守られる家族
第119話 守られる家族
夜。
久しぶりの自分の部屋。
見慣れた天井を眺めながら、僕はなかなか眠れずにいた。
ここは僕が育った家だ。
なのに。
少しだけ、不思議な感じがする。
旅に出てから、色んな場所で眠った。
宿。
野営。
ギルド。
塔。
魔王城。
いつの間にか、どこでも眠れるようになっていた。
「……」
喉が渇いた。
僕は身体を起こし、静かに部屋を出る。
居間へ向かうと、まだ明かりがついていた。
「あれ?」
父さんが一人、椅子に座っている。
「まだ起きてたの?」
「お前こそ」
「喉渇いて」
「俺も似たようなもんだ」
僕は水を入れ、父さんの向かいへ座った。
「……」
「……」
少しだけ沈黙。
昔なら何とも思わなかった。
でも旅に出てから、父さんと二人で話す機会は減った。
「ソル」
「何?」
「随分、仲間が増えたな」
「……うん」
父さんが少し笑う。
「驚いたぞ」
「何が?」
「何がって……五百年前の魔王に、現魔王。魔王軍の軍隊長と参謀。セレフィアの聖騎士長。ギルド本部統括の息子」
「みんな仲間だよ」
「だから驚いてるんだ」
父さんが僕を見る。
「お前、本当に何してきたんだ?」
「色々?」
「それで済ませるな」
「でも本当に色々あったから」
「手紙だけじゃ全然分からんな」
「全部書いたら心配するでしょ」
「……」
「あ」
「お前」
「何?」
「やっぱり何か隠してたな?」
「大丈夫だったから」
「そういう問題じゃない」
「ごめん」
父さんがため息をつく。
でも怒ってはいなかった。
「飯は?」
「食べてる」
「ちゃんと寝てるか?」
「寝てるよ」
「怪我は?」
「今はない」
「今は?」
「……」
「ソル」
「大丈夫だって」
父さんはしばらく僕を見る。
そして。
「怖くないのか?」
「え?」
「天使と戦うんだろ」
「……」
少し答えに迷った。
怖くない。
そう言おうと思えば言える。
でも。
「怖いよ」
僕は答えた。
「そりゃ怖い」
死にたくない。
痛いのも嫌だ。
樹海で初めて天使と遭遇した時。
助けられなかった人。
今でも覚えている。
「でも」
僕は自分の手を見る。
「逃げたくない」
「……」
「僕にできることがあるなら、やりたい」
父さんは何も言わなかった。
しばらくして。
「そうか」
それだけ。
僕も、それ以上は言わなかった。
また少し静かになる。
「……ところで」
父さんが言った。
「何?」
「彼女はできたのか?」
「……」
「……」
「は?」
「だから、彼女」
「何で急に!?」
「いや。仲間も増えたみたいだし、そういう相手の一人くらいできたのかと思ってな」
「いないよ!」
「そうか」
「何でちょっと残念そうなの!?」
「別に」
「絶対残念そうだった!」
「アンタレスさんとか」
「アン!?」
「綺麗な人じゃないか」
「魔王だよ!?」
「魔王じゃなかったらいいのか?」
「そういう意味じゃない!」
「じゃあ、あの参謀の」
「セラ!? 違うよ!」
「そうか」
「何で候補探してるの!?」
その時。
ギィ。
扉が開いた。
「……何を騒いでおる」
「ベラ」
眠そうなベラ。
どうやら起こしてしまったらしい。
「何の話じゃ?」
「何でもない!」
父さんが普通に答える。
「ソルに彼女ができたか聞いてた」
「父さん!!」
「ほう?」
一瞬でベラの眠気が消えた。
ニヤッ。
嫌な顔。
「それは妾も気になるの」
「気にしなくていい!」
ベラが僕の隣へ座る。
「どうなのじゃ?」
「いない!」
「アンタレスは?」
「何で二人してアンなの!?」
「仲が良いではないか」
「仲間だよ!」
「セラは?」
「仲間!」
「なら――」
「全員仲間!」
「まだ何も言っておらぬ」
「どうせ誰かの名前出すでしょ!」
「つまらぬの」
「何が!?」
その時。
別の部屋から声。
「うるせえ!!」
カイル。
「寝ろ!!」
「ごめん!」
「お主も来るか?」
ベラが大声で聞く。
「行かねえよ!!」
「彼女の話じゃぞ?」
「もっと行かねえよ!!」
父さんが笑っている。
ベラも笑っている。
僕だけ全然面白くない。
「もう寝る」
「逃げるのか?」
「逃げる!」
僕は立ち上がる。
「ソル」
「何?」
父さんの表情が少しだけ変わった。
「元気そうで良かった」
「……」
「それだけだ」
「……うん」
僕も少し笑う。
「おやすみ、父さん」
「おう」
「ベラも」
「うむ」
部屋へ戻る。
その夜。
久しぶりの自分の部屋で。
僕は眠った。
翌朝。
「おはよう」
「おはよう」
父さん。
母さん。
僕。
ベラ。
カイル。
五人で朝食を食べていた。
「ソル」
父さんが言う。
「何?」
「彼女の話だが」
「朝からやめて!!」
カイルが吹き出す。
「お前、昨日そんな話してたのか?」
「笑うな!」
「誰だよ」
「いないって!」
「アンタレスか?」
「カイルまで!?」
ベラが笑う。
「皆、考えることは同じじゃな」
「もうこの話終わり!」
母さんだけが不思議そうに。
「アンちゃん?」
「母さんまで入ってこないで!」
その時。
テーブルの上に置いていた魔道具が光った。
「……アンかな」
僕が起動する。
魔力が広がり、空中に映像が浮かぶ。
『おはようございます』
「アン」
『ソル。今、大丈夫ですか?』
「大丈夫だけど」
『ご両親もいらっしゃいますね』
「いるよ」
『丁度よかった』
昨日とは違う。
真面目な顔。
「どうしたの?」
『皆さんにお話があります』
父さんと母さんも通信へ向き直る。
『世界連合軍最高指揮者として、正式にお伝えします』
空気が変わった。
『世界連合軍は、ソルのご家族を特別保護対象に指定することを決定しました』
「……え?」
父さんも。
「俺たちを?」
『はい』
「何で?」
『ソル』
アンが僕を見る。
『あなたは現在、世界連合軍特別部隊に所属しています』
「うん」
『今後、天使との戦いが本格化すれば、あなたには最前線へ向かってもらうことになるでしょう』
「……」
『そして、あなたは古代帝国アウレストラ王族直系の血を引いている』
父さんと母さんは静かに聞いている。
以前の帰郷で、この話は伝えている。
それでも。
改めて言葉にされると重い。
『天使がどこまでソルについて把握しているのか分かりません』
「……」
『ソル本人だけを狙うのか。その血筋まで危険と判断するのか。あるいは、家族を利用しようとするのか』
母さんの表情が変わる。
僕も思わず手を握る。
『可能性の話です』
アンが言う。
『ですが、危険が起きてから守るのでは遅い』
「……」
『ですから、先に守ります』
迷いのない声。
『これは私個人ではなく、世界連合軍としての決定です』
父さんが聞く。
「それで、俺たちはどうすればいい?」
『移住していただきます』
「移住?」
母さんも驚く。
「どこへ?」
『セレフィア神聖国です』
「……!」
聖女ルナの国。
そして現在。
世界連合軍最高顧問である教皇が治める国。
『既に教皇へ話は通っています』
「教皇様に?」
父さんが目を見開く。
『はい』
「……俺たちのことで?」
『はい』
父さんが僕を見る。
「ソル」
「何?」
「何で俺たちの引っ越しに教皇様が出てくるんだ?」
「……僕に聞かれても」
カイルが呆れる。
「お前の家族だからだろ」
『セレフィアでは、教皇直属の保護対象として扱われます』
父さんが固まる。
『大聖堂に近い居住区に住居を用意しました。周辺警備は聖騎士団。治療が必要な場合は神聖国の聖職者が対応します。何か異常があれば教皇へ直接報告が届く体制です』
「……」
父さん。
黙る。
母さんも。
僕も。
カイルまで少し引いている。
ベラだけ普通に朝食を食べていた。
「……あの」
父さんが手を上げる。
『はい』
「一つ聞いていいだろうか」
『もちろんです』
「なんで俺たち、こんな待遇なんだ?」
アンが少しだけ笑う。
『必要だからです』
「必要?」
『ソルには前だけを見て戦ってもらいます』
アンが僕を見る。
『戦場で家族の心配までさせるわけにはいきません』
「……」
『ソルが戦う。私たちは、そのソルが安心して戦える環境を作る』
一拍。
『それも世界連合軍の戦いです』
「アン……」
ベラが箸を置く。
「受けておけ」
父さんと母さんがベラを見る。
「ベラちゃん?」
「こやつはこれから、世界で最も危険な場所へ向かうことになる」
「……」
「妾も共に行く。じゃが、戦いの最中までお主らの心配をさせるわけにはいかぬ」
ベラの赤い瞳は真剣だった。
「敵がソルを狙う以上、家族であるお主らも既に無関係ではない」
「……」
「だから」
ベラが言う。
「守られてくれ」
静かになった。
父さんが母さんを見る。
母さんも父さんを見る。
そして。
「分かった」
父さんが答えた。
「父さん」
「行こう」
「……いいの?」
「良いも悪いもないだろ」
少し笑う。
「世界連合軍の最高指揮者と、五百年前の魔王にここまで言われたんだ」
『現魔王も忘れないでください』
「そうだった」
アンが少し笑う。
母さんも。
「私も大丈夫よ」
「母さん」
「ソル」
「何?」
「そんな顔しないの」
「……」
「私たちは守ってもらう。あなたは、自分のやるべきことをやりなさい」
「……うん」
決まった。
父さんと母さん。
セレフィア神聖国へ。
移住する。
そこから慌ただしくなった。
ただ。
全てを持っていく必要はなかった。
『生活に必要なものは、セレフィア側で既に準備しています』
アンが言う。
「既に?」
『はい』
「いつから準備してたの?」
『昨日からです』
「早くない?」
『教皇がすぐに手配しました』
父さんがまた黙った。
「本当に何なんだ、この待遇……」
必要な服。
大切なもの。
思い出の品。
それだけをまとめる。
父さんが家の中を見る。
「……まさか、この歳で別の国に住むことになるとはな」
母さんが笑う。
「ソルが旅に出てから、本当に色んなことが起きるわね」
「……ごめん」
「何で謝るの?」
「だって」
「ソル」
父さんが言う。
「そんな顔するな」
「でも」
「俺たちは逃げるんじゃない」
「……」
「お前が前を向いて戦えるように、安全なところへ行く」
一拍。
「そうだろ?」
「……うん」
「だったら謝るな」
「分かった」
「よし」
そして。
昼前。
荷物を持って家を出る。
「……」
父さんが止まる。
母さんも。
僕も。
「……え?」
村の外。
そこには。
部隊がいた。
先頭に並ぶ白銀の鎧。
セレフィア神聖国。
聖騎士団。
その後方には、長杖を持った魔法使いたち。
アルカディア魔法部隊。
さらに。
周囲を固める冒険者たち。
全員。
胸元にはB級を示す証。
「……」
カイルが目を見開く。
「マジか」
「何これ」
「護衛じゃろ」
ベラだけが普通に答える。
「いや、それは分かるけど!」
聖騎士団。
アルカディア魔法部隊。
B級冒険者。
それぞれが独立して動いているわけじゃない。
綺麗に統率されている。
一つの護衛部隊。
その時。
先頭から一人の男が歩いてきた。
白銀の鎧ではない。
深い青を基調とした外套。
胸元には、星と魔導書を組み合わせたアルカディアの紋章。
「アルカディア……?」
男は僕たちの前で止まる。
「お待ちしておりました」
深く頭を下げる。
「世界連合軍特別護衛部隊、隊長を任されております。アルカディア魔法部隊所属、エルディオ・クローヴェルと申します」
「隊長はアルカディアの人なんだ」
「はい」
エルディオさんが答える。
「今回の護衛任務について、アルカディアより強く志願させていただきました」
「志願?」
「はい」
「何で?」
僕が聞く。
エルディオさんは。
少しだけ目を見開いた。
後ろに並ぶアルカディアの魔法使いたちも。
僅かに表情が変わる。
「……ソル様」
「様?」
「あなたは」
エルディオさんが言う。
「まだ、ご理解されていないのですね」
「何を?」
その瞬間だった。
エルディオさんが。
片膝をついた。
「え?」
続いて。
後ろ。
アルカディア魔法部隊。
一人。
また一人。
全員が。
一斉に片膝をつく。
「え?」
僕は固まった。
父さんも。
母さんも。
カイルも。
何が起きているのか分かっていない。
聖騎士団と冒険者たちも静かにその光景を見守っている。
アルカディアの者たちだけが。
僕たち家族の前で。
膝をついている。
「ちょ、ちょっと待って」
僕は慌てる。
「何してるんですか!?」
「敬意を」
エルディオさんが答える。
「我々が、あなた方へ示すべき敬意です」
「僕たちに?」
「はい」
エルディオさんが顔を上げる。
「古代帝国アウレストラ」
「……」
「かつて、現在のアルカディアが存在する地に栄えた大帝国」
風が吹く。
アルカディアの外套が揺れる。
「帝国は滅びました」
「……」
「しかし、全てが失われたわけではありません」
エルディオさんが続ける。
「残された魔法技術」
「知識」
「建造物」
「記録」
「そして」
一拍。
「人々」
「……」
「それらが長い年月を経て受け継がれ、今のアルカディアの礎となった」
僕は黙って聞く。
「我々アルカディアの者は」
エルディオさんが胸へ手を当てる。
「自分たちの国が、何もない場所から生まれたとは考えておりません」
「……」
「アウレストラがあったから」
一拍。
「今のアルカディアがある」
「……」
父さんと母さんも。
静かに聞いている。
「そして」
エルディオさんが僕を見る。
「アウレストラを治めていた王族」
「その者たちが、最後まで民を守り、知識を残し、未来へ繋いだからこそ」
一拍。
「我々は今、ここにいる」
「……」
胸の奥。
何かが動く。
僕自身。
アウレストラを知らない。
千年以上前の国。
自分がその王族直系だと言われても。
まだ。
実感なんてほとんどない。
だけど。
目の前の人たちにとっては。
違う。
「ソル様」
エルディオさんが言う。
「あなたがアルカディアを訪れ」
「閉ざされていた古代記録へ我々を導き」
「失われていた歴史を再び繋いでくださった」
「……」
「そして何より」
エルディオさんの視線が。
僕から。
父さん。
母さんへ向く。
「千年以上の時を越えて」
一拍。
「アウレストラ王家の血が、今もこの世界に残っていることを知ることができた」
「……」
父さんが困ったように僕を見る。
「ソル」
「何?」
「俺も膝をつかれてるんだが」
「僕に聞かないでよ」
「俺は普通の村人だぞ」
「僕もそのつもりだったよ!」
エルディオさんが少しだけ笑う。
「それでよいのです」
「え?」
「どのように生きるかは、あなた方の自由です」
一拍。
「我々が勝手に感謝しているだけなのですから」
「……」
そして。
再び。
深く頭を下げる。
「アウレストラの血を」
「今日まで繋いでくださったこと」
一拍。
「アルカディアの民を代表し」
「心より感謝申し上げます」
後ろ。
アルカディア魔法部隊。
全員が。
同時に頭を下げる。
「……」
母さんが口元へ手を当てている。
父さんも。
何も言わない。
僕も。
言葉が出なかった。
僕が何かしたからじゃない。
父さんが何かしたからでもない。
母さんが何かしたからでもない。
ただ。
千年以上。
途切れなかった。
それだけ。
でも。
その事実を。
こんなにも大切に思ってくれる人たちがいる。
「……ありがとうございます」
僕は。
ようやくそれだけ言った。
「でも」
一拍。
「立ってください」
エルディオさんが僕を見る。
「僕は王様じゃないし」
少し笑う。
「父さんも母さんも、普通に暮らしてきただけだから」
「そうだ」
父さんがすぐに乗ってくる。
「本当に普通の村人なんだ」
母さんも笑う。
「だから、そんなに畏まられると困っちゃうわ」
「……承知しました」
エルディオさんが立ち上がる。
後ろの魔法使いたちも。
一斉に立つ。
ただ。
その表情には。
まだ。
強い敬意が残っている。
カイルが僕の横へ来る。
「ソル」
「何?」
「お前、本当に王族なんだな」
「今さら?」
「いや」
カイルがアルカディアの部隊を見る。
「こういうの見ると、実感する」
「……僕も」
ベラは。
少し離れた場所で。
静かに笑っていた。
「何?」
「いや」
「何その顔」
「ようやく少し分かってきたかと思ってな」
「何が?」
「お主が」
ベラが言う。
「何を受け継いでおるのかじゃ」
「……」
僕は。
自分の手を見る。
アウレストラ。
王族。
《天曜》。
星の声。
まだ。
知らないことばかり。
「さて」
エルディオさんが表情を切り替える。
隊長の顔。
「ここからは護衛任務に移ります」
「お願いします」
「はい」
周囲へ指示が飛ぶ。
「聖騎士団はご家族の直接護衛を」
「了解」
「アルカディア魔法部隊は周辺魔力の常時監視。探知結界を三重展開」
「了解しました」
「冒険者部隊は前方及び後方警戒。街道を外れる魔物の動きも確認してください」
「任せろ」
次々。
部隊が動く。
速い。
「すごい」
「この程度は当然です」
エルディオさんが言う。
「今回の任務」
一拍。
「必ず成功させます」
「そこまでしなくても」
「します」
即答。
「……はい」
父さんが僕の肩を叩く。
「ソル」
「何?」
「お前、アルカディアで何したんだ?」
「記録室に入ったり……」
「それだけか?」
「星の声で扉開けたり」
「それだけじゃないだろ」
「古代記録見つけたり」
「……」
父さんが頭を抱える。
「手紙に全然書いてないじゃないか」
「心配するかなって」
「今の方が心配だ」
母さんが笑う。
「でも」
アルカディアの人たちを見る。
「素敵な人たちね」
「うん」
僕もそう思う。
父さんと母さんが馬車へ乗る。
僕。
ベラ。
カイルも同行。
護衛部隊が配置につく。
出発の準備が整った。
その時。
父さんが馬車の窓から外を見る。
聖騎士団。
アルカディア魔法部隊。
B級冒険者。
さらに。
その全てを指揮するアルカディアの隊長。
「……なあ、ソル」
「何?」
「もう一回聞いていいか?」
「うん」
父さんが周囲を見る。
そして。
僕を見る。
「なんで俺たち」
一拍。
「こんな待遇なんだ?」
「……」
僕も周囲を見る。
教皇直属の保護対象。
聖騎士団。
アルカディア魔法部隊。
B級冒険者。
さらに。
アルカディアの人たちから。
家族揃って膝をつかれた。
「……僕も分かんなくなってきた」
「分かれ」
ベラが即答する。
「お前のせいだよ」
カイルも。
「僕!?」
「そうじゃ」
「そうだろ」
「でも僕、何も頼んでないよ?」
「そういう問題ではない」
ベラが呆れる。
エルディオさんが。
馬車の外から僕を見る。
そして。
少しだけ笑った。
「ソル様」
「はい?」
「アルカディアにとって」
一拍。
「あなた方を守ることは、任務ではありません」
「……」
「恩返しです」
「……」
僕は。
何も言えなかった。
千年以上前。
滅びた帝国。
そこから。
今へ。
繋がったものがある。
血。
魔法。
歴史。
そして。
人。
僕自身は。
まだ。
その全てを理解していない。
それでも。
アウレストラが残したものは。
確かに。
今の世界で生きている。
「出発します!」
エルディオさんの声。
護衛部隊が動き出す。
目的地。
セレフィア神聖国。
聖女ルナが残した国。
世界連合軍最高顧問。
教皇のいる場所。
僕の家族を守るための。
新しい場所へ。




