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新たな仲間

第127話 新たな仲間


世界連合軍による緊急会議が終わった。

《界蝕点》。

《界門》。

そして、その向こう側に存在する黒い世界。

各国はすぐに動き始めていた。

アステリア王国では王国軍と冒険者ギルド。

セレフィア神聖国では聖騎士団と聖職者。

ヴァルガルドでは防衛軍。

アルカディアでは魔法部隊と研究者。

カグラ皇国では隠密機動部隊。

そして魔族領では魔王軍。

世界中で《界蝕点》の調査が始まる。

僕たちは会議場を出た。

「疲れた……」

「お前、ほとんど座ってただけだろ」

カイルが言う。

「昨日倒れたんだから仕方ないでしょ」

「なら帰って寝ろ」

「嫌だ」

「何でだよ」

「もう寝た」

「ベラと同じこと言ってるぞ」

「……」

それはちょっと嫌だ。

「ソル」

後ろから声。

振り返る。

「ラインハルトさん」

セレフィア聖騎士長。

ラインハルトが立っていた。

「少し、お時間をいただけますか」

「大丈夫ですけど」

「カイル殿も」

「俺も?」

「はい」

ラインハルトが僕たちを見る。

「お二人が新たな仲間を探していると伺いました」

「……」

僕はカイルを見る。

カイルも僕を見る。

「もう知ってるんですか?」

「ベラトリクス様から」

「ベラ……」

何で先に言ってるんだ。

「確かに探してます」

「現在はお二人で?」

「うん」

「ベラトリクス様は?」

「ベラは……」

何だろう。

仲間。

師匠。

保護者。

「違うかな」

「即答かよ」

「だってベラは冒険者じゃないし」

「まあな」

世界連合軍特別部隊としては一緒。

でも。

僕とカイルが冒険者として作ったパーティーとは違う。

「そこで」

ラインハルトが言う。

「一人」

一拍。

「紹介したい者がおります」

「仲間として?」

「いいえ」

「え?」

ラインハルトが首を振る。

「誤解なさらぬよう」

「私は彼女を、あなた方のパーティーへ配属するつもりはありません」

「……」

「仲間とは」

一拍。

「命令で作るものではないでしょう」

「……!」

僕はラインハルトを見る。

「はい」

「私もそう考えています」

「ただ」

ラインハルトが僅かに笑う。

「一度」

「会っていただきたい」

「……」

「おそらく」

一拍。

「あなた方とは相性がいい」

カイルが腕を組む。

「そこまで言われると気になるな」

「僕も」

「では」

ラインハルトが歩き出す。

「こちらへ」

僕とカイルは後を追った。


大聖堂。

聖騎士団訓練場。

広い。

何人もの聖騎士が訓練をしている。

剣。

槍。

盾。

魔法。

その中。

「……」

一人。

女性。

年齢は。

僕たちより少し上くらい。

白を基調とした聖騎士の制服。

軽装。

腰。

細い剣。

「レイピア?」

僕が呟く。

「そうだな」

カイル。

女性は一人で訓練していた。

正面。

訓練用の人形。

構える。

静か。

一歩。

シュッ。

「……速い」

一突き。

二突き。

三突き。

ほとんど同時。

人形の急所へ正確に刺突。

さらに。

身体を回す。

レイピア。

受け流すような動き。

そして。

最後。

一突き。

ピタッ。

人形の眉間。

寸前。

止まる。

「……」

カイルが少し笑う。

「上手いな」

「うん」

力じゃない。

速さ。

正確さ。

無駄がない。

僕たちに気づいたのか。

女性がレイピアを下ろす。

こちらへ歩いてくる。

「聖騎士長」

「訓練中にすまない」

「いえ」

女性の視線。

僕。

次。

カイル。

「……」

「紹介しよう」

ラインハルトが言う。

「セレフィア聖騎士団所属」

一拍。

「エリシアだ」

女性が一歩前へ。

「エリシアです」

一礼。

「よろしくお願いいたします」

「僕はソル」

「存じています」

「……ですよね」

最近。

これが多い。

「俺はカイルだ」

「存じています」

「俺もか」

「世界連合軍特別部隊のお二人ですので」

「なるほどな」

ラインハルトが続ける。

「エリシアは聖騎士として近接戦闘を修めている」

「先ほど見た通り」

「武器はレイピア」

「はい」

エリシアが答える。

「ですが」

ラインハルト。

「彼女を推薦する理由は、それだけではありません」

「?」

「エリシア」

「はい」

彼女が右手を上げる。

光。

白い魔法陣。

「治癒魔法」

僕が言う。

「はい」

優しい光。

さらに。

左手。

別の魔法陣。

半透明。

光の壁。

「結界……」

「こちらも扱えます」

カイルがエリシアを見る。

「剣も使えて」

「レイピアです」

「……細かいな」

「重要です」

「そうか」

「治癒魔法と結界魔法」

ラインハルトが続ける。

「双方に高い適性を持っています」

「聖騎士として戦い」

「負傷者が出れば治療」

「必要であれば結界による防御」

「前衛」

「中衛」

「後衛」

「状況に応じて役割を変えられる」

「……」

確かに。

僕とカイルには。

いない。

カイル。

完全に前衛。

僕は。

どこでも戦える。

でも。

専門的な治癒魔法は使えない。

星域による治癒はできる。

だけど。

重傷者一人を集中して治すなら。

治癒術師の方が上。

それに。

結界。

「いいね」

僕が言う。

「おい」

カイル。

「本人の前で品定めみたいに言うな」

「あ」

エリシアを見る。

「ごめん」

「構いません」

「……」

表情。

あまり変わらない。

「エリシア」

ラインハルト。

「彼らが」

「先ほど話した二人だ」

「はい」

「どうだ?」

「……」

エリシアが僕を見る。

次。

カイル。

「まだ分かりません」

「お」

カイルが笑う。

「正直だな」

「実際に共に戦ったことがありませんので」

「それはそうだね」

「噂だけで人を判断するつもりはありません」

「……」

いいかも。

「ソルさん」

「何?」

「一つ」

「うん」

「確認しても?」

「もちろん」

エリシア。

僕を見る。

「先日の救出任務」

「……」

「限界を超えて《星域》を維持し続け」

「そのまま意識を失ったと聞きました」

「……」

誰から。

ラインハルトを見る。

目を逸らされた。

「まあ」

「はいか、いいえで」

「……はい」

「分かりました」

「何が?」

「あなたは」

一拍。

「治療する側からすれば、非常に面倒な方です」

「初対面で!?」

カイル。

吹き出す。

「ははっ!」

「笑うな!」

「いや、お前」

「言われて当然だろ!」

「カイルさん」

「ん?」

エリシアがカイルを見る。

「あなたもです」

「……俺?」

「前へ出すぎると聞いています」

「誰から!?」

今度は。

二人でラインハルトを見る。

「……」

ラインハルト。

また。

目を逸らす。

「ラインハルトさん!」

「事実を伝えただけです」

「俺まで巻き込むなよ!」

「つまり」

エリシアが言う。

「一人は自分の限界を無視する」

僕。

「……」

「一人は前へ出すぎる」

カイル。

「……」

「なるほど」

一拍。

「確かに治癒役は必要ですね」

「言い方!」

カイルが叫ぶ。

僕も。

「もう少し優しく言ってよ!」

「事実です」

「この人結構厳しい!」

「治癒魔法は優しく使いますので」

「そういう問題じゃない!」

ラインハルト。

少し。

笑っている。

「まあ」

「これがエリシアです」

「分かりました……」

でも。

嫌じゃない。

むしろ。

話しやすい。

「ただ」

ラインハルトがエリシアを見る。

「先ほども彼らに伝えた通り」

「これは命令ではない」

「はい」

「聖騎士団から彼らのパーティーへ異動を命じるつもりもない」

「……」

「お前自身が決めろ」

「承知しています」

「ソル殿」

「はい」

「カイル殿」

「おう」

「お二人も」

「彼女を聖騎士長推薦という理由だけで仲間にする必要はありません」

「うん」

「分かってる」

僕はエリシアを見る。

「じゃあ」

「はい」

「一回」

一拍。

「一緒に依頼を受けてみない?」

「依頼?」

「うん」

「僕とカイルは冒険者だから」

カイルが続ける。

「戦ってみねえと分からないって言ったのはそっちだろ?」

「……」

エリシア。

少し考える。

「確かに」

「なら決まりだな」

「まだです」

「え?」

「私は聖騎士です」

「うん」

「任務があります」

「……」

「聖騎士長」

エリシアがラインハルトを見る。

「休暇を申請します」

「許可する」

「早っ!」

僕が言う。

「話通してたでしょ!」

「さて」

「絶対そうだ!」

エリシアが僅かに笑う。

初めて。

表情が崩れた。

「では」

僕を見る。

「一度だけ」

「うん」

「同行します」

「分かった」

「ただし」

「?」

「条件があります」

「何?」

「無茶をしないでください」

「……」

「特にソルさん」

「何で僕だけ!?」

「昨日倒れていますので」

「もう大丈夫」

「その言葉」

一拍。

「使用禁止にしましょう」

「……」

僕は固まる。

カイル。

爆笑。

「ははははっ!」

「笑うな!」

「ベラと同じこと言われてんじゃねえか!」

「何なのみんな!」

その時。

「気に入った」

「……」

声。

後ろ。

僕たち。

振り返る。

「ベラ!?」

いつからいた。

壁。

寄りかかっている。

「何してるの!?」

「見物じゃ」

「最初から?」

「途中からじゃ」

「どこから?」

「治療する側からすれば面倒な方です、辺りじゃな」

「ほぼ最初じゃん!」

ベラがエリシアを見る。

「治癒魔法も使えるそうじゃな」

「はい」

「結界も」

「はい」

「レイピア」

「扱えます」

「ほう」

ベラ。

満足そう。

「では」

一拍。

「ソルが無茶をした時は頼むぞ」

「最優先で治療します」

「ちょっと待って」

僕が二人を見る。

「僕が怪我する前提なの?」

「するじゃろ」

「するでしょう」

同時。

「……」

カイルが肩を震わせている。

「笑うな!」

「無理だろ!」

「ふふ」

エリシア。

また。

僅かに笑った。

僕は。

その顔を見る。

まだ。

仲間じゃない。

ラインハルトに紹介されただけ。

一緒に戦ったこともない。

どんな人なのかも。

ほとんど知らない。

でも。

何となく。

思った。

たぶん。

面白くなる。

「じゃあ」

僕は言う。

「明日」

「冒険者ギルドに行こう」

「はい」

エリシアが頷く。

「よろしくお願いします」

「うん」

カイルが槍を肩へ乗せる。

「まずは三人で一回」

一拍。

「戦ってみるか」

「そうだね」

聖騎士。

レイピア。

治癒魔法。

結界魔法。

エリシア。

まだ。

僕たちの仲間ではない。

でも。

新しい出会いが。

ここから。

始まろうとしていた。



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