誰も。
答えない。
僕。
分かる。
終わってない。
土煙。
晴れる。
ベラ。
いる。
同じ場所。
無傷。
「……」
第一防衛線。
静か。
ベラ。
服。
少し。
払う。
『なるほど』
一拍。
『では』
右手。
上げる。
黒。
灯る。
黒炎。
小さい。
でも。
僕。
知ってる。
あれ。
「来る」
僕。
声。
出る。
次。
瞬間。
――ゴォォォォォォォン!!
黒炎。
地面。
走る。
第一防衛線。
正面。
「っ!?」
盾部隊。
『防御!!』
結界。
展開。
黒炎。
衝突。
爆発。
地面。
揺れる。
映像。
大きく。
乱れる。
『ぐっ……!!』
『維持しろ!!』
『後退するな!!』
『結界部隊!!』
『補強!!』
耐える。
まだ。
耐えてる。
ベラ。
少し。
目。
細める。
『ほう』
楽しそう。
やめて。
その顔。
絶対。
出力。
上げる。
「アン」
僕。
見る。
「僕たちは?」
アン。
映像。
見たまま。
「まだです」
「でも」
「第一防衛線の役割を奪わないでください」
「……」
止まる。
そうだ。
僕たち。
強い相手。
行く。
でも。
最初から。
僕たち。
全部。
倒したら。
世界連合軍。
意味。
ない。
「通常部隊が」
アン。
静か。
「どこまで戦えるか」
一拍。
「見ます」
映像。
第一防衛線。
黒炎。
耐える。
聖騎士。
前。
盾。
結界。
冒険者。
側面。
回る。
魔法。
後ろ。
撃つ。
バラバラ。
じゃない。
連携。
してる。
二か月。
訓練。
した。
成果。
「いける……」
僕。
思わず。
言う。
カイル。
「ああ」
エリシア。
静か。
「ですが」
ベラ。
動く。
消える。
「速い!」
次。
防衛線。
前。
ベラ。
いる。
『なっ――』
拳。
振る。
黒炎。
纏う。
盾。
叩く。
衝撃。
兵士。
後ろ。
吹き飛ぶ。
でも。
別。
兵士。
受け止める。
『負傷判定!!』
『後方へ!!』
『穴を埋めろ!!』
すぐ。
次。
入る。
ベラ。
横。
見る。
槍。
来る。
避ける。
魔法。
上。
降る。
黒炎。
払う。
「……」
僕。
見てる。
強い。
ベラ。
やっぱり。
強い。
でも。
「止まってる」
エリシア。
言う。
本当。
進んでない。
第一防衛線。
ベラ。
止めてる。
倒せない。
でも。
進ませてない。
アン。
少し。
頷く。
「二か月前なら」
一拍。
「もう崩れていたでしょうね」
僕。
笑う。
「強くなってる」
「はい」
その時。
通信。
『最高指揮者!!』
「はい」
『アステリア王国、派遣部隊出撃!!』
別。
『ヴァルガルド第一派、出撃しました!!』
『アルカディア魔法部隊、移動開始!!』
『カグラ先行部隊、既に国境を越えています!!』
『魔王軍第一派、出撃完了!!』
次々。
届く。
世界。
セレフィア。
向かってる。
アン。
全て。
聞く。
「到着予定時刻を随時共有してください」
『了解!』
「セレフィア側は」
レオンハルト。
『第一防衛線、交戦継続!』
「第二防衛線」
『展開完了!』
「避難」
『順調です!』
「大結界」
『いつでも展開可能!』
アン。
頷く。
「継続してください」
「はい!」
僕。
思う。
すごい。
動いてる。
本当に。
一つ。
軍。
みたい。
その時。
映像。
ベラ。
止まる。
「?」
第一防衛線。
少し。
距離。
取る。
ベラ。
周り。
見る。
『……なるほどの』
嫌。
予感。
「アン」
「はい」
「ベラ」
僕。
映像。
指す。
「何かする」
アン。
目。
細める。
ベラ。
右手。
上げる。
今まで。
小さかった。
黒炎。
膨らむ。
「……」
カイル。
笑い。
消える。
「おい」
エリシア。
「魔力量が上がっています」
第一防衛線。
指揮官。
叫ぶ。
『全員!!』
『防御態勢!!』
結界。
重なる。
盾。
並ぶ。
魔法。
防壁。
展開。
ベラ。
黒炎。
さらに。
大きく。
なる。
『少し』
一拍。
『上げるぞ』
「少し!?」
僕。
思わず。
叫ぶ。
黒炎。
放たれる。
巨大。
第一防衛線。
全部。
飲み込む。
――ドォォォォォォォォン!!
映像。
真っ黒。
通信。
乱れる。
『――ッ!!』
『維持!!』
『維持しろ!!』
『ぐっ……!!』
『結界が!!』
『第二層破損!!』
『補強!!』
アン。
立つ。
「レオンハルト」
「はい!」
「第二防衛線」
「前進準備」
「了解!」
「治癒部隊」
「第一防衛線後方へ」
「はい!」
「《黒翼》」
僕。
カイル。
エリシア。
同時。
前。
出る。
「出る?」
僕。
聞く。
アン。
映像。
見る。
黒。
晴れる。
第一防衛線。
残ってる。
でも。
崩れ始めてる。
そして。
その向こう。
ベラ。
立つ。
無傷。
アン。
静か。
言う。
「準備してください」
「はい」
カイル。
槍。
握る。
「やっとか」
エリシア。
細剣。
抜く。
僕。
《明星》。
腰。
確認。
でも。
アン。
まだ。
命令。
出さない。
「投入は」
一拍。
「第一防衛線が突破された時」
僕。
頷く。
「分かった」
映像。
ベラ。
歩く。
第一防衛線。
まだ。
立つ。
兵士。
盾。
構える。
傷。
ない。
訓練。
だから。
でも。
顔。
本気。
『まだだ!!』
指揮官。
叫ぶ。
『通すな!!』
『援軍が来るまで!!』
一拍。
『ここで止めるぞ!!』
『おおおおお!!』
声。
響く。
ベラ。
足。
止める。
少し。
笑う。
『よい』
黒炎。
揺れる。
『ならば』
一拍。
『妾を止めてみせよ』
元魔王。
ベラトリクス。
対。
セレフィア神聖国。
第一防衛線。
そして。
その後ろ。
第二防衛線。
《黒翼》。
大結界。
住民。
さらに。
世界中から。
こちらへ向かう。
援軍。
訓練開始から。
まだ。
僅か。
世界連合軍。
初めての。
本当の意味での。
防衛戦。
始まった。




