魔王侵攻
第136話 魔王侵攻
三日後。
その言葉が。
世界中へ届くことになった。
始まりは。
セレフィア神聖国。
大聖堂。
世界連合軍。
臨時会議室。
僕たちの前には。
いくつもの魔道通信。
アステリア王国。
ヴァルガルド。
アルカディア。
カグラ皇国。
魔族領。
各国の王。
国家責任者。
軍事責任者。
そして。
世界連合軍の主要人物たち。
全員。
繋がっている。
教皇。
アルヴィス。
ガレス。
レオンハルト。
アン。
そして。
《黒翼》。
僕。
カイル。
エリシア。
ベラ。
「……」
何だろう。
会議。
始まる前から。
重い。
カイル。
僕へ。
小声。
「訓練の説明だよな?」
「そのはず」
「戦争始まるみたいじゃねえ?」
「僕も思った」
「二人とも」
エリシア。
前。
向いたまま。
「聞こえます」
「はい」
「はい」
アン。
立ち上がる。
それだけで。
声。
止まる。
世界連合軍。
最高指揮者。
魔王。
アンタレス。
「全員、聞いてください」
静かな声。
「三日後」
一拍。
「世界連合軍による大規模防衛訓練を実施します」
誰も。
喋らない。
「今回の想定は」
アン。
正面。
大きな地図。
指す。
セレフィア神聖国。
「セレフィア神聖国への」
一拍。
「天使による大規模侵攻です」
空気。
変わる。
僕も。
地図。
見る。
ここ。
今。
僕たちがいる国。
母さん。
父さん。
住んでる。
エリシアも。
カイルも。
僕も。
今は。
ここが。
帰る場所。
「訓練開始と同時に」
アン。
続ける。
「セレフィア神聖国内に存在する戦力は、全て即時戦闘態勢へ移行してください」
レオンハルト。
頷く。
「聖騎士団」
「治癒部隊」
「結界部隊」
「セレフィア国内に滞在している世界連合軍所属戦力」
「冒険者ギルドにも協力を要請します」
グレン。
通信。
頷く。
『既に話は通してある』
「ありがとうございます」
アン。
地図。
見る。
「そして」
「今回」
「他国の戦力を事前にセレフィアへ集めることはしません」
『……』
各国。
少し。
ざわつく。
アン。
続ける。
「実際にセレフィアが襲撃された場合」
「その時」
「アステリアの軍が偶然セレフィアにいるとは限りません」
「ヴァルガルドも」
「アルカディアも」
「カグラも」
「魔王軍も」
一拍。
「それぞれの国にいます」
その通り。
だから。
今回は。
集めてから。
始めない。
「訓練開始の通達を」
「実際の侵攻発生の第一報として扱います」
「その時点から」
「各国は行動を開始してください」
アステリア。
通信先。
王国軍責任者。
頷く。
『つまり』
『我々は自国から実際に軍を動かす、と』
「はい」
アン。
即答。
「訓練だからといって」
「既にセレフィアへ到着している状態から始めても意味がありません」
一拍。
「侵攻を知る」
「状況を確認する」
「派遣戦力を決定する」
「命令を出す」
「部隊を編成する」
「出発する」
「セレフィアへ到着する」
「現地部隊と合流する」
「指揮系統へ入る」
アン。
全員。
見る。
「そこまで全て」
「今回の訓練です」
静か。
でも。
規模。
でかい。
本当に。
世界全部。
動かすんだ。
ヴァルガルド。
責任者。
『到着までの時間も記録するのか?』
「はい」
『ならば移動経路も実際のものを?』
「可能な限り」
『承知した』
アルカディア。
『通信途絶を想定した訓練も含めますか?』
「含めます」
『了解しました』
カグラ皇国。
『先行偵察部隊を出しても?』
「各国の判断に任せます」
一拍。
「実戦でそう判断するのであれば」
「そうしてください」
僕。
少し。
鳥肌。
立つ。
決められた動きを。
なぞる訓練じゃない。
それぞれ。
考える。
それぞれ。
判断する。
本当に。
天使。
来た時みたいに。
アン。
そこで。
声。
少し。
強くなる。
「ただし」
一拍。
「全軍を動かすことは禁止します」
各国。
静かになる。
「今回」
「セレフィアへ大規模な戦力が集まります」
「ですが」
「これは訓練です」
「そのために」
「他国を無防備にすることは許しません」
アン。
地図。
見る。
セレフィアだけじゃない。
世界。
全部。
「天使は」
「二か月間」
「姿を見せていません」
「だからといって」
「いなくなったわけではありません」
誰も。
反論しない。
「訓練中に」
「本物の天使が出現する可能性もあります」
一拍。
空気。
さらに。
重くなる。
そうだ。
これは。
訓練。
でも。
世界から。
天使。
消えたわけじゃない。
どこにいるか。
分からない。
「各国は」
「必ず」
「自国を防衛できる戦力を残してください」
「セレフィアへの派遣戦力は」
「それを前提として決定してください」
ガレス。
腕。
組む。
『魔王軍も同じですか?』
「もちろんです」
『承知しました』
「そして」
アン。
続ける。
「訓練中」
「いずれかの国、地域で」
「本物の天使の出現が確認された場合」
一拍。
「その時点で訓練を中断します」
全員。
アンを見る。
「私が」
静か。
「直ちに現地へ向かいます」
『……』
「初動は私が対応します」
「その間に」
「現地に残された戦力で防衛」
「セレフィアへ移動中の部隊は」
「必要に応じて進路を変更」
「世界連合軍は」
「実戦対応へ切り替えます」
ガレス。
『陛下が先行する、と』
「はい」
『お一人で?』
「初動だけです」
アン。
普通に。
答える。
「天使が一体とは限りません」
「状況を確認した上で」
「必要な戦力を私から指示します」
ガレス。
少し。
黙る。
それから。
『了解しました』
「今回の訓練で」
アン。
全員を見る。
「本当の戦いへの備えを失うことはありません」
一拍。
「それを忘れないでください」
『承知』
『了解しました』
『異論ありません』
次々。
返事。
僕。
アンを見る。
すごい。
ただ。
軍。
集めるんじゃない。
集めたことで。
別の場所。
弱くなる。
そこまで。
考えてる。
「次に」
教皇。
立つ。
「セレフィア神聖国内の対応について、私から説明いたします」
地図。
セレフィア。
拡大。
「今回の訓練には」
一拍。
「国民にも参加していただきます」
僕。
少し。
目。
開く。
住民。
「実際の侵攻が発生した場合」
「軍だけが動くわけではありません」
「人々も」
「避難しなければならない」
教皇。
続ける。
「訓練開始と同時に」
「各都市、各村へ避難指示を発令」
「指定された避難場所へ移動していただきます」
「聖職者」
「聖騎士」
「各地域の責任者が誘導」
「負傷者を想定した救護訓練も同時に実施します」
レオンハルト。
引き継ぐ。
「聖騎士団は」
「侵攻への迎撃」
「民間人の避難誘導」
「大聖堂周辺の防衛」
「治癒及び結界部隊の護衛」
「全てを同時に行います」
ガレス。
『忙しいな』
レオンハルト。
「実戦なら待ってはくれません」
『その通りだ』
「そして」
レオンハルト。
地図。
外側。
指す。
「各国から到着した援軍を」
「順次」
「世界連合軍の指揮系統へ組み込みます」
ガレス。
『到着した順に使う』
「はい」
『全部隊が揃うまで待つことは?』
「ありません」
『だろうな』
援軍。
来る。
でも。
同時じゃない。
早い国。
遅い国。
部隊。
違う。
それを。
その場で。
一つの軍。
する。
「……大変そう」
僕。
小声。
エリシア。
「だから訓練するんです」
「はい」
その日の午後。
セレフィア神聖国。
全域。
正式な告知。
出された。
大規模防衛訓練。
実施。
三日後。
天使による侵攻を想定。
大規模な軍事行動。
魔法。
爆発音。
飛行部隊。
結界。
各国軍。
全て。
訓練。
住民。
避難訓練。
参加。
最初。
街。
思ったより。
普通だった。
「訓練だろ?」
「軍がいっぱい来るらしいぞ」
「魔王軍も?」
「来るんじゃないか?」
「すごいな」
子供。
楽しそう。
大人。
少し。
不安そう。
でも。
大混乱。
ない。
世界連合軍。
もう。
知られてる。
魔族。
人間。
一緒。
戦う。
それも。
少しずつ。
普通になってきた。
僕。
カイル。
エリシア。
街。
歩く。
告知。
様子。
見る。
「思ったより落ち着いてるな」
カイル。
言う。
「うん」
エリシア。
「事前説明がありますから」
「まあ、訓練だしな」
その時。
広場。
追加。
告知。
始まる。
「大規模防衛訓練について、追加のご説明を行います!」
人。
集まる。
僕たちも。
止まる。
「今回の訓練では、実際の天使による侵攻を想定し、複数段階で敵役が配置されます!」
うん。
ここまでは。
普通。
「また、最終段階では」
一拍。
「大天使級個体を想定した、最終想定敵が投入されます!」
周囲。
少し。
ざわ。
「大天使?」
「訓練で?」
「誰がやるんだ?」
説明役。
紙。
見る。
「最終想定敵役は」
一拍。
「元魔王」
「ベラトリクス様です」
「……」
広場。
止まった。
本当に。
止まった。
「……え?」
誰か。
言った。
「今」
「ベラトリクスって?」
「元魔王の?」
「五百年前の?」
「本物?」
説明役。
ちょっと。
困ってる。
「本物です」
「……」
ざわ。
一気。
広がる。
「いや待て!」
「訓練だろ!?」
「何で元魔王が攻めてくるんだよ!」
「敵役です!」
「敵役にしていい強さなのか!?」
「知らねえよ!」
「避難場所どこだ!?」
「さっき聞いてなかったのか!?」
「もう一回確認しろ!」
「母ちゃんに言ってくる!」
「子供連れて参加するぞ!」
「訓練だぞ!?」
「相手がベラトリクス様なら訓練でも逃げるわ!」
「……」
僕。
カイル。
エリシア。
見てる。
カイル。
「空気変わったな」
「うん」
エリシア。
「当然だと思います」
僕も。
そう思う。
だって。
昨日。
見た。
アン。
ベラ。
戦い。
あれ。
見た後。
「大丈夫だよ」
なんて。
僕でも。
言えない。
その頃。
世界。
各国。
同じ通達。
届いていた。
アステリア王国。
王国軍。
訓練参加部隊。
招集。
指揮官。
前。
立つ。
「三日後」
「セレフィア神聖国へ向かう」
兵士たち。
姿勢。
正す。
「これは訓練だ」
「だが」
一拍。
「実戦と同じ手順で動く」
「侵攻発生の第一報を受けるまで」
「我々はここから動かない」
「通達と同時に編成」
「出撃」
「セレフィアへ向かう」
「自国防衛部隊は残す」
一拍。
「そして」
資料。
めくる。
「最終想定敵」
「元魔王ベラトリクス」
「……」
兵士。
固まる。
「質問は?」
手。
上がる。
「はい」
「本物ですか?」
「本物だ」
手。
下がる。
別。
上がる。
「勝てるんですか?」
指揮官。
少し。
黙る。
「勝つための訓練だ」
ヴァルガルド。
要塞。
防衛軍。
整列。
「今回」
「我々の役目は」
「セレフィア到着後」
「防衛線を構築することだ!」
「避難路を守れ!」
「結界維持部隊を守れ!」
「前線を崩すな!」
『はい!!』
「相手が誰であろうとな!」
一拍。
「元魔王であろうとな!!」
『……』
「返事!!」
『はい!!』
少し。
遅れた。
アルカディア。
魔法部隊。
研究部門。
軍師団。
「移動中の魔力消費も記録」
「到着後、即戦闘可能な状態を維持してください」
「了解」
「なお」
「最終想定敵の魔力について」
資料。
見る。
沈黙。
「……」
「どうしました?」
「いや」
一拍。
「測定できる範囲で記録する」
「できる範囲?」
「できる範囲だ」
カグラ皇国。
武術部隊。
隠密機動部隊。
武器。
確認。
刀。
槍。
弓。
「先行部隊は」
「本隊より先にセレフィア周辺へ到達」
「侵攻経路を確認」
「敵役の位置を本隊へ報告する」
「ただし」
一拍。
「最終想定敵への単独接触は禁止」
「理由は?」
「ベラトリクス様だ」
「承知した」
早い。
魔族領。
魔王城。
訓練場。
魔王軍。
整列。
その前。
ガレス。
「聞け!!」
声。
響く。
「三日後!!」
「セレフィア神聖国で大規模防衛訓練を行う!!」
「魔王軍からも部隊を出す!!」
『はい!!』
「ただし全軍ではない!!」
「魔族領防衛戦力は残す!!」
「本物の天使が出た瞬間、訓練は終わりだ!!」
『はい!!』
「そして!!」
ガレス。
少し。
止まる。
何故か。
口元。
上がる。
「お前ら」
「喜べ」
兵士。
ざわ。
「最終想定敵は」
一拍。
「ベラトリクス様だ」
『……』
静寂。
魔族。
だから。
知ってる。
人間より。
多分。
ずっと。
知ってる。
五百年前。
魔王。
ベラトリクス。
『……え?』
誰か。
漏らした。
ガレス。
笑う。
「聞こえなかったか!?」
「俺たちの相手は!!」
「五百年前の魔王!!」
「ベラトリクス様だ!!」
『……』
「返事は!!」
『は、はい!!』
「声が小せえ!!」
『はい!!』
「訓練だと思って気を抜くな!!」
一拍。
「本気で止めろ!!」
『はい!!』
世界。
動き始める。
でも。
まだ。
軍。
セレフィアへは。
向かわない。
その時まで。
待つ。
武器。
整備。
防具。
確認。
物資。
用意。
馬車。
飛行部隊。
魔道通信。
治癒薬。
全て。
準備。
だけ。
する。
そして。
セレフィア。
聖騎士団。
レオンハルト。
全員。
前。
立つ。
エリシアも。
今は。
僕たちの横。
聖騎士団。
離れた。
でも。
元。
その一人。
「今回」
レオンハルト。
言う。
「我々は」
「最初に戦う」
静か。
「援軍は」
「すぐには来ない」
一拍。
「アステリア」
「ヴァルガルド」
「アルカディア」
「カグラ」
「魔族領」
「全て」
「侵攻発生の通達を受けてから動く」
聖騎士たち。
聞く。
「つまり」
「最初にセレフィアを守るのは」
一拍。
「我々だ」
空気。
変わる。
「住民を避難させろ」
「治癒部隊を守れ」
「結界部隊を守れ」
「大聖堂を守れ」
「援軍が到着するまで」
「防衛線を維持する」
「そして」
少し。
間。
「最終想定敵」
「元魔王ベラトリクスを」
一拍。
「セレフィア中心部へ到達させるな」
『はい!!』
今度。
迷い。
ない。
夜。
家。
僕。
カイル。
エリシア。
父さん。
母さん。
食卓。
「聞いたわよ」
母さん。
僕。
見る。
「何を?」
「訓練」
「うん」
「ベラちゃんが敵なんですって?」
「うん」
母さん。
止まる。
「大丈夫なの?」
「……」
僕。
カイル。
見る。
カイル。
僕。
見る。
エリシア。
静か。
食べてる。
「多分」
僕。
答える。
母さん。
「今の間は何?」
「大丈夫」
「今、多分って言ったじゃない」
「大丈夫です」
カイル。
入る。
「俺たちが止めます」
エリシア。
箸。
止める。
「カイルさん」
「何だよ」
「簡単に言わないでください」
「いや」
「相手はベラトリクス様です」
「分かってるって」
「昨日の戦いを見た後でも言えますか?」
「……」
カイル。
食べる。
「頑張ります」
「急に弱くなった」
父さん。
笑う。
母さん。
エリシアを見る。
「エリシアちゃんも戦うの?」
「はい」
「怪我しないでね」
「……」
エリシア。
少し。
止まる。
「はい」
小さく。
笑う。
「気をつけます」
母さん。
僕を見る。
「ソルも」
「うん」
「無茶しない」
「はい」
「倒れない」
「はい」
「ちゃんと帰ってくる」
「訓練だよ?」
「訓練でも」
一拍。
「帰ってくるの」
僕。
少し。
笑う。
「分かった」
夜。
部屋。
眠れない。
窓。
外。
見る。
セレフィア。
街。
いつも。
同じ。
明かり。
人。
歩いてる。
でも。
少し。
違う。
避難場所。
確認。
してる人。
荷物。
準備。
してる人。
聖騎士。
巡回。
増えてる。
訓練。
なのに。
本番。
みたい。
いや。
違う。
本番のため。
だから。
みんな。
本気。
そして。
二日。
過ぎる。
訓練前日。
世界。
静か。
アステリア。
軍。
待機。
ヴァルガルド。
軍。
待機。
アルカディア。
待機。
カグラ。
待機。
魔王軍。
待機。
誰も。
まだ。
セレフィアへ向かわない。
命令。
待つ。
本当の。
侵攻。
起きた時。
みたいに。
セレフィア。
僕たち。
準備。
終わる。
《黒翼》。
今回。
一人。
いない。
ベラ。
敵。
だから。
僕。
カイル。
エリシア。
三人。
アン。
前。
立つ。
「明日」
静か。
「訓練開始と同時に」
「セレフィア全域へ警報を出します」
「各国へも同時に侵攻発生を通達します」
「そこから先は」
一拍。
「実戦と同じです」
僕たち。
頷く。
「ソル」
「うん」
「《星域》は必要だと判断した時に」
「分かった」
「全部を見ない」
「うん」
「全部を動かさない」
「分かってる」
エリシア。
僕を見る。
「私も確認します」
「お願いします」
カイル。
槍。
肩。
乗せる。
「で」
一拍。
「ベラは?」
誰も。
答えない。
「そういえば」
僕。
今日。
一度も。
見てない。
アン。
「既に移動しています」
「どこに?」
「教えません」
「え?」
「敵ですから」
「……」
僕。
ちょっと。
ゾクッ。
する。
そうだ。
明日。
どこから来るか。
僕たちも。
知らない。
「侵攻経路も?」
「秘密です」
「開始時間は?」
「警報が鳴るまで秘密です」
カイル。
笑う。
「いいな」
エリシア。
「楽しそうですね」
「いや、だって」
カイル。
槍。
握る。
「本番みたいじゃねえか」
アン。
カイルを見る。
「本番だと思ってください」
笑い。
消える。
「明日」
一拍。
「皆さんが守る後ろには」
「セレフィアの住民がいます」
「訓練だから」
「失敗しても死者は出ません」
「ですが」
静か。
「本当の天使との戦いなら」
「失敗した時」
「人が死にます」
僕。
黙る。
カイルも。
エリシアも。
「だから」
「明日は」
アン。
僕たちを見る。
「本気で守ってください」
「うん」
「おう」
「はい」
その夜。
セレフィアから。
離れた場所。
誰もいない。
平原。
一人。
女。
立っていた。
黒い髪。
赤い瞳。
五百年前。
世界が。
魔王と呼んだ存在。
ベラトリクス。
「……」
遠く。
セレフィア。
見える。
まだ。
結界。
ない。
明日。
警報。
鳴る。
住民。
逃げる。
軍。
動く。
世界。
集まる。
その全て。
相手。
たった。
一人。
ベラ。
右手。
見る。
黒炎。
小さく。
灯る。
「世界連合軍、か」
静か。
呟く。
「妾一人を」
一拍。
「世界で止める」
口元。
上がる。
「面白い」
黒炎。
消える。
そして。
翌日。
まだ。
誰も。
知らない。
何時。
始まるのか。
どこから。
来るのか。
ただ。
一つ。
分かっている。
警報が鳴った瞬間。
セレフィア神聖国は。
戦場になる。
侵攻するのは。
天使を想定した。
最終敵。
元魔王。
ベラトリクス。
迎え撃つのは。
世界連合軍。
訓練。
でも。
誰一人。
そう思って。
戦う者はいなかった。




