星律
第124話 星律
黄金の光が森を覆う。
《星域》。
その中心で、僕は戦場全体を見ていた。
天使。
シノブたち先鋭部隊。
負傷者。
カイル。
ベラ。
そして。
配置した無数の星。
全部。
《心眼》を通して僕の中へ情報が流れ込んでくる。
「右から三体!」
「分かってる!」
カイルが槍を構える。
一体目。
正面。
槍を横薙ぎに振るい、天使の腕を弾く。
そのまま一歩踏み込む。
二体目。
「そこ!」
「おおっ!」
槍を突き出す。
天使の胸部へ直撃。
だが。
「カイル! 後ろ!」
「っ!」
三体目。
間に合わない。
天使の腕が振り下ろされる。
僕は反射的に右手を伸ばした。
「――星装付与!」
黄金。
星が飛ぶ。
カイルの身体へ。
右脚。
左脚。
右腕。
左腕。
胴体。
頭部。
星装。
「っ!?」
カイルが目を見開く。
「これ……!」
天使の攻撃。
もう目の前。
「防いで!」
「無茶言うな!」
カイルが槍を構える。
その瞬間。
僕は。
カイルに付与した星を見る。
「……」
胴体。
そこへ。
星を集める。
黄金の光が一気に強くなる。
ドンッ!!
「ぐっ!」
カイルが吹き飛ばされる。
だが。
倒れない。
「……は?」
自分の身体を見る。
「今のを受けて……?」
「カイル!」
「何だ!」
「前!」
天使が迫る。
「分かってる!」
カイルが踏み込もうとする。
その瞬間。
僕は。
両脚。
そこへ星を流す。
「――っ!?」
ドンッ!!
地面が弾けた。
カイルの身体が一気に加速する。
「速っ!?」
「そのまま!」
「簡単に言うな!」
天使。
目の前。
カイルが槍を引く。
僕は。
脚に集めていた星を動かす。
脚。
胴体。
肩。
そして。
右腕。
一気に。
流す。
「カイル!」
「おおおおおっ!!」
槍。
突き。
ドォンッ!!
天使の身体が大きく吹き飛んだ。
「……」
カイルが止まる。
槍を見る。
自分の右腕を見る。
そして。
僕を見る。
「おい」
「何?」
「今の」
「うん」
「お前か?」
「うん」
「俺、何もしてねえぞ」
「槍は突いたでしょ」
「そういう意味じゃねえ!」
天使。
また来る。
「話はあと!」
「くそっ!」
カイルが再び構える。
僕は。
カイルに付与した星を見る。
動かせる。
付与した後でも。
僕の星。
僕の魔力。
なら。
「……」
今まで。
星装付与は。
仲間へ力を渡す技だと思っていた。
付与した星をどう使うか。
それは。
付与された本人に任せていた。
でも。
違う。
僕が。
動かせる。
「ソル!」
シノブ。
「左側から来る!」
「分かってる!」
先鋭部隊。
三人。
天使が迫っている。
僕は星を飛ばす。
「星装付与!」
黄金。
シノブ。
そして。
前線にいる二人。
星が身体を覆う。
「これは……」
シノブが自分の腕を見る。
「説明はあと!」
僕は心眼を広げる。
シノブ。
右。
天使。
斬撃。
「シノブ! 右!」
「分かっている!」
刀。
受ける。
いや。
受けさせない。
攻撃が当たる場所。
左腕。
そこへ。
星を集める。
ガンッ!!
「……!」
シノブが攻撃を受け流す。
「軽い……?」
「そのまま斬って!」
踏み込み。
右脚。
星。
集中。
ドンッ!
「なっ――」
シノブ自身が驚くほどの速度。
天使の懐へ。
右腕。
星を移す。
「今!」
「はあっ!」
刀。
一閃。
天使の身体が斬り裂かれる。
「……」
シノブが僕を見る。
「今のは」
「僕!」
「……」
「だから説明はあと!」
「分かった!」
シノブが笑う。
「ならば任せる!」
「うん!」
また。
天使。
今度は二人の隊員。
一人。
槍。
一人。
短刀。
僕は。
見る。
心眼。
動き。
敵。
味方。
全部。
槍を持つ隊員。
踏み込む。
右脚へ。
星。
短刀の隊員。
攻撃を避ける。
左脚へ。
星。
天使が反撃。
胴体へ。
星。
次。
腕。
次。
脚。
次。
胴体。
「……っ」
情報。
多い。
でも。
できる。
一人。
二人。
三人。
四人。
付与した星。
全部。
僕が。
動かす。
「ソル?」
ベラが僕を見る。
「お主……」
「何?」
「星を与えておるだけではないな」
「うん」
「付与した後も」
ベラの目が細くなる。
「お主自身が制御しておるのか」
「そうみたい」
「そうみたいって……」
カイルが天使を弾きながら叫ぶ。
「今試してんのかよ!」
「できたからいいでしょ!」
「怖えよ!」
僕は。
もう一度。
戦場を見る。
星域。
心眼。
そして。
星装付与。
今まで。
全部。
別々に使っていた。
でも。
違う。
星域で戦場を覆う。
心眼で全てを見る。
星装を仲間へ付与する。
そして。
その星を。
僕自身が制御する。
全部。
繋がる。
「……」
呼吸。
一度。
星。
一つ一つ。
感じる。
カイル。
シノブ。
先鋭部隊。
僕が付与した星。
全部。
僕の中で。
一本の線に繋がっていく。
「……いける」
ベラが僕を見る。
「何がじゃ?」
「全部」
「?」
僕は両手を広げる。
黄金の星。
一斉に。
輝く。
「僕が」
一拍。
「全部動かす」
「……」
ベラが。
僅かに目を見開いた。
カイルが叫ぶ。
「全部って何人だよ!」
「今、動ける人全員!」
「はあ!?」
「みんなは戦うことだけ考えて!」
「簡単に言うな!」
「星のことは」
心眼。
全員を見る。
「僕が全部考える!」
黄金。
星域の中。
付与された全ての星が。
同時に動いた。
「――《星律》」
瞬間。
戦場が変わった。
「……!」
カイル。
右脚。
星。
集中。
加速。
「うおっ!?」
槍。
振るう。
次。
右腕。
星。
集中。
ドンッ!!
天使が弾き飛ばされる。
シノブ。
左脚。
星。
回避。
右脚。
踏み込み。
右腕。
斬撃。
一連の動作に合わせ。
星が流れる。
「これは……」
シノブが目を見開く。
「私の動きに合わせている?」
違う。
合わせてるだけじゃない。
その先も。
見ている。
天使が。
シノブの死角から攻撃。
「後ろ!」
「っ!」
胴体。
星。
集中。
ガンッ!!
攻撃を耐える。
その瞬間。
右腕へ。
星。
「今!」
「はっ!」
振り向きざま。
斬。
一体。
倒れる。
別の場所。
先鋭部隊。
二人。
一体の天使へ。
一人目。
脚。
加速。
囮。
天使がそちらを見る。
二人目。
右腕。
星。
集中。
死角から。
一撃。
「倒した!」
「止まらないで!」
「はい!」
次。
負傷者。
動ける。
でも。
速度が足りない。
両脚。
星。
「走って!」
「っ……はい!」
加速。
安全な場所へ。
次。
前線。
防御。
次。
攻撃。
次。
回避。
次。
踏み込み。
星が。
流れる。
戦場中を。
黄金の光が駆け巡る。
カイルが笑う。
「何だよこれ!」
「何!?」
「めちゃくちゃ動きやすい!」
「なら戦って!」
「言われなくても!」
カイル。
天使。
三体。
「ソル!」
「そのまま前!」
「おう!」
右脚。
加速。
一体目。
槍。
右腕。
強化。
弾く。
二体目。
左脚。
身体を回す。
回避。
三体目。
胴体。
防御。
攻撃を受け。
その力を利用。
右腕。
全て。
集める。
「カイル!」
「分かってる!」
槍。
渾身。
突き。
ドォォン!!
二体まとめて吹き飛ぶ。
「ははっ!」
カイルが槍を回す。
「これならいける!」
「無茶はしないで!」
「お前がさせてんだろ!」
「必要な無茶!」
「何だそれ!」
その時。
「ソル」
ベラ。
「何?」
「妾には?」
「え?」
「星じゃ」
「……」
僕はベラを見る。
必要。
ない。
「いらないでしょ」
「……」
「ベラは自分でやって」
「扱いが雑ではないか?」
「ベラに星を付ける余裕があるなら負傷者に回す!」
「まあ」
ベラが黒炎を指先に灯す。
「それが正解じゃな」
カイルが叫ぶ。
「納得すんのかよ!」
ベラ。
指。
軽く。
弾く。
黒炎。
飛ぶ。
天使。
直撃。
ドンッ!!
地面が揺れた。
「……」
カイルが黙る。
「な?」
僕が言う。
「いらないでしょ」
「……いらねえな」
その間にも。
僕は星を動かし続ける。
一人。
二人。
五人。
十人。
付与対象が増える。
「……っ」
頭。
痛い。
大量の情報。
誰が。
どこに。
どう動く。
どこへ星を集める。
次。
次。
次。
心眼から流れ込む戦場。
さらに。
一人一人の星。
全部。
僕が。
制御する。
「っ……」
視界。
一瞬。
揺れる。
「ソル?」
ベラ。
「大丈夫」
「まだ何も言っておらぬ」
「……」
「鼻」
「え?」
鼻の下。
触る。
血。
「……あ」
「欲張りすぎじゃ」
「でも」
僕は。
先鋭部隊を見る。
負傷者。
まだいる。
天使。
まだ多い。
黒い裂け目。
まだ閉じていない。
「全員連れて帰るんでしょ?」
「……」
「アンも言ってた」
一拍。
「救出できれば僕たちの勝ちだって」
ベラが僕を見る。
少し。
黙る。
そして。
笑った。
「そうじゃったな」
「うん」
「ならば」
ベラが前へ出る。
「お主は守れ」
「うん」
「星で」
赤黒い魔力。
「全員を」
「任せて」
ベラが。
天使の大群を見る。
「道は」
一拍。
「妾が作る」
黒炎。
今度は。
一つじゃない。
ベラの周囲。
十。
二十。
五十。
黒い炎が。
浮かび上がる。
空気が震える。
「カイル」
「おう!」
「シノブ!」
「何だ!」
「ベラが道を作ったら全員で撤退!」
「了解!」
「動けない人は!?」
「我々が運ぶ!」
「分かった!」
僕は。
星域をさらに広げる。
心眼。
全員。
星律。
維持。
星を。
動かす。
「ベラ!」
「うむ」
「いつでも!」
ベラが笑った。
「では」
黒炎。
全て。
前方へ向く。
天使たち。
その先。
森の外。
撤退経路。
「少々」
一拍。
「退いてもらおうかの」
ベラが。
指を鳴らした。
瞬間。
黒炎が。
一斉に。
放たれた。




