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134/149

600年振り

第134話 六百年ぶり

現魔王。

アンタレス。

先代魔王。

ベラトリクス。

二人が。

向かい合っている。

場所は。

世界連合軍が確保した野外試験場。

周囲に街はない。

遠くに山。

その間に広がる。

何もない平原。

そして。

僕たちは。

巨大な防御結界の内側にいる。

ガレス。

レオンハルト。

カイル。

エリシア。

各国の研究者。

技術者。

兵士たち。

全員。

結界越しに。

二人を見る。

「……」

静か。

さっきまで。

あれだけ騒がしかったのに。

誰も喋らない。

ベラが。

少しだけ。

首を動かした。

「こうして」

アンを見る。

「お主と向かい合うのも」

一拍。

「六百年ぶりか」

「……そうですね」

アン。

静かに答える。

「随分と昔になりました」

「妾にとっては、そうでもないがの」

「私は色々ありましたので」

「知っておる」

二人。

少しだけ。

笑う。

六百年。

僕には。

想像もできない。

その頃から。

二人は。

知っている。

互いの力も。

癖も。

戦い方も。

多分。

僕たちが知らない。

昔の二人も。

「アン」

僕。

通信魔法へ。

「本当にやるの?」

『やります』

即答。

「ベラも?」

「何を今さら聞いておる」

「いや」

僕。

結界を見る。

「これ壊れないよね?」

研究者。

僕を見る。

「第一試験では、ガレス総隊長、レオンハルト副隊長を中心とした世界連合軍主力部隊の総攻撃に耐えています」

「うん」

「先ほどのアンタレス様による試験でも、強度低下は僅かです」

「うん」

「ですから」

一拍。

研究者。

二人を見る。

「理論上は」

「理論上」

「……はい」

不安。

すごく。

不安。

でも。

この結界。

本当に。

頑丈だった。

ヴァルガルドの防衛技術。

アルカディアの魔法技術。

魔族領を覆っていた巨大結界。

三つ。

組み合わせ。

何度も。

何度も。

改良した。

ただ硬いだけじゃない。

一か所へ攻撃を受ければ。

結界全体へ。

衝撃を逃がす。

壊れかけた場所には。

周囲から魔力が流れ。

補強する。

国を。

守るための結界。

その試作品。

だから。

ガレスたちの総攻撃にも。

耐えた。

「始めてもよいか?」

ベラ。

楽しそう。

アン。

ため息。

「もう少し緊張感を持ってください」

「模擬戦じゃろ?」

「あなたの場合、模擬という言葉が信用できないんです」

「失礼じゃな」

「過去の行動を振り返ってから言ってください」

「……」

ベラ。

目を逸らした。

「ベラ」

「何じゃ」

「心当たりあるんだ」

「うるさい」

アン。

もう一度。

息を吐く。

そして。

空気が。

変わった。

赤。

アンの身体から。

紅い魔力。

ゆっくり。

溢れる。

対して。

ベラ。

黒。

黒炎。

右手。

灯る。

小さい。

でも。

分かる。

あれ。

危ない。

「……始めます」

アン。

言った。

次の瞬間。

消えた。

「え」

ドンッ!!

轟音。

結界。

揺れる。

「っ!?」

僕。

目。

見開く。

さっきまで。

数十メートル。

離れていた。

なのに。

アン。

もう。

ベラの前。

右手。

振り抜いている。

ベラ。

左腕。

受けている。

赤。

黒。

衝突。

地面。

爆発。

「速っ!」

カイル。

声。

上げる。

でも。

ベラ。

笑ってる。

「遅くなったか?」

「まさか」

アン。

身体。

回す。

蹴り。

ベラ。

頭。

下げる。

避ける。

そのまま。

黒炎。

アンの腹部へ。

「――《黒炎》」

黒。

爆発。

でも。

アン。

もういない。

「……」

ベラ。

後ろ。

「昔から」

アン。

右手。

「正面しか見ないところは変わりませんね」

「誰がじゃ」

ベラ。

振り返る。

同時。

アン。

指先。

紅い魔力。

集まる。

細い。

長い。

鋭い。

「――《紅槍》」

放つ。

ドッ!!

一直線。

紅い槍。

ベラ。

顔。

僅かに動かす。

紅槍。

頬。

横。

通過。

そのまま。

遠く。

地面。

貫く。

爆発。

「……」

僕。

遠くを見る。

土。

高く。

上がってる。

「あれ」

カイル。

「直撃したらどうなる?」

「聞かない方がいいと思う」

ベラ。

頬。

触る。

僅か。

傷。

すぐ。

笑った。

「ほう」

アン。

「避けましたか」

「当然じゃ」

「六百年前なら当たっていましたよ」

「言うようになったの」

黒炎。

ベラの周囲。

増える。

「なら」

一気に。

広がる。

「こちらも少し」

黒。

ベラの身体。

包む。

「上げるとするか」

地面。

沈む。

次の瞬間。

ベラ。

消えた。

アン。

横。

黒炎。

拳。

アン。

腕。

受ける。

ドンッ!!

衝撃。

平原。

走る。

結界。

表面。

波打つ。

「衝撃確認!」

「結界強度、正常!」

「内部影響、軽微!」

研究者。

叫ぶ。

僕。

そっちを見る。

「これで軽微!?」

風。

めちゃくちゃ。

吹いてる。

エリシア。

髪。

押さえる。

「結界がなければ」

一拍。

「立っていられなかったと思います」

「だよね!」

外。

ベラ。

連撃。

拳。

蹴り。

黒炎。

アン。

全部。

受ける。

避ける。

流す。

そして。

一歩。

踏み込む。

ベラの拳。

横。

抜ける。

アン。

掌。

ベラの腹部。

「――《紅雷》」

瞬間。

赤。

光った。

音。

後。

ドォォォンッ!!

「なっ」

ベラ。

吹き飛ぶ。

地面。

何度も。

跳ねる。

止まる。

煙。

「ベラ!」

僕。

叫ぶ。

でも。

煙。

中。

「……なるほどの」

立ってる。

服。

少し。

焦げてる。

でも。

笑ってる。

「今のは知らぬ」

アン。

「でしょうね」

「新しい技か?」

「六百年もあれば」

アン。

右手。

下ろす。

「新しいことくらい覚えます」

「ふっ」

ベラ。

楽しそう。

「よい」

黒炎。

再び。

燃える。

「それでこそじゃ」

今度。

ベラ。

右手。

前。

黒炎。

集まる。

でも。

さっきと違う。

広がらない。

小さく。

小さく。

凝縮。

黒。

一本。

「――《黒閃》」

消えた。

いや。

撃った。

「アン!」

遅い。

アン。

首。

傾ける。

黒。

頬。

掠める。

後方。

地面。

音もなく。

穴。

その向こう。

遠くの岩。

穴。

さらに。

その後ろの地面。

穴。

「……」

僕。

言葉。

出ない。

アン。

頬。

血。

一筋。

「危ないですね」

「避けた者が言うでない」

「避けなければ怪我をしますから」

「模擬戦じゃぞ?」

「あなたが言います?」

「何じゃ」

二人。

笑う。

怖い。

すごく。

怖い。

カイル。

僕の横。

「なあ」

「何?」

「楽しんでないか?」

「……多分」

エリシア。

「間違いなく楽しんでいます」

ガレス。

腕。

組んだまま。

「六百年ぶりだからな」

レオンハルト。

「だからといって、試験であることを忘れてもらっては困る」

「本人たちに言ってくれ」

「聞くと思うか?」

「思わねえ」

二人。

諦めてる。

外。

アン。

右手。

開く。

紅い魔力。

集まる。

でも。

槍じゃない。

長い。

柄。

形成。

その先。

巨大な。

湾曲した刃。

紅い。

大鎌。

僕。

目。

見開く。

「……何あれ」

ベラも。

初めて。

少し。

驚いた。

「ほう」

アン。

大鎌。

握る。

「――《紅月》」

紅い魔力で作られた。

巨大な大鎌。

アン。

片手。

構える。

ベラ。

笑う。

「それも知らぬぞ」

「でしょうね」

アン。

踏み込む。

紅月。

振るう。

ベラ。

黒炎。

腕。

纏う。

ガァンッ!!

金属じゃない。

魔力。

なのに。

硬い音。

衝突。

アン。

大鎌。

返す。

下。

上。

横。

ベラ。

身体。

逸らす。

黒炎。

受ける。

弾く。

一歩。

アンの懐。

拳。

アン。

紅月の柄。

受ける。

ドンッ!!

押される。

でも。

アン。

大鎌。

回転。

刃。

ベラの背後から。

戻る。

「ぬっ」

ベラ。

屈む。

紅い刃。

髪。

数本。

切る。

「髪を狙うでない」

「避ければいいでしょう」

「言うようになったの!」

ベラ。

蹴り。

アン。

紅月。

柄。

受ける。

そのまま。

距離。

開く。

そして。

大鎌。

横。

振り抜く。

「――《紅月》」

紅い斬撃。

巨大。

地面。

削りながら。

ベラへ。

ベラ。

右手。

黒炎。

「甘い」

振るう。

黒炎。

斬撃。

ぶつかる。

爆発。

赤。

黒。

空。

染まる。

「結界強度、九十八!」

「損傷なし!」

「魔力循環正常!」

研究者。

興奮。

してる。

「すごい……」

僕。

二人じゃない。

一瞬。

結界。

見る。

これだけ。

やってる。

なのに。

まだ。

ほとんど。

壊れてない。

ガレスとレオンハルトたちの総攻撃。

アンの耐久試験。

そして。

今。

二人の魔王。

それでも。

耐えてる。

本当に。

国を。

守れるかもしれない。

そう。

思った。

瞬間。

空気。

重くなった。

「……」

僕。

外。

見る。

ベラ。

笑ってない。

アンも。

静か。

二人。

少し。

距離。

取ってる。

「アンタレス」

「何ですか?」

「お主」

一拍。

「まだ癖が残っておるぞ」

アン。

眉。

僅かに動く。

「何のことでしょう」

「本気になる前」

ベラ。

自分の右足。

指す。

「右から入る」

「……」

アン。

黙る。

「六百年前から変わっておらぬ」

「ベラ様こそ」

「何じゃ」

「大きな魔法を使う前」

アン。

紅月。

消す。

「左肩が下がります」

「……」

「六百年前から」

一拍。

「変わっていません」

「お主」

ベラ。

少し。

睨む。

「覚えておったか」

「あなたこそ」

二人。

沈黙。

そして。

同時に。

笑った。

次。

速い。

さっきまでと。

違う。

ベラ。

右。

アン。

もう動いてる。

黒炎。

来る前。

回避。

アン。

紅槍。

ベラ。

撃つ前。

避ける。

紅雷。

ベラ。

黒炎。

前。

展開。

爆発。

黒閃。

アン。

身体。

沈める。

避ける。

僕。

目。

追いつかない。

《心眼》。

開く。

全部。

見ない。

二人。

だけ。

「……」

それでも。

速い。

違う。

速度だけじゃない。

「先に……」

僕。

呟く。

カイル。

「何だ?」

「先に動いてる」

「は?」

「技を見てからじゃない」

アンが。

紅槍を作る前。

ベラ。

もう。

射線。

外してる。

ベラが。

黒炎。

集める前。

アン。

距離。

変えてる。

「知ってるんだ」

六百年前。

戦った。

何度も。

多分。

「相手が何をするか」

技。

見る前。

身体。

魔力。

視線。

癖。

全部。

知ってる。

だから。

攻撃。

出る前から。

戦ってる。

「……」

シリウス。

一瞬。

思い出す。

見る。

選ぶ。

先。

読む。

でも。

この二人。

もっと。

長い。

六百年前。

知ってる。

相手。

今。

もう一度。

戦ってる。

「面白い」

思わず。

出た。

カイル。

「お前もそっち側かよ」

「違うよ!」

「目が完全に楽しんでるぞ」

「だって!」

外。

アン。

紅雷。

ベラ。

避ける。

でも。

その先。

紅槍。

「っ」

ベラ。

黒炎。

弾く。

アン。

もう。

目の前。

紅月。

形成。

大鎌。

振り下ろす。

ベラ。

黒炎。

受ける。

地面。

大きく。

沈む。

「やるではないか!」

「まだです」

紅月。

消える。

アン。

両手。

広げる。

「――《紅煉獄》」

ドクン。

「……え」

世界。

変わった。

アンを中心に。

紅い魔力。

一気に。

広がる。

地面。

空。

全部。

赤。

巨大な範囲。

アンの魔力。

満たされる。

ベラ。

周囲。

見る。

「ほう」

紅い魔力。

槍。

生まれる。

一本。

十。

百。

全部。

ベラ。

向く。

「これは」

アン。

静か。

「私の領域です」

紅槍。

一斉。

放たれる。

ベラ。

黒炎。

展開。

爆発。

一本。

消す。

次。

横。

ベラ。

避ける。

下。

地面。

紅い魔力。

噴き上がる。

上。

紅槍。

降る。

右。

紅雷。

「っ!」

ベラ。

黒炎。

受ける。

吹き飛ぶ。

でも。

着地。

同時。

黒閃。

アン。

避ける。

紅煉獄。

中。

どこからでも。

攻撃。

来る。

「……無茶苦茶だ」

カイル。

「うん」

僕。

分かる。

ここ。

アンの場所。

紅い魔力。

全部。

アンの手足。

みたい。

でも。

ベラ。

笑った。

「面白い」

黒炎。

増える。

「ならば」

一拍。

「喰ろうてみよ」

黒炎。

紅い魔力へ。

触れる。

ジュッ。

「……?」

消えた。

紅。

一部。

黒く。

侵食。

される。

アン。

目。

細める。

「――《黒蝕》」

黒炎。

広がる。

紅煉獄の魔力。

焼く。

違う。

燃やしてるんじゃない。

魔力。

そのもの。

削ってる。

「そんな使い方」

アン。

「六百年前はできませんでしたね」

「六百年もあれば」

ベラ。

笑う。

「新しいことくらい覚える」

アン。

一瞬。

止まる。

「……私の台詞です」

「先に言った者勝ちじゃ」

「子どもですか」

「元魔王じゃ」

「都合のいい時だけ元魔王になるのやめてもらえます?」

「うるさい!」

僕。

笑う。

でも。

次。

笑えなくなった。

ベラ。

黒炎。

消す。

代わり。

漆黒。

魔力。

上。

集まる。

空。

暗くなる。

「……」

僕。

首。

上げる。

巨大。

黒。

塊。

違う。

魔力。

重い。

見てるだけ。

なのに。

身体。

沈みそう。

「ベラ」

アン。

初めて。

少し。

声。

低くなる。

「それを使うんですか?」

「試験じゃろ?」

「加減してください」

「しておる」

「信用できません」

「失礼じゃな」

ベラ。

手。

下ろす。

「――《黒葬》」

落ちる。

漆黒。

魔力。

押し潰す。

アン。

紅煉獄。

全体。

揺れる。

地面。

沈む。

アン。

両手。

上。

紅い魔力。

支える。

「っ……」

初めて。

アンの表情。

変わった。

「アン!」

紅煉獄。

紅。

黒葬。

黒。

押し合う。

大気。

震える。

結界。

大きく。

歪む。

「結界強度九十一!」

「八十九!」

「衝撃分散!」

「西側術式へ回せ!」

「補強開始!」

研究者。

叫ぶ。

結界。

光。

強くなる。

耐える。

まだ。

耐える。

「……すご」

エリシア。

結界。

見る。

レオンハルトも。

「我々の総攻撃時より」

ガレス。

「ああ」

二人。

外。

見る。

「明らかに上だ」

それでも。

結界。

割れない。

アン。

黒葬。

押し返す。

紅。

爆発。

黒葬。

崩れる。

ベラ。

着地。

アン。

息。

少し。

吐く。

「……」

「どうした?」

ベラ。

「もう終わりか?」

アン。

顔。

上げる。

「誰に言っているんですか?」

紅。

魔力。

再び。

増える。

ベラ。

黒炎。

増える。

「おい」

ガレス。

「まだ上げるのか」

研究者。

「け、結界はまだ耐えられます!」

「そういう問題か?」

「試験ですので!」

目。

輝いてる。

研究者。

怖い。

アン。

紅月。

再び。

右手。

形成。

ベラ。

身体。

黒炎。

包む。

「――《黒纏》」

黒炎。

身体。

纏う。

二人。

消える。

激突。

紅月。

黒纏。

赤。

黒。

一回。

二回。

十。

音。

連続。

平原。

削れる。

アン。

紅月。

横。

ベラ。

拳。

受ける。

刃。

黒炎。

食い込む。

ベラ。

蹴り。

アン。

柄。

防御。

吹き飛ぶ。

空中。

アン。

紅月。

振るう。

斬撃。

ベラ。

黒炎。

突っ込む。

破る。

アン。

目の前。

拳。

アン。

身体。

捻る。

避ける。

紅月。

消す。

指。

ベラの胸。

「――《紅雷》」

ドンッ!!

ベラ。

地面。

叩きつけられる。

巨大な。

穴。

「……」

静か。

煙。

僕。

見る。

「ベラ?」

黒。

煙。

中。

灯る。

黒炎。

次の瞬間。

アンの横。

「後ろじゃ」

「知っています」

アン。

振り返る。

紅槍。

ベラ。

黒閃。

同時。

赤。

黒。

激突。

爆発。

二人。

吹き飛ぶ。

アン。

着地。

ベラ。

着地。

距離。

百メートル以上。

二人。

立ってる。

そして。

笑ってる。

「……」

僕。

思う。

やっぱり。

楽しんでる。

「六百年前より」

ベラ。

黒炎。

右手。

集める。

「強くなったの」

アン。

紅い魔力。

集める。

「ベラ様も」

「元、は付けぬのか?」

「今は付けません」

「ほう」

ベラ。

笑み。

深くなる。

「なら」

黒。

さらに。

圧縮。

アン。

紅。

さらに。

圧縮。

空気。

震える。

「ちょっと待って」

僕。

嫌な予感。

「これ」

カイル。

「やばくねえか?」

「うん」

研究者。

顔。

青い。

さっきまで。

楽しそうだったのに。

「アンタレス様!」

通信。

「出力を――」

遅い。

ベラ。

黒炎。

巨大。

アン。

紅い魔力。

膨大。

二人。

前。

向ける。

「ベラ!」

「アン!」

二人。

同時。

放つ。

赤。

黒。

世界。

染まる。

衝突。

一瞬。

音。

消えた。

そして。

ドォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

「っ!!」

結界。

全面。

光る。

衝撃。

巨大。

空。

揺れる。

地面。

揺れる。

遠くの山。

鳥。

一斉。

飛ぶ。

結界。

歪む。

大きく。

大きく。

「強度八十!」

「七十四!」

「六十八!」

「分散急げ!」

「補強術式最大!」

「アルカディア側接続維持!」

「ヴァルガルド側正常!」

「魔族式結界、維持しています!」

光。

走る。

結界。

全部。

使って。

耐える。

「五十九!」

「まだいけます!」

「五十四!」

僕。

上。

見る。

「耐えて……!」

音。

さらに。

大きく。

赤。

黒。

押し合う。

そして。

爆発。

白。

何も。

見えない。

数秒。

長い。

光。

消える。

煙。

風。

静かに。

なる。

僕。

最初。

見たのは。

二人じゃない。

結界。

「……」

ある。

まだ。

ある。

巨大な半球。

消えてない。

「結界は!?」

研究者。

確認。

「維持!」

「全体維持しています!」

「内部術式!」

「正常!」

「魔力循環、低下していますが継続!」

「破損は!?」

「確認中!」

少し。

して。

「一か所!」

「上部に亀裂!」

僕。

見る。

高い。

空。

結界。

表面。

一本。

細い。

亀裂。

それだけ。

「……」

ガレス。

口。

開く。

「マジかよ」

レオンハルト。

結界。

見上げる。

「耐えた……」

研究者。

震えてる。

「成功です」

一人。

呟く。

「成功……」

別。

「成功だ!」

歓声。

一気。

上がる。

「耐えたぞ!」

「二人の魔王の衝突に耐えた!」

「内部被害なし!」

「亀裂一か所のみ!」

「修復可能です!」

僕。

結界。

見る。

すごい。

本当に。

すごい。

これなら。

もし。

天使が来ても。

戦えない人たちを。

守れる。

国を。

守れる。

僕たちが。

外で戦っている間。

中にいる人たちを。

守れる。

その時。

「さて」

声。

ベラ。

「……」

僕。

外。

見る。

煙。

晴れる。

ベラ。

立ってる。

アン。

立ってる。

二人とも。

服。

少し。

汚れてる。

でも。

大きな怪我。

ない。

ベラ。

肩。

回す。

「結界も耐えたようじゃな」

アン。

「そうですね」

「なら」

黒炎。

また。

灯る。

「ここから本気で――」

「終わりです」

「……」

ベラ。

止まる。

「何故じゃ」

「試験は終了しました」

「まだ決着がついておらぬ」

「模擬戦です」

「だから決着を」

「つけません」

「アンタレス」

「何ですか?」

「六百年ぶりじゃぞ?」

「知っています」

「もう少しくらい」

「駄目です」

「ケチじゃの」

「誰のせいで結界に亀裂が入ったと思っているんですか?」

「お主も撃ったじゃろ」

「ベラ様が上げるからです」

「お主も楽しんでおったではないか」

「……」

アン。

黙った。

僕。

「アン」

「何ですか?」

「楽しんでた?」

「ソル」

「はい」

「後で話があります」

「何で!?」

カイル。

笑う。

エリシア。

小さく。

息。

吐く。

ガレス。

頭。

掻く。

レオンハルト。

ようやく。

肩。

力。

抜いた。

ベラ。

まだ。

不満そう。

僕。

二人を見る。

「じゃあ」

一拍。

「どっちが勝ったの?」

アン。

ベラ。

同時。

こっち。

見る。

「「決着はついていない」」

「……」

僕。

カイル。

顔。

見合わせる。

「仲良いじゃん」

「「よくない」」

また。

同時。

「ほら」

「ソル」

「何?」

「逃げるぞ」

「うん」

「待ちなさい」

アン。

声。

飛んでくる。

僕。

走る。

カイルも。

走る。

後ろ。

エリシア。

「私は関係ありませんので」

冷静。

ずるい。

その日。

世界連合軍が作り上げた。

新たな防御結界は。

世界連合軍主力による総攻撃。

そして。

現魔王アンタレス。

先代魔王ベラトリクス。

二人の魔王が。

六百年ぶりにぶつけ合った力。

その両方に。

耐えた。

完全ではない。

亀裂も入った。

改善する場所も。

まだある。

それでも。

一つ。

確かなものが。

生まれた。

天使から。

世界を守るための。

新しい盾。

そして。

僕は。

もう一度。

外を見る。

ベラ。

アン。

まだ。

何か。

言い合ってる。

六百年前。

二人が。

どんな戦いをしたのか。

僕は知らない。

でも。

今日。

分かった。

二人とも。

とんでもなく強い。

そして。

多分。

今日見せた力が。

全部じゃない。

それだけは。

《心眼》なんて使わなくても。

分かった。


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