3人の形
第129話 三人の形
翌朝。
セレフィア神聖国。
冒険者ギルド。
僕。
カイル。
エリシア。
三人。
受付の前に並んでいた。
「来ています」
受付嬢が一枚の依頼書を取り出す。
「昨日お話しいただいた村より、正式な依頼が届いております」
「早かったね」
「村長様が早朝に使いの方を寄越されました」
依頼書。
内容。
村周辺における魔物増加の原因調査。
そして。
夜間。
森の奥。
地面の下から聞こえる謎の音。
「依頼主からの希望により」
受付嬢が続ける。
「ソル様、カイル様、エリシア様」
一拍。
「三名への指名依頼となっております」
「指名?」
僕が聞く。
「はい」
カイル。
少し笑う。
「昨日一回行っただけで指名か」
「信用していただけたのでしょう」
エリシア。
依頼書。
確認。
「調査依頼ですね」
「はい」
「討伐ではない?」
「現時点では」
受付嬢。
「異変の原因確認が第一目的です」
「了解」
僕が答える。
すぐ。
行ける。
昨日。
気になっていた。
魔物が増え始めた時期。
地面の下から音が聞こえ始めた時期。
ほぼ同じ。
偶然かもしれない。
でも。
確認する必要はある。
「では受注を――」
受付嬢。
止まる。
「あ」
「?」
「そうでした」
何か。
書類。
探す。
「今回のように複数名への指名依頼を、パーティーへの指名として正式に受注する場合」
一拍。
「パーティー名が必要になります」
「……」
僕。
カイル。
エリシア。
沈黙。
「パーティー名?」
僕が聞く。
「はい」
「俺たち、まだ決めてねえぞ」
「そもそも」
エリシア。
「私はまだ正式に加入していません」
「そうだった」
「忘れないでください」
「昨日普通に一緒に戦ってたから」
「一度依頼を受けただけです」
「固いなあ」
カイル。
「大切なことです」
受付嬢。
少し困ったように笑う。
「今回は三名それぞれへの共同指名依頼として処理いたします」
「それなら大丈夫?」
「はい」
よかった。
「ただ」
受付嬢。
僕たち三人を見る。
「今後も三名で活動されるのであれば、パーティーとして登録された方がよろしいかと」
「なるほど」
「その際には」
一拍。
「パーティー名を決めていただく必要があります」
「いつまで?」
「特に期限はありませんが」
受付嬢。
依頼書。
渡す。
「せっかくですので、今回の依頼から帰還されるまでに考えてみてはいかがでしょうか」
「帰るまで……」
僕。
カイル。
見る。
「じゃあ」
カイル。
「最強三人衆」
「却下です」
エリシア。
即答。
「早えよ!」
「考える必要がありません」
「じゃあお前が出せよ!」
「今考える必要もありません」
「強え……」
昨日から。
カイル。
エリシアに弱い。
「ソルは?」
「え?」
「何かねえのか?」
「パーティー名?」
「おう」
「……」
考える。
僕。
カイル。
エリシア。
三人。
「星――」
「お前絶対星入れようとしただろ」
「まだ何も言ってない!」
「顔で分かる」
「何で!?」
「ソルさん」
エリシア。
「はい」
「出発しましょう」
「はい」
受付嬢。
笑ってる。
こうして。
僕たちは。
初めての指名依頼を受けた。
まだ。
名前のない三人で。
………………………………………………
昼前。
村。
昨日と同じ道。
昨日と同じ入口。
でも。
今日は。
村長が待っていた。
「お待ちしておりました!」
「おはようございます」
「本当にありがとうございます」
村長。
何度も頭を下げる。
「まず」
エリシアが言う。
「詳しい状況を確認させてください」
「はい」
「場所をお借りできますか?」
「もちろんです。私の家へ」
村長宅。
大きくはない。
でも。
机。
椅子。
三人が話すには十分。
村長が地図を広げる。
村。
街道。
森。
「音が聞こえるのは」
指。
森の奥。
「この辺りです」
「村からどれくらい?」
僕が聞く。
「歩いて一時間ほどでしょうか」
「道は?」
カイル。
「途中まではあります」
「途中まで?」
「薪や薬草を採りに村の者が入りますので」
指。
動く。
「ですが、この辺りから先は」
森。
奥。
「ほとんど入りません」
「理由は?」
エリシア。
「単純に、用がないのです」
「なるほど」
危険だから。
ではない。
普段から。
人が入る必要のない場所。
「音に最初に気づいたのは?」
「数週間ほど前です」
昨日。
聞いた通り。
「魔物が増え始めたのも?」
「ほぼ同じ頃です」
「……」
カイル。
腕を組む。
「やっぱ引っかかるな」
「うん」
僕も。
同じ。
「音がするのは夜だけ?」
「はい」
「昼間は?」
「少なくとも、私どもが確認したことはありません」
「毎晩ですか?」
エリシア。
「ほぼ」
村長。
少し。
顔を曇らせる。
「日によって大きさは違います」
「大きさ?」
「はい」
「どんな音?」
僕が聞く。
「それが……」
村長。
考える。
「上手く説明できません」
「何かが鳴いている?」
「違うと思います」
「岩が崩れるような?」
「それとも違うような」
「金属?」
カイル。
「分かりません」
村長。
首を振る。
「ただ」
一拍。
「地面の下から聞こえる」
「それだけは」
「間違いありません」
「……」
地下。
森。
魔物。
数週間。
僕は地図を見る。
今。
行っても。
音はしない。
なら。
「夜まで待つしかないね」
僕が言う。
「はい」
エリシア。
「その方が確実です」
「暇だな」
カイル。
「休めば?」
僕が言う。
「お前に言われたくねえよ」
「何で?」
「昨日まで寝込んでた奴が何言ってんだ」
「もう大丈夫だよ」
「本当ですか?」
エリシア。
「……大丈夫です」
「少し間がありました」
「気のせい」
「では」
エリシア。
僕を見る。
「夜まで時間があります」
「うん」
「確認しておきたいことがあります」
「何?」
「私たちについてです」
「私たち?」
「はい」
エリシア。
僕。
カイル。
順番に見る。
「昨日」
「私たちは初めて共に戦いました」
「うん」
「ですが」
一拍。
「一度です」
「……」
「私はお二人の能力を全て把握していません」
「お二人も」
「私について同じでしょう」
「まあ」
カイル。
「そうだな」
「ですので」
エリシア。
椅子。
引く。
座る。
「今のうちに確認しておきましょう」
「能力」
「技」
「得意な距離」
「役割」
「そして」
一拍。
「三人で戦う場合の基本的な配置」
「フォーメーション?」
僕が聞く。
「はい」
「なるほど」
昨日。
僕は。
二人を見ながら。
必要な瞬間だけ。
星を動かした。
でも。
あれは。
ほとんど感覚。
カイルは。
何度も一緒に戦ってる。
だから。
ある程度。
分かる。
エリシアは。
まだ。
知らない。
「いいと思う」
「俺も」
カイル。
机。
少し前へ。
「じゃあ誰からだ?」
「カイルさん」
エリシア。
即答。
「俺?」
「一番簡単そうですので」
「どういう意味だよ」
「槍」
僕が言う。
「お前もか!」
「違うの?」
「違わねえけど!」
カイル。
槍。
壁へ立てかけてある。
指。
「基本はこれだ」
「槍を使った近接戦闘」
「前衛」
「以上」
「本当に終わった」
「だから言っただろ」
「簡単ですね」
「エリシアまで!」
でも。
カイル。
少し。
表情を変える。
「ただ」
「一番強い一撃は」
一拍。
「《天穿》」
僕。
思い出す。
模擬戦。
一直線。
空気そのものを貫くような。
凄まじい一撃。
「それ」
僕が言う。
「簡単に使わないでね」
「お前に言われたくねえ」
「何で?」
「俺が《天穿》使った時、お前《無拍》使っただろ」
「カイルが撃ってきたからでしょ!」
「お前が先にヤバい構えしたからだ!」
「お二人とも」
エリシア。
「はい」
「悪い」
「つまり」
エリシア。
「カイルさんは前衛」
「槍を用いた近接戦闘を主体とし」
「必要であれば《天穿》」
「おう」
「ただし」
一拍。
「勝手に前へ出ない」
「それ能力の話じゃねえだろ」
「重要です」
「……はい」
素直。
「次」
エリシア。
僕を見る。
「ソルさん」
「僕?」
「はい」
「……」
何から。
話そう。
「まず」
右手。
黄金。
小さな星。
「《星装》」
エリシア。
見る。
「昨日、私にも付与していたものですね」
「うん」
「基本は」
「星を身体に纏って、身体能力を上げる」
「それを」
右脚。
星。
集まる。
「一ヶ所へ集中させることもできる」
「《彗星》」
「昨日も使っていましたね」
「うん」
「脚に集めれば加速」
「腕なら攻撃」
「必要な場所へ集中させる」
次。
「《流転》」
「集中させた星の力を」
脚。
腰。
腕。
「身体の中で繋ぐ」
腰。
《明星》。
手。
触れる。
「最後に」
「これへ」
「《明星》」
エリシア。
刀を見る。
「シリウス様から受け継いだ刀」
「うん」
「それと」
一拍。
「《無拍》」
カイル。
少し。
嫌そうな顔。
「それは覚えとけ」
「?」
エリシア。
「こいつがその構えしたら離れろ」
「何で!?」
「危ねえからだよ!」
「カイルの《天穿》もでしょ!」
「俺は自覚してる!」
「僕だってしてるよ!」
「この前初めて使って最大出力だった奴が言うな!」
「……」
何も。
言えない。
エリシア。
僕を見る。
「ソルさん」
「はい」
「勝手に使わない」
「……はい」
「次は?」
厳しい。
「《心眼》」
「それは聞いたことがあります」
「相手を見る」
「魔力」
「動き」
「気配」
「それだけじゃなくて」
一拍。
「戦場全体を見ることもできる」
「昨日」
僕。
自分の頭。
触る。
「少しだけ使い方が分かった」
「使い方?」
「全部をずっと見続けるんじゃなくて」
「必要な瞬間だけ見る」
「カイル」
「エリシア」
「敵」
「守る人」
「必要な場所へ切り替える」
エリシア。
頷く。
「負担を減らすため?」
「うん」
「前は」
全部。
見ようとした。
全部。
動かそうとした。
その結果。
倒れた。
「それでも」
エリシア。
僕を見る。
「無理はしないでください」
「分かってる」
「本当に?」
「……」
「ソル」
カイル。
「そこ即答しろよ」
「分かってるって!」
次。
「《星域》」
僕。
続ける。
「広い範囲へ星を展開する」
「味方を強化したり」
「守ったり」
「傷を治したり」
「治癒も?」
エリシア。
反応。
「うん」
「でも」
僕はエリシアを見る。
「一人の傷を集中して治すなら」
「エリシアの《治癒》の方が上だと思う」
「なるほど」
「僕は広く」
「エリシアは一人を確実に」
「そんな感じ」
「理解しました」
「それから」
星。
一つ。
浮かぶ。
「仲間にも《星装》を付与できる」
「昨日」
「うん」
「そして」
一拍。
「《星律》」
エリシア。
自分の右手を見る。
昨日。
初めて。
使った。
「付与した星を」
「僕が動かす」
「脚へ」
「腕へ」
「必要な場所へ」
「本人が操作しなくても」
「僕が直接」
「……」
エリシア。
少し考える。
「やはり」
「?」
「《星律》については」
僕を見る。
「ルールを決めましょう」
「ルール?」
「はい」
「昨日もお伝えしましたが」
「身体の動きに直接介入される以上」
「使い方を誤れば、味方の動きを崩します」
「うん」
「昨日」
一拍。
「私の脚へ突然星を集中させました」
「……はい」
「木に衝突するところでした」
カイル。
「ははっ!」
「笑うな!」
「いや、思い出したら」
「カイルさん」
「ん?」
「あなたも昨日、ソルさんに身体を動かされていましたよね?」
「……」
「笑える立場でしょうか」
「……すみません」
強い。
やっぱり。
強い。
「ですので」
エリシア。
続ける。
「可能であれば」
「大きく動きを変える場合は声を」
「分かった」
「ただ」
カイル。
「戦ってる最中に間に合わねえ時は?」
「……」
エリシア。
少し考える。
そして。
僕を見る。
「その時は」
一拍。
「任せます」
「いいの?」
「そのために」
エリシア。
「お互いを知るのでしょう?」
「……」
昨日。
言われた。
私の動きを。
もっと知ってください。
私も。
ソルさんの星を知ります。
「うん」
僕は頷く。
「分かった」
「じゃあ」
カイル。
「ソルの説明終わりか?」
「……」
僕。
考える。
「だいたい?」
「多すぎだろ」
「僕に言われても」
「まだ何かありそうな言い方すんな」
エリシア。
「現時点で、今回の調査に必要なものを把握できれば十分です」
「じゃあ」
僕。
エリシアを見る。
「次」
「私ですね」
「うん」
「近接戦闘」
腰。
細身のレイピア。
「主武器はレイピアです」
「基本的には前衛から中衛」
「力で受けるより」
「避ける」
「流す」
「隙を突く」
昨日。
見た。
試験官の剣。
受けなかった。
触れて。
流した。
そして。
喉元。
「次」
右手。
白い光。
「《治癒》」
「軽傷であれば戦闘中でも対応できます」
「重傷者の場合は?」
僕が聞く。
「安全を確保した上で集中して治療します」
「分かった」
「そして」
左手。
光。
半透明の壁。
「《聖壁》」
「防御用の結界です」
「昨日」
僕。
思い出す。
《星律》。
エリシアの左腕。
星。
集めた。
いつもより。
硬くなった。
「《星律》と相性いいよね」
「はい」
エリシアも頷く。
「結界を展開する瞬間に星を集中していただければ」
「通常より強度を上げられる」
「ただし」
「合図」
「はい」
「覚えてます」
「なら結構です」
カイル。
僕とエリシアを見る。
「俺だけ説明短くねえか?」
「槍」
僕。
「《天穿》」
エリシア。
「前へ出すぎる」
「最後いらねえだろ!」
少し。
笑う。
でも。
これで。
分かった。
三人。
できること。
できないこと。
次。
「配置」
エリシア。
机の上。
指。
三つ。
「基本は」
一番前。
「カイルさん」
「おう」
その少し後ろ。
「私」
「はい」
そして。
最後。
「ソルさん」
「僕、後ろ?」
「固定ではありません」
エリシア。
「ソルさんは全体を確認できる」
「《星律》で私たちの支援もできる」
「そして」
「必要なら自分で前へ出ることもできる」
「うん」
「ですので」
「前衛でも後衛でもない」
一拍。
「遊撃」
「なるほど」
カイル。
「俺が前で敵を止める」
「はい」
「エリシアがその後ろで」
僕。
「攻撃」
「防御」
「治療」
「状況に応じて変える」
「はい」
「僕が全体を見る」
「必要なところへ星を動かす」
「そうです」
「ただ」
エリシア。
僕とカイル。
見る。
嫌な予感。
「二つ」
「何?」
「一つ」
僕を見る。
「ソルさん」
「はい」
「限界を超えない」
「……はい」
「二つ」
カイル。
「カイルさん」
「おう」
「勝手に突出しない」
「……」
「返事は?」
「はい」
僕。
吹き出す。
「カイルが怒られてる」
「お前もだろ!」
「僕は先に返事した」
「そういう問題じゃねえ!」
「それから」
エリシア。
「《星律》で大きく動きを変える時は」
僕。
「可能なら合図」
「はい」
「間に合わない時は?」
「……任せます」
「分かった」
カイル。
腕を組む。
「で?」
「?」
「エリシアは?」
「私?」
「俺らだけ注意事項あるのおかしいだろ」
「確かに」
僕も頷く。
エリシア。
少し。
考える。
「私は」
沈黙。
「……」
珍しい。
悩んでる。
そして。
「では」
僕たちを見る。
「私も」
一拍。
「お二人を信用します」
「……」
「昨日」
エリシア。
僕を見る。
「《星律》には信頼が必要だと言いました」
「うん」
「ですが」
「それはソルさんだけの話ではありません」
「私も」
「ソルさんが必要だと判断した時」
「身体を預ける必要がある」
次。
カイル。
「カイルさんが前へ出るなら」
「その背中を守る必要がある」
「……」
「だから」
一拍。
「私も」
「お二人を知ります」
静か。
少しだけ。
「それでいい?」
僕が聞く。
「はい」
「じゃあ」
カイル。
立ち上がる。
「決まりだな」
「何がですか?」
「パーティー」
「まだです」
「まだなのかよ!」
「一度話し合っただけです」
「昨日一緒に戦って、今日能力まで全部話したんだぞ!?」
「それとこれとは別です」
「何したら入んだよ!」
「今回の依頼を終えてから考えます」
「……」
カイル。
僕を見る。
「手強えな」
「うん」
「聞こえています」
「……」
「……」
その後。
少し。
休憩。
昼。
村長が用意してくれた食事。
食べる。
そして。
待つ。
時間。
ゆっくり。
進む。
カイル。
槍。
手入れ。
エリシア。
レイピア。
確認。
僕。
《明星》。
鞘。
刀身。
確認。
問題ない。
「そういえば」
カイル。
「何?」
「名前」
「?」
「パーティー名」
「あ」
忘れてた。
「帰るまでに決めろって言われたろ」
「言われたね」
「最強三人衆」
「却下です」
エリシア。
レイピアを見たまま。
「まだ言い終わってねえぞ!」
「朝聞きました」
「じゃあ」
僕。
「星の――」
「却下」
カイル。
「何で!?」
「絶対お前中心になるだろ」
「まだ決めてない!」
「星って言った時点でそうだろ」
「じゃあカイル考えてよ!」
「天穿――」
「却下です」
エリシア。
「お前ら厳しくねえか!?」
「……」
三人。
沈黙。
「まあ」
僕。
《明星》。
鞘へ。
「帰るまでに考えればいいでしょ」
「そうですね」
エリシア。
「今回の依頼が終わってからでも遅くありません」
「結局それか」
カイル。
窓。
見る。
空。
少しずつ。
橙。
そして。
暗くなる。
夕方。
夜。
村の灯り。
一つ。
また一つ。
点く。
僕たち。
装備。
整える。
カイル。
槍。
エリシア。
レイピア。
僕。
《明星》。
村長。
不安そうに。
森を見る。
「そろそろです」
「いつもこのくらい?」
「はい」
外。
出る。
夜。
風。
静か。
森。
黒い。
「……」
何も。
聞こえない。
カイル。
「まだか?」
「静かに」
エリシア。
「分かってる」
待つ。
一分。
二分。
森。
虫。
風。
葉。
それだけ。
僕。
目を閉じる。
《心眼》。
少しだけ。
広げる。
村。
三人。
森。
魔力。
魔物。
遠く。
いくつか。
でも。
昨日より。
使い方。
変える。
全部を。
掴み続けない。
見る。
切る。
見る。
切る。
必要な場所だけ。
「……」
今のところ。
異常。
ない。
その時。
ズ……。
「……?」
目。
開く。
「今」
カイル。
槍。
握る。
「聞こえたな」
エリシア。
森を見る。
「はい」
村長。
顔。
強張る。
「これです」
静寂。
そして。
もう一度。
ズズ……。
低い。
音。
遠い。
でも。
確かに。
森。
その奥。
違う。
下。
「……地面」
僕が呟く。
音。
また。
響く。
ズズズズ……。
足元。
僅かに。
伝わる。
カイル。
笑わない。
エリシアも。
表情。
真剣。
「村長」
僕が言う。
「ここで待ってて」
「は、はい」
「何かあったら?」
エリシア。
「家から出ないでください」
「分かりました」
カイル。
槍。
肩。
「行くか」
「うん」
エリシア。
レイピア。
抜く。
三人。
森。
見る。
昨日は。
ただ。
一緒に依頼を受けた。
今日も。
まだ。
正式なパーティーじゃない。
名前も。
ない。
でも。
前。
カイル。
中。
エリシア。
そして。
僕。
自然と。
昼間決めた位置へ。
並ぶ。
「カイル」
「おう」
「エリシア」
「はい」
黄金。
小さな星。
二人へ。
一つずつ。
「《星装》」
光。
纏う。
カイル。
槍。
握り直す。
エリシア。
自分の身体に宿った星を見る。
そして。
僕を見る。
「ソルさん」
「何?」
「無理はしない」
「分かってる」
「カイルさん」
「勝手に前へ出ねえよ」
「まだ何も言っていません」
「言おうとしただろ!」
「はい」
「やっぱりかよ!」
少し。
笑う。
でも。
すぐ。
前。
森。
暗闇。
その奥。
地面の下から。
また。
音。
ズズズズズ……。
さっきより。
大きい。
「……行こう」
僕が言う。
「おう」
「はい」
三人。
歩き出す。
名前は。
まだない。
正式な仲間なのかも。
まだ。
分からない。
でも。
三人で。
役割を決めて。
力を知って。
初めて。
同じ目的へ向かう。
僕たちの。
本当の意味での。
最初の冒険が。
始まった。




